6月定例府議会を終えて(談話)
2003年7月14日 日本共産党京都府会議員団 団長 松尾 孝
6月26日から開かれていた改選後始めての定例府議会が、7月11日閉会した。今度の府議会は、SARS対策や緊急雇用対策の補正予算案、洛北高校への「中高一貫教育」導入に伴う「付属中学設置条例」などをめぐって審議がおこなわれた。
わが党議員団は、多くの府民の期待を担って選出された新人議員5名を含む12名が、積極的な討論をおこなうなど、公約の実現と府民の願い実現にむけ奮闘した。
1、山田府政になって1年が経過した。わが党は代表質問で、山田知事の基本姿勢を質した。
(1)知事は、選挙の際、「国に物を言う」と「国の官僚」とは対決するかのような態度を強調したが、今議会でも、「医療費の自己負担を元の2割に戻すよう国に求めるべきだ」と要求したことに、「皆保険制度を国民全体で支えることが大きな課題」と政府と同じことを言い、高齢者の医療費の自己負担限度額の引き下げについても「高齢者の方にも現役世代と負担を分かち合うもの」とまったく冷たい答弁をおこなった。
さらに、武装した自衛隊のイラクへの派遣も、「国際社会の一員として一翼を担うもの」、有事法制も「超法規的な事態を生じさせないため、当然のこと」「国民保護法制により、府民を守る」と政府と同じ答弁をおこなった。ここには、憲法を基本に、府民の立場に立って「国に物を言う」姿はどこにもない。
(2)また、「いまに立ち向かう」といいながら、乳幼児の医療費助成の拡充で「通院8000円を超える」のは0・7%程度に過ぎず、「絵に描いたもちになる」ことがすでに明らかになっているにかかわらず、改善要求に「ご理解をいただきたい」としか答えず、高齢者の医療費の「償還払い」手続きの簡素化をはかる問題にも「ご理解をいただきたい」と他府県ですでに実施している制度についても、背を向ける答弁をおこなった。府民の切実な暮らしを守る願いに応える「いまに立ち向かう」姿勢ではないことが、浮き彫りになった。
ムダな大型公共事業の見直しについても、市内高速道路、関西空港第2期工事、畑川ダムなどを「必要なもの」と強調し、さらに、「用測協」への用地測量業務の丸投げは、一審判決で、「官製談合」として厳しく批判され、その「違法性」が明らかとなったにかかわらず、控訴を当然とする態度を表明した。
これらは、いま全国各地で広がっている「ムダな大型公共事業の見直し」の流れに背を向けるもので、地方自治体が直面している課題に、まともに「立ち向かおう」としていないことを示した。
2、わが党は、代表質問や一般質問などを通じ、SARS対策として、国に抜本的対策を求め、京都には「第一種感染症指定医療機関」がないもとで、府立医大付属病院を「一種指定機関」とするよう求めるとともに、「障害者支援費制度」の改善と施設整備の充実やアレルギー性疾患対策、「食の安全対策」の強化、府営住宅の改善など求めた。
さらに「中小企業安心借換制度」の6月末の期限切れを前に、知事に期間の延長と制度の改善を求め、12月末までの延長が実現した。
産業廃棄物の不法投棄対策についても、亀岡市畑野の問題や新たに発生した瑞穂町井尻や京田辺市の不法投棄の取締りを求め、理事者も「適切に対処する」答えた。
また、養護学校の普通教室にも3年間でクーラーを設置することや伝統工芸品の学校教育への活用事業での要求実現でも前進した。
今後とも、わが党議員団は、府民の切実な願い実現のため、引き続き奮闘するものである。
3、今議会に、「中高一貫教育」実施のため洛北高校に付属中学校を設置する条例と関連予算が提案された。今日、日本の教育は「極度に競争的な教育制度によるストレスのため、子供の発達がゆがみにさらされている」と、国連・子どもの権利委員会から厳しい批判を受けており、この「極度に競争的な教育制度」を改善することこそ求められている。ところが、今回の特定校への「中高一貫教育」の選択的導入は、「受験競争の低年齢化」を招くことは明らかである。すでに進学塾での「受験競争の過熱」が始まっているにかかわらず、教育長は「進学塾の問題であり関知しない」との無責任な答弁をおこなった。わが党議員団は、こうした「受験競争の低年齢化」を招く「中高一貫教育」ではなく、希望するすべての子どもに高校教育を保障すること、格差がなく、安心して通える地域の高校の充実をはかり、人間的で豊かな高校生活を保障する改革こそ必要と、「付属中学校設置条例」と関連予算案には反対した。
