府政報告 1689 9月定例府議会を終えて(談話)
談話「9月定例府議会を終えて」... 1
日本共産党が提出した意見書案...7
全会一致で採択された意見書...9
意見書・請願に対する各党の態度...11
9月定例府議会を終えて(談話)
日本共産党京都府会議員団
団長 西山 秀尚
2001年10月11日
9月21日から開かれていた9月定例会が10月10日閉会した。
1、テロ根絶へ、国連中心に"法"の裁きを今議会は、冒頭に、アメリカで発生した同時多発テロに対し、これを厳しく糾弾、被害者へ
のお見舞いを述べるとともに、国連を中心に、すべての国が協力してテロ根絶へ力をつくすことを求める決議を全会派一致で採択した。
世界の多くの人々が、テロ根絶を願うとともに、アメリカの報復戦争によって、あらたに、多くの命が奪われることのないように願っていたにもかかわらず、10月8日未明、米英軍によるアフガンへの空爆が開始されたことは、きわめて憂慮すべき事態である。
わが党は、こうした報復戦争ではなく、国連を中心に、各国が協力し、犯人とその支援者の特定、政治的経済的制裁と法の裁きを受けさせることこそ、真にテロを根絶する効果ある措置だと考える。こうした道に切り替えるためにも、米軍の軍事報復は直ちに中止すべきである。
さらに、テロ対策を口実に、憲法を踏みにじって、自衛隊の海外派兵を一気に進める「報復戦争参加法案」等を、まともな審議もなく、強行することは絶対に許されるものではない。
わが党は、今後とも平和を願うすべての人々と力をあわせ、テロ根絶と憲法の平和原則を守るため、全力をつくすものである。
2、府民の暮らし守り、公正な府政求め奮闘
今議会には、68億2500万円余の一般会計補正予算案をはじめ、決算承認案件5件を含
む16件の議案が提案された。
一般会計補正予算は、緊急雇用対策や府立大学へのエレベーター設置などを含むもので、府民の願いに一定応えたものとして、わが党は賛成した。
しかし、緊急雇用創出対策事業が、「委託」事業であるため、実際の失業者救済につなかっていない現状や、この間森林保全や道路・河川整備事業の予算を削減してきたものを、今回雇用対策として措置したものを多く含むなど、問題点を指摘し、実効ある雇用対策となるよう改善を要求した。
あわせて、府が誘致した企業が、地元町とのまともな協議もなく、身勝手に撤退する状況が生まれていることを指摘し、雇用確保と地域経済を守るためにも、協議を義務付けることを求めたが、理事者はこれを拒否した。これでは、府が真剣に雇用確保に取り組んでいるとは、とうてい言えるものではない。
また、一般会計補正予算案の中には、八木町における同和対策事業として、「農事組合法人泰宏農場」への補助金3億3千万円余が含まれている。これは、本来、同和地区における零細農家の経営安定対策のためのものであり、地刈財特法が1996年度に終結した際、廃止されなければならないものであった。ところが政府は「激変緩和措置」として一般対策事業の中で継続し、今回の予算措置が行われたものである。しかも、「泰宏農場」なるものは、八木町長 中川泰宏氏の事実上の同族経営といわれており、適用要件を満たしているか大いに疑義がある。わが党は、十分な審議を要求したが、理事者および与党会派は応じなかった。こうしたもとで多額の同和対策補助金が支出されることは、中川氏が、八木町長であるだけに、行政の私物化にもなりかねないものであり、わが党は、厳しく批判し、その取下げと調査を求めて、この予算措置には反対した。
さらに、府立学校授業料等の値上げが提案された。これは3年ごとに、国言いなりに値上げしようとするものであり、不況下で授業料滞納の生徒が増えているにかかわらず、新たな負担を父母に押し付けるものである。しかも、物価や人件費が上かっていないもとで、この値上げは、なんの根拠もないものであり、反対した。
その他の議案は、グリーン化税制にともなう自動車税軽減などの府税条例の改正などで、決算承認案件(決算委員会に付託)を除き賛成した。
3、府民に「激痛」を与える小泉流改革推進の立場表明した荒巻知事
今日、国民に"激痛"を与える小泉流「改革」が具体化されているとき、京都府が住民の暮らしを守る組織として、暮らしと地方自治を守る"防波堤"の役割を果たすこと力弓金く求められている。
