「男女共同参画京都府行動計画」の見直しにあたっての申し入れ
女性の社会参加は、20世紀の人類の大きな進歩の1つです。今ではあたりまえの女性参政権や、男女の教育機会均等、婚姻の自由も、こうしたたたかいによってかちとられてきたものであり、21世紀は男女平等がいっそう花ひらく世紀となるでしょう。
一方でいま、経済のグローバル化と大競争時代のもとで、女性は低コストの労働力として、財界戦略に組み込まれています。労働基準法の改悪(1999年4月施行)で女子保護規定が撤廃されてから、深夜業・残業も男性並みとなり、女性の派遣労働やパート化の増加によって、正規職員と置換えるなど、女性の雇用環境は激変しています。男女ともに、子育てに責任が果たせない労働環境は、「少子化」という、深刻な民族の危機までひきおこしています。
京都府がまとめた「府民意識調査」でも、出生数減少の理由として、経済的負担や、仕事と子育ての両立の困難をあげる回答が多く、府が力をいれるべきことの第1に、「保育の施設・サービスや、高齢者や病人の介護施設・サービスの充実」を求めています。
最終年度をむかえた「KYOのあけぼのプラン」は、府下の女性たちのねばりづよい運動が反映したもので、これにもとづいて女性政策課が設置され、審議会への女性委員の一定の参画がすすんできました。
同時に、この行動計画は、目標数値や財政的裏付けがないため、具体性に欠けるという弱点をもっていました。
さらに、96年に行なわれた中間見直しでは、「基本的視点」から、「基本的人権の確立」や「女性の平和への貢献」の項目が削除され、憲法の理念や、男女平等をめざす国際的な到達点からも、重大な後退が行なわれました。
こうした弱点や後退を反映して、この10年間の実際の府の施策は、行動計画が掲げた目標と比べると、きわめて不十分なものにとどまっています。それどころか、むしろ行財政改革の名のもとで、府下市町村の保育料値上げや保育所の統廃合がすすみ、女性が就業技能を身につける場として希望者の多い女性就業サービスセンター講習会の予算削減、介護激励金のカット、婦人センターや労働セツルメントの廃止、吉田母子寮の老朽化の放置など、行動計画に逆行する事態すら起こっています。「少子化」傾向もさらにすすみ、府の合計特殊出生率は、3年前の1.26から1.22へとさらに下がっています。
このように行動計画を抽象的な内容にとどまらせ、理念的にも後退させ、むしろ逆行する施策を行ってきたことは重大です。
「男女平等参画条例」の制定と「新しい行動計画」の策定にあたっては、府下の女性の暮らしの実態をふまえたより実効性あるものとするため、左記事項について具体化されるよう申し入れるものです。
(1)男女平等条例の制定を
◯昨年末に提出された女性政策推進専門家会議の答申にも盛り込まれているように、男女平等条例(男女共同参画基本条例)の制定をすすめること。制定にあたっては、憲法および女性差別撤廃条約の男女平等の理念、母性保護、事業主・企業責任、性的嫌がらせや暴力の禁止、苦情処理・救済機関の整備などを明記した、実効性あるものにすること。
(2)新行動計画を実効性あるものに
◯新しい行動計画の策定にあたっては、幅広い女性の声をよく聞き、「基本的人権」、「平和への貢献」を位置づけ、数値目標と財政的裏付けを具体的にすること。
◯府下市町村の男女共同参画行動計画の策定は、15自治体にとどまっている。すべての市町村が策定するよう府の支援を行うこと。
(3)女子差別をなくし、女性へのあらゆる暴力の一掃を
◯国際的にも低い地位にある日本の女性の基本的諸権利を国際的な水準に高めることは緊急の課題である。女子差別撤廃条約選択議定書(2000年12月22日発効)はすでに13カ国が批准し、62カ国が署名しており、日本もただちに批准するよう国に求めること。
◯現在、夫婦間等の暴力防止のための法案づくりが超党派ですすめられている。既存の法制度の「的確な実施」にとどめず、女性への暴力に対応する法律、制度のために、積極的にとりくむことを国に求めること。府婦人相談所を、DV(ドメスティック・バイオレンス)をはじめとする暴力、援助交際、サラ金など、今日的な社会問題での緊急の救済に対応できるように充実させること。
◯選択的夫婦別姓制度の導入や再婚禁止期間の短縮など、民法改正にただちに着手するよう国に求めること。現在13県が条件付きで実施している職員の旧姓使用を、京都府でも実施すること。
(4)男女ともに子育てと仕事が両立できる労働環境を
◯「少子化」問題の具体的解決のためにも、男女ともに子育てと仕事を両立できる労働環境の整備をすすめることが大事である。行動計画に盛り込まれていた女性労働者の実態調査は、ほとんどすすんでいない。パートや派遣労働等の不安定雇用で働く女性が、不当な差別を受けていないか、母性保護は守られているか、セクハラ等の労働実態調査に取り組むこと。問題のある場合は、企業責任を果たすよう府の指導を行うこと。
◯ILO母性保護条約の早期批准と、その内容にそくした労働法制の改善、母性保護の拡充を、国に求めること。
(5)農山漁村女性、業者婦人の暮らしと健康を守る支援を
◯府農業の6割を女性が支えている。女性の農林漁業従事者の地位向上をはかるとともに、健康診断や介護負担の軽減など、生産と家事労働への支援を行うこと。農業委員会への女性の進出をすすめること。
◯京都経済を支える中小企業・商店街が不況にあえいでいる。国に家内労働に関するILO条約の批准を求め、業者婦人の労働を自家労賃として認めさせること。休業保障や傷病手当など国民健康保険の改善と、保険料(税)の引下げをはかること。
(6)子育て支援の充実を
◯子育て世代の経済的負担の軽減のために、乳幼児医療費の助成制度の拡充や保育料の軽減、私学助成の拡充を行うこと。
◯保育所待機児童の解消や、病児保育など保育内容の充実、無認可保育所への支援を行うこと。すべての小学校区での学童保育所設置と、小規模学童保育所への助成基準緩和や、障害児の学童保育受け入れの補助を行うこと。
◯母子・父子世帯への支援を拡充すること。
(7)女性に重い介護負担の軽減を
◯介護を理由にした退職を余儀なくされる女性がいます。特養ホームや在宅介護等の基盤整備や、低所得者の保険料・利用料の減免措置など、介護保険制度の抜本改善をはかること。介護保険外のサービスをふくめた高齢者施策の全面的充実をはかること。
◯医療・年金・介護など、社会保障の充実を国に求めること。
(8)すべての審議会で女性の積極的参画を
◯府の政策・意思決定過程となるすべての審議会・委員会に女性の積極的参画をはかること。現在、女性審議委員は22%になったものの、同じ女性がいくつもの委員を兼任しているのが実状である。幅広い女性の参加をすすめるためにも、委員の人選にあたっては、公募をふくめ公平を期すようにし、「30%」を早急に達成し、さらに促進すること。