「京都府新しい行政推進大綱」(第2次)ついて
1999.1.12 談話
1、府民の意見をきかず作成された「第2次行革大綱」
京都府は、1月5日、「地方自治・新時代を拓く行政システムの確立をめざして」と銘打った「京都府新しい行政推進大綱」(第2次)(1999年度から2003年度までの5ヵ年計画)を発表した。
「第1次大綱」は、形のうえでは「新しい行政推進懇話会」の2次にわたる「提言」を受けて作成したが、今回は「懇話会」も2回、数時間おこなわれただけであり、庁内関係部局での議論もまともにおこなわず、自治省の「指針」が求めた「住民の意見を反映すること」もおこなわれずに行政主導で作成されたものである。
今回の「大綱」作成の経過が示しているのは、自治省が地方自治の原則をふみにじって地方自治体にいっそうのリストラを求めた1997年9月の「地方自治・新時代に対応した地方公共団体の行政改革推進のための指針」をうけ、98年末までに「行政改革大綱の見直し」をするよう求めたことにこたえたものであり、府の財政状況が「極めて憂慮しなければならない事態に陥っている」ことから、「抜本的な行財政改革を進め、財政収支の均衡を確保していくことが急務」となっていることを理由にして作成されたものである。
2、「財政困難」を招いた原因の大型開発・大型公共事業は温存したままの筋違いの「大綱」
これまで、府議会において与党会派は、そろって「荒巻知事の卓越した行財政手腕で、健全な財政運営」と礼賛し財政当局も「有利な起債の活用」で「適正な財政運営を行なっている」と強調してきたが、今回の「大綱」では「府財政が極めて憂慮しなければならない事態に陥っている」と財政の厳しさを強調し、府債残高が一般会計予算に匹敵する9297億円にものぼり、「府民1人あたり36万円もの額にいたっている」としている。
そして、その原因は「予想をこえる税収の落ち込みの下、国に呼応した経済対策を実施してきたが、その財源の多くを府債の増発や各種基金の取り崩しに頼ってきた結果」としている。
これは、わが党議員団がくりかえし指摘してきたとおり、「大型公共事業中心の経済対策では、京都の経済は立て直せない。借金だけがふえ、府民に負担を押しつけることになる」「福祉や教育を削ってためこんだ基金は、大型開発事業に注ぎ込もうとするもの」との批判がそのとおりであったことを認めたものである。
わが党議員団が、その財政運営の転換を求めていたにかかわらず、これに背を向けて、こうした事態を招いた知事と与党会派の貴任は重大である。
いま、府当局に求められていることは、こうした行財政運営を府民本位に根本的に転換することである。
ところが「大綱」は、「財政困難」を招いた国いいなりの大型公共事業中心の経済対策からの転換をはかろうとはしていない。それどころか、今年度だけでも国の公共事業中心の経済対策にそのまま迎合し1300億円を超える府債を発行し、しかも知事は年頭のあいさつで「昨年は過去に経験したことのない大型の補正予算」で「公共事業の増額・スピードアップ」をはかってきたと自慢しさらに「ハード中心」と批判されている「4府総」を「全力をあげてこの計画の達成に向けて努力したいと燃えている」と決意を表明しているのである。
まさに今回の「大綱」は、府民向けには「財政の深刻さ」を強調し、「行財政改革」の必要性を訴えているが、知事を先頭に、今日の「財政困難」を招いたことについてはまったく反省するどころか、日来型の大型公共事業中心の府政運営は続けるという中身になっている。
現にこの「大綱」のどこをみても、財政困難なもとで数百億円も注ぎ込む「巨大スタジアム建設計画」や「和田埠頭建設計画」などの見直しはでてこないし、府税収入の「予想以上の減収」の原因である京都の中小零細企業の落ち込みの打開の方向には、まったく目も向けられていないのである。
3、府民には、犠牲の押じつけとサービスの切りすてを強要する「第2次大綱」
「第2次大綱」で「行財政改革の基本方向」「行財政改革の方策」として打ち出していることは、府民への犠牲の押しつけとサービスの切り捨て、地方自治体としての役割放棄にほかならない。
