資料ライブラリー

政策と見解

家賃値下げ・入居者追いだしの「住宅審」答申議案を批判する(見解)

1997/08/11 更新
この記事は 6 分で読めます。

◎ 日本共産党京都府会議員団は、8月11日、「家賃値上げ・入居者追いだしの『住宅審』答申素案を批判する」との見解を発表しました。

 また、8月14日、荒巻禎一京都府知事に対し、「福祉医療助成に関する申入れ」をおこない、その実現を求めました。
 それぞれ、全文は以下の通りです。


家賃値下げ・入居者追いだしの「住宅審」答申議案を批判する(見解)

1997年8月11日

日本共産党府会議員団
団長 西山 秀尚

一 府営住宅管理審議会は、京都府知事の「新しい公営住宅制度における府営住宅の家賃等について」の諮問をうけ、小委員会が7月22日の審議会に「答申素案」を提案した。
 この小委員会「答申素案」は、府営住宅入居者はもちろん、住宅難に直面する多くの府民の願いにまったく背を向けたものである。
 審議会は、今後、8月27日に「最終答申」をまとめる手順となっているが、府はその答申をもとに9月定例府議会へ府営住宅条例の改定案を提案する予定である。いま、入居者をはじめ多くの府民のみなさんが審議会委員に積極的に切実な願いや声を寄せていただくこと執きわめて大切になっている。
 わが党議員団は、府民のみなさんの住宅要求にこたえた「答申」となるよう引き続き奮闘するものである。

一 今回の知事の諮問は、昨年、日本共産党のみの反対で全面改悪された国の公営住宅法の施行に伴なっておこなわれた。
 国の新しい公営住宅法は、公営住宅の入居対象者(入居資格者)を年収が4人家族で567万円以下(国民の33%)から、年収が510万円以下の世帯(国民の25%)へ狭め、年収510万円以上の「収入超過者」には公営住宅の入居を認めず、すでに入居している「収入超過者」については、家賃を大幅に引き上げて、追い出すことをねらっている。
 これは、国や地方自治体が、「住まいは人権」として住宅困窮者に住宅を供給する責任を放棄し、公営住宅の建設を抑え、高齢者や障害者、母子家庭など「低所得者」のみに入居者を限定しようとするものである。これでは、公営住宅に住むのはお年寄りや障害者などに限定され、若者もお年寄りも、障害者もともに助け合って暮らしていくというバランスのとれた地域づくりは否定されてしまう。
 また、今回の「公営住宅法」改悪は、京都でも、府の空き家募集に10倍、20倍もの人々が応募に殺到して、希望者が入居できないという事態や、「高い民間マンションでは子育てができない」と、少子化の原因のひとつとなっている事態をいっそう深刻にするものである。

一 本来、「住宅審」は、行政から独立した審議会として、府民の切実な願いにこたえ、府民の立場から、府営住宅の管理や建設について、審議を行ない、知事に対して意見を具申する役割を担っている。
 その立場にたつならば、いま「住宅審」に求められていることは、国の「公営住宅法」改悪と府の住宅政策に追随するのでなく、国が改悪した入居収入基準をもとにもどすこと、さらに月収の算定の際の各種控除を引き上げることなどを国に求めるよう知事に答申することである。
 ところが、わが党の審議委員ならびに公営住宅入居者代表委員が、国の「公営住宅法」改悪に追随して、大幅な家賃引上げや強制的な入居者追いだしを行うべきではなことを強く主張してきたにもかかわらず、「答申素案」は、こうした主張に耳をぷしすのではなく、「公営住宅法」改悪の内容を府営住宅入居者と府民に強要しようとするものとなっている。
 また、ここ数年の府営住宅新築戸数が毎年200戸前後で、府の建設計画からみても大きく遅れている中で、その現状の打開のために、積極的な対策を立てるよう求めることこそ必要である。さらに民間賃貸住宅に住む「公営住宅入居資格者」や新婚家庭への家賃補助制度の創設など、府民の願いにこたえた京都府の住宅対策を行なうよう求めることも必要である。
 ところが、「答申素案」は、こうしたことはまったく無視したものとなっている。

一 「答申素案」の問題の第一は、「収入超過者」(4人家族510万円をこえる)に対しては、定年退職が近いとか、こどもが近々結婚して転出するなどの入居世帯の将来計画に対する配慮や弾力的運用なしに"退去の促進"を図るとし、そのために近隣の民間家賃なみに設定するとしていることである。さらに、「高額所得者」(4人家族で790万円を超える)については、「民間家賃の2倍の家賃」にするよう求めている。これは、国が「実施にあたって配慮すべき事項」の中で"高額所得者に対して明け渡し請求を行った場合、明け渡し期限到来後も住宅を明け渡さない者に対し、近傍同種の住宅家賃の最大2倍の金銭を徴収することが適当"としているなかで、最も厳しい明け渡し措置をとることを要求しているのである。これは、京都の「住宅審」が、国の「法」改悪に追随するどころか、他府県に率先して入居者追いだしの先頭に立とうというものであり、とうてい認められるものではない。
 問題の第二は、府独自の施策で、本来、公営住宅法の適用対象ではない「特別賃貸住宅」にも改悪「公営住宅法」の入居基準と家賃決定方法を導入しようとしていることである。しかも、「収み基準超過者対策が講じられていない」として、「特別賃貸住宅」からの追いだしのための同様の措置を「検討すべき」としている。ここでも、国の「法」改悪以上の施策の実施を求めるものとなっている。
 問題の第三は、このように入居者や府民の願いには、極めて冷たい「答申素案」をつくりながら、「同和」住宅について、国と同様に、今後7年間または9年間の調整揩饐を認めた上、さらに府独自に利便性係数の中でも「特に配慮する」として二重に特別な扱いを行うとしていることである。これは、同和問題の解決を遅らせ、同和行政の終結に背を向けるものである。むしろ同和住宅については、空家となった住宅を積極的に一般開放するなどの施策こそが求められている。

一 いまひとつ重大な問題は、第一回審議会の場で、わが党の審議委員の「広く府民の意見をきくための公聴会を開催すべき」との提案に対し、審議会の会長も、小委員会座長も「公聴会の開催」を約束しておきながら、これを開催せずに「答申」を行なおうとしていることである。第二回の審議会でも、再度この点を指摘したにも関わらず、「第一回小委員会の際、公営住宅入居者代表委員に出席してもらって十分意見を聞く場を設けた」「府民全体に関わる問題ではない。利害がするどく対立するので開催は不適当」などと述べて、公聴会の問催を拒否した。
 府営住宅入居者をけじめ多くの府民の暮らしの土台にかかわる間題を、このように密室で審議をするやり方は許されるものではない。
 いま必要なことは、国の「公営住宅法」改悪に追随して「府営住宅条例」改定を急ぐことではなく、広く府民的論議を行い、府の住宅政策を抜本的に見直すことである。


一 わが議員団は府営住宅の大量建設や安心して住み続けられる府営住宅を求める、公営住宅入居者はじめ、広範な府民のみなさんの住宅要求実現のため、みなさんとともに全力で奮闘するものである。


以上