資料ライブラリー

政策と見解

日本共産党京都府会議員団が提案する 「京都府障害者-高齢者にやさしい福祉のまちづくり条例」案(大綱)を発表するにあたって

1994/12/14 更新
この記事は 17 分で読めます。

1994年12月14日

(一)

 国際障害者年の10年が終わり、全国で、そして京都府で〝障害者の社会への完全参加と平等〟を表題にかかげたさまざまな取り組みがおこなわれた。しかし、政府が実効性ある法整備や事業に取り組まなかったこととあわせ、本府の取り組みにおいても、府民の意識向上には一定の役割を果たしたものの、〝完全参加と平等〟労働や福祉、医療、教育の〝平等〟の面においても、移動の自由を保障するまちづくりなどの〝参加〟の面においても、十分な成果を上げることなく、かけ声倒れ、イベントなど形だけの一過性の事業に終始するなど、きわめて不十分な状況にある。
 このようにヨーロッパやアメリカに比べ、わが国など遅れた状況にあるアジア諸国の障害者福祉の水準を引き上げるために、新たな「アジアの障害者の10年」がスタートした。近年、政府も「障害者基本法」の策定や、「高齢者、障害者が円滑に利用できる建物の建築促進に関する法律」の制定などに取り組みけじめ、大阪、兵庫、滋賀など、地方自治体でもこうした動きに沿った障害者のための「福祉のまちづくり条例」の制定が行われるようになってきた。


(二)


 わが農員団は、この14年来、府民の「条例」制定を望む強い要望を受け、障害者団体をはじめとした関係団体と連携して、京都府に対し、「条例」の制定と推進・監視体制の確立、推進のための年次計画の策定、財政上の裏付けをもった府の支援事泉などの取り組みにただちに着手すべきであると、道理を尽くし、くりかえし指摘してきた。
 こうした障害者団体やわが議員団の指摘、「条例」制定の企国的な流れの中で、京都府もようやく重い腰を上げざるを得なくなり、「福祉のまち推進室」を設置するとともに、「福祉のまちづくり審議会」、「福祉のまちづくり推進協議会」を発足させ、「条例」制定に向けて動きだした。
 現在、「福祉のまちづくり審議会」で条例内容の検討がすすめられているが、真に実効性をもつ条例にしていくために、車いすを利用する障害者をはじめ、ひろく障害者団体や府民の意見を反映させ、府民に開かれたものとしてつくりあげていくうえでは、不十分な審議会運営にとどまっていると言わざるを得ない。また、施行後の有効なオンブズマン制度、財政的な支援助成制度や事業計画としての具体化なども欠かせないにもかかわらず、その内容はいっさい行政の手中にあって、この面でも府民に開かれたものとなってい
ない。


(三)

 わが議員団は、障害者・高齢者福祉の前進にとって重要な課題である「福祉のまちづくり条例」策定にあたって、こうした決定的に不十分なすすめ方を補い、府民に開かれた条例づくりと真に実効性ある事業化を促進するため、16名の議員団のもっ議案提案権を生かし、「民間審議会」ともいうべき役割を果たすため、議員提案の条例案(大綱)を発表した。この条例案(大綱)をタタキ台にして、関係団体をはじめ広く府民のみなさんの建設的意見を寄せていただくことによって、より良い条例づくりをすすめたいと考える。
 もとよりこの条例の制定によって、すべての障害者や高齢者の社会参加と平等がスムーズに行く程、ことは単純でないことは論を待たない。最終的には蛮人の住宅の改善、すべての建物や施設、すべての交通機関の改善が求められている。そのためには、運輸・通産・文部・厚生・労鋤など、すべての省にかかわる国の法律の抜本的改正と財政的保障が必要である。
 わが議員団は、府民の声、要望を反映した条例が制定されるよう、全力を注ぐとともに、この粂例が有効に機能するよう、監視機構、財政上の支援体制碓立、府自身が予算を組んで年次計画と促進事業を策定するよう、引き続き議会外の府民の運動と連携」、これらの事業が実現するまで、粘り強く収り組むものである。


《日本共産党府議会議員団の「福祉のまちづくり条例」案(大綱)の特徴点》

 大阪府、兵庫県、滋賀県などに比ベ後発である以上、先発条例実施上の問題点等を調ベ、より進んだもの、より実効性のあるものにするよう工夫、努力」た。そのため、素案段階で障害者団体や建築家団体など関係者、府民の意見を聞いてまとめた。以下は条例案(大綱)の特徴点である。

(1)障害者の建築基準法ともいうベきものであり、府下全域で一体的に統一基準で運用されることが望ましいので、最も人口の多い京都市域を含めての施行を前提に」た。

(2)「障害者の移動の権利」を前文の中で明記するとともに、障害者、高齡者にとって参加」やすいまちづくりと条件整備をすすめることは、府民みんなにとっても安全、快適なまちづくりになることをぶ〝宣言〟の形でうたった。

