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政策と見解

2003年度京都府当初予算案について(談話)

2003/02/07 更新
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1、本日2月7日から京都府議会2月定例会が開催され、新年度予算案を中心にした審議がおこなわれる。今回の予算案は、山田知事のもとで初めての本格的な予算案であるが、わが党議員団は、長引く不況と小泉内閣の“痛み”押し付けの政治のもとで、京都府が地方自治体としての本来の役割を発揮し、府民の営業や暮らしを守り、京都経済を立て直す予算となるよう全力をあげるものである。

 2、今度の予算編成にあたって、すでにわが党議員団は知事に対し、府民の切実な願いをもとに重点10項目の要求をはじめとした「予算に関する申し入れ」をおこなってきた。

 また、昨年11月20日の「暮らしを守る府民総行動」で1200人の府民が、知事に多くの直接請願をしたことをはじめ、府議会にも、切実な願いが請願や要望としてだされるなど、多くの府民が、「くらし応援の予算」となるよう求めていたもとで編成されたものである。

 今度の予算案では、注目されていた子どもの医療費助成制度について、本年9月から「入院を就学前まで拡充、通院は8000円を超える分の助成をおこなう」こととなった。これは、この間の府民の運動と府内自治体での制度拡充の広がりのもと、これまで背を向けてきた京都府としても実施せざるを得なくなったもので、大きな前進である。

 しかし、「通院も無料に」との願いは切実で、「通院で8000円を超える」助成の対象者は限られており、わが党議員団は、府民のみなさんと共同して、子育て支援にふさわしく、「通院も就学前まで無料」となるよう、引き続き奮闘するものである。

 また、舞鶴の新設養護学校建設工事費の計上、府立高校普通教室のクーラー設置、就職難に直面する青年100人の臨時採用、臨時生活関連施設整備費の増額などは、この間の府民の願いと運動に応えたものである。

 また、生活路線バス維持対策事業について、府の単独助成措置が事実上継続されることとなった。これも関係市町村からの強い要望とわが党議員団の繰り返しての追求の結果である。

 同時に、わが党議員団が「大型公共事業よりも、福祉・医療での公共投資の方が経済波及効果も雇用の拡大にも役立つ」と公共投資の転換を求めてきたが、今回の予算案で、福祉や医療施設建設についても、「常用雇用が拡大されるもの」と位置付けるなど、これまでの手直しが図られている。今後、より全面的な転換をはかるべきである。

 このように、今度の予算案には、一定府民の願いに応えた予算が計上されたことは、知事や与党会派が、これまで「できもしないこと」「絵にかいたもち」などと言って、府民の切実な願いに背を向ける態度をとり、請願などをことごとく不採択としてきたが、そうしたもとでも、府民の粘り強い運動と世論、そして議会でのわが党議員団の論戦で、これを実現させることができることをしめした。

 3、予算案全体については、マスコミも「2年連続のマイナス予算」と報道したとおり、02年度当初の「骨格予算」より、さらに落ち込む「緊縮予算」となっている。

 この原因は、「不況による大幅な税収の落ち込み」とされているが、長引く不況で京都経済を落ち込ませ、府税収入の大幅減となったことは、これまでの政府と本府の経済政策の破綻を示すものである。また、一昨年来の税収の落ち込みが、IT関連の一部特定企業に税収を依存する構造としてきたことの破綻の結果でもある。

 こうした中で山田知事は、税収の大幅な落ち込みのもとで、「赤字経営の企業」からも税金が取れる「外形標準課税導入」で、「府財政の安定」を求めているが、これは、京都経済をさらに落ち込ませ、府財政をいっそう困難にするだけである。

 これまでから、わが党議員団は、99%を占める京都の中小零細企業が「税金を払える経営」となるよう支援をしてこそ、京都府財政の安定化も図れると求めてきたが、いまこそ、これに応えるべきである。

 同時に、「不況の影響」を声高に言うが、今回の税収減の内容をみれば、160億円の減少のうち、4分の1、38.8億円は不動産取得税であり、法人事業税の37.6億円減より大きくなっている。これは、政府の景気対策としての土地流動化政策で税率が4%から3%へと引き下げられた結果であり、今日の厳しい地方財政の状況に追い討ちをかけるものとなっている。

  また、府税収入の落ち込みの28%を占めているのが、府民税の利子割44.7億円の減少である。しかしこれについては、利子割の税収が多いときには「これは特別なもの」として扱い、「税収が減って大変だ」と言うときにはこれを計算に入れるという、きわめて恣意的扱いをしている。

 4、府債発行額は、本来交付税措置されるべき臨時財政対策債を除けば、02年度より「42億円余抑制している」としているが、関西空港出資金で1.2億円(02年1.0億円)、市内高速道路出資金で18.1億円(02年10.8億円)、木津川右岸運動公園で2.2億円(02年2.0億円)、丹後リゾート公園で3.9億円(02年1.3億円)、舞鶴和田埠頭建設で15.6億円(02年3.8億円)など、大型公共事業での府債発行額は増やされており、相変わらず、借金を増やしてでも大型公共事業はすすめるというものである。

