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政策と見解

京都府の不法投棄規制条例の制定にあたっての提案

2002/10/29 更新
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 いま、京都府は、12月議会に「不法投棄規制条例」を提案する準備を進めていますが、わが党議員団では、廃棄物処理問題の抜本的な解決のために、この提案を発表するものです。

府民の運動と党議員団の追及が実った不法投棄の規制条例制定

 わが党議員団は、20年前から、緑のトラスト条例制定や産業廃棄物の不法投棄防止のための条例の設置などを繰り返し求め、94年には「林地開発要綱」の制定、小規模開発、不法投棄の規制を提案してきました。その後も事態が一層深刻化するなかで、さらに不法投棄防止の条例の制定を要求するとともに、抜本的解決策を提案してきました。

 最近では、亀岡市畑野や宇治市炭山など、数多くの悪質な不法投棄事例を議会で追及、府民のみなさんとともに解決するために全力をあげてきました。

 今回、提案されている「不法投棄規制に係る研究会」報告の条例案骨子は、これまで悪質な業者が違法行為の口実としてきた「リサイクルできる商品」「仮置き」「自家処理」などの言い分に歯止めをかけ、立ち入り調査や搬入ストップを命令する根拠となり、条例制定は不法投棄規制に一定の役割を果たすものであるといえます。この条例制定は、府民が切実な要望として府に求めてきたこと、また、党議員団があらゆる機会を通じて要求してきたことが実ったものです。

 しかし、わが党議員団は、そのような積極面とともに、本当に問題が解決できるのか、これまでの府の廃棄物行政の取り組みからみて、多くの疑問をもっています。また、条例案の内容に立ち入って解決しなければならない問題もあると考えており、以下の点で提案をするものです。

 現状

 廃棄物の不法投棄問題は極めて深刻な問題になっています。2001年度に府内で発生した不法投棄の件数は、京都府が掌握しているだけで651カ所、指導件数は3,776件にのぼっています。このうち、常時監視している箇所は40カ所に上ります。その被害は自然や住環境の破壊にとどまらず、住民の健康や命、財産を脅かすまでにいたっています。さらにその手口は、巧妙、悪質になっています。

 亀岡市畑野町では、住宅地の直近、真上の山で長年無許可で採石行為を続け、石を採ったあとに産廃の不法投棄を行い、防災上極めて危険な事態を引き起こしています。南山城村の高山ダム周辺では、ダムに面して貯水面ぎりぎりまで大量の産廃の不法投棄が行われ、貯水に重大な支障をきたしました。高山ダムの下流では府営水道の取水も行われており、水道水の汚染も心配されています。

 さらに、日吉町では、産廃不法投棄で逮捕された業者が自己破産し、その土地が転売され、別の業者によって、動物霊園、植林用の苗づくりを名目に再び大量の産業廃棄物の不法投棄がおこなわれました。宇治市炭山では、伏見区で廃棄物の違法処理をおこない、操業停止に追い込まれた業者が、宇治市に移転し、山林の小規模開発を名目にして無許可の不法投棄を繰り返す事件が起こりました。

 また、悪質な行為者が廃棄物処理法違反で検挙され、刑事罰が課せられても、産廃を積み上げた現場はそのまま放置されることが多く見られます。井手町新四郎山では、長期にわたって不法投棄が繰り返され、原状復旧に業者が応じないために、埋められた谷は廃棄物の山と化し、さらに、この山中にパチンコ台2,300台が新たに不法投棄されるという事態になっています。

 このような不法投棄の多くに、暴力団が絡んでおり、関係住民に対して威嚇や恫喝を行い、夜間や早朝の搬入、府県を越えた広域的な不法投棄が繰り返されています。

 〔条例の内容に盛り込むべきもの〕

(1)廃棄物の削減に全力をあげ 数値目標の策定と遂行の保障をつくること

 廃棄物の処理は、一般廃棄物(家庭ゴミ、事業系ゴミ)の処理は市町村が、産業廃棄物の処理は都道府県が責任を持っています。府内のゴミの状況は1999年の数字で、一般廃棄物の家庭ゴミが66.6万トン、事業者から出る事業系ゴミが54.2万トン、産業廃棄物が550万トンと産業廃棄物が圧倒的です。さらに事業系ゴミと産業廃棄物の増加が顕著です。

