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政策と見解

「京都府同和地区実態把握等調査結果」は同和行政の継続ではなく、終結こそ求めている 同和対策室の「要約」発表にあたっての日本共産党議員団の見解

1996/02/16 更新
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一九九六年二月十六日

「格差」は逆転!!

同和地区 35市町 全府
道路改良 73.9% 43.3%
下水道整備 40.1% 31.8%
住宅部屋数畳数 6.11室 35.93畳 4.75室 29.09畳
水田整備 64.3% 43.3% 41.6%
林道整備 36m/ha 4m/ha


「差別意識」も着実に解消

◆同和地区の人との結婚に親が反対した場合の態度(未婚者)

全国同和地区外
 85年 意志を貫いて結婚する  11.3%
    親の説得に全力を傾けた後に、意
    志を貫いて結婚する   56.3%
    反対があれば結婚しない 24.4%
    絶対結婚しない     8.0%

 93年 意志を貫いて結婚する  17.0%
    親の説得に全力を傾けた後に、意
    志を貫いて結婚する   62、8%
    反対があれば結婚しない 16.8%
    絶対結婚しない     3.4%

京都同和地区外
 85年 意志を貫いて結婚する  12.5%
    親の説得に全力を傾けた後に、意
    志を貫いて結婚する   38.8%
    反対があれば結婚しない 9.1%
    絶対結婚しない     2.6%

◆隣近所の人が同和地区の人だと分かった場合の態度

全国同和地区外
 93年 かわらず親しくつきあう 87.8%
    忌避          10.8%

京都同和地区外
 93年 かわらず親しくつきあう 86.6%
    忌避          6.8%


 京都府同和対策室は、平成七年十二月に平成五年度に実施した「京都府同和地区実態把握等調査結果」(以下「実態調査」という)の「要約」を発表した。この「要約」では「まとめ」として、今後の京都府の同和行政の課題をも示しており、この「要約」に対する党議員団の見解を明らかにするものである。
 すでにわが党は、昨年十一月「同和行政の終結への主張と提言」を発表し、「同和行政の終結にふみきることこそ、同和問題解決の道」であることを明らかにし、府民的な討論をよびかけたところである。今回の「実態調査」結果は、あらためて同和行政の終結こそが、京都府行政の課題となっていることを明らかにした。このことは「要約」でも生活環境改善などでは認めざるをえなくなっているが、同時に「まとめ」では、「同和地区の教育力の向上」や「就労条件については、なお差がみられる」「結婚についての差別意識は、なお根強く見受けられる」とするなど、同和行政、とりわけ啓発、教育、就労などの必要性を強調するものとなっている。
 しかし、今日求められていることは、さまざまな口実をもうけての同和行政の継続ではなく、同和地区指定を解除し、「同和」を理由にした啓発や教育も終結することこそ、同和問題の解決にむかう道である。
 このことは、地対協総括部会小委員会の報告でも「従来の対策を漫然と継続していたのでは同和問題の早期解決にいたることは困難」と指摘しているところでもある。
 わが党識員団は、同和事業の継続と利権あさりをねらう「部落解放同盟」に屈伏した京都府の姿勢を厳しく批判するとともに、同和事業の終結、解決に向けて全力をあげるものである。


【地域改善対策をただちに終結する必要性を示した「実態調査結果」】

一、実態調査結果は「要約」でも明らかにしているとおり、同和地区と一般地域の格差は解消しているどころか、すでに逆転した状況になっている。
 道路改良率はすでに73.9%で、同和地区の所在する三十五市町全体平均43.3%よりもはるかに上回っている。下水道整備率も同和地区40.1%、三十五市町平均31.8%である。消火栓・防火水利は97%でほぼ整備が完了している。住宅も一世帯あたり平均部屋数6.11室、平均畳数35.93畳で、全府平均の4.75室、29.09畳をはるかに上回っている。
 土地改良事業の水田整備率は、同和地区64.3%で三十五市町平均43.3%、全府平均41.6%を大きく上回り、林道整備も36m/haで、三十五市町平均4m/haの九倍にもなってい
る。
 また保育所への入所についても待機児はなく、希望するものはすべて入所でき、定数割れとなっている保育所もある。
 同和事業は、あくまでも生活環境などの一般地域との格差をなくすために、一般行政を補完するものであり、格差か解消した段階で終結し、一般行政に移行することが当然である。ところが、いまや格差がなくなるどころか逆転した事態が起こっており、「残事業がまだある」として同和事業の継続をする根拠はまったくなくなっているのである。
 「法」期限を待たずにこれらの事業を終結することこそ求められており、平成八年度事業の必要性もないといわなければならない。


