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2002年度京都府当初予算案について(談話)

2002/02/05 更新
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2002年度京都府当初予算案について(談話)

団長 西山 秀尚

 1、2月4日から京都府議会2月定例会が開催され、新年度予算案を中心にした審議がはじまった。今回の予算案は、知事選挙を控え「骨格予算」とされているが、わが党議員団は、国民に激痛を与える“小泉流改革”が進められているもとで、府民の営業や暮らしを守り、雇用・不況対策、介護保険をはじめとした社会保障の充実、21世紀を担う子どもたちのための乳幼児医療の充実、教育条件整備、環境対策、農林水産業への支援の強化など、府民の切実な願いにこたえ、京都経済の立て直しと京都らしさを発揮した予算となるよう全力をあげるものである。

 2、一般会計予算については、マスコミも「45年ぶりマイナス」と報じているように、地方財政計画のマイナス1・1%よりはるかに大きくマイナス5%となっており、府税収入の大幅な落ち込みによる「厳しい財政事情を反映した」ものとなっている。

 この府税収入の落ち込みを、あらたな借金と基金の取り崩し、さらには府民と職員への犠牲の押し付けで乗り切ろうとしているのが、今回の予算案の特徴である。

 府税収入が前年度に比べ380億円の減額となっているが、そのうち法人2税160億円、府民税利子割161億円の減少である。法人税の落ち込みはITバブルがはじけたため、京都の5万数千企業のうち、わずか数社のIT関連大企業の落ち込みが、そのまま大幅な府税収入の減となっているののである。京都府は99%を超える企業が中小零細企業であり、今日その72%が「赤字経営」となり、税金が払えない経営状況に陥っている。府の財政を安定させるためにも、これらの中小零細企業が「税金が払える経営」となるよう支援することが求められていたにかかわらず、おざなりにし、一部のIT関連の特定企業に依存する税収構造にしてきたゆがみが反映しているものである。

 蜷川府政時代には、「民力培養型」といわれたように、「圧倒的多数である中小企業の経営を安定させてこそ、府の財政も安定させることができる」と、京都の実態に合った中小企業対策を強化し、財政健全化を進めた。ところがいまの府政は、バブルの時には「民活」だのみで「丹後リゾート」や「学研都市」などに企業などが進出してくれることを夢み、「情報化時代」といわれるとIT関連企業に過大な期待をかけた行政運営をおこない、京都の経済を支える中小零細企業対策は、まともにおこなわなかった結果が、こうした事態を招いているのである。

 そのうえ、今日、「税収の安定化のため」として「外形標準課税導入」を国に求め、「赤字経営」に陥っている企業からも税金をとろうとすることは、「能力に応じた負担」の税の原則を踏みにじり、京都の中小企業をいっそう窮地に追い込み、結局、京都府財政もますます困難に陥れるだけのものである。「外形標準課税」導入に熱心な知事や前副知事には府政の舵取りを担う資格はないことは明白である。

 3、府債発行額は前年度より162億円増え、過去最高の977億円にものぼっている。その結果、借金残高は一般会計で1兆1308億円となり、特別会計起債残高をあわせると1兆2617億円で、府民一人当たり約48万円になる。

 こうした借金の元利返済額は、98年度783億円、99年度941億円、2000年度917億円、01年度1064億円、そして02年度は1152億円と増え続けており、今後も府民に重い負担となってくるものである。

 しかも、これら府債残高の多くは、丹後リゾートや学研都市開発、木津川右岸サッカースタジアム公園など、ムダな大型開発事業関連である。今度の予算案でも、ムダと環境破壊、そして事業のゆきづまりが明白な、京都市内高速道路出資金約10億8000万円、関西空港への出資金1億円、木津川右岸運動公園3億2000万円、丹後リゾート公園2億700万円、舞鶴和田埠頭5億9000万円など、その多くを借金に頼って事業を継続している。

 財政状況が厳しく、借金残高も大きく膨れ上がっているもとで、こうした事業はきっぱりと凍結すべきである。

  こうしたムダな公共事業は借金に依存して事業を継続しながら、いま府内で3500人以上も待機者がいると見込まれる特別養護老人ホームの建設は、わずか3ヶ所であり、これでは待機者の解消はいつになるのかといわなければならない。また、府営住宅建設費は前年度約30億円が約10分の1の3億2400万円に削減されている。

