12月定例議会を終えて(談話)
2002年12月19日 日本共産党京都府会議員団 団長 西山 秀尚
12月17日、12月定例会が閉会した。今議会には、9月議会に提案され、決算特別委員会で審議されてきた決算認定議案5件と「産業廃棄物の不適正な処理を防止する条例」など14件の議案が提案された。
わが党議員団は、長引く不況のもとで年末を控え、府民の暮らしや営業が厳しくなっている中、「ムダづかいをやめ、くらしと営業を応援する」施策の拡充を求めて奮闘した。
1、 府民の運動と世論が、府政を大きく動かす
11月20日、府内各地から「暮らし守れ・仕事よこせ」と1200人が京都府庁を取りまき、知事に対して切実な要求の申し入れがおこなわれた。
また、府議会にも教育関係23件16万人をはじめ、36件20万人もの府民の切実な要求にもとづく請願が提出された。
こうした草の根からの粘り強い府民ぐるみの運動が、大きく広がる中で、今議会では、府民の願い実現で、画期的な前進をかちとった。
第一は、「子どもの医療費助成の拡充」について、知事が「拡充に向けて検討する」と公式に表明したことである。4年前の知事選では「絵にかいたもち」と攻撃し、多くの署名を添えて繰り返し提出された請願を、ことごとく不採択としてきた与党会派が、はじめて「拡充が必要ではないか」と質問し、京都府医師会から提出された「乳幼児医療費の拡充を求める」請願に賛成するなど、その態度を大きく変えた。
さらに、国に対し「就学前までの助成制度を」求める意見書も、全会一致で可決した。
こうした変化は、府内各地で広がる運動と、25市町で「就学前」以上の実施が広がるもとで、拡充に踏み出さざるをえなくなったものである。
わが党議員団は、知事の言う「拡充」が「就学前まで」となるよう、広範な府民のみなさんとひきつづき全力をあげるものである。
第二に、中小企業関係者や日本共産党の要求で本年一月から始まった「借換融資制度」も、この間の京商連をはじめとする中小業者の「拡充を求める」運動で、借換対象を「協会保証付のプロパー融資(銀行融資)も対象にする。新規資金も対象」と大幅な改善を実現、西山参院議員の国会での追求もあって、同様の制度を国としても実施することとなった。
第三に、府立学校の普通教室へのクーラー設置についても、教育長は「必要性を十分認識している。早期に事業化がはかられるよう検討していきたい」と答弁した。これも、父母や教職員からの強い要求が出され、わが党議員団も求めてきたが、教育長はこれまで「必要ない」としてきた態度を変え、実現へ大きく踏み出した。
第四に、ムダな大型開発、大型公共事業について、「南丹ダム建設」の中止、「スタジアム建設」「丹後リゾート公園」の大幅見直しが表明された。
「南丹ダム」については、地元関係者やわが党議員団が「水需給計画もなしに、先にダムありきではないか」と厳しい批判をおこなってきた。ところが地元・自民党府会議員は「ダム建設に疑問との声もあるが、くらしと地域振興に欠くことのできないダム」と建設を要求、前知事も「推進する」と答弁し、6億円もかけて調査を続けてきたが、今回、とうとう「中止」を決定せざるを得なくなったものである。このダム建設については、公共事業再評価委員会も「事業継続は妥当」としていたもので、「委員会」の責任も問われるものである。
「木津川右岸運動公園のスタジアム建設」についても、当初4万3千人規模としていたのをすでに3万人規模に「縮小・見直し」としていたが、今回「スタジアム建設の見直しを含めた検討」を表明した。
「丹後リゾート公園」建設も、これまでの総事業費150億円規模の事業を大幅に見直し「リゾートの名称はなくす。総事業費は現在の数分の一となる見込み」であることを明らかにした。
これらはいずれも、わが党議員団が、「府民が気軽に利用できるものではない」(スタジアム建設)、「滞在型の丹後リゾートは成り立たない。見直すべき」(リゾート開発)とその中止を求めていたもので、知事選挙でも大きな争点となり、府民の厳しい批判を受けていたものである。
このように、府民の要求の実現と大型公共事業の中止、見直しは、府民の世論と運動こそが府政を動かす力であることを、明瞭にしめしている。
第五に、今回提案された「産業廃棄物の不適正な処理を防止する条例」は、亀岡市畑野町や井手町新四郎山などで、産業廃棄物の不法な処理が続き、京都府が毅然とした対処をしないことへの厳しい批判が高まっているもとで、わが党議員団がその制定を求めてきたものである。