二、同和事業のなかでも大きな比重をしめている個人給付事業について「まとめ」はふれていないが、「実態調査」の結果からみても「廃止する」ことが当然なものが多数うきぼりになっている。たとえば、自動車運転免許取得事業では、同和地区住民のなかで20歳代から40歳代までの普通自動車免許取得状況は、ほぼ90%になっており、こうした事業の継続の必要性はない。さらに妊産婦等栄養強化事業のように、同和地区住民の健康状態が著しく悪いときに生まれた事業が何の見直しもなく、今日まで継続されている。高校生への奨学金は、一般には厳しい所得制限などをもうけ、その返済を義務付けているにかかわらず、同和地区高校生には80~90%に貸与され、しかも府が「同和地区教育自立対策事業」としてその返済を免除する制度までつくっている。
 今回の調査結果でも明らかなように、同和地区住民のなかでも、全体として所得が向上するとともに、住民の間に所得格差が生まれている。こうした状況のもとで、個人給付の特別対策を継続するのではなく、必要な施策は一般施策のなかで措置することが求められているのである。
 しかも、個人給付事業は属人的に行われ、同和地区出身であるというプライバシーを暴き、固定化する役割をはたし、国民融合に逆行する措置となっている。これ以上、個人給付事業を続けることは、同和問題の解決に逆行するものであることは明らかである。


三、「まとめ」は隣保館について「その役割についても、あらためて検討すべき時期にきているとも考えられる」としているが、隣保館だけでなく、同和地区内施設については体育館、児童館、保育所などの施設を一般住民との共同利用の施設とすることによって、同和地区住民と一般地域住民の交流をはかることがいま求められているのである。これは意識調査でも「同和地区のイメージ」について、同和地区住民と交流のある人ほど、同和地区へのプラスイメージが大きくなっており、これは垣根を払った交流の大切さを示している。現行のように同和地区住民だけに施設の利用を限定することは、同和問題の解決に逆行する。いま必要なことは、すべての同和地区内施設を一般住民との共同利用・開放へ行政が主体性を発揮することである。


【同和行政の継続を意図した「まとめ」】

一、教育についても、高校進学率は96.3%となっており、「要約」も「格差はほとんどなくなっている」としながら、大学への進学率は「格差があると推定され」「同和地区の教育力の向上など」を今後の検討課題としている。
 しかし、今日、教育行政の課題は、同和地区の児童だけでなく、すべてのこどもたちにゆきとどいた教育をすることが求められているのである。
 こうした行政の本来の責任を放棄して、従来行ってきた同和地区児童に対する同和加配や補習、センター学習。家庭訪問などを継続することは、こどもたちのなかに同和地区の児童は「特別」との感情を広げ、同和地区児童には自主性や自立を奪っている状況を継続することであり、同和問題の解決には何ら役立たないものである。こうした教育における同和特別対策も終結させ、一般行政のなかですべての児童の学力向上をはかることこそ求められている。


二、同和地区住民の就労について「建設業」が多く、「就労の不安定さが継続している」としている。しかし、他の調査項目でも留意しなければならない問題でもあるが、「要約」も指摘しているように中等・高等教育を受けてきている若年層が就労や結婚を機に、地区外へ流出していることである。このことから同和対策事業などによって就労の改善がすすんできたとしても、同和地区住民のなかでの調査では、これが正しく反映されず。逆に高齢者の比率の増大や、地区外へでて自立をすることが困難な人々が残され、実態よりも鋭く数値があらわれることが起きるのである。
 また、就労先は同和地区住民だけでなく、一般地域住民も、その地域における産業のあり方に左右されるものである。
 「就労」で問題にすべきは、同和地区出身ということで、職業選択の自由や就労の機会が奪われることのないようにすることが求められているのであって、同和地区住民をどれだけ大きな企業や安定的就労先に就職させるかが問われるものではない。
 これまでの誤った就労対策の結果、公務労働が14.4%を占め、府全体の3.17%に比べれば特別に高い状況になっている。これはこれまでの就労対策として自治体で同和の特別枠をつくり、「選考採用」を行ってきた結果である。このことが自治体の公正な人事政策をゆがめ、一部の自治体では深刻な事態を招いているのである。
 京都府が「解同」に屈伏し、民間企業への同和地区出身者の雇用を啓発するために「雇用開発センター」をつくりこれを促進していることは、こうした歪みを民間企業にも広げ、さらに就職にあたっても、同和地区住民の出身をあばき、固定化するという、同和問題の解決に逆行する行政を行うこととなっている。
 就労についても、企業による出身地や性別、さらには思想・信条などによる差別を許さず、大企業や政府がおこなっている不安定雇用労働者の拡大、労働行政の後退をやめさせ、すべての労働者の雇用と権利を守るなどの一般行政の充実こそ求められているのである。同和地区住民だけを対象にした就労対策では解決できないし、同和問題の解決を遅らせるだけである。


