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政策と見解

深刻な林業不況を打開し、京都の林業と森林を守り発展させるために

1999/02/01 更新
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 いま、林業経営は大変な状況にあります。「このままでは林業は続けられない」「山は荒れるままになる」など、多くのみなさんが不安の声をあげておられます。

 京都府の森林面積は、75%を占め、木材の供給とともに、歴史的景観と国土保全や水資源の確保などに重要な役割をになっています。この森林は、林家や林業労働者など多くの林業関係者の努力によって守られ、その暮らしと経営の基盤となっています。

 しかし、今日、この林業関係者の経営と暮らしがなりたたなくなり、林業労働者の減少・高齢化、後継者難などがすすみ、生産活動は大きく衰退し、間伐の手遅れ、伐採跡地の放置など森林の荒廃が進んでいます。

 また、過疎の山間地域をねらった産業廃棄物の投棄やバブル期に買収されたゴルフ場用地の放置など、新たな形での森林の破壊も進行しています。

 このように林業経営を危機に追い込み、森林の荒廃を深刻な事態にしたのは、長年にわたり自民党政府が、大商社とアメリカの巨大木材企業の儲けに奉仕する過度な外材依存の政策で、木材・木製品の自由化と関税の引下げをすすめてきたことです。その結果、木材の自給率は、20数%へと落ち込み、林野庁の見通しでも、今後とも毎年1%の定価が見込まれ、このような政策が続けられるなら20数年後には木材自給率がゼロになりかねません。

 京都府もこうした国の政策に呼応して、アメリカ巨大木材企業が要求するプレハブ住宅用の構造用パネルなどの保管倉庫を舞鶴のFAZにつくるなど、木材の輸入促進政策をとっているのです。そして、「過度な外材輸入の規制を国に求めるべきだ」と日本共産党府議団が知事に指摘しても、国にはまったくものが言えない状況にあります。

 さらに、政府は「効率」を口実に、中小林家や山村の雇用の場である規模の小さい素材生産業者を、「非能率」とし、国産材生産の基盤整備をないがしろにしてきました。

 そのうえに、消費税の増税などで住宅建設戸数が大幅に落ち込む事態をつくりだしているのです。

 このままでは、林業関係者の暮らしと経営が大変なだけでなく、京都の森林が荒廃し、景観や環境そのものが重大な事態になります。

 日本共産党は、林業と森林を守り発展させるための「提言」をおこなうとともに、林業関係者、府民のみなさんと力をあわせて、全力をつくすものです。

林業不況を打開する緊急対策/府内産材の需要拡大と間伐材の価格対策等を緊急にすすめます

 戦後、営々として育てあげたスギやヒノキの林が伐採時期にさしかかり、大きな木材の供給力をもってきているにもかかわらず、木材価格の低迷がつづいているうえに、不況による住宅建築の落ち込みなど、需要の減退によって木材生産活動が後退し、それが、新規植林の大幅な滅少など林業生産活動全体の危機的な状況にまでたちいたっているところにあります。

 林業生産活動は、長期間を要するだけに、持続的、安定的な生産活動が保障されなければ、将来にわたる木材の供給や環境保全に重大な影響をもたらします。

 いまこそ、府内産材需要の拡大と間伐材の価格対策をおもいきってすすめ、そのことによって、新規の植林や手入れなど林業生産活動全体を活発化させることが必要です。

 1、現在の府内産木材使用住宅建設資金の融資制度を大幅に改善し、利用者の大幅な増加をはかり、府内産材使用の住宅需要を拡大する。

 ○利用が平成9年度1件だけとなっているように、現在の制度は事実上、府内産材使用住宅の拡大にはつながっていません。貸付金額を増額するとともに、公庫融資の上乗せでだけなく単独融資や住宅改良融資にも適用を拡大します。また、融資の利用のための宣伝・啓発をつよめます。

 ○施主の府内産材利用に影響力をもつ建築業者に対して、府内産材を使用した住宅建設を行った場合の資金融資など奨励制度を設けます。

 2、府の発注する建築・土木事業等において府内産材使用を義務づけるとともに、府内産材の生産実態にあわせた発注制度を設定する。また、加工、供給システムの整備をはかる。

 ○府の発注する土木事業等について、木材利用部分は、全面的に府内産材使用を義務づけます。その他についても、設計時点で、木製ガードレールなど可能な部分の府内産材利用材料への代替と使用拡大の検討を義務づけます。