①「施策・事業の選択・斑点化」をはかるとしているが、これは、「第1次大綱」でも強調され、毎年度の予算編成方針でもうたわれてきたことである。しかしこのもとですすめられたことは、和装産業をけじめ伝統地場産業・中小企業振興予算の削減であり、障害者団体や商工団体への補助金の一律カットなど、府民の暮らしや命を守る仕事の切りすてであった。そして「4府総の総仕上げ」のかけ声のもと、「重点化」としてすすめられてきたのが大型開発・大型公共事業の推進であった。
今回の「大綱」も、これをいっそう強力にすすめようとするもので、現に林業労働者の白蝋病検診予算が98年度15%カットされたのにつづき、来年度も1O%カットがいわれるなど、福祉や医療予算の削減である。
②「適正な受益者負担の確保」「受益者の応分の負担」が強調され、「府民の理解をえながら使用料・手数料の見直しを行なう」としている。これは、長引く不況のもとで、「授業料すら払えない」とする家庭が増えているもとで、さらに高校授梟料をけじめ公共料金の値上げなど、不況に苦しむ府民に追い打ちをかけようとするものである。
③ さらに今回、「府立病院と府立医科大学付属病院の経営改善の推進」が強調され、その中では、一般会計から病院会計への繰り入れ額を「縮減する」としている。すでに府立医大付属病院では年間70数億円の繰り入れを50億円に削減する方向で「経営改善計画」が策定されようとしている。
洛東病院も、今回あらたに「いっそうの簡素・効率化の推進」対象機関に入れられ、縮小の方向で「病院機能のおり方を検討」されようとしている。
住民が安心して暮らせるよ引こするうえで、医療体制の整備は欠かすことができない府政の課題である。ましてや、国が医療制度をつぎつぎに改悪するもとで、府民が安心して医療を受けられるよう、府立4病院の体制を強化することが求められているときにこれに逆行ずる方向をすすめようとするものである。
④ 「簡素・効率的な執行体制の確立」として、府職員や学校の教職員を1300人も削減しようとしでいる。
今日、不登校やいじめ、学級崩壊などこどもたちをめぐる事態が深刻になっているもとで、30人学級の実現をはじめ、少人数学級編成が父母と社会の強い要請になっているときに教職員を大幅に削減し府民の願いに背を向けるものである。しかも、京都は国の定数配置基準を下まわる配置で、専科教員・フリー教員がいない状況にあるだけに、これを放置しての教職員削減計画は許され、ない。いま、生徒数が減少するもとで、現状の教職員数を維持するなら、少なくとも35人学級実現は十分可能であり、同和加配教員の見直しだけでも、小学校6学級学校の先生の数を8人から国基準の9人に改善することもできる。こうした教育条件の改善こそがいま求められているのである。
また、府職員の削減についても「事務事業を徹底して見直し、定数削減をはかる」としているが、「第1次大綱」でおこなわれたことは、福祉部門や病院をはじめ大幅な人員削減であり、まさに住民サービスの分野を徹底して切りすてるというものであった。府庁が「不夜城」といわれるような府職員に異常な長時間労働が押しつけられているもとで、なんら具体的検討もなしに「先に人員削減ありき」ではなく、「効率的な機構づくり」へ職員の総意を集め、職場の実態にそった職員配置の慎重な検討が必要である。
⑤「組織機構の見直し」では、新しく振興局と土木事務所、保健所を一体にした総合振興局化の構想がうちだされているが、そのなかで保健所について。「第1次大綱」にあった「エリアの検討」が当面はずされた。これは、住民や市町村の声におされ、保健所の廃止・統合は、当面見送りながらも「検査機能の集約化」により、検査部門を縮小し、さらに「市町村との役割分担」により、実質的に保健所機能の縮小・廃止をはかろうとする危険をもつものである。
また、農業が深刻な事態に陥っでいるもとで、農家や畜産農家戸数の減少を口実に、蚕業センターの廃止、農業改良普及センター・家畜保健衛生所の廃止・統合をすすめることとしているが、これは、京都農業の衰退にいっそう拍車をかけるものである。
4、民営化と市町村への仕事の押しつけで、府の役割を放棄する危険な道
今回の「大綱」で、新たに強調されているもうひとつの特徴は、「行政・民間、府・市町村の役割分担の見直し」である。ここでは、「民間でできるものは民間に委ねるという考え方を基本に民営化や民間委託等をいっそう推進していく必要がある」とし、「外部委託の推進」、さらに「新しい社会資本整備手法の導入検討」として公共施設も民間の資本やノウハウを活用する方向を打ち出している。これは、地方自治体のあらゆる分野を民間資本に委ねようとするものである。民間資本はもうけのあるところに進出しもうけをあげるためには利用者への負担を求めることは当然であり、これにすべてを委ねることは、住民の暮らしを守る地方自治体の役割を放棄することになる。