 「ゴミはもとから絶たなければ」といわれます。いくら対策を強めても、廃棄物の増加が続いていけば「元の木阿弥」「いたちごっこ」です。廃棄物の減少が進まない最大の原因は国の政策にあることは明白ですが、府の廃棄物対策行政には、廃棄物の発生抑制を基本としていない重大な問題があります。

 わが党議員団は、一貫してその問題点を指摘してきましたが、府は一般廃棄物の処理について市町村に対し、ゴミ広域化処理計画を押しつけてきました。これは、府内7つのブロックに大型の焼却炉を設置し、ゴミの全量焼却方式をおこなおうとするもので、市町村に対して大きな負担を強いるとともに、住民とともにゴミの削減に真剣な努力を進めようとしないものです。

 事業系ゴミの削減では、事業者に対する努力目標の要請にとどまっているのが実状で、産業廃棄物の削減については、現在、環境審議会で削減目標が審議されていますが、提案されている目標は、若干の増加はやむなしとするものです。また、それが決定されても、削減を保障する具体的な対策は明らかになっていません。不法投棄の実効的な取り締まりの強化は必要ですが、取り締まりだけでは「いたちごっこ」です。

 いま求められていることは、廃棄物、特に産業廃棄物の抜本的削減を進める府の削減計画と目標の策定です。そして、生産者の責任、拡大生産者責任を明確にした府の廃棄物対策の確立、京都議定書の締結地にふさわしい理念を持った取り組みを進めることです。

 具体的には、廃棄物の排出業者に対し、削減計画の作成と進捗状況の提出、公開を条例に明記することが必要です。

(2)不法行為を許さない府の毅然たる姿勢が求められている

 第2の問題は、不法行為が明らかになっているにもかかわらず、府が迅速・適切な対策を打たなかったために被害が拡大、重大化したことです。何よりも府が迅速に対処すること、違法行為を行う業者に毅然とした態度で指導することが必要です。

 亀岡市畑野では、採石業の資格がなく京都府知事に採石許可申請もせず採石を続けてきた業者に対し、府はそれを見逃し、採石あとに産業廃棄物が不法投棄されるという事態を招きました。住民から不法採石が府に通報されてから10年以上、不法投棄を通報してからでも5年以上経って、ようやく警察により業者は逮捕されることになりました。ずるずると違法な採石と産廃投棄を許してきた府の甘い態度が深刻な事態を招き、住民の安全を脅かし、行政に対する不信を生み出してきたことは明らかです。

 井手町新四郎山では、約10年前から約5万トンの産廃が不法投棄され、住民や町の度重なる要請の中で、府は2000年5月に撤去を求める「措置命令」を出しましたが、ダンプカー2台分を運び出しただけで放置してきました。その土地に2001年10月、同じ業者がパチンコ台2,300台をさらに投棄したのです。

 廃棄物処理法には、「自社の廃棄物」「仮置きしている」などの業者の言い分を助長する弱点があることは事実ですが、明確な長期で悪質な不法行為の繰り返しなどを放置してきた府の責任は免れません。その姿勢が事態を深刻化させ、「やり得」を許し、不法行為の多発につながっているのです。不法行為を許さない府の毅然とした姿勢が求められています。