 ○府内産材使用による経費増については、補助金の上乗せ制度をつくります。また、国庫事業については、国産材需要拡大のために補助の上乗せを国に求めます。

 ○府内産材の大量調達をする工事等について、府内産材の発注については第1年度に行い、実際の工事等実施は第2年度に行う「二段階発注」を制度化し、小規模な府内産材の生産加工実態に対応させます。

 国に対しても、「二段階発注」の制度化を認めるよう働きかけます。

 ○府内の製材工場や森林組合等と協同して、府内産材の供給、加工体制を整備するとともに、府内産材を使用した土木事業等用の製品開発の研究体制を強化します。

 ○府内産材の量的供給を安定的に担保するため、公社造林等の組織的造林を進めるなど、資源の整備をはかります。

 3、小・中学校の校舎等の新築及び改築での木造化の推進と、府内産材使用による改良を積極的に進める。

 ○文部省は、すでに1985年(昭和60年)に「木材需要の拡大」のため、「暖かみと潤いのある教育環境づくりが期待できる」として「学校施設における木材使用の促進について」の通知をだしています。

  京都府教育委員会および市町村教委として、校舎の内装の木質化による情緒、健康対策の効果を実証するため、非木造校舎の内装を府内産材を利用して改良したモデル校を設定し、促進します。

 ○校舎の新築及び改築にあたっては、補助の上積みなどによって、府内産材使用による木造化を積極的に指導、推進します。

 4、間伐対策を森林組合系統利用以外の自家伐採及び木材業者等による間伐、府内の原木市場出荷等にも適用を拡大するとともに、価格保障を上乗せするなど「間伐が金になる」対策を強化する。

 ○間伐材の搬出利用対策等については、森林組合系統以外の自家伐採、府内の原木市場出荷などにも適用を拡大します。

 ○林家の自家伐採による出荷もふくめ、持ち出せば1本から収入になるよう、市町村とも協力して、間伐材の買い取り価格の保障支援制度を創設します。

 ○間伐促進のため及び雇用対策もかねて、府単費の簡易作業道、森林施業路の開設を大幅に拡大します。また、昨年の台風による作業道の災害についても、府単費で直ちに復旧を行います。

 5、林業労働者に対する就労条件の改善と新規参入者定着対策として、ボーナス支給に対応した給付を制度化する。

 ○「緑の担い手育成事業」による社会保険料掛け金助成制度の適用年令(現行59歳)の引き上げ、適用就労日数(現行200日)の引下げ、適用事業所を素材生産業者まで拡大するなど、改善をはかります。

 ○「林業労働者新共済事業」の大幅な引き上げ、「新規就労者育成のための就業保障」制度の助成額の引き上げと適用事業所の拡大をはかります。

 ○現行長期就労奨励金給付事業に短期給付事業を追加し、ボーナス支給に対応したものとして制度化します。

 6、日吉町の「府民の森」については、府民の森林に親しむ拠点施設として、整備、充実をはかる。

 ○整備計画の策定にあたっては、船井・北桑田郡内の各町、住民及び広く府民の参加をもとめ、地域振興と府民の森林に親しむ拠点施設としての充実、強化をはかります。施設については府内産材による建設をすすめます。

京都の林業と森林を守り発展させるために(基本政策)/林業経営で暮らしが成り立ち、山村で住みつづけられるように

 1、政府に対し、外材の輸入規制を政府に強力に働きかけます。

 ○国内林業の振興のためにも、日本が地球温暖化防止に真献するためにも、無秩序な外材輸入に規制をかけることを政府に強力に働きかけます。

 2、山元から消費者までの協力で、府内産材の需要拡大を強力にすすめます。

 ○府内産材を利用した地震に強い安全で安心な低価格の住宅は、山元、木材・建築関係者、消費者の共通した願いです。

 ・京都の歴史と文化を活かした府内産材利用の「モデル住宅」を関係者の共同で早急に研究開発し、ブランド化によって府内産材利用住宅の普及拡大をはかります。

 ・山元、製材工場、建築業者、府民の協力を得て「府内産材で住宅を建てる会」などの組織化を支援し、産直住宅の建設を推進します。

 ○府の発注する建築・土木事業等において、府内産材使用を義務づけるとともに、府内産材の生産実態にあわせた発注制度の設定、加工、供給システムの整備をはかります。

 ・国に対して、国産材利用のための大幅な建設費の上積み、その他、使用のための条件整備を強く要求します。

 ・府内産材需要拡大、販路確保について検討し、実施する活動を推進するための組織を設置、組織的な府内産材供給活動、府内産材需要拡大のための普及啓蒙活動、ネットワーク活動、試験研究の助成、などができるようにします。