ところ力守口事は、京都経済と府民の暮らしの基盤を突き崩す「不良債権の早期最終処理」を「日本経済の構造改革、再生という観点、さらに国際的な日本経済の評価にかかわりすすめられるもの」と当然視する態度を表明した。これは、府民の願いに背を向けた態度と言わなければならない。
また、大企業が不況下でも儲けを確保するためにおこなう大規模な首切り、リストラを規制する法の整備を求めた質問に対しても「一律に法規制することは適当でないと考える」と答えた。これは、ヨーロッパなど資本主義国でも当然とされている解雇規制のルールすら認めないものであり、知事が大企業の身勝手を擁護する立場に立つことを示すものである。
厚生労働省が「改革試案」として発表した医療保険制度の改革は、新たな負担を国民に押し付け、「皆保険制度」の根幹を崩すものである。ところが知事も与党会派も、「将来的に持続可能な制度の構築」と、国民に耐えがたい負担を押し付ける「医療制度改革」を当然とする態度を示した。
さらに、政府が強引にすすめている「市町村合併」についても「地方分権時代を迎え、地域づくりの取り組みをさらに効果的に進めるためにも、市町村の行財政基盤の充実・強化が求められており、そのためには合併も有効な方策」と答えたが、これは結局、「今後、地域づくりを進めるためには合併しかない」との態度を示したようなものである。さらに、今回、京都府が市長会、町付長会とともにつくった「市町村行政改革支援会議」は、その推進のためのものであり、京都府がさらに強引に合併を推進しようとするものである。
このように、小泉流「改革」が、府民の暮らしと地方自治に重大な打撃を与えようとしているとき、その推進の立場に立つ知事では、府民の暮らしも地方自治も守れないことは、明らかである。
4、府民の切実な要求に、相変わらず冷たい態度
10月から高齢者の介護保険料が2倍に引き上げられるもとで、低所得者への減免を求める声が大きく拡かっているが、知事は、低所得者対策はあくまでも「国の制度の枠内で」と、一般会計から繰り入れての減免は拒否する態度を表明した。しかし、府内の市町をはじめ全国で多くの自治体が、「安心できる介護保険制度」とするため、一般会計からの繰り入れなどおこなっている。ところが京都府は、「介護保険が始まるから」と介護激励金6億7千万円削減しており、国と同様、まったく冷たい態度である。
住宅改修助成制度は、高齢化社会をむかえて、住宅のバリアフリー化や耐震性強化が求められ、不況のもとで中小建設業者の仕事起こしと雇用の拡大にも大きな効果があるものである。わが党は、この実現を求めたが、知事は「融資制度の活用を」と従来の態度に固執する答弁をした。
しかし、すでに国土交通省も耐震補強のための補助制度の検討をはじめており、今議会では公明党がはじめて「バリアフリーのための助成制度を」求めたように、知事の答弁は、時代の流れを見ないものである。
30人学級の実現についても、山形県知事が「小・中学校の30人学級を2~3年のうちに実現」と表明したことをはじめ、全国で実施に踏み出す自治体が拡かっているにかかわらず、教育長は「国の教織員定数改善計画を踏まえ」と、従来の「国が財源措置する範囲で」しかやらないとの態度をあらためて表明するものであった。同時に知事も、「教育委員会が企画して、知事が予算的に援助するもの」と、三十人以下学級を実施しない費任を教育委員会に押し付ける責任逃れの答弁をおこなった。これは京都の子どもたちの教育条件整備に責任を負う知事として許されないものである。
環境を守る課題についても、880万トンものC02を排出する関西電力の舞鶴石炭火電について「建設・使用中止」を求めたのに対し、知事はこれを拒否したが、これはC02排出削減を求める「京都議定書」への背信行為である。また、府はダイオキシン対策としてゴミの分別・削減に逆行する「広域化計画」を市町に押し付けているが、地元住民、市町との矛盾が噴出している。いま、全国で焼却炉建設の9割は大手5社が受注している。府が厚生労働省言いなりで強引にすすめている「広域化計画」による新たな大型焼却炉の建設は、大企業の利益のためのものと批判されてもしかたがないものである。
5、世論と運動に押されて、切実な願い実現
このように知事が府民の願いに背を向けているもとでも、府民の世論と運動の広がりが府政を動かす力であることをあらためて示した。
