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政策と見解

農家の経営と暮らし守り府民の安全な食料の確保とふるさと守る農政を
 ―京都の農業と農村を守るために 日本共産党の提言―

1999/12/01 更新
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 いま、国民1億2千万人のうち7千万人分もの食料を海外に依存する異常な事態で、「これで日本は21世紀を生きていけるのか」との不安の声も大きく広がってきています。

 また、「米1俵がラーメン1杯分(600~1,200円)とはなにごとか」と、過剰米を農家の負担で、エサ米として処分する政府の新たな米対策に、怒りの声がおおきくひろがっています。一方、中山間地では高齢化が進み「村祭りもできない。このままでは村がなくなる」「農地の荒廃が進んで大変」など、京都の農業と農村は深刻な事態に直面しています。

 こうした時、「どうすれば農業を守れるのか」「なんとか村を、農地を守れないか」と多くの農家のみなさんや自治体関係者、府民が心を悩ませています。

 しかし、先の国会で強行された新農基法は、こうした努力とは反対に、日本の農業を、農産物輸入自由化を進めるWTO体制に組み込み、農産物価格支持制度解体の方向に進むもので、農業と農村に新たな困難をもたらし、国民食料の安定的な確保に背を向けるものです。

 「京都の農業と農村が守れるかどうか、ぎりぎりの瀬戸際に来ている」。これが多くのみなさんの実感ではないでしょうか。日本共産党は、ここにあらためて京都の農業と農村を守るための提案を行い、その実現のため「農業・農村を守ろう」「府民に安全な食料を」と願うすべてのみなさんと力を合わせて奮闘するものです。

農業の立て直しは、21世紀をめざす政治の中心課題―いまこそ、府民の力をあつめ、国の農政の転換を

 日本の食料の現状は、本当に深刻です。穀物自給率が28%、人口1億人以上の国で、こんな国はありません。世界で130番目という低さで、これは砂漠や山岳地帯の国と同レベルです。温暖な気候に恵まれ、「瑞穂の国」といわれた日本が、なぜこうなってしまったのでしょうか。

 これまで政府は、大企業・財界とアメリカの言うままに、自動車や電気製品などの輸出の見返りに、米まで含む農産物の輸入自由化をすすめ、農家には、減反を押し付け、食管制度の廃止で米価の下支え制度をなくし、「規模拡大、効率化を」と9割の家族経営の農家を切り捨てる「新農政」推進など、「食料は輸入すればよい」と国民の食料をアメリカをはじめ海外に依存する道をどんどんすすめてきた結果です。

 しかし、これは21世紀の世界に通用しない道であることは明らかです。21世紀は、世界の人口は増大し、一方で、砂漠化などで農業生産が後退、世界的な食糧不足が到来することが指摘されています。このときに日本がお金があるからといって、世界の食料を買いあさることは、今でも世界で8億人もいる飢餓人口をもっと増やし、世界の非難を浴びることになります。

 世界の各国は、いま食料自給率を向上させることに取り組んでいます。この時に、新農基法は、自給率を政府の責任で引き上げる目標を持つどころか、「輸入に頼る」方向を公然と掲げるものとなっています。

 この世界の流れに逆行した国の農政を転換し、農業と農村を守り、食料自給率を向上させることは、単なる農業・農村問題だけではなく、日本の民族的存立の課題であり、日本の国土と自然、さらには文化、ふるさとを守る問題でもあります。

 いまこそ、農家はもちろん農協や自治体関係者、さらには消費者の共同した運動で、国の農政を転換させようではありませんか。

国の農政の押し付けでなく、京都の農業と農村守る京都府農政を

(1)京都の農業と農村を危機に追い込んだ国いいなりの京都府農政

 京都府は、「減反しなければ価格が暴落する」として、農家に減反を押しつけてきました。しかし、減反しても価格は安定するどころか引き続き暴落し、農家と地域経済に深刻な事態を生んでいます。ところが知事は「市場経済を認めるなら仕方がない。もっと減反するしかない」とまったく冷たい態度です。

 また、「21世紀につながる京都の米づくりを」と、規模拡大・効率化を推進してきましたが、規模拡大した農家にも減反を押し付け、米価下落で大打撃を与えています。しかも農業機械の大型化などによる負担の増大で、地域の農業の中心的な担い手の展望と意欲を奪うものとなっています。

 さらに、「収益性の高い園芸・特産物の育成と畜産経営の体質強化を」と転作をすすめてきましたが、減反した水田をすべて野菜づくりや施設園芸に転換することは不可能で、高齢化が進んでいるもとで施設園芸は誰もが取り組めるものではありません。

