99年度京都府予算案について(談話)
1999年2月12日
日本共産党京都府会議員団
団長 西山 秀尚
1、2月定例府議会が開会された。今定例会は、深刻な不況のもとにある府民の暮らしと営業を守り、府債残高が一般会計を上回る事態となった京都府財政の「立て直し」をはかる予算を決める重要な定例会である。
先に発表された今回の予算案について、知事は「府税収入について過去経験したことのない大幅な減収」を理由にあげ、「財政状況は、まさに非常事態ともいうべき状況」にあるとして、「260人の人員削減」「事業の廃止・休止70件、事業の統合20件、事業の削減380件」など「人員の削減や財政のリストラを強力にすすめた」としている。
マスコミもいっせいに「『赤信号』の瀬戸際」(京都)、「税収激減、『超緊縮型』(朝日)、「府財政最大の危機」(読売)などと報道した。
今回の予算案の最大の特徴は、「財政危機」を理由に、府民に大きな犠牲と負担を押しつけようというものである。しかし、他方では、「財政危機」の原因である大型開発事業、大型公共事業は温存、継続するもので、住民の暮らしを守る地方自治体としては「逆立ち」したやり方であり、府財政の立て直しにも逆行する道を進もうとするものである。
2、先の「第2次行政改革大絹」でも、財政悪化の原因は、「府債の増発や各種基金の取り崩し」によって「国に呼応した経済対策を実施してきた結果である」と認めておきながら、今回の予算案では、相変わらず大型開発事業や大型公共事業は、拡大、温存している。
たとえば、京都破壊と環境悪化を招くとひぎしい批判の声があげられている京都市内高速道路のための予算は、昨年比2.7倍に膨れあがらせている。しかも、府の負担は、かつては総事業費の1.225%であったのが、建設省いいなりで、新年度からは、6.25%へと負担割合が5倍にもなっているのである。これでは、総事業費が8000億円となれば、府の負担は500億円にものぼるものである。
さらに、巨大スタジアム建設予算も昨年より1億5000万円増額されている。これも、府当局は総事業費はいくらかかるか何ら明らかにしていないが、用地費で100億円、スタジアム本体で140億円、このほかサブグランドや調整池、駐車場整備、アクセス道路整備などを考えれば4~500億円かかることは明らかである。
舞鶴の和田埠頭も、今回8億円あまりの予算が計上されているが、総事業費は約600億円は必要とされており、府の負担は180億円にものぼるものである。金国で「釣り堀」になっている埠頭が増え、「長期計画をもとにした公共事業は見直すべき」(経済同友会)との声が広がっているときに、何ら見直しもせず、過大な港湾能力をもとにした事業を推進しようというのである。
このほかにも、破綻が明白な「丹後リゾート公園」整備予算2億2000万円、見直しが求められている学研都市建設推進費約3億円、京都迎賓館建設推進費などはひきつづき温存されている。
しかも、これらの多くが借金(府債)に頼っているもので、予算額のうち、市内高速道路は99.5%、スタジアム建設は60%、和田埠頭は98%、丹後リゾートは59%、学研都市は62%を占めており、ますます府債残高を膨らませようというのである。
「財政が非常事態だ」というのなら、これらの事業はいったん凍結し、青報の公開、府民的な議論で、今後の方向を決めるのが当然である。こうした事業について「なぜ、見直しをしないのか」一一このことが、いま多くの府民から問われている。結局、総額がいくらかかるかわからない事業も、将来の活用の見通しがない事業も、いったんはじめればやめられないというのが、いまの府政である。こうしたやり方を改めないかぎり、府財政はますます深刻な事態に陥ることは明らかである。
あわせて、公共事業全体についても、今回単独事業は20%削減したとしているが、これは、これまで「有利な起債の活用」と国いいなりで借金を増やし、単独事業を拡大してきたごとの破綻を示すものである。
同時に、土木、農林関係の補助事業についても、その府民的必要性、緊急性の検討をおこない、全面的な見直しをすることが求められている。
3、さらに、同和対策事業関係費が、相変わらず約37億4000万円計上されているが、同和加配教職員分を含めれば約60億円にものぼるものである。また、「世界人権センター」への出えん金も8000万円増資し、運営費助成を含めると1億円をこえるものとなっている。今日、同和対策「特別法」がなくなったもとで、これらについてはただちに廃止すべきである。
