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政策と見解

96年度京都府予算案にみる荒巻知事の「府市協調」とは何か

1996/02/16 更新
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一九九六年二月十六日

日本共産党府会議員団
団長 西山 秀尚

一、昨日、九六年度の予算案が府議会に提出された。新年度の予算は、長引く不況と国の悪政のもとで苦しんでいる府民の暮らしを守り、大手ゼネコン言いなりですすめられた開発や、「住専」関係不動産業者によって破壊された「歴史都市・京都」をよみがえらせ、いつまでも安心して暮らせる京都をつくるためにきわめて重要な予算である。
 ところが発表された予算案をみるかぎり、府市民の期待にこたえるものとはなっていない。
 わが議員団は、二月二十二日から開会される府議会において、精査・検討のうえ、その是正を要求し、府民要求実現のため全力をあげるものである。
 いま京都市長選挙が激しくたたかわれており、荒巻知事はこの市長選挙のなかでも「府市協調」を繰り返し語っているが、今回の予算案は以下に見るごとく知事のいう「府市協調」が京都市民に何をもたらすかをいっそう鮮明にしているものである。

一、九六年度予算案は、四年連続の税収の減収見込みから、予算の伸びは1.3%と政府予算案の5.8%増、地方財政計画の3.4%増と比べてもきわめて少ない「超緊縮」予算となっている。これは知事選挙の年の九四年度の「骨格予算」の1.4%増よりもさらに低い異常なものである。
 こうした予算とならざるをえなかったのは、九四年度決算でも指摘したとおり、府税収入の約三分の一を占める事業税が大企業の11.7%に対し、中小企業で29.8%ときわめて大幅な落ち込みを示していることである。西陣をはじめとした伝統産業振興をおざなりにし、大手スーパーの進出を野放しにしてきたこと、さらに主要な産業である観光関連産業の基盤となっている「歴史都市・京都」の自然と景観を破壊し、世界と全国の人々の期待に背を向けてきたこと、中小企業への官公需発注が府・市いずれも大幅に落ち込んでいることなど京都の活気を奪い、とりわけ事業所の63%までが京都市に集中している中小企業の街・京都の停滞をもたらした結果である。
 荒巻知事は「府市協調で京都の発展を」と語るが、実態は「府市協調」で府民の営業と暮らしを破壊してきた証明が今回の「超緊縮」予算案にあらわれている。

一、このように京都府市民の営業と暮らしか大変になっているもとで、京都府がいまただちにやるべきことは大型公共事業中心をあらためて、大企業の身勝手なリストラ、下請け切り捨てなどに規制を加え、社会的責任をはたさせるとともに、伝統地場産業や中小企業、商店、そして農業などで働く府民の営業と暮らしを守ることを最重点とした施策に切り替えること、そして福祉や医療を充実させ、府民が安心して暮らせるようにすることである。京都府財政を好転させるうえでも、いまこのことが切実に求められている。
 ましてや、「税収の落ち込み」「超緊縮予算」を口実にして、切実に求められている府民の暮らしと営業を守る対策を後回しにし、大型公共事業のためのあらたな「ため込み」をもくろむようなことは、許されるものではない。

一、さらに今回の予算案は、「府市協調」で歴史都市・京都の破壊を推し進め、市民の願いに背を向けたものとなっている。
 大都市の中心でも希少な自然が残る「国民公園」であり、歴史的遺産でもある京都御苑への和風迎賓館の建設推進のための予算案を今年度も計上している。これは、これまでの京都駅ビルの建て替えや高速道路計画などと同じように「府市協調」で京都の自然と景観を破壊するものであり、認めることはできない。
 また、広範な府市民が求め、すでに全国で30の都府県と七政令市で実施している入院給食費への公費助成がまたも見送られた。今年十月から現在の一日600円が800円に引きあげられるもとでもこうした府市民に冷たい姿勢をとり続けている。これは、知事がこれまでも「市町村との協識」を口実にしてきたが。地下鉄工事費の大膨張などで財政危機に陥っている京都市と足並みをそろえたものであることは明白である。
 さらに、昨年、政府が景気対策の一環として750万円に引き上げ、すでに多くの都府県で実施している無担保無保証人融資制度の限度額引き上げも見送られている。こうした府市民の願いに背を向け、悪政を推進する「府市協調」の継続は、暮らしをますます困難にさせるだけである。

一、全国でも、府下市町でも終結への流れを強めている同和対策事業は、すでに「実態調査結果」で明らかなとおり、府下でも格差はなくなり、継続することが同和問題の解決に逆行する事態になっているにもかかわらず、「残事業」を膨らませ、駆け込み的に同和事業を拡大している。これはいま京都市政でも大問題となっている「部落解放同盟」いいなりの同和行政を府市一体ですすめようとするものである。
 こうした全国の流れにも、府市民の世論にも背をむける同和事業は、法期限をまたずとも、勇気をもって終結することこそ求められているのである。

一、わが議員団は、京都市長選挙で、市民のみなさんと力をあわせ、井上吉郎京都市長の実現へ全力をあげるものである。京都府民の三分の二が暮らす京都市政が地方自治体の本来の役割である住民の安全と福祉、暮らしを守る市政へと改革されるならば、京都の府政も転換を迫られることになることは明らかである。荒巻知事が「共産市政は困る」というのはまさに、京都市政が変われば、これまでの大企業本位の府政運営が続けられなくなるからの表明に他ならない。
 わが議員団は京都の府市民の願いを実現する、本当の「府市協調」の時代への新しい一歩を切り開くため全力をあげるものである。