 こうした国いいなりの京都府農政の結果、京都の農業と農村は大変な事態となっています。

 農業センサスでみれば1985年から95年の10年間で農家数は、1万戸近くが減少し、減少率は65年以降最大となっています。一方、3ヘクタール以上の大規模農家は245戸増えていますが、他方では、1.5ヘクタール以下の農家は7,054戸も減少しています。京都の農業と農村を支えてきた小規模・零細農家の切り捨てがすすんでいることを示しています。

 さらに深刻なのが60歳未満の男子従事者がいる農家数の減少が続き、85年比で43%と半分以下に落ち込み、販売農家のうちでも1割をきる事態で、しかも高齢化が進んでいます。

 農作業の委託をしたくとも引き受け手がいない集落や、受託し、規模拡大を進めてきた農家も後継者がいなく、この農家がリタイヤすればだれが地域の農業・農地を守るのか、こうした事態に直面しているところが少なくありません。高齢化・過疎化がすすみ、農道や水路の補修もままならない、村役をする人もいないところも生まれています。

 京都府がすすめた「経費節減で体質強化を」との農協合併で、支所・店舗が廃止され、農協が農家にとって「遠い存在」となり、地域住民の暮らしにも深刻な影響を与え、今度は「農協が合併したから」として、農業改良普及センターを6カ所に廃止・統合しようとしています。そのうえ家畜保健衛生所はたったの2カ所にしようというのです。

 国いいなりですすめてきた減反の押し付け、規模拡大・効率化の道が行き詰まり、破綻していることは明白です。

(2)京都府農政の2つの転換と4つの役割発揮を

 京都の農業と農村を守るためには、国の農政の転換とあわせ、いま京都府農政の転換も求められています。

 転換すべき第1は、いまの京都府のように「国が決めたことだから、しかたがない」と国の農政を押しつけるのではなく、京都の農業と農村を守る立場にたって、農家の意欲を大切にした、地域の実状にあった農政への転換をはかることです。

  第2は、米を含む農産物の輸入自由化を前提に、効率化押し付けなど「市場経済」一辺倒では、中山間地が多く、小規模・零細な京都の農業・農村は守れず、国土や自然環境保全に大きな役割を果たしている中山間地や都市近郊などは「非効率な農業経営」として切り捨てることになります。

 「市場経済」一辺倒の農政ではなく、府民の安全な食料の安定的な供給と260万府民のふるさと京都の自然と国土を守る農政への転換が必要です。京都の農業と農村を守って努力しているすべての農家を支援し、「兼業農家も、規模拡大に意欲を持つ農家も、高齢者も、“続けたい人”“やりたい人”は、みんな農業の大事な担い手」として大切にする農政こそ求められています。

 蜷川民主府政の時には、蜷川知事は「農は国の大本」として、農業つぶしの国の政治をきびしく批判し、京都の農業を守り、農業生産を前進させるため積極的な役割を果たしました。減反の押し付けには「京都食管」をつくって安心して米づくりができるようにし、小規模土地改良事業や野菜の価格安定対策、農業機械の共同利用の促進など、農家の経営を守るための独自の施策を進め、全国からも注目される農政をすすめてきました。

 いま、自治体農政に求められている第1は、この国の農業つぶしの悪政に対し、農業と農家を守る防波堤の役割をしっかりと果たすことです。

 第2は、府下の農山村地域では、農業をはじめ林業、漁業などが疲弊するもとで、地域経済も困難に直面しています。この地域経済を立て直すため、企業誘致やリゾート開発、観光振興のための集客施設建設など、様々な努力がされていますが、工場団地を造成しても企業が進出してこない、集客施設をつくっても、一時的な活用にとどまるなど、地域経済の立て直しになるどころか、自治体財政の借金だけが残る結果となっています。

 こうした時、あらためて地域経済の主役である農業そのものを立て直し、これを基軸に地域経済の振興をはかることです。秋田県十文字町では「農業に基礎を置くまちづくり」をかかげ、町と農協が一体となり、ここ10年来一貫して追求してきた結果、農業粗生産額や農業所得の水準を維持し、農家人口、農業就業人口の減少も少なく、後継者も数多く確保される状況をつくりだしています。京都でも、農業を守ることを町政の柱として位置づけ、がんばっているところがあります。