また今回、「府と市町村との協働関係の確立」が強調されているが、「第1次大綱」では「地方分権を推進するうえで、基礎的自治体としての市町村の機能充実は不可欠であり、市町村のより自主的で積極的な取り組みが活発に展開されるよう支援する」「京都府は地方自治の総合保障機関」としていたが、この京都府の「市町村自治の確立を支援する」役割がなくなり、「市町村への権限委譲」のみが強調されている。さらに、「京都府の機能純化を図る」としており、これは結局、「権限委譲」の名のもとに仕事を市町村に押しつけながら、現在おこなっている市町村行政を支援する財政的支援などを縮小する方向を打ち出し京都府の仕事を広域自治体としての広域開発など、財界が要求する仕事に「純化」していこうとするものにほかならない。
5、府民との共同を広げ、真の地方自治確立、行財政改革に全力
わが党は、従来から地方自治体の人件費や行政機構のおり方について「住民本位の行政を効率的な機構で」と主張してきた。地方目治体の機構は、地方自治の保障を主眼として組織され運営されること、人件費を含む自治体の行政費用は住民負担の点からいってもなるべく少ないのがよいのが当然である。しかし、福祉や医療、教育など自治体行政の主要な部門がマンパワーによることも当然であり、これらの住民サービス部門の切りすてでなく、今日、府民の批判が強いムダな大型公共事業や部落解放同盟いいなりの同和行政「官官接待」などの浪費に徹底七てメスを入れることが必要である。
今回の「大綱」は、こうした本来の「住民本位の行財政改革」ではなく、「大型公共事業優先で京都経済の活性化を」としてきた京都府の行財政運営の破綻を府民・市町村、職員の犠牲で乗りきろうとするものである、
いま問われているのは、大型公共事業は温存し、住民と市町村、そして府職員や教職員には犠牲を押しつけ、地方自治体の本来の役割を投けすてる道を進むのか、それとも「財政困難」をもたらした原因である大型公共事業のムダと浪費にメスを入れ、破綻した大型公共事業優先の府政から、和装産業をはじめ京都の地場産業・中小企業の振興で京都経済の立て直しへの転換をはかり、福祉や医療・教育の充実で府民の暮らしを安定させるという地方自治本来の姿をとりもどすのかが、鋭く問われているのである。
わが党議員団は、今後とも、この「第2次大綱」をもとにすすめられる住民サービスの切りすて、住民負担増の押しつけを許さないため、一つ一つについて広範な府民のみなさんと一緒に検討し、共同して奮闘するとともに住民本位の行財政の確立のため全力をあ
けるものである。
府民の暮らしをきりすてる府「行革大綱」を見直せ
1997,12.9 代表質問
政府は、地方自治体の「行革大綱」、いわゆる「自治体リストラ」計画について、各年度ごとの定員や補助金の具体的な削減目標、行政機構のスクラップ・アンド・ビルドを明記し、福祉、医療、教育をより徹底して削減することなどを求める指示を各都道府県に出しました。こんな国の方針どおりに「自治体リストラ」をすすめることは、住民のくらしや福祉を守ることを第一の仕事とすべき自治体にとって、まさに"自殺行為"だといわなければなりません。ところが本府は国のいいなりになって、「新しい行政推進大綱」という名ですでに行革リストラをすすめてきました、
その内容は、まず第1に、府老人クラブ連合会や商工会、障害者・難病団体にも補助金1割カットを押しつけたことです。ある老人クラブの会長さんは、「少ないお金でやりくりしているのに、少ない補助金が減額されるのはつらい。何十億円、何百億円という開発事業の浪費にメスを入れずに、弱い者いじめばかりではないか」とおっしゃっておられました。また、先の決算審査で与党の議員のなかからでさえ「商工会の会費がいっせいに値上がりし 2倍になっているところもあるが、京都府が指導したのか」と商工会への府補助金のカットによる影響を追及したりする場面もあったほどです。
第2は、事務事業の見直しの名で、ここ数年、たとえば産地崩壊の瀬戸際に立だされて日本共産党京都府会議員団は、2月京都府議会に提案された1999年度京都府予算案について、団長談話を発表しました。