三、さらに「まとめ」での最大の問題は、府民のなかに「差別についての一貫した態度は形成されていない」「差別意識はなお、根強く見受けられる」として今後も同和啓発の必要性を強調していることである。
 しかし、同和問題の解決のもっとも困難な課題とされてきた結婚についても、地区外住民との結婚は20歳代67.5%、30歳代57.1%となっている。また一般地域の未婚者も、同和地区住民との結婚について「自分の意志を貫く」が51.3%と過半数を超え、「結婚しない」は11.7%となっている。親の方も「こどもの意志を尊重する」が75.9%をしめている。これは、「結婚は両性の合意による」という民主主義的な考え方が圧倒的多数となってきていることを示している。
 ところが「要約」は、夫婦とも地区内出身の比率を、高齢者も含めた全体の平均値をことさらに強調している。これは、同和事業が開始され、国民全体の進歩を反映した世代を対象にとらえるべきである。また、結婚に対しての親の考えも「親としては反対だが、こどもの意志を尊重する」という意見を「なんらかの理由で反対するもの」として数値にあげ、「まだ反対するものが44.1%もいる」としているのである。しかし、これも社会全体の進歩のなかで、個人の意識も進歩し、矛盾を抱えながらも進歩してきており、こうした過程を通じて民主主義的な考え方が、国民の共通のものとなり、同和問題の解決もすすむというとらえ方が適切である。
 このように府民の同和地区住民に対する「差別意識」が解消にむかっているときに、「実態調査」が示したものは、今の同和啓発に問題があるということである。
 それは同和問題に偏重した人権啓発に対し、「程々にすべき」(26.6%)「あまりやらない方がよい」(13.9%)「やるべきでない」(6.1%)の声が半数近くを占め、逆に「積極的にやるべき」は22.1%となっている。そして「人権意識そのものを高めることが重要なので「同和問題」だけを取り上げて啓発・教育を行うのではなく、人権問題全体の啓発・教育の一環として行うべき」と、見直しを要求する声が50.0%となっている。これらは「差別落書」を口実に、その見学会を地域ぐるみで組織したり、PTAや各種の社会教育活動のなかに強制的に同和研修を持ち込み、同和研修を何回やったか、何人が参加したかを「解同」に報告するようないまの啓発や教育への厳しい批判である。
 これまでの啓発や教育は「解同」の「部落民以外は差別者」との誤った理論にもとづき、すべての府民がなんらかの差別意識をもっており、それを指摘し、教育する必要があるとしてすすめられてきた。そのためには「確認・糾弾会」が必要であると京都府もその場に同席してきたのである。
 京都府のこうした「解同」に屈伏し、同和事業を肥大化させ、一般住民を「差別者」としてきた誤った同和事業や啓発・教育が、府民のなかに「同和は特別」とか「同和問題はやっかいなこと」として同和問題の正しい解決を妨げてきたのである。今回の意識調査結果は、これらに対する厳しい批判としてあらわれている。こうした批判に対し「まとめ」は「十分に留意する必要がある」としているが、京都府の厳しい反省こそ求められている。
 行政がおこなうべきことは、住民の自主的な社会教育活動が前進するよう、その環境を整備し、条件を整えることであり、その内容に介入することがあってはならない。
 今回の実態調査の結果を恣意的に使い「差別意識は根深い」として同和啓発や教育などの必要性を強調し、これらを継続しようとすることは、同和問題の解決に逆行するものである。
 以上のように、今回の「実態調査結果」は、ハード事業も個人施策も終結、一般行政への移行をはかり、啓発や教育も終結することが求められている。
 京都府が同和事業の永久化と利権あさりを狙う「解同」に屈伏し、同和行政の継続をはかろうとすることは、府民の世論にも同和問題の解決にも背を向けるものである。
 こうした「実態調査結果」がだされた以上、「法」期限を待たずに「廃止するものは廃止する」とする決断をすべき時期にきている。わが党議員団は、同和問題の正しい解決を願う、部落内外のすべてのみなさんと全力をつくすものである。