 地域経済の立て直しをはかる土台に農林業を位置づけ、そのためのあらゆる努力を尽くす、その上に、特産物の加工工場など、地域産業と結びついた工場建設などで雇用の場、働く場の拡大や地域の資源を生かした観光も発展させることができます。

 第3に、何とか農業を守ろう・農村を守りたいと願う農家や関係者を励まし、そのエネルギーを組織することです。各地域での営農集団だけでなく、京田辺市で地域の活性化と村づくり、農業の継続と再建めざす「普賢寺『農』を考える会」や大宮町の「大宮アグリ21」の「村おこし組織」など、積極的で多様な取り組みが府下各地で始まっています。

 すべての地域・集落で、住民が知恵と力を寄せ合う、組織づくりとそれへの支援を強めることです。

 第4に、都市近郊でも、新鮮で安全な顔の見える農産物を生産する農業の役割、市民生活の上での自然や緑、生態系の保全や防災など、その多面的な機能・役割を市民の財産とし、農業を市民の「命」にかかわる基幹産業と位置づけ、その振興を図ることです。都市住民の中でも農業と農村を考え、これを守ろうとする運動が広がってきています。京都の農業と農村を再生するとりくみは、農家だけの問題ではなく、260万府民の安全で、安心できる食料を確保し、府民のふるさとを守る、府民全体の課題です。既に始まっている消費者と農家との交流などを支援し、京野菜を始め、京都の食文化を見直し、京都の農産物を守り、府民のふるさと・農山村を守る府民的合意をつくりだすことです。

今こそ、農業と農村を守る抜本的な対策の強化を―5つの提案

提案1 稲作経営を安定させてこそ、農業と農家が守れる

 政府はこのほど、来年からの米の生産や減反の新たな仕組みとして「水田営農対策」を決定し、京都府もこれに沿って、市町村と農協に昨年と同様に過去最高の8,709ヘクタールもの減反目標(生産調整目標)を割り当てました。

 しかし、いま何よりも問題なのは、生産の維持に決定的な米価の回復に実効ある措置をなんらとろうとしていないことです。生産者米価は暴落が続き、5年前には一俵平均で2万1千円台であったのが、いまや1万7千円台です。これが農家に展望を急速に失わせているのです。「水田農業の活性化」というのであれば、この事態の打開にこそ正面から取り組むべきです。

 さらに、この減反目標を達成しても、価格安定の保障はまったくありません。その上、豊作になればその分は1俵千円前後でエサ米として農家の負担で処分をさせようというものです。

 こんな「対策」では農家の生産意欲がますます失われ、つくり手が激減し、国民の主食である米の自給まで崩壊することは必至です。日本の稲作と水田は民族の文化であり、国民共有の財産です。この稲作を守り、農家の経営を安定させることこそ、農業と農村を守る最大の柱です。

1、政府の米政策の抜本的な転換を

【1】当面、米価の下落、農家経営への打撃を抑えるために

 (1)農家負担をいっそう押し付け、豊作分をタダ同然でエサ米処理することを中心とした「米需給緊急対策」を撤回すること

 (2)今廃止している自主流通米取引の値幅制限を復活させること

 (3)米価が下落した場合の補てん措置である稲作経営安定対策への政府助成を抜本的に高め、補てん基準価格は生産費を考慮して決め、全額補てんとすること

 (4)ミニマムアクセス米は、当面、援助米や飼料用に回し、国内の米需給に影響を与えない措置を厳しくとること。また、ミニマムアクセス米の国内需要のないものは、その分輸入数量から削減すること

 (2)来年度政府米の買い入れ数量を300万トンまで拡大し、買入価格は2万円に引き上げ、価格下支え機能を確立すること。減反の押しつけをやめ、国産米による備蓄制度の改善をはかること

 (3)新食糧法の見直しに着手すること。WTO交渉にあたっては、ミニマムアクセス米の廃止、米を自由化の対象から外し、実効ある輸入規制ができるように求めていくこと。

 いま、この実現のため、農家と関係者が力を合わせることではないでしょうか。

 2、京都府として「21世紀につながる京都の米づくり」をすすめるために

 (1)米づくり農家の経営を安定させるため、米価の下支え制度「新しい京都食管」を

 現行の米価下落の緩和措置である「稲作経営安定対策」は、再生産を償うものではありません。政府に対し、米価下支え制度の実現を求めるとともに、それまでの間、京都府としての価格対策を実施することです。

