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本会議質問

前窪 義由紀府議の代表質問

2003/10/01 更新
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【前窪】日本共産党の前窪義由紀です。私は日本共産党府会議員団を代表し、知事ならびに関係理事者に質問します。

消費税、イラク派兵、憲法改悪。国民の願いに背むける小泉改造内閣

 去る9月22日、第二次小泉改造内閣が発足しました。福田官房長官、竹中経済産業・金融担当相、坂口厚生労働相らの留任は、中小企業をつぶす「不良債権」処理の加速や、痛みを押しつける年金改悪など、国民の願いに背をむけた破綻済みの構造改革路線を強行するものであることは明白です。くらし破壊の小泉政治から府民の暮らしや営業をいかにして守るのか、府政のあり方が問われています。そこで知事に伺います。         

 政府の「国民生活に関する意識調査」では、「生活の不安」を訴える人は67%にのぼり、老後の生活不安、健康の不安、収入の不安はいずれも史上最悪となっています。にもかかわらず、財界が、2007年度までに消費税は10%に、14年度からは16%にと提言し、政府税制調査会も中期答申で「二桁税率」を答申しました。税率10%なら25兆円、4人家族で年約80万円の負担となる、恐るべき大増税です。小泉首相も増税への地ならしを明言しています。

 導入から15年間、消費税の累計は136兆円に上っていますが、同じ時期に大企業には減税を重ね、法人3税は累計で131兆円も減っています。国民から吸い上げた消費税は、大企業の減税の財源に飲み込まれており「社会保障の財源のため」にという口実は、まったく白々しいものです。

 消費税は、所得の少ない人に重くのしかかる最悪の不公平税制であり、身銭を切って納税している中小零細企業にとっては営業破壊税、さらに、不況に追い撃ちをかける景気破壊税ともいえるものです。知事は、京都の経済、府民の暮らしを守る立場から、消費税の大増税計画にキッパリ反対すべきです。いかがですか。

 日本共産党は、消費税の増税に一貫して反対し廃止を求めてきました。大型公共事業のムダをやめ社会保障中心の予算にあらためるなら、消費税増税の必要はありません。暮らしも経済も破壊する消費税大増税をくいとめるため、草の根からの運動を呼びかけるものです。

 平和や外交の問題ではどうでしょうか。イラクの全土が戦闘状態にもかかわらず、アメリカのアーミテージ国務副長官に、「逃げるな」「お茶会でない」と強い口調で迫られ、戦後初めて武装した地上軍を派遣しようとしています。6割の反対の国民世論を無視したもので、あまりにもアメリカ言いなりです。私の地元宇治にも、大久保・黄檗と2つの自衛隊基地がありますが、ある自衛隊員の奥さんは「イラクに行くため自衛隊に入ったのではない。夫が派遣されるのではないか大変心配だ」と語っています。知事は、憲法を蹂躙する自衛隊のイラク派遣に反対すべきではありませんか。はっきりお答えください。

 イラク戦争を契機に、日米安保条約の現状にたいする新たな批判が強まっています。日本共産党は、軍事・外交・経済など重要な面でアメリカ従属のもとになっている安保条約をなくし、アメリカとも対等、平等な関係を築くため、独立、非同盟、中立の日本をめざし全力で奮闘するものです。

 憲法9条をめぐり、時の首相が初めて日程まで示して改憲論を唱えるという、危険な段階にきています。小泉首相は、自民党結党50年の2005年11月をめどに、党の憲法「改正」案をまとめるよう指示し、国民投票法案の成立が必要だと明言しました。集団的自衛権の行使を求めるアメリカの要求が、改憲の動きを加速させています。憲法9条を取りはらい、歯止めなき海外派兵に道を開くことは、国連憲章に基づく平和の世論に逆らうものです。戦後58年、戦争で外国人の命を奪い、自衛隊員の命を失うことはありませんでした。憲法9条は国際平和に先駆的役割を果たしてきたのです。知事は、府民の安全に責任を持つべき立場から、憲法改悪にキッパリ反対すべです。いかがですか。

 日本共産党は、憲法改悪に反対し、その平和原則にそむく企てを許さない一点での、幅広い国民的共同の大きな運動を呼びかけるとともに、一貫して憲法擁護のため奮闘してきた真価を発揮して全力を尽くすものです。

【知事】  首相は国会においても「私は消費税を引きあげない」と明言されている。そもそも公的サービスの費用を賄う租税負担の水準の議論は、公的サービスの水準のあり方と表裏一体の関係にあるので、これと切り離した議論というのはいかがなものか。