わが党議員団は、この条例の制定を機に京都府がこれまでの産業廃棄物の不法な処理にたいする姿勢を改め、毅然とした対応をとるとともに、この条例が実効あるものとなるよう求めた。
2、運動と結んで、府議会の論戦でも新たな前進が
決算委員会や今議会で、わが党議員団は、府民の運動と独自の調査をもとに、論戦を展開し、新たな前進をかちとった。
第一は、京都府が国に対して求めている外形標準課税の導入は、京都で400億円(総務省案)もの大増税となること、「広く薄く」「受益に応じた負担」は道理がないこと、中小企業の町・京都の経済をいっそう困難にするものであることを明らかにする中で、知事は、まともな答弁ができない事態に追い込まれた。
商工会議所をはじめ中小企業団体などの大きな怒りの前に、政府も「資本金1億円以上の企業を対象に」せざるをえなくなったが、外形標準課税は赤字企業からも税金を取るということ、将来中小企業にも課税対象を広げることは明らかであり、わが党議員団は、今後もさらに世論と運動を広げ、「導入中止」へと奮闘するものである。
第二に、丹波町に建設予定の「畑川ダム」について、「南丹ダム」と同様、過大な水需要予測のもとでの計画であり、これがすでに破綻していること、さらに大規模に畜産経営がおこなわれているところでの取水であり、水道水には適さないことなどを明らかにした。
これについても、知事は、すでに破綻している「当初計画」そのままの答弁を繰り返し、まともな答弁ができない状況に追い込まれている。
第三に、私学助成について、父母負担の軽減と私学経営支援のために、国庫補助が98年に比べ6億円余増額されているにもかかわらず、一般財源は3億円減らしていることを明らかにし、文部科学省も、こうしたやり方を批判していることを明らかにした。こうした結果、これまで国への「私学助成の増額を求める意見書」しか提出しなかった与党会派が、京都府に対して「私学助成の充実・強化に積極的にとりくむこと」を求める決議を提案、全会派一致でこれを採択した。
第四に、「30人学級」についても、これまで「少人数学級が、必ずしも教育効果があるとはいえない。少人数授業で対応する」とかたくなに「少人数学級」を否定してきた教育委員会が「少人数学級について検討していきたい」と表明した。これも運動が大きく広がり、京都市でも35人学級が実施される状況のもとで、態度の変更を余儀なくされたものである。
わが党議員団は、今後いっそう運動と世論を広げ、府内のすべての小中学校で「少人数学級」が実現できるよう、ひきつづき奮闘するものである。
3、「ムダづかいをやめ、くらし応援へ」転換を
2001年度決算認定については、失業率が全国でワースト3、製造業の事業所減少率が全国最悪で5件に1件以上は倒産・廃業に追い込まれているにかかわらず、本府が中小企業振興費を前年比8億6000万円も減額、小売商業振興事業費補助金も1億5900万円を7千万円に二分の一以下に大幅減額、伝統産業後継者支援制度も廃止など、中小企業・伝統産業振興対策を後退させたことが、全国でも最悪の京都経済の落ち込みをまねいていると厳しく批判した。
また、府民の切実な願いである介護保険減免制度や乳幼児医療費助成の拡充、私学助成の増額などに背を向けてきたこと、自ら「中止」や「見直し」を表明せざるをえなくなった大型開発事業を継続し、税金を投入し続けてきたことなどを厳しく批判し、一般会計および特別会計決算認定に反対した。
あわせて過大な水需要予測にもとづいて建設した乙訓浄水場の負担を地域住民に押し付けている水道事業会計の決算認定に反対した。
今回提案された府職員や教職員、警察職員の給与カットで捻出されるあらたな80億円の財源が、子どもの医療費助成や介護保険減免、住宅改修助成など、府民のくらし応援のために生かされるよう強く求めた。
また、「地方自治・住民自治」を否定して押し付けられている市町村合併についても、全国町村長大会や町村議長会が、激しい抗議の意思を示し、府内の各地域でも、国・府の合併押し付けに批判の声が高まっている。わが党議員団は、京都府がこうした声に背を向けて合併を押し付けていることを厳しく批判し、住民の声に応えてがんばっている市町村こそ支援することを求めた。
今議会中、教育委員会は、「府立高校改革推進計画」案を発表したが、通学圏を拡大し、「中学生が高校を選べるようにする」として学校間格差を広げようとするもので、そのひとつとして「洛北高校を中高一貫校」にすることを明らかにした。しかし、これは学校関係者にも父母にも、まったく知らされていず、京都市立中学校校長会からも「一方的で一切説明がない」として白紙撤回を求める申し入れがおこなわれるなど、学校関係者や父母、地域住民の声も聞かずに「高校改革」をすすめる府教委に批判の声が高まっている。
