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1998年度京都府予算案について

1998/02/03 更新
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◎日本共産党京都府会議員団は、1998年度京都府予算案について、2月3日、以下のように、団長談話を発表しました。

1998年度京都府予算案について

1998年2月3日

日本共産党京都府会議員団
団長 西山 秀尚

 本日、98年度京都府当初予算案が発表された。知事選挙の年として「骨格的」予算案ではあるが、自民党府政20年の行き詰まりと破綻が浮き彫りになり、荒巻府政の国言いなり、大手ゼネコン奉仕の府民に冷たい姿勢がそのままあらわれた予算案となっている。
 この予算案をさらに精査し、2月10日から開催される府議会での本会議質問や予算委員会などにおいて詳細を明らかにするが、その基本的特徴と問題点などをここに指摘するものである。

1、財政運営にあらわれた府政の行き詰まり
 予算編成の基本的な考え方として表明せざるをえなかったとおり、「本府の財政状況は、かってない厳しい状況となっている。
 その原因は、①歳入において、国の財政構造改革などにより、国庫支出金61億円、地方交付税59億円とあわせて120億円もの減額となった。知事は、国の財政構造改革について「財政の健全性を回復」する「必要な措置」(97年9月本会議)と、国の政策を容認する態度をとってきた。しかし、こうした態度が、本府の財政をいっそう厳しくさせるだけのもので、地方自治体の責任者としてきわめて無責任なものであったことを浮き彫りにしている。
 ②今年度の府債は、前年炭より201億円余減額されたが、それでも786億円計上し、歳入の9.3%を借金に依存している。その結果、府債残高はとうとう一般会計予算規模(8417億円)を上廻る8645億円(府民工人あたり34万円)にものぼっている。しかも、今年度の起債措置の多くが、丹後リゾート関連288億円をはじめ、学研都市関連や京都市内高速道路建設、スタジアム公園建設などであり、「財政が厳しい」としながら、大型プロジェクトのためには、借金を増やしてでも推進するものとなっている。
 こうした従来の大型プロジェクト中心の財政運営が、借金返済のための公債費を44億6千万円も増やし、634億円(7・5%)となり、財政の硬直化を招く要因となっている。
 ③府税収入については、280億円、9.5%の増を見込んでいるが、この増額の要因は、地方消費税の平年度化によるものである。しかし、これは今日の深刻な不況のもとで、きわめて希望的な数字と言わざるをえない。「自治省財政課長内かん」(98・1・20付け)によっても「地方財政計画における地方税収入見込み額は、地方消費税の平年炭化による増収が反映されて、道府県税にあっては8・5%の増」であり、「地方消費税の税収額を控除した場合、都道府県税は4・6%の減となる」としているとおり、従来の法人事業税などの府税は、大幅に落ち込むことは明らかであり、本府の97年度の税収の落ち込みは、97年10月末現在でワースト5位となっている。
 こうした府税の大幅な落ち込みを招いたのは、消費税の増税をはじめとした9兆円もの国民負担増を押しつけた政府にあるが。これに追随してきた知事の責任も重大である。
 同時に、京都は昨年、戦後最悪の倒産件数を示しており、和装伝統産業や建設業など中小企業が深刻な不況に直面している。これも、90年代の不況のもとで「公共事業をやれば、景気は回復する」と京都経済の実情を無視し、国の政策そのままに公共事業費を大幅に増やして、伝統地場産業をけじめ中小企業対策をまったくお座成りにしてきた本府の経済政策の破綻を示すものである。