 4、「財政健全化のため」として171の事業を廃止・削減するなど「見直しを徹底した」としているが、法期限が終了した同和対策事業や、これまでから批判が厳しかったイベントの廃止などは当然である。ところが、府立医大への繰入金を昨年度2億6600万円減額し、今年もさらに約2億円減額している。また、与謝の海、洛東、洛南病院への補助金も2億8千万円減額している。他にも総合周産期センター運営助成費や救急告示医療機関等助成費など、府民の命を守るために本来充実すべきものまで、「財政危機」を口実に削減されている。こうした府民への“痛み”の押し付けは許されない。

 5、予算案の発表にあたって、知事は緊急雇用対策や不況対策を重視したとしているが、これは国の基金を活用したものがほとんどで、当然のものである。

 今日、雇用対策というのなら、失業者を増やし、雇用不安を拡大している大企業の身勝手なリストラ、首切りを規制すること、さらには労働基準法などに基づきサービス残業の根絶、有給休暇の完全取得、残業の抑制などで雇用を拡大する方向こそ求められている。ところが、知事は「企業活動に口出しはできない」と、これを容認する態度をとっている。

 わが党議員団は、大企業の横暴を許さない雇用を守るルールの確立、サービス残業をなくすなど雇用を拡大する本来のワークシェアリングの実現・安定雇用の拡大に奮闘するものである。

  しかも今回、国の措置とはいえ「女性就業サービスセンター」が廃止された。女性が働き自立するうえで、このサービスセンターは大きな役割を担い、最近では女性の労働相談件数も増え、パソコン講習や医療・経理事務講習など技術を身につける場としての要望も高まっていた。これを廃止することは、雇用・不況対策としてはまったく逆行である。

  また、不況対策として、昨年に引き続き20億円の臨時生活関連整備事業が継続され、1月末からの経営改善借換融資、公立高校授業料減免措置の所得制限の緩和、私学の授業料減免制度の改善などが盛り込まれた。これらは、関係者の切実な要求と運動が実ったものである。

  しかし、すでに全国的にも広がりつつある不況に苦しむ建築関係にとって仕事起こしに大きな効果があり、住宅の耐震補強やバリヤフリー化、環境対策からも求められている「住宅改修助成制度」や介護保険の減免制度、子どもの医療費助成制度の拡充は見送られている。

 6、国は市町村合併を強引に進めるため、「合併特例債」などの誘導策を強める一方、人口5万人以下の自治体の交付税を削減する「段階補正の見直し」をおこなっている。このような中、交付税減額で財政がいっそう困難になる規模の小さい市町村に市町村自治振興補助金を増やすことが求められているとき、予算案は、総額は据え置きながら、市町村合併促進のための事業を盛り込んだ。結局、合併をすすめる市町村には補助を増やすが、合併を選択しない市町村には国と同様に、府の振興補助金は削減されることになる。これは、この補助金が本来、市町村自治を応援するものであるにかかわらず、自治を破壊することに使おうとするものであり、認められるものではない。

 7、同和対策事業については、「地対財特法」の経過措置が切れる本年度末で、同和対策事業はすべて終了することが求められている。本府も、残っていた26事業のうち同和地区水洗化促進等補助事業や子ども会への補助事業など16事業は廃止、一般対策への移行の方向を打ち出した。残されている事業は、基本的にはこれまでの融資事業の利子補給事業など「残務処理」的なものとされている。

 しかし、一般対策に移行したとされる「同和経営指導員等設置事業」は国が補助金でこれまでと同様に、経営指導員の設置を継続するとしており、結局「存続」することになる。このように一般対策への移行としながら、これまでの隣保館事業と同様に、事実上、同和特別対策が継続することがないようにしなければならない。

 8、与党会派は、荒巻知事のこれまでの財政運営を「卓越した手腕」ともてはやし、「堅実な財政運営」と評してきたが、それならばなぜ、知事自身が繰り返し「財政危機」と言わざるを得ない事態を招いたのか。与党会派がいくら褒め称えようと、今回の予算案を見ても、府の財政を困難にしている原因が、府財政を支えてきた中小企業の経営支援をおざなりにし、他方、京都経済の「活性化」に役立たないムダな大型開発をすすめ、借金を増やしてきた荒巻知事の府政運営の誤りにあることは明らかである。

  こうしたもとでも、府民の世論と運動で、今回の予算案でも、先に述べた臨時生活関連整備事業や経営改善借換融資などを実現するとともに、朱雀高校へのエレベーター設置や活断層調査事業、介護保険利用調査など実現を見たものもある。

  知事が変われば、ムダな公共事業はきっぱりやめ、府民の暮らしと営業を守る予算へと大本から転換することができる。わが党議員団は、2月議会でこの予算案について府民の目線に立った徹底した審議をおこなうとともに、森川明さんを先頭に知事選挙で勝利し、「府民が主人公」の新しい府政実現に全力をあげるものである。