 3、林業経営が成り立つことが実感できるように林家、森林組合の経営を激励、支援します。

 ○間伐対策を森林組合系統利用以外の自家伐採及び木材業者等による間伐、府内の原木市場出荷にも適用を拡大するとともに、価格保障を上乗せするなど「間伐が金になる」よう対策を強化する。

 ・集成材など間伐材の高度加工と林道・治山などの公共土木事業等への利用を結びつけるなど、加工流通施設の新設と施設の整備拡充をはかります。

 ・個人による低規格で簡易な作業道開設の助成も含め、作業道の開設を大幅に増やすための対策を強化します。

 ○材価の低迷で森林組合、素材生産業者など事業体の経営も困難に直面しています。また、林道など林業生産基盤の整備もいっそう求められています。

 ・小規模な素材生産業者も対象とした低利で利用しやすい事業資金貸付制度の新設、各種林業機械、車両等の購入、更新に対する助成を充実拡大します。

 ・林道の整備については大型広域林道重点ではなく地元に必要な一般林道の開設、延長を大幅にのばすとともに、環境にやさしい工法の導入につとめます。

 4、林業労働力の確保と林業労働者の就労条件の改善に対する支援を強化します。

 ○減少と高齢化がつづくなかで、林業労働力の確保は緊急の課題となっています。とくに若い新規参入労働者の確保が求められています。

 ・新規参入労働者に対して支度金の支給と林業労働に習熟するまでの期間の「所得保障」を制度化し、事業体の負担を軽減します。

 ・新規参入労働者が林業労働者としての基礎的な技能を身につけるため、期間が短く定員も少ない現行制度をみなおし、集中的な養成訓練を制度化します。

 ・市町村と連携し、農地と林地の貸付など定着化のための対策をすすめます。

 ○林業労働力の確保のための対策として、現役の林業労働者ができるだけ長く働き続けられる条件の整備も課題です。

 ・現役の林業労働者ができるだけ長く働き続けるように、林業労働の実態にふさわしくない一律的な「定年制」の廃止を指導します。

 ・高齢化した現役労働者の就労意欲を引き出し、若年労働者の定着を支援するための支援対策を充実させます。

 ・出来高賃金制については、最低保障制度の設定、雇用関係の明確化、社会保険の完全適用によって制度的に整備するなど賃金体系を整備します。

 5、山村と都市の共同を支援し、相互理解と協力をすすめ、森林環境をまもり、林業を活性化します。

 ○山村住民と都市住民の交流で、森林と林業を守るための協力と共同をすすめることは、地球温暖化防止という今日的課題にとっても重要です。

 ・都市住民と山村住民による自主的な相互協力・交流のネットワークづくりを積極的に支援するとともに、森林、林業に対する啓蒙宣伝を強めます。

 ・都市と山村の交流拠点として、森林総合利用施設などの整備充実をはかり、森林ボランティア、分収育林など都市住民の森林管理と経営への参加を制度的にも支援し、促進をはかります。

 ・林家の協力のもとに、里山などを活用して都市部小中学校の学校林の設定など、自然・環境、森林・林業教育の場を広げます。

 ○自然環境、森林の保護について府民の協力を求めるとともに、行政権限による規制を強化します。

 ・保安林解除や林地開発に関する許認可などの知事権限を最大限活用し、森林の乱開発を厳しく規制します。

 ・自然環境保護、森林の公益性などに対する府民の自主的な運動に対して、積極的に支援して行きます。

 ・丹波広域林道については、自然保護団体など住民運動の成果を生かし、地元住民をはじめ、府民参加のもとに、林道周辺部をふくむ自然と景観の保全管理とともに、地域振興に役立ち、府民が森林に親しみむための計画作りを行います。

 6、山を守って暮らす人々への「所得保障」制度の実現、過疎地での医療や福祉の体制整備など、中山間地での暮らしの条件の整備をすすめ、森林面積が大きな比重を占める市町村への「森林交付税」など財政支援を強めることを国に求めます。