(3)先発県で実効性が弱い最大のネックとなっている①「既存の建築物」の改善について対象施設とするとともに、②新設・既設にかかわらず府民一般が広く利用する建物、施設は面積基準を設けず、すベて一律にこの条例の対象とした。

(4)他府県では宗教法人であることや文化財保護法の網がかかっているなど、様々な理由で手がつけられていない神社、寺院、数会なども、京都のまちの特殊性を考慮」、対象と」た。

(5)「障害者の移動の権利」を保障するものである以上、建物だけでなく公共交通機関も対象に入れた。本来は国(運輸省)が府県をまたがって包括的に法律でカバーすベきものだが、努力義務と」て改善を求めた。また、歩道上の違法な駐車や放置自転車、看板をなくす努力を行政に求めた。

(6)健康な人も足を骨折すれば治療中は「車いす」を使用するわけで、この条例案では「車いす使用者」と特記」て扱った。
 また、障害者の「参加と平等」をめざす条例である以上、最近、多く見られるファミリーレストランやスーパーのように二階で営業する飲食店や小売店にも「エレベーターの設置」を求めた。このような「エレベーターの設置」は、誰にとっても便利になるわけで、この条例を障害者や高齡者だけのものでなく、子どもや病人など、万人にとって必要なものと位置付けてつくった。


京都府障害者・高齡者にやさしい福祉のまちづくり条例案(大綱)


 私たち一人ひとりが自立し、生きがいをもって生活」、それぞれの立場で社会に貢献できる真に豊かな福祉社会を実現することは、すベての人の願いであり、また責務でもある。
 このため、一人ひとりが一個の人間と」て尊重され、社会からサービスを平等に享受でき、またすベての人に意欲や能力に応して社会参加できる社会が均等にもたらされなければならない。
 とりわけ高齢者、障害者からこうした機会をうばいがちなさまざまな障害を取り除き、障害者の移動の権利を保障し、すベての人が自らの意志で自由に移動でき、社会参加できる福祉のまちづくりをすすめることが重要である。
 私たち一人ひとりが基本的人権を尊重」、お互いを大切にする心を育み、この目標に向かってたゆまぬ努力をすることにより、障害者・高齡者にやさしい福祉のまちづくりの一翼を担うことを府民の総意とし、この条例を制定する。

一、総則

1、目的
 この条例は福祉のまちづくりに関し、府、市町村および事業者の責務ならびに府民の役割を明らかにするとともに、府の基本施策を定めてこれを推進し、都市施設を安全かつ快適に利用できるよう整備し、ゆたかな福祉社会の実現に資することを目的とする。

2、定義
 この条例において、次の各号に掲げる用語の定義は、当亥各号に定めるところによる。
①都市施設...不特定かつ多数の者の利用に供する建築物、道路、公園及び駐車場をいう。
②事業者...都市施設を設置し、または管理するものをいう。

3、府の責務
①府は、福祉のまちづくりに関する総合的な施策を策定し、これを実施する責務を有する。
②府は、「①」の施策の策定および実施に当たっては、市町村との連絡調整を緊密に行うよう努めなければならない。

4、市町村の責務
 市町村は、府の施策と相まって、当該市町村の区域の社会的状況に応じて福祉のまちづくりに関する施策を策定し、これを実施する責務を有する。

5、事業者の責務
 事業者は、都市施設をすべての人が安全かつ円滑に利用することができるようにするとともに、府または市町村が実施する福祉のまちづくりに関する施策に協力するものとする。

6、府民の役割
 府民は、福祉のまちづくりに積極的に参加し、協力するものとする。

二、福祉のまちづくりに関する施策

7、施策の基本方針

 府は、「この目的達成のため、次に掲げる基本方針にもとづく施策を、年次計画をもって計画的に実施するものとする。

①すべての人が自らの意志で自由に移動し、安心して住み、働き、生活することができる都市環境の整備を促進する。

②高齢者や障害者などの自由な社会参加を可能にするための支援措置を講ずる。とりわけ車いす使用者の移動の自由を保障する施策を促進する。

③すべての府民が自立して住み、働き、ともにくらすことができる地域社会づくりをすすめる。

④すべての府民が福祉のまちづくりに積極的に協力する気運を醸成する。

8、啓発および情報の提供等

①知事は、事業者及び府民が福祉のまちづくりについて理解と認識を深めよるよう。啓発に努めなければならない。

②知事は、市町村、事業者及び府民に対し、福祉のまちづくりに関する情報の提供、技術的な指導、その他の必要な措置を講じなければならない。

9、財政措置

 知事は、福祉のまちづくりを推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めなければならない。

10、推進体制の整備
 知事は、市町村、事業者及び府民と連携して福祉のまちづくりを推進する体制を整備しなければならない。

三、都市施設の整備

11、整備基準への適合
①事業者は、都市施設を整備基準(次号で定める基準をいう。以下同じ)に適合させるよう努めなければならない。ただし、整備基準に適合させる場合と同等以上に安全かつ円滑に利用することができる場合で、知事が整備基準に適合させることが著しく困難であると認めたときはこの限りではない。