「北部と南部に養護学校を」の声が、父母をはじめ関係者の運動で大きく広がるなかで、教育長が「北部に養護学院を新設する」と表明、南部についても「再編とあわせ検討」とはじめて態度を表明した。自民党は、代表質問で、「養護学校の充実、強化」のために奮闘してきたかのように発言したが、まったくあつかましい議論たといわなければならない。これまで、自民党など与党会派は、養護学院新設を求める請願をことごとく拒否し、今議会でも不採択としたのである。しかし、自民党がこうした弁解をいわざるを得ないところに、世論と運動に追い詰められた姿が示されている。
また、宇治争水場導水管事故について、各会派とも取り上げたが、わが党議員の「水道条例5条を活用しての減免を」との道理ある提案に、理事者が「減免を検討している」と答え、「飲食店経営者らへの補償」についても、「法的には難しい」としながらも「宇治市と十分な連携を図りたい」と答えざるを得なかった。
6、知事の責任逃れの反共攻撃
今議会においても、知事は、わが党の質問の答弁に窮すると、相変わらすの反共攻撃で、言い逃れようとする答弁をおこなった。
知事は、「市町村合併の誘導・押し付け」をおこなっていることを具体的に指摘し、やめるよう求めたわが党の質問に対し、「合併の機運が高まった場合には、府として関係町村や住民の利益のために、国の有利な制度を活用することは当然である。共産党の主張は、合併しようとする市町村や住民の意思を府が阻害したような結果になる。」と答え、そのうえ、向日町や長岡京の市政昇格のとき、「府の意思でストップしようとした共産党の体質を思い出す」と事実に反する発言をおこなった。
しかし、今日の市町村合併の議論は、知事の言う「合併の機運が高まった」もとで起こっているものではない。国が、市町村の意思を踏みにじって強引に合併を進めていることは、全国町村長大会が「数値目標や期限の設定、地方交付税の見直しなどによる合併誘導措置等は地方自治の理念に反する」と厳しく批判したことにも示されている。ところが、京都府も合併の「組合せ試案」をつくり、「行政改革推進地域会議」などで「合併に乗り遅れるな」とばかりの説朋をしていることからも、知事が言う「機運が高まっている」ことに、府が対応しているのでは
なく、国の「合併推進」の片棒を担ぎ、「誘導・押し付け」をおこなっているものであり、これをやめるべきだと要求することは、市町村自治を守る当然の立場である。
さらに、向日町や長岡京の市政移行をめぐる問題については、すでに98年2月議会でわが党議員が反論しているとおり、「乙訓3町合併か」、「単独市政移行か」の住民的合意がないもとで、住民合意を求めた当時の蜷川府政の立場は、住民自治を貫く当然の態度である。
結局、知事の発言は、自らが住民の意思を尊重するという、住民自治の立場にたっていないことを示すだけである。
また、知事は「共産党は、自分の都合によって『府は市町吋を指導してはいけない』とか、逆に同和行政などは『なぜもっと市明村を指導しないのか』といわれる。地方公共団体である府と市町村の関係、地方自治の理論をまったく、十分承知されていないのではないか」と攻撃したが、これほどおそまつな自己弁護の論理はない。府が市町村自治に介入すべきでないことは当然であるが、その上にたって、市町村自治が発展し、住民の暮らしを守る自治体としての役割が発問できるよう府が支援をすることは、府の責任でもあり、なんら矛盾するものでは
ない。
もともと地方自治体は住民が自らの手で、自分たちの暮らしと地域を守るための組織である。ところが、自民党政府は、この地方自治体を国の出先機関のようにし、国の悪政をすすめる道具にしてきた。近年は、地方自治体を大型開発、大型公共事業推進のための「開発会社」のようにし、全国の自治体を空前の借金をかかえる事態にしたのである。そして、本来の住民の暮らしを守る仕事には、必要な財政措置を行なわなかったどころか、これを削減してきたのである。
こうした中で、わが党は、知事が国言いなりに市町村に悪政を押し付けることを厳しく批判し、市町村が地方自治体の役割を果たせるよう財政措置を行なうなど支援を要求することは、地方自治を守る当然の立場である。
荒巻知事こそ、自治省出身の官僚知事として、国の意向を市町村に押し付け、市町村が自主的にとりくむ事業をおさえることを当然視して、地方自治を踏みにじってきたのである。今回の知事の発言は、こうした自らの姿を覆い隠すために、底の浅い「地方自治の理論」なるものを持ち出してきたに過ぎない。