 「新しい京都食管」として、1俵2万円の農家所得を保障する補てん制度の実施の検討を関係者によびかけます。

 京都の米1俵(60キロ)あたり、せめて2万円を保障できるよう差額を補てんします。1俵1万6千円になった場合には、約26億5千万円の財源が必要となりますが、府の財政が厳しい状況のもとでも、財政全体の0.2~0.3%程度で、農家を激励し、京都の農業と農村を守る積極的な役割を果たすことができます。

 そして、当面「稲作経営安定対策」で農家が負担している2%の負担金の肩代わりと10割補てんの実施を求めます。これも5億円あれば可能です。

 (2)京都米の普及と消費拡大を図るため、学校給食、福祉施設での京都米の活用を

 すでに地元産米を学校給食に積極的に活用している自治体が増えてきています。政府は国庫補助の削減・廃止を狙っていますが、この計画をストップさせ、京都府としてこれを促進し、すべての学校で京都米での米飯給食を週5日実施するなら、計画米の1割近くを占めることになり、京都米の消費拡大と普及に大きな役割を果たすことができます。さらに、介護保険実施とあわせて増えつつある福祉施設や配食サービスに京都米を活用するなら、消費の拡大を促進することができます。これらを進めるための助成制度を充実させます。

 地元農産物の活用とあわせて実施するなら、子供たちに地元農産物と農村への関心を高めることができます。

 (3)減反の押し付けをやめ、農家の自主性と地域の実情にあった水田の土地利用計画を

 「減反をどうするか」。毎年、農家のみなさんはもちろん、農家組合長や関係者が大変な苦労をしています。京都府は、今年も減反目標を市町村に割り当て、これを進めるため、市町村段階で「水田農業振興計画および地区計画を策定する」とし「集落ごとの話し合いを進め、集落を単位とした取り組み」を強調しています。

 この「水田農業振興計画」を農家の自主性を尊重し、総意を集め、民主的に確立することが求められています。

 ア、減反の押し付けはやめ、農家の自主的判断、集落の話し合いの尊重を

 イ、転作作物の価格保障を行い、米づくりと同程度の農家所得の保障を

 ウ、水田を守り、稲作技術や稲作用農業機械が活用できるエサ米への転作を実現するため、畜産農家への供給体制の確立、価格補てん対策の実施を

 エ、麦・大豆など土地利用型作物の集団生産は、府も「定着が困難」「これまで湿害や病害虫被害による収量・品質の低下などが見られた」としており、無理な団地化や土地利用集積の押し付けをやめ、これらへの価格の保障と必要な農業機械購入への助成措置や水田の排水対策の基盤整備などの対策強化を

提案2 地域の地理的社会的条件に応じた農業振興を

【1】農業振興計画は、集落を基礎に、農家の意志を尊重して

 農業は地域ごとに生産条件が大きく異なります。行政が一方的に規模拡大を押しつけても、中山間地域では10ヘクタールもの規模拡大はできません。また、施設園芸への転換を図ろうとしても、高齢化率が高いところでは困難があり、こうした農業生産の地域ごとの違いを無視し、大規模化や一律な転作作物を押しつけるやり方を転換し、地域の実情に応じた農業振興をすすめることです。

 京都府がすすめる「21世紀型農場づくり」は、旧村を単位にしたもので、「規模が広すぎ、農村の実態に合わない」「上からの計画の押し付け。減反強制とセットになっている」など批判の声が出されています。

 ア、集落の総意を集め、市町村、農協、普及センター、専門家の協力で、「振興計画」をたて、その実現のためのきめ細かな支援を

 イ、集落の中核農家を中心にした受託組織や営農集団、そして自主的に「村おこし」に取り組む集団に積極的支援を

  減反達成を条件にしない農業機械の購入助成や補助制度に改善を

 ウ、多くの中山間地では、稲作を基本にしつつ、野菜や畜産と組み合わせた経営の複合化をすすめ、地域の条件を生かした特産地としての地域農業を確立する取り組みの支援を

  さらに、特産品の加工場建設などへ積極的な支援で雇用の場の確保を

 エ、消費者の要求になっている有機、低農薬農業などを積極的に推進し、そのための普及センターや試験研究機関の支援、必要な補助制度、融資制度の改善・充実を

【2】中山間地で、農業が続けられるように

 京都の中山間地域の農業は、耕地面積でも、水田面積でも、農家戸数でも6割近くを占め、京都の農業の中で大きな位置を占めています。しかし、この中山間地域では、60歳未満男子専従者のいる農家数がこの10年で半減するとともに、農地が1割以上減少し、耕作放棄地も4割近く増加しています。地域農業を支える中核農家も10年間に3分の1に減少し、ついに1つの集落に1戸程度となっています。