②「①」の整備基準は、次のとおりとする。

a、建築物にあっては、次に定めるところによる。

ア、建築物の出入口
ⅰ 障害者・高齢者等(以下「障害者等」という)が通行することができる通路に面すること。
ⅱ 障害者等が通行することができるものとすること。
ⅲ 車いす使用者が通行することができるものとすること。

イ、廊下
ⅰ 障害者等が通行できるものとすること。
ⅱ 車いす使用者がすれ違ったり、転回することができる部分を設けること。


三 京都府建築基準法施行条例に規定する建築物にあっては、手すりを設けること。

ウ、階段

ⅰ 回り階段としないこと。
ⅱ 手すりを設けること。
ⅲ 段鼻は滑りにくいものとする

エ、エレベーター

ⅰ 障害者等が安心して利用できるものとすること。
ⅱ 建築基準法施行条例に規定する建築物または、国もしくは府、市町村の建築物で規則で定めるものにあっては、エレベーターを設けること。
ⅲ ⅱ以外の建物で、二階以上に店舗もしくは営業事業所がある場合はエレベーターを設置するようつとめること。

オ、居室の出入口

ⅰ 障害者等が通行することができるものとすること。
ⅱ 車いす使用者が通行できるものとすること。

カ、公会堂、集会場、劇場、映画館、演芸場または観覧場の客席

ⅰ 障害者が容易に利用することができるようにすること。
ⅱ 設置にあたっては、車いす使用者が通路側だけでなく、一般客席と同列で観賞できるように配慮、または改善につとめること。

キ、便所、洗面所

ⅰ 障害者等が利用することができるものとすること。
ⅱ 車いす用便所は、車いすが回転できるようにすること。

ク、付属する駐車場

ⅰ 車いす使用者等が乗車する自動車を駐車する部分を設けるこ
ⅱ 駐車台数5台について1台の割合で設けること。


ケ、視覚障害者誘導ブロック、音声誘導装置、その他案内表示建築物の内外において、視覚障害者誘導ブロックの敷設、音声誘導装置の設置、その他障害者に配慮した案内表示を行うこと。


b、道路にあっては、次に定めるところによること。

ア、歩道
ⅰ 歩道は、障害者等が安全に通行することができるよう規則に定める基準に合致するものとすること。
ⅱ 障害者等に危険な自動車等の歩道上の駐停車を禁止すること。また、歩道上の放置自転車や看板等の障害物をなくすようにつとめること。

イ、歩道と車道とが交差、あるいは接続する部分

ⅰ 歩道と車道が交差する地点、あるいは接続する部分では、障害者等が安心して通行できるようにすること。
ⅱ 段差を設けないこと。


c、公園にあっては、次に定めるところによること。

ア、出入口は、障害者等が通行することができるものとすること。

イ、園路は、障害者等が通行することができるものとすること。

ウ、便所、水のみ場は、障害者等が利用することができるものとすること。

エ、視覚障害者誘導用ブロックの敷設、音声誘導装置、その他障害者に充分配慮した案内表示をおこなうこと。


d、駐車場にあっては、車いす使用者等が乗車する自動車を駐車する部分を設けること。
③「①」の整備基準を適用するについて必要な事項は規則で定める。


12、維持保金等

①事業者は、都市施設を整備基準に適合させた場合にあっては、当該適合させた部分の機能を維持するよう努めなければならない。

②事業者は、都市施設を整備基準に適合させるまでの間、当該郁市施設を障害者等が利用することができるよう配慮しなければならない。

③何人も都市施設について障害者等の利用の妨げとなる行為をしてはならない


13、整備基準適合証の交付

①事業者は、都市施設を整備基準に適合させた時は、知事に対し、当該都市施設が整備基準に適合していることを証する証票の交付を求めることができる。

②知事は、都市施設が整備基準に適合していると認めたときは、事業者に対し、整備適合証を交付するものとする。

四、特定施設

14、事前協議

①事業者は、次に掲げる都市施設(以下「特定施設」という)を設置し、あるいは増築、改修をしようとする時は、当該工事に着手する前に、その計画について知事に協議しなければならない。

a、高齢者、障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律施行令に規定する特定建築物及び、建築基準法施行条例に規定する特殊建築物