2、ことごとく府民の願いに背を向けた予算
①不況に苦しむ府民の営業と暮らしに何の対策もなし
 今年度予算の主な内容の第一として「中小企業不況対策」があげられているが。これはまったくの言葉だけのものである。和装伝統産業対策関連をみれば、地場産業振興対策費、伝統的工芸品産業振興対策費、伝統工芸晶産地活性化事業、創造的伝統産業ネットワーク推進費など軒並みに減額され、さらに、北部地域中小企業振興対策費も、丹後地域誘客推進事業費、北近畿観光立県推進事業費も減額されており、これでどうして「不況対策」と言えるのか。まさに知事が年頭の「不況はまだまだつづく。耐える努力を」と府民に冷たいあいさつをしたが、この姿勢がそのままあらわれた予算編成となっている。
 第二に、減反の拡大と米価の暴落で大幅な収入減を強いられている農家に対して、98年度予算案では、価格補填は融資でお茶を濁すやり方をつづけ、「稲作と農家をささえる緊急対策費」として、拡大した減反を農家に強要するための予算を計上している。まさに、京都の稲作経営を破綻させる予算といわなければならない。
 第三に、不況のなかで失業や就職難に多くの府民、青年が困っているときに、新規学卒者等就職促進対策費、再就職促進対策費、障害者・高齢者就職促進対策費を軒並み削減している。
②福祉充実の願いに応えられない予算
 「誰もが安心して暮らせる京都を」との願いはますます強まっているのかかわらず、「総合的な保健福祉対策」と名うちながら、多くの分野で後退させるものとなっている。
 第一には、2000年の介護保険制度スタートに向けて、施設整備の遅れの克服が求められているときに、老人福祉施設整備補助金(13億円余減・前年比63%)、特養痴呆性老人処遇環境整備費補助金(4千5百万円減・同31%)、特養くつろぎスペース整備費補助金(1284万円減・同71%)など、大幅な減額となっている。
 第二に、条例が制定され、その本格的な実施が求められている「福祉の街づくり」対策でも、3億7550万円減額され、前年比わずか30%となっている。
 第三に、国が今回、難病患者にも自己負担を導入した特定疾患治療研究費では、国に、追随し自己負担を導入しており、難病療養見舞金を年間6500円を1万円に引き上げることで、糊塗しようとしている。原因も治療法もわからず、苦悩している難病患者へのまったく冷たい対応となっている。
 また高齢者の自主的な活動を支援する予算でも高齢者総合相談センター運営費(前年比52%)、SKYセンター運営助成費(同85%)、高齢者いきいき創造事業費(同80 %)、SKYふれあいフェスティバル開催費(同90%)、高齢者スポーツ振興事業費(同87%)など軒並み削減されている。
 さらに、老人医療費給付事業費は、対象者数が増えるにかかわらず、昨年の制度改悪によって、高齢者に負担増を押しつけた結果、府の負担額が3億8千万円近く軽減されることとなっ七いる。本来ならば、こうした財源をも含め、お年寄りの薬剤費負担などの軽減措置にあてることこそが求められている。
③大型公共事業優先で、府民の住宅要求などは大幅削減
 公共事業費は、全体として昨年に比べ67億円(前年比92%)の減となっているが、その中でも、事業の「全面的な見直し・中止」が求められている京都市高速道路推進のための阪神高速道路公団出資金は前年比2・5倍の2億3150万円、スタジアム公園整備費4億円、丹後リゾート公園整備費3億1200万円など、大型公共事業は引き続き推進するものとなっている。
 また、本府の財政が厳しい中、福祉や医療など暮らしにかかわる予算は大幅に削減しながら、京都縦貫自動車道建設には、88億3000万円計上するなど従来型の公共事業優先の予算編成になっている。
 ところが、府民の強い要求である住宅対策費は前年比70%と大幅に落ち込ませ、53億4351万円も減額している。なかでも府営住宅建設費は、前年比31%とされ、建設戸数も今年度267戸であったのが、96戸と3分の1近くに減らされている。
④安全対策も、環境対策もあとまわし
 「安全・安心」をキャッチフレーズにする荒巻知事のもとで、防災対策費は、前年比54%へと半減させられた。
 老朽化した与謝の海や向日が丘養護学校の改築が急がれているときに、府立学校校舎等整備費も、前年比73%と低く押さえられ、13億8600万円も削減されている。
障害をもった児童が、雨漏りのする校舎でケガをするような状況をいつまでも放置することは許されない。
 また、養護学校のスクールバス購入費も、昨年より810万円減額され、昨年比66%となっている。往復3時間も「大型バス」で通学を余儀なくされている障害児に対し、「快適なバス」といってはばからない答弁をした教育長の姿勢がそのままあらわれている。
 環境対策でも、昨年の「地球温暖化防止京都会議」で不十分ながらも「議定書」が締結され、その実現に向けたとりくみが求められているにかかわらず、キャンペーンやイベントの予算は計上しているものの、ソーラーシステムの導入補助などはまったく具体化されていない。
⑤差別を固定化、同和事業は継続
 同和対策事業費は、今年度も42億円(昨年費86 %)あまり計上している。これに同和加配教員の人件費を加えると70億円近いものとなる。地対財特法が昨年3月で期限切れとなったにもかかわらず、差別の固定化につながる同和事業を継続するものであり、全国の流れと府民世論に背を向けるものである。

3、府政の転換で、税金の使い方の根本的転換を
 以上のとおり、98年度予算案は、国いいなり・大手ゼネコン奉仕の府政が、府民にはまったく冷たいものであることを改めて示しており、しかも、そうした府政が20年も続いたことにより、本府の財政構造がまったく行き詰まってきていることを示している。
 わが党議員団は。こうした府政の根本的な転換をばかり、府民の願いが生かされる府政を実現するため、近づいている知事選挙での森川明氏の勝利のため全力を尽くすものである。


以上