4、京都府は5月29日、「地方振興局等の再編たたき台」を発表した。この「たたき台」に対し、すでに宮津、京田辺、八幡市議会から意見書が出され、関係市町村や府民からも、保健所や土木事務所の存続を求める要望書が提出されている。本府議会でも、わが党議員団だけでなく与党会派からも、厳しい批判の声が上げられた。
とりわけ理事者が「たたき台」として意見を求めておきながら、7月には実施案作成、9月には条例提案など、拙速にすすめようとしていることに強い批判が出され、総務常任委員会での再度の審議をおこなうこととなった。
わが党議員団は、SARS対策で保健所が大きな役割を果たしたように、府の地方機関が住民にとって「身近で頼りになる」ものとなるよう権限の委譲や体制の強化をおこなうこと、「先に再編・統合ありき」でなく、住民、関係者の意見を十分反映させたものとするよう求めて、今後とも奮闘するものである。
5、1月の森田前自民党府議団長(相楽郡)の「電磁的公正証書原本不実記録および同供用」容疑による逮捕に続いて、今度は、田中自民党府議(竹野郡)が、自然公園法・土地開発行為等指導要綱などの違反で、網野町議会から府議会に「処分を求める」要望がだされた。田中議員は、地方行革特別委員会委員長を辞任し、各会派に対し謝罪をおこなった。
府民の信託を受けた府会議員が、違法行為をおこなうことは許されるものではない。自民党府会議員によるこうした違法行為が繰り返されることは、議会の品位を傷つけ、府民の信頼を裏切るものである。わが党議員団は、今後、こうした事態を招くことのないよう強く求めるものである。
6、今議会には、「イラク特別措置法の廃案を求める請願」と「医薬品の一般小売店における販売について慎重審議を求める請願」がだされた。
イラク特措法について、民主党・府民連合は「会派としてはイラク特措法には反対」といいながら、請願の採択に反対するまったく道理のない態度をとり、わが党議員団が提案した意見書にも反対した。民主党は、国政では自民党・小泉政権と対決といいながら、府政では相変わらず自民党とともに「オール与党」体制を維持するために、自らの立場も投げ捨てても恥じない姿を示したものである。
「医薬品一般小売店における販売について慎重審議を求める請願」は、京都薬剤師会や薬種商協会、医薬品小売商業組合から、提出された。これは、小泉内閣がすすめる「骨太方針」による「規制緩和」が、国民の健康や安全を脅かし、街の薬局など小売商店の経営を脅かすもので、いまの小泉政治と広範な国民との矛盾を激しくしていることを示すものである。わが党議員団も賛成し、全会派一致で意見書も採択された。
わが党議員団は、「イラク特措法の撤回を求める意見書」とともに、「義務教育費国庫負担制度の堅持を求める意見書」および「学校施設整備の予算拡充を求める意見書」を提案したが、この当たり前の意見書にすら、他会派は党利党略から反対し否決した。こうした態度は、どの党が住民の立場で奮闘しているかを改めて示したものである。
7、わが党議員団は、「議会の活性化と開かれた府議会」となるよう、すでに議長あてに「申し入れ」(6月3日)をおこなってきたところである。こうした申し入れも受けて、府議会議会運営委員会に「研究会」を設け、その具体化について検討することとなった。
今後わが党議員団は、委員会審議における「一問一答」方式の実現、請願審査にあたっての請願人による趣旨説明の実施、手話通訳の配置など、実現のため奮闘するものである。
2003年6月定例府議会を終えて(談話)[PDFファイル 192KB]