 イラクへの自衛隊派遣についてだが、イラクの復興にむけた人道支援や安全確保支援など、わが国は国際社会の一員としてその一翼を担うべきものと考えており、このことは世界の平和と安全にもつながると考える。しかしながら、私はわが国が自衛隊を派遣する場合には、イラク人道復興支援特別措置法の第2条に規定されているように、現に戦闘行為が行われておらず、かつそこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域に限って活動を行うとの原則を、イラク人の気持ちになって、現に戒めながら堅持されるべきものであると考える。イラクの現状など調査をふまえられ、わが国も国際社会とも協調した支援が行われ、イラクの国家の再建が進むことを願っている。

 憲法についてだが、国権の最高機関である国会において、平成10年1月、憲法制定後50年を経る中、憲法についての総合的な調査を行う機関として国会の両院に共産党もふくむ党の国会議員で構成される憲法調査会が設置され、憲法を議論の俎上にのせるための調査等が行われている。私は憲法を身近なものとして関心をもちながら、将来のわが国のあり方について自由な議論が行われるべきであると考えている。

深刻な青年の雇用、府として大企業に雇用責任をはたさせるべき

【前窪】  次に、若者の雇用問題について質問します。この問題は、青年にとっては経済的に自立できず、結婚して家庭を持ち、子どもを産み育てる条件がない。企業にとっては技術の蓄積が継承されない。さらに年金や健康保険料を払えない青年の増加で、社会保険制度の根幹が揺らぎ始めるという、まさに日本の経済と社会が新しい活力をもって継承・発展していくことを困難にする問題であり、近い将来とりかえしがつかなくなる重大問題です。

 9月はじめには、労働条件の改善と就職難の解決を求めて、京都から17人の青年が京都の日本共産党の行った政府交渉に参加しました。私も参加しましたが、若いみなさんが切々と訴える職場の生々しい実態は本当に深刻なものでした。

 5年間勤めたデザイン会社を退職した女性は、「毎日12時間働き、終電で帰宅することも多かったが、残業代も支払われなかった」といいます。退職からわずか2ヵ月後には、30歳の同僚が妻子を残して過労死されたそうです。仕事がしんどいとやめる決意をしていた矢先のことでした。また、丹後の青年は、高校生の求人が一社しかないことや、コンビニエンスストアーやガソリンスタンドで短期のアルバイトを点々と続けるしかない現状を訴えられました。

 これまで政府や本府は、青年の就職難の原因を若者の就労意識の変化と雇用のミスマッチ論にすりかえてきましたが、『国民生活白書』が、大企業ほど正社員の新規採用を抑え、パートや派遣に置き換えている事実を示して、「90年代後半以降の大幅なフリーターの増加」は「企業側の要因が大きい」と指摘したことは、若者の意識や能力の問題だけではもはや解決できないことを政府自らが認めたものです。

 いま必要なことは、大企業に対し雇用責任・社会的責任を果たさせることです。

 最近、新日鉄やブリヂストンで大事故が相次いでいますが、原因として設備の老朽化に加え、この間のリストラ・人減らしで安全対策がおざなりにされていることが指摘されています。京都でも、リコールの相次ぐ三菱自工の京都事業所では青年の正規採用はほとんどなく、製造ラインで働く青年は、3~6ヶ月の期間社員や派遣労働者が中心となっています。「短期間の雇用ではものづくりの技術の継承も難しい」という声もあります。

 企業が雇用における社会的責任を果たすよう本府も正面から取り組むべきです。そこで知事に伺います。

 第1に、府の責任で、企業による青年の採用抑制の実態を把握することです。採用実態と企業の認識について調査し、その結果、特に採用抑制のひどい企業については府が直接改善の申入れをすることが必要です。いかがですか。

 第2に、サービス残業の根絶にむけた府の取り組みの強化です。

 京都労働局管内でのサービス残業代が、是正指導が強化された2001年の「通達」からの2年間だけで787人、1億4千万円にのぼることがわが党の調査で判明しました。100万円以上のサービス残業代を支払った事業所は25件、中には267人に対して6000万円も支払った事業所もあります。

 府内でこれだけの「企業犯罪」が行われていることについて知事はどうお考えですか。本府としても労働局と連携し、サービス残業させている企業名の公表や入札制限など、防止のための指導を強化すべきと考えますが、いかがですか。