 このままでは、農業だけでなく集落がなくなってしまいます。この中山間地域での農業を守ることは、国土の保全の上でもきわめて重要です。

 (1)中山間地農業への直接支払い制度の拡充を

 生産条件が不利な地域だけに、農業生産への特別の支援が必要になっています。政府は、新農基法にもとづき中山間地農業に対する直接支払い制度を行うことを決定しました。しかし、傾斜度だけを基準とし、地理的社会的条件を加味していないことや林地を対象にしていないこと、さらに市町村に大きな財政負担を負わせるなど問題だらけです。

 ア、地域振興8法指定区域外の京都市北部地域、山城南部地域も対象地域にすることや指定地区内でも指定基準に合致しないところでも生産条件不利地域は指定すること

  知事特認5%をこえる場合は、府独自の措置で支援すること

 イ、財源は、国の負担でおこない、市町村の財政負担を最小限にとどめること

 (2)有害鳥獣対策の抜本的強化を

 中山間地では有害鳥獣による被害が毎年広がり、農業生産を続ける意欲すら奪うものとなっています。この有害鳥獣対策の抜本的強化が緊急に求められています。

 ア、京都府では被害額が毎年8億円にも上るにかかわらず、その対策費は6千万円足らずです。有害鳥獣の防除施設や駆除関係予算を大幅に増額し、補助単価の引き上げ、補助対象事業の拡大など充実を

 イ、メス鹿の捕獲頭数の大幅緩和や、有害鳥獣の駆除期間の大幅延長など駆除対策を強めること

 ウ、有害鳥獣被害に対する救済・補償対策を充実させること

 エ、被害の実態と有害鳥獣の生態を急いで調査し、専門家の協力も得て、本格的対策の研究を

 (3)地域の農地を守るための自主的な受託組織への支援を強め、農地の保全を

 高齢化がすすみ、中山間地での荒廃地が増え、農道や水路、法面の補修すらままならない事態が生まれています。作業受託を含め、これらの農地や作業を受託している組織に対する、農業機械購入への助成や低利の融資制度など支援を強めることが必要です。また、農道や水路などの管理・補修を行う組織への助成措置を実施し、負担を軽減することです。

 (4)ほ場整備は、大規模化の押し付けでなく地域の実情に応じたものに

  ア、蜷川府政のもとで京都では、国の大規模な土地改良事業だけでなく独自の小規模土地改良事業を進めてきた歴史があります。いま、中山間地の土地改良事業を進めるうえで、実情に合わない大規模ほ場整備の押し付けではなく、農家の負担も少なくてすむ長野県栄村の「田なおし事業」などを参考に新たな施策の具体化で、ほ場整備の促進を

 イ、土地改良資金の低利への借り換えの実施、農家負担の軽減措置を

【3】都市近郊農業を守り、振興を図るために

 (1)都市近郊地域でも、新鮮で安全な顔が見える農産物の供給や、農業・農地が持つ環境など多面的機能の役割は欠かせません。このことを行政がしっかりと位置づけ、農業と農地を守るための対策を強めることです。東京都日野市では、農業委員会の建議を受け「日野市農業基本条例」を制定し、地元の米や農産物を学校給食に活用するなど積極的な対策を講じています。

 (2)都市農地の保全のために、農地を手放さなくてもよいように、相続税、固定資産税など税負担の軽減をはかることが緊急に必要です。

 また、市街化区域内の農地に対しても大阪府は「都市緑農区制度」という農業生産基盤整備事業(農道・水路・ハウス施設など)を実施しています。

市街化区域内の農地についても農業振興策の対象にした助成制度の実施を

 (3)「京ブランド」ものや特産振興のため、それぞれが抱える病害虫対策や栽培技法の高度化、加工施設の改善など、必要な対策を

 (4)市民農園、体験農園、朝市、直売所など、都市住民と手を結んでの取り組みへの支援策の充実・強化を

提案3 安心して農業が続けられるように

【1】農産物価格安定対策を充実し、農家に安定した所得保障を

 政府は新農基法のもとで、農産物の価格を市場原理に任せる原則を打ち出し、農産物価格支持制度を解体する方向へすすもうとしています。これでは農産物価格は輸入を前提として市場実勢のもとで大きく下落することになり、農家は、農業所得の滅少など大きな打撃を受けることになり、再生産への意欲を奪い、農業の破壊にもつながるものです。