 原状復旧についても、事業者、排出者の責任も明確にし、原状復旧に責任を持つことを条例に明記すべきです。

(3)府民の声に真剣に応え、府が説明責任を果たしてこそ、府民の協力を得ることができる

 不法投棄を未然に防止するためには、広範な監視活動、府民の協力が欠かせません。せっかくの府民の協力も、府が迅速に動かず、その処理が明らかにならなければ、府民の協力は得られないどころか、行政に対する信頼はなはだしく損なわれます。府内の多くの不法投棄の現場で、住民の皆さんから出されるのは「何度も府に言っているのに」との声です。府が自らの責務として迅速な対応と府民に対する説明責任を明確にして廃棄物処理の行政にあたることが必要です。

 そのため、府は、府民の不法投棄の通報にもとづく調査、結果の公表を行うことを条例でも明確にすべきです。

 〔条例をより実効的にするため必要な府の施策〕

(4)京都市や府内の市町村、他府県との連携を重視すること

 不法投棄は、広域的におこなわれているのが特徴であり、機動的に対処することが必要です。今回、府条例が制定されても、京都市は政令指定都市であり、条例は適用されません。規制を逃れて、京都市での不法行為が頻発する恐れがあり、京都市域でも同様の条例策定を急いで協議すること、さらに、市町村職員が条例の運用にあたれるように、府の権限を委任し、立ち入り検査などができるようにすることが必要です。また、他府県との日常的な連携を強めることが必要です。

(5)不法投棄の防止のために 以下の基準要綱を策定すること

 不法投棄の規制条例とともに、森林での「小規模開発」を隠れ蓑とさせないために、1ヘクタール以下の林地開発を規制する府の独自要綱を急いで策定することが必要です。また、残土、盛土の高さや量を規制する残土、盛土についての規制要綱を策定し、基準を明確にすることが急がれます。

 〔国に対して強く要求すべきもの〕

(6)国の法整備や家電リサイクル法、建設リサイクル法の改正なども緊急の課題

 国が急いで法整備を進め、国の責任で改善しなければならない問題も数多くあります。

 多くの不法投棄の隠れ蓑に使われているのが「林地開発」です。現行の森林法では、1ヘクタール以下の「林地開発」は許可が要らないことになっています。これを利用して、「資材置き場」などと称して産業廃棄物を運び込む事例が数多く見られ、このような不法行為を防止するためには森林法の改正が必要であり、国に法改正を強く求めるべきです。

 不法投棄現場の原状復旧のためには、自治体による代執行が有効ですが、代執行への補助は、業界と国が支出する基金から4分の3が補助されますが、国の支出が少なく基金の総額が少ないため、適用件数に限りがあります。また、98年以前の発生事例については、自治体の負担が3分の2と大きく、回収の見込みがたたないために進んでいないのが現実です。国の負担割合を抜本的に増加させることが現状回復実現への重要な支援となります。

 この間、循環型社会推進法が成立し、そのもとに家電リサイクル法などが施行されました。ところが、これらの法律は消費者にリサイクル費用を負担させるために、抜本的な廃棄物の発生抑制につながっていません。それどころか、負担を避けるための不法投棄が急増しているのが実情です。拡大生産者責任を明確にしたリサイクル法に一刻も早く改正することが必要です。

 今年5月、建設リサイクル法が施行されました。産業廃棄物の中で、実質的に最大の量を占めているのは建設廃棄物です。不法投棄の現場でも、建設廃棄物が大きな比重を占めており、建設関係の廃棄物の分別リサイクルを進める建設リサイクル法が適切に機能すれば、廃棄物発生抑制に大きな効果を生み出すと考えられます。

 ところが、施行された建設リサイクル法は大きな欠陥を抱え、リサイクルの促進どころか、不法投棄の増加に拍車をかけかねないものです。拡大生産者責任が明確にならないなかで、法の趣旨徹底の遅れ、リサイクルを含む処理料金の負担の増加、煩雑な手続きなど建築業者の負担が急増し、安価で請け負う未許可業者の横行、不法投棄、野焼きなどの増加につながりかねない事態になっています。

 府は、国に対して強く法の改正を要求するとともに、廃棄物行政の緊急の課題として建設リサイクル法不備への対応が求められています。