4、「府税収入の過去経験したことのない大幅な減収が、財政状況を厳しくしている」としている。そうであるなら、落ち込みの最大の原因である中小零細企業、伝統地場産業振興策を強めることが、税収を回復するうえで求められているのである。
ところが、今回の予算案では、この中小企業振興対策もリストラの対象とされている。たとえば、商店街振興予算は総額で1億1000万円余り、北部地域中小企業振興対策費は約10%、1348万円の削陂北部中小企業緊急不況対策・活性化促進事業は、昨年6月補正後と比べれば半減以下で450万円減額、財団法人・丹後地域産業振興基金協会への貸付金は2億円の減額、伝統的工芸品産地活性化事業費10%など、軒並み削減されている。
これら中小企業や伝統・地場産業振興予算を削減したのでは、不況対策上も問題であるばかりか、落ち込んだ税収を回復させることにもならない。
また、府民の暮らしをささえ、自然環境を守るうえで重要な役割をになう農林漁業関係予算も、中山間地域おこし広域活動支援事業費、農産漁村ふるさと活性化支援事業費、がんばるふるさとづくり事業費、森林組合作業班育成強化促進事業費、京都産米の学校給食助成事業費などの軒並み10%削減など、リストラの対象にしている。その一方で、農家に減反を押しつける予算である「稲作と農家をささえる緊急対策費」は、1.5倍にも増額している。これでは、稲作農家の経営をいっそう深刻にするものである。
5、今回260人の人員削減を行なうとしているが、その大半は教職員である。これは、「30人学級の実現」をはじめ、他府県なみに専科教員の配置や小規模校(小学校6学級)での定数配置(現行8人)を、国基準(9人)にしてほしいなどの府民の願いに背を向けるものである。
そのうえ「雨漏りがする」「ドアが壊れている」など、老朽校舎の改修を求める声が、あちこちからあかっているにもかかわらず、校舎等小規模改修予算は約4000万円減額され、97年度と比べると2億3200万円もの減額となっている。
また、父母の教育費負担を増やす高校授業料、府立大学授業料の値上げが予算化されている。まさに、府民の暮らしに追い打ちをかけるものである。
私学助成でも、授業料減免制度を1/2から2/3補助へと改善したことが大きく報道されているが、減免対象生徒数は、実績からみれば55人から66人程度へと、わずか11人ほど増やされるだけである。しかも他方で、学費軽減補助に所得制限を導入し、2億4100万円も減額している。
福祉の分野でも、今年は「国際高齢者年」であるにかかわらず、高齢化総合対策総合推進費が3年前に比べ1/4も減らされ、1億円以上の減額となっている。さらに、生活保護費の6700万円減額、社会福祉協議会の活動を支援する予算(ふれあいの地域福祉推進事業・住民参加の地域福祉推進事業)も総額で2000万円削減されている。
医療の分野では、府立医科大学付属病院への一般会計からの繰り入れを10億円余も減額し、「効率化」によって使用料・手数料を8億2000万円余も増やすことを求めている。洛東病院などの病院会計への繰り入れも4000万円余の減額、老人保健対策費、母子保健対策費も減額している。
また、過疎地域住民の暮らしに欠かせず、その維持のため市町村がたいへんな苦労をしている過疎地域のバス路線維持のための予算も2370万円削減、地域の安全と府民の財産を守るため苦労している消防団員への激励金も削減されている。
6,今回の予算編成で、「厳しい財政犬況のもとで、不況・雇用対策、保健福祉対策などに重点的に取り組んだ」とされているが、不況・雇用対策はほとんどが今年度補正で手直しした対策の継続であり、知事が「金庁あげて雇用対策を行なう」と掛け声をかけたが、雇用創出対策では、何ら前進がなかった。
保健福祉対策の中心は、介護保険スタートを目前に、特別養護老人ホームやデイサービスセンター建設予算などが増額されている。これは「高齢者保健福祉計画」を達成しようとするものであり、当然である。知事も「計画を達成しても安心できるとはいっていない」といっているだけに、いっそうの対策の強化が求められている。
7、わが党議員団は、このような「大型開発、大型公共事業は温存、府民には負担増と犠牲の押しつけ」となっている予算案について、今後の本会議討論と予算委員会などで、その見直しを求め全力をつくすものである。
同時に、地方自治体の本来の役割である住民の暮らし守る府政実現、府民の立場からの府財政の立て直しのため、広範な府民との対話と共同を広げ奮闘する決意である。