わが党議員団は、こうしたやり方を厳しく批判するとともに、子どもや父母の願いに応えた高校教育制度となるようひきつづき奮闘するものである。
4、「アメリカのイラク攻撃計画は中止を」の声に応えた意見書を採択
わが党議員団は、アメリカのイラク攻撃の危険が強まり、自衛隊イージス艦のインド洋出航という事態のもとで「イラク攻撃の中止」と「イージス艦派遣中止」を求める意見書を議会の意思として提出することを提案。
与党会派は、わが党の意見書には背を向けながらも「アメリカ合衆国によるイラク攻撃が危惧される」と指摘し、「紛争解決の手段として戦争を行うことは断じて許すことはできない」「わが国は国際協調と国連中心を外交の基本とし、勇気をもって国際問題の平和的解決のために努力すべきである」「憲法の精神にのっとり、国際法ならびに国連憲章のもと、毅然とした態度であらゆる外交努力をつくすよう強く要望する」との意見書を提出し、全会派一致でこれが採択された。
これは、今日のアメリカの危険な戦争計画とこれに言いなりで米軍との共同行動をとる政府の外交姿勢への、府民の不安と怒りの声が反映したものである。
5、府民の世論と運動の前に、「支離滅裂」の与党会派と反共だけの公明党のみにくい姿さらけだす
今議会では、府民の大きな運動に追いつめられた与党会派は、その論戦において、まったく「支離滅裂」と言う事態に陥った。
98年予算委員会総括質疑で、南丹ダム建設を要求していた自民党議員が、今回の中止決定を「英断」と評価したり、亀岡市畑野町における不法投棄の解決を求める声に対し、「京都府はちゃんとやっている」と言ってきた自民党議員が、「違法行為をおこなうものの抗弁を許さないしくみづくりが必要」といいだすなど、自らのこれまでの態度とまったく異なる態度を表明した。
また、「乳幼児ネット」の33000を越える「国に乳幼児医療費助成制度の創設と府の制度拡充を求める」請願を、与党会派は、委員会では「国に対しては昨年12月に意見書を提出している」として不採択にしておきながら、本会議には「乳幼児医療費の就学前までの助成制度を」国に求める意見書を提案するという混乱ぶりを示した。
さらに、民主党も含め与党会派は、「第二名神など高速道路建設の促進、道路特定財源の確保などを求める意見書」を提案したが、これも世論調査で、すでに近畿圏では70%が「不要」とし、「推進」は20%に過ぎないものを、多くの府民の声であるかのように描いて、高速道路優先にしがみつく時代遅れの姿をさらけ出した。
民主・府民会議の賛成討論にいたっては、来春の府会議員選挙のための予算が約9割を占めている補正予算を「府民の暮らしを見据えた予算」とほめあげ、まともに予算案を検討もしていない姿をさらけ出した。
このように、「理事者の提案にはなんでも賛成」で、「行政をチェックする」議会の役割を投げ捨ててきた与党会派の「支離滅裂」ぶりが浮きぼりになった議会であった。こうした議員がいくら増えても、府民の暮らし守る仕事も府政の改革もできないことは明らかである。
公明党は9月議会、決算委員会につづいて、中央病院における「虚偽の検査報告」問題を繰り返し持ち出し、「病院ぐるみの組織的犯罪」「殺人事件」であるかのように理事者に答弁させようとした。
しかし、この問題は、現在病院と府・市・社会保険庁によって調査中であり、理事者の答弁も、「法と制度に基づいて、適正に対処する」とするもので、公明党の思惑どおりの答弁は引き出せず、民医連つぶしや日本共産党攻撃など「政争の具」にしようとする、同党のみにくい姿をさらすだけであった。
わが党議員団は、こうした公明党に対し、「民医連が、住民の命と健康を守るために献身的にがんばってきたことは、阪神大震災の救援活動などで明らか。政府による医療保険改悪が、国民の命と健康を危うくしていることにこそ、心を痛めるべきではないか」と批判した。
今後も、公明党のこの事件や北朝鮮の拉致問題を使っての反共攻撃が強まることが予測されるが、これはもはや同党が「反共しか存在意義がない」党であることを、府民の前に自ら示すものである。
わが党は、こうした攻撃を打ち破り、いっせい地方選挙で新たな前進を必ずかちとり、「府民のくらし応援」「府民が主人公」の府政実現へ、ひきつづき奮闘するものである。