b.事務所の用途に供する建築物のうち、次に掲げるもの。

ア、国、地方自治体、その他規則で定めるものの事務所の用に供する建築物

イ、電気事業法に規定する一般電気事業の用に供する施設である建築物

ウ、ガス事業法に規定する一般ガス事業の用に供する施設である建築物

エ、電気通信事業法に規定する第一電気通信事業用に供する施設である建築物

オ、銀行法に規定する銀行業の用に供する建築物、その他これに類する建築物で規則に定めるもの。

カ、冠婚葬祭に関する事業の用に供する建築物

キ、事務所の用途に供する建築物
c、工場の用途に供する建築物
d、寄宿舎の用途に供する建築物
e、ダンスホールの用途に供する建築物
f、神社、寺院または教会など、宗教法人が所有または管理する建築物、施設のうち、広く一般に拝観、公開、利用が認められているもの。
g、鉄道事業法に規定する鉄道施設のうち停車場である駅
h、軌道法施行規則に規定する建築物等
i、空港整備法に規定する空港
j、港湾法に規定する旅客施設である建築物
k、自動車ターミナル法に規定するバスターミナル
l、地下街
m、道路法に規定する道路のうち、自動車専用道路を除くもの
n.都市公団法に規定する都市公園
o、遊園地
p、動物園及び植物園
q、港湾法に規定する港湾環境整備施設である緑地
r.駐車場法の殷殷の届け出対象となる路外駐車場

②事業者は、『①』の工事が完了した場合においては、速やかに知事に届け出なければならない。


15、適合状況調査
 事叢者は、知事が要請した場合においては、その管理する特定施設でこの条例の施行の際、現に存するものについて、規則で定めることろにより、整備基準に適合しているかどうかの調査を行い、その結果を知事に報告しなければならない。

16、改善計画の作成の要請

①知事は、必要と認めるとき、あるいは府民から整備を求められ、妥当と判断した場合は、事業者に対し、整備基準に適合していない既存施設を整備基準に適合させるための工事の計画を作成し、届け出ることを求めることができる。

②知事は、改善計画の届け出があった時は、その届け出をした者に対し、その届け出に係る改善計画について、指導および助言を行うものとする。

17、改善計画の変更

①事業者は。やむを得ない場合にあっては、改善計画を変更することができる。この場合において、事業者は変更に係る改善計画を知事に届け出なければならない。

②「17-②」の規定は「①」の変更について準用する。


18、定期報告

 事業者は、規則で定めるところにより、定期に改善計画に係る工事の実施状況を知事に報告しなければならない。


19、立ち入り調査

①知事は必要があると認めるときは、その職員に事前協議に係る特定施設及び適合状況調査に係る既存施設に立ち入り、当該施設が建築基準に適合しているかどうかについて調査させることができる。

②「①」の規定により、立ち入り調査をする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。


20、勧告

①知事は、事業者が事前協議を行わず工事に着工したときは、その計画について協議を行うべきことを勧告することができる。

②知事は。事紫者が事前協議と異なる工事を行ったときは、当該事前協議にもとづく工事を行うこと、その他必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。

③知事は、事業者が適合状況調査及びその結果の報告を行わないときは、適合状況調査及びその結果の報告を行うべきことを勧告することができる。

④知事は、事業者が改善計画の作成及び届け出を行わないときは、改善計画を作成し、届け出るべきことを勧告できる。


21、公表

①知事は、「21-①」及び「21-②」の規定による勧告をした場合において、正当な理由がなく当該勧告に従わないときは、その旨及びその勧告の内容を公表することができる。
②知事は、前項の規定による公表をしようとするときは、当該公表に係る者に、あらかじめその旨を通知し、その者またはその代理人の出席を求め、釈明の機会を与えるため、聴聞を行わなければならない。


22、国等に対する特例

①国、府、市町村、その他規則で定める者にあっては「15」から「22」までの規定は適用しない。

②知事は、国、市町村、その他規則で定める者に対し、その者が設置し、または管理する特定施設について、整備基準への適合の状況、その他必要と認める事項に関する報告及び必要な改善計画の作成と報告を求めることができる。


五、公共交通機関の整備


23、公共交通機関の整備

 鉄道営業法に規定される鉄道車輌及び道路運送法に規定される}般旅客自動車のうち、京都府内に路線免許、営業区域をもつ営業車輌の所有者、あるいは運行管理者は、その所有、あるいは管理する車輌を、障害者等に安全、快適に乗車、利用できるよう、その整備につとめなければならない。


六、雑則


24、市町村長への委任

 知事は、規則で定めるところにより、この条例に規定する知事の権限の一部を市町村長に委任することができる。


25、規則への委任
 この条例の施行に関し、必要な事項は規則で定める。

付則

 この条例は一九九 年 月 日から施行する。