7、請願及び意見書について
今議会に、道路財源をめぐる請願が関係自治体などから7件提出された。これは、道路特定財源の見直しが議論されているもとで、国土交通省の意向を受けて提出されてきたものであるが、「道路特定財源は目的税であり、その目的以外に使用されるべきではなく、見直しなどをおこなうことなく制度を堅持すべきである」「一般財源化など他に転用することなく」など、道路特定財源の一般財源化に反対する意図を示すものであり、こうした主張に、わが党は「ムダな高速道路建設などの財源を引き続き、維持しようとするものであり、反対である」ことを表明するとともに、高速道路とそのアクセス道路優先で、生活関連道路建設があとまわしとされていることを指摘し、そうした財源こそ保障すべきであることを主張した。
請願の中で、国道178号府中バイパスの早期実現を求める請願は、そのための道路財源の確保を求めるものであり。わが党も賛成、全会一致で採択されたが、意見書の提出には自民党が反対し、意見書を提出することは出来なかった。まさに、自民党なと与党会派が党利党略で請願をもてあそぶものである。
わが党は、事実上の道路特定財源の維持と第二名神など高速道路整備優先を求める与党会派の意見書案に反対し、道路特定財源の一般財源化と国道27号、162号、163号、178号、307号、312号、477号など生活関連道路整備の促進とその財源確保を求める意見書案を提出した。しかし、国政では第二名神高速の凍結を主張する民主党も含む与党会派の反対で、切実な生活関連道路の整備促進の意見書案は否決された。
この他、与党会派は「私学助成の充実に関する意見書案」を提案したが、わが党は私学関係者の願いにこたえるものとして賛成した。しかし、国が私学助成増額のための単価改定を実施しても、府がこれを行わず、据え置き、減額していることこそ問題であることを厳しく指摘した。
また、与党会派は「新たな農産物貿易ルール等の確立に関する意見視案」を提案したが、その内容は、アメリカなど農産物輸出国の横暴を許さず、自国の農業と食料を守る立場にたつ当然のものであり賛成したが、その中心問題である米をWTO協定からはずすことや、米価の安定については、言及していないもので、与党会派が農家と関係者のこうした切実な要求には、まともに応えようとしていない姿を示すものである。
わが党議員団は、府民の願いにこたえ「医療保険制度の改悪に反対する意見書案」「不良債権早期最終処理に反対する意見書案」を提案したが、いずれも与党会派によって否決された。
8、議場に「日の丸」掲揚は、認められない
今議会では、議長から「国旗が法制化され、すでに39都道府県議会において掲揚されている国旗を府旗とともに、府議会本会議場に掲揚したい」との提案が行われた。わが党は、「法制化はされたが、『日の丸』が侵略戦争の旗印となったことなどから、国民の中にはさまざまな意見がある。これを府民の多様な意見を代表し、議論を保障するべき議会において掲揚することは、言論の府としてまったくふさわしくない」「こうした重要問題を数の多数で強行すべきではない」と主張し、引き続き議論をすることとなった。
9、いまこそ、住民の暮らし守る新しい京都府政へ改革を
今議会で、自民党は代表質問で、半年後に迫った知事選挙に荒巻知事が五たび出馬する意思があるのかどうかを問う質問を行った。荒巻知事は、現時点では「答えられない」と、自らの態度表明は避けた。
いよいよ、知事選挙まで、あと半年と迫った。自民党府政が誕生し、24年、荒巻府政も16年もつづいている。この24年間、自民党府政は「活力ある京都」を掲げてきたが、活力が生まれるどころか、京都の経済は全国で最悪の事態である。しかも、京都らしい行政は何一つなく、すべてが「国言いなり」「東京や大阪の物まねの街づくり」に終始し、「21世紀の京都、このままでいいのか」と多くの人々が心を痛めている。
21世紀最初の知事選挙は、このまま今の府政を続けるのか、それとも、府民の願いを生かし、京都らしい府政を21世紀に築くのかが問われる選挙となる。わが党は、府政の改革を願うすべての府民、団体と力をあわせて全力を尽くすものである。
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