 (1)府の価格安定対策の充実を

 府の農業予算を見ても毎年約75%が農業土木事業費で、農産物価格対策予算は、わずか0.2%にしか過ぎません。これを大幅に拡充し、農家が安心して農業生産を続けられるようにします。

  小規模生産にも対応し、対象品目の拡大と、保障基準価格の引き上げ、支払いサイクルの短縮など改善を

 (2)地域の農作物の生産にみあった価格安定対策に

  地域の農産物の生産に見合った価格安定対策が充実できるよう市町村の施策への支援を

【2】地域の農業の主力になっている規模拡大農家への支援を

 いま、農業の専業的な担い手が不足している状況のもとで、高齢者や担い手がいない農家の委託を受けて稲作を受託している専業農家の存在は貴重です。しかし、これらの農家は、大規模化しただけに、価格暴落で大打撃を受け、その負担も大変です。しかも、この農家も後継者がなく「自分の代で終わり」「この農業機械が使えなくなればリタイアだ」との声も聞かれます。

 ア、農業機械の購入・更新への助成制度の実施を

 イ、小作料の負担を軽減するための助成制度の創設を

【3】後継者・担い手対策を抜本的に強めます

 今日、農業・農村を守る上で、もっとも深刻になり、多くの関係者が心配している最大の問題が、「農業・農村では生活できない」ことから、このままでは後継者、担い手がいなくなるということです。

 農業・農村で生活できる状況を作り出すことが、後継者づくりの最大の課題です。退職し、ふるさとに帰って農業をやろうという人、親元に帰って一緒に生活したいという人、都市から農村に移り住みたいという人など、若い後継者はもちろん、こうした人たちを含め、農業と農村の担い手として支援することが必要です。

 また、今日では、農業の担い手として、さらに農業委員への選任など、女性の果す役割が大きくなっており、その支援等を強めることが求められています。

 (1)40歳未満の人が新たに就農する場合、月15万円を3年間保障する「青年農業者支援制度」の実現を政府に求め、これが実施されるまでの間、京都府として現行の制度の拡充を

 (2)市町村と協力し、農村で住み、働きたい人のための住宅確保、農地の確保、たち上がりのための農業機械の貸付制度、財政支援制度の確立。さらに、農業をはじめる人への技術支援などをおこなう「ブラザー制度」など、地元農家と普及センター、農協の支援体制の整備を

提案4 安心して住み続けられる農村対策

 介護保険がいよいよ始まります。しかし、中山間地など農山村地域ではデイサービスは遠くにしかなく利用できない、ヘルパーの派遣もままならない状況が残されています。

 病院へ行くにもバスがない、1日がかり、交通費も大変です。商店もなく、買い物も車がなければできない、学校の統廃合で通学もできない。過疎化と高齢化が進む中山間地の村では、高齢者も、若者も生活が大変です。

 中山間地で生活できる環境を整備することは、農村を守るうえでも重要な課題です。ところが、現状はバス路線の廃止、学校の統廃合、農協の支所の廃止など逆行することばかりがやられ、集落排水事業などは高い負担金が押しつけられるなど深刻です。

 (1)高齢者が多く住む中山間地での生活を支えるため、路線バスの確保、福祉バスの実施など暮らしの足を支える対策の充実を

 (2)中山間地域でも、安心して介護がうけられる体制の整備、医療体制の充実を

 (3)集落排水事業の総事業費の抑制と農家負担分の軽減措置をとるとともに、自宅の水洗化対策への支援措置の実施を

 (4)高速道路及びそのアクセス道路最優先ではなく、生活道路整備の優先を

 (5)各地で始まっている「村おこし」の取り組み、産直など都市住民との交流、棚田を守るオーナー制度など、消費者、都市住民との交流・共同の自主的なとりくみの支援を

提案5 農協や農業改良普及センター、家畜衛生保健所、農業試験研究機関が、農業と農家を支援するその本来の役割を発揮するよう強化、充実を

 本来、営農や病虫害対策、品種改良などに役割を発揮し、農家の身近な相談相手として役割の発揮が求められる農協や農業関係機関が縮小・廃止の方向にすすんでいます。これでは、ますます農家の経営も暮らしも困難になります。

 農協については地域農業と農家の営農と生活に密着した事業運営が進めることができるよう、指導・援助を強めます。

 農業改良普及センター、家畜保健衛生所の統廃合はストップし、農業研究機関・施設と共に、農家と農業関係者の意見を尊重し、農家に役立つ組織へ充実・強化を図ります。