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安心して暮らせる公的介護保障体制を確立するために介護保険スタートまでに、改善すべき五つの緊急提言

1999/02/22 更新
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● 日本共産党京都府会議員団は、2月22日に「介護保険スタートまでに、改善すべき五つの緊急提言」を、発表しました。その全文をご紹介します。

安心して暮らせる公的介護保障体制を確立するために介護保険スタートまでに、改善すべき五つの緊急提言

1999年2月22日
日本共産党京都府会議員団


 2000年4月、介護保険制度のスタートが目前に迫りました。制度の内容があきらかになるにつれ、「保険あって介護なし」の危惧と不安が、府民の中にいっそう強まっています。市長会や町村会からも、市町村議会からも、制度改善の多くの要望が出され、安心できる介護保障制度の確立をもとめる住民の運動が、各地で大きな広がりとなっています。
 日本共産党は、すでに、介護保険実施に向けた「緊急要求」(①介護保険料の減免措置、②介護サービスの整備目標の引き上げ、③現行の福祉水準を後退させない措置、④高齢者の生活実態を反映した認定基準)を提案し、国会や地方議会内外で制度改善の取組みに全力をあげています。
 日本共産党の追求で、国会では、『経済的事情が保険料の減免理由になる』と政府がはじめて回答しました。京都府でも、住民や市町の要求に応え、特別養護老人ホームの「前倒し」整備を実現しています。
 日本共産党府会議員団は、府民のみなさんと力をあわせ、介護保険制度の抜本的改善を国にせまるとともに、京都府政および市町村が、現在の福祉水準を後退させず、住民の願いにこたえる公的介護保障体制を確立するために、現段階における問題点を明らかにし、介護保険実施までに必要とされる改善・充実のための緊急課題の提言をするものです。


1、特別養護老人ホームの待機者は4千人、住み慣れた地域で待たずに入所できるよう抜本的増設を
 日本共産党府議団は、高齢者保健福祉計画の目標の早期達成とともに、不足があきらかになった基盤整備については、当初の計画をうわまわって緊急に整備をする事をくり返し要求してきました。その結果、府が「当初計画にないものは認めない」としていた丹後の大宮町で特別養護老人ホームの建設が実現するなど、一部で「前倒し」整備がすすみました。しかし、特別養護老人ホームの入所待機者は、約4千人(府下で7百人、市内3290人)にのぼり、増え続けています。また、民間主導ですすめてきた結果、地域偏在がすすんでいます。建設の必要を認めながら、用地確保の困難や法人の参入がないなどで計画達成すらできない自治体もあります。

 12月議会で、知事は「市町村と連携しながら必要な介護基盤の整備を推進する」と答えています。「わたしのまちにも特別養護老人ホームを」「待つことなく入所できるよう増設を」という声にこたえ、市町村と連携して、「前倒し」整備をいっそうすすめる必要があります。
① 現時点であきらかに不足している岩滝町、三和町、大山崎町、八幡市、京田辺市、宇治市、福知山市、舞鶴市、丹後圏域に、急いで増設すること。とりわけ、待機者が3290人にものぼる京都市内について、市に強力に働きかけて、協力して整備を促進すること。

② 国に対し、用地取得補助制度の創設をもとめるとともに、府独自の用地取得補助制度や、公設による整備をすすめること。

③ 重度の痴ほう症や感染症の要介護高齢者のモデル的施設としての府立の特別養護老人ホームの建設をおこなうこと。

2、在宅介護支援体制の抜本的強化を
 京都社会保障推進協議会の調査でも、市町村の大半が、「達成困難なサービス」として、「ホームヘルプサービス」「デイサービス」「機能訓練」をあげ、地域的格差も大きく広がっています。24時間対応のホームヘルパーの派遣の体制を整えている自治体は皆無です。府としての支援の少なさ、市町村のとりくみの差、民間事業者の参入の格差、在宅サービスの拠点となるデイサービスセンターの不足などが原因です。
 ホームヘルパーの研修修了者が登録ヘルパーとして登録されているものの、賃金・労働条件の劣悪さ、身分の不安定さなどから、多くは実際に就労できていません。また、登録ヘルパーも常勤ヘルパーも確保の見通しが立たない市町村も多く残されています。
 ホームヘルプ事業の「人件費補助方式」から「事業費補助方式」への変更、九九年度からは1家事援助のサービス単価の大幅な減額など、国の補助金減額が、「ホームヘルパーの確保の困難」に追いうちをかけています。制度スタートにむけ、「常勤から登録ヘルパーに切り換える」「社協委託を民間委託に切り換える」などの後退する事態がすすんでいます。専門職として成り立つ身分保障と労働条件へ改善する必要があります。
 また、寝たきりゼロヘ、在宅・訪問リハビリなどに大きな役割を果たす、理学療法士・作業療法士も郡部地域で圧倒的に不足しています。

① ホームヘルパーの確保を目標どうり達成するため、介護報酬の算定方式については、人件費補助方式をベースにくみたて、常勤換算で補助単価を大幅に引き上げると同時に家事援助サービス単価の引き上げを、国にもとめること。

② 市町村と協力して、介護公社や社協などへ、維持・管理運営費などの府独自の支援を行うこと。

③ 府として、市町村が必要な常勤ヘルパーを確保するための支援を行うこと。
④ ホームヘルパーの身分保障、処遇の改善にむけ、必要な実態調査をおこない、収入の保障をするための、一定以上の仕事を確保することや、地域最低賃金制などあるべき基準についてしめすこと。
⑤ デイサービスセンターは、「概ね、中学校区に1か所」という当初の整備目標を早急に達成するとともに、中学校区が広域的なところは通所可能な地域に整備をはかること。
⑥ 府立医大に理学療法士・作業療法士の養成課程を設置し、北部・南部に府立のリハビリセンターを設置して、市町村に派遣する体制を整えること。