 また、府債残高は、03年度末で1兆2100億円にもなり、府民一人あたり47万円となる。理事者は、このように府債残高が大きく膨れ上がっていることへの批判をそらすため、「府債残高の状況」を示し、「交付税措置されるもの」を差し引いて「実質的な府債残高」はたいしたことがないかのように説明している。しかしこれは、第1に、本来、地方交付税で措置すべきものを、地方自治体に借金をさせるという、政府の不当なやりかたを示すとともに、この分も、国民の税金で返済しなければならないことに変わりはないのである。

 第2に、借金の返済に充てる公債費は911億円と、02年度当初と比べ48億円増となっており、97年決算と比べれば179億円(124.5%)も増えており、今後さらに増える見通しである。

 これはわが党議員団が指摘してきたとおり、「有利な起債」などと言って国の誘導策に乗り、借金で大型公共事業をどんどん進めてきた結果、府財政の硬直化をもたらしているのである。こんどの予算編成における「収支不足の拡大」の中で、公債費が、義務的経費91億円増の53%を占める事態になってあらわれている。

 財政健全化を図ろうとするのなら、わが党がすでに繰り返し要求してきたとおり、1つには、国の地方に借金を押し付けるやり方に、きっぱりとした意見をいい、地方交付税の増額を求めることである。第2に、さらに借金を増やす原因となっている大型公共事業については、少なくとも「景気回復、財政健全化までは凍結」という措置をとるべきである。

 5、今年度も「財政健全化のため」として、215事業が廃止・削減された。エディンバラ日本庭園造園事業など、廃止して当然のものが含まれているが、健康増進車「すこやか号」の健康診断事業の廃止や新生児・妊産婦の救急搬送に要する経費助成の廃止、市町村自治振興補助金の1億円の減額、低所得者・障害者等の介護保険利用者負担金軽減措置の減額(8200万円)、京都スカイセンター運営助成(7000万円)、高齢者グループ活動助成(400万円)、生活福祉資金貸付事業(2億1000万円)、遺伝子組み替え食品検査(1060万円)など、本来継続・充実すべきものの廃止・削減も含まれている。そして、当然廃止をすべき同和奨学金償還事業(3.8億円)は継続しているが、これは今後さらに増大するものである。

 また、府立医科大学及び付属病院への一般会計からの繰り入れを01年度2億6600万円、02年度2億円、そして、今年度7.2億円も削減している。

 「財政健全化」のもとに、こうした福祉や医療の分野での削減は、自治体本来の役割をも後退させるものである。

 6、今回の予算案に関連して、マスコミも「府民が日常感じているのは、行き場のない閉塞感ではないか。生活をとりまく課題が山積みするが、行政がなかなか耳を傾けてくれないと言う不満がある。」(2/1京都)と書いたとおり、多くの府民は「従来型のムダな大型公共事業はキッパリやめ、暮らしや営業応援を」求めているのであり、これに応えることが求められている。すでに全国では、長野県や徳島県、さらには熊本市や尼崎市などで、こうした「自治体らしい自治体」を求める世論が、はっきりと示されているのである。

 今回の予算編成では、「アクションプランづくり」にパブリックコメントを取り入れ、府民の声に応えたかのような形はつくられたが、乳幼児医療費助成の拡充など、一部を除けば、府民の声には応えず、ムダと環境破壊の大型開発事業は事実上継続、他方で、「財政が厳しい」とのことで、府民の暮らしや営業を守る対策は、縮小する予算となっており、府民の声に応えたものとはなっていない。

 また、「活力づくり」でも、産業活性化については、京都経済を支えてきた伝統・地場産業は、事実上「おざなり」にし、IT関連やベンチャー、観光に目を向けた施策が目立っている。確かに新しい産業を興すことも必要ではあるが、京都のものづくりの基盤である伝統・地場産業を立て直してこそ、そこから新たな前進もある。これまでは、リゾートや学研開発などに頼り、これが破綻すると、今度はベンチャーやITに頼る、こうしたやり方は、京都の持つ高いものづくりの技術や資源を本当に生かすものとはならない。

 わが党議員団が繰り返し提案してきた、「伝統地場産業(地域経済)振興条例」をつくり、「京都経済再生会議」(仮称)の設置で、京都のものづくりを担ってきた中小業者・労働者、そして研究者・関係機関などの英知を集めることこそが必要となっているのである。

 いま、「府の未来づくり」のために求められていることは、形だけの「パブリックコメント」ではなく、真に「住民が主人公」の立場に立って、情報の公開、徹底した府民の意見をもとにした府政運営である。

 わが党議員団は、「住民が主人公」の立場で、府民の願いを府政に届け、その実現のため全力をあげるものである。