3、保険料・利用料減免制度をもうけること
 国会で、厚生省は、『経済的事情も保険料の減免の対象にする方向』と初めて答弁しました。従来、保険料減免について、「災害等の特別な理由により一時的に負担能力が低下した状態」に限定していたものです。利用料についても、『生計を支えている人の「重い病気、長期入院、死亡」などによる収入減、「それに類する事由がある場合」』が減免理由になるという見解を示しました。さらに、保険料の未納、滞納者へのペナルティーも経済的事情で除外する措置を検討中と答弁しました。これらをふまえ、さらに国への要望をあげるとともに、自治体が減免制度をもうけることが必要です。府独自の助成制度の創設で市町村支援を行うよう求めます。

① 市町村独自の減免条例をつくるとともに、財政的裏付けを行うよう国に求めること。府はこれを支援する仕組みをつくること。
② 保険料をおさめられない人への制裁措置の廃止を国にもとめ、市町村はこれを適用しないこと。
③ 国民健康保険料と介護保険料の一体徴収はやめ、介護保険料がはらえない人からの医療保険証の取り上げは行わないこと。
④ 利用料負担の困難な要介護者には、府・市町村が協力して助成措置をおこなうこと。
⑤ 保険料負担の増大をまねかないために、国に対し、介護保険財政への国庫補助率の引き上げを要求すること。


4、要介護認定基準の改善と、高齢者の生活実態を反映した要介護認定を
 98年度の要介護認定モデル事業の結果、重度の要介護5・4に認定された割合は、前年度にくらべ46、7%から21、2%へ半減しており、「明らかに要介護認定が低く判定される」「コンピューターの判定ソフトがブラックボックスだ」という声が噴出しています。第3回京都府介護保険準備本部会議への報告でも、「痴ほう症老人など、1度の調査で正確な状態把握が困難なケースもあるので、必要に応じて、複数の調査員による調査や複数回の調査を認めてほしい」「2次判定用コンピューターソフトの信頼性をたかめるため、プログラムの修正をおこなうとともに、その中身を公開してほしい」「審査委員の知識や経験をいかした審査・判定がおこなわれるよう配慮してほしい」等の意見が出されています。2次判定での変更について、かかりつけ医の意見書の内容に、事こまかに縛りをかけるやり方も、実態を反映しない重大な問題です。また、京都では、認定審査を府が31町村から委託をうけて実施することを決めました。住民の暮らしと顔が見えないところで、機械的・事務的な審査が行われることは問題です。
 日本共産党はこれまでにも、高齢者の生活実態を反映した認定、すなわち身体的な面だけでなく、家族、住宅、経済状態など総合的に判断するよう認定基準の見直しを要求してきましたが、次の改善を求めます。

① 国に対し、判定ソフトの公開を求めると共に、京都府としても、モデル事業の結果の公表をおこない、「認定基準」の抜本的見直しを国に要求すること。
② 訪問調査は民間事業者への丸投げではなく、自治体の基幹的役割を明確にし、民間事業者との協力で行うこと。また、複数の人による調査や、複数回数の調査を認めること。
③ 介護認定審査会の委員に、家族など介護の経験者や福祉の専門家の代表を加えること。認定審査会は住民の近いところでよりきめこまやかな認定ができるよう、可能な限り早期に町単位の設置に移行できるよう市町村を支援すること。
④ 自治体職員として介護支援専門員を計画的に配置し、ケアプラン策定など、調整の中心的役割と公的責任をはたすこと。
⑤ 市町村ごとに、苦情処理・相談窓口を整備すること。府介護保険審査会は被保険者の代表を住民から公募し、中立性を確保するなど、救済機関としての役割を果たしうる機関とすること。権利擁護のためのオンブズマン制度を確立すること。


6、現行水準を後退させないために高齢者保健福祉施策の一層の拡充を
 多くの市町村が「現行の介護の水準を維持するために、国・府の財政支援がほしい」と述べています。しかし、介護保険では、「上乗せ(ホームヘルプサービスの回数のうわのせなど)」「横だし(保険給付対象外の給食、日常生活用具給付、外出介助など)」や保健福祉サービスの費用は、第1号保険者の保険料への加算となっており、高齢者に負担を転嫁するものです。そうではなく、「高齢者保健福祉計画」の見直しを機会に、府と市町村は高齢者の福祉施策をさらに充実することが求められています。また、介護保険導入で、特別養護老人ホームの退所を余儀なくされた人の受け入れ施設の整備や、在宅サービスでも、「認定漏れ」した高齢者へのサービス確保のための対策の充実が求められます。

① 高齢者保健福祉計画の見直しは、国からの基準の押しつけでなく、真に地域の実情や住民の声が反映される計画とすること。その際、情報公開と住民参加を徹底すること。
② 機能訓練・健康相談・健康診断などの老人保健事業は切り捨てでなく、いっそう拡充すること。介護保険の給付対象とならない配食サービス・移送サービス・寝具乾燥消毒サービス・訪問入浴サービスなどの高齢者福祉サービスは、国の「高齢者在宅生活支援事業」、府単独「ふるさと高齢者福祉推進事業」などを、継続し、いっそう拡充すること。
③ 入所中の高齢者の特別養護老人ホームから強制的退所をおこなわないこと。また、やむなく退所を余儀なくされた人達の受け入れのため、高齢者生活福祉センターなどの施設整備を市町村と連携して行うこと。1人暮らしの高齢者が入所可能な公営住宅やグループホームの建設、高齢者住宅改造助成制度を創設すること。
④ 介護者激励金の存続、拡充をすること。
⑤ 自治体「リストラ」による、福祉・医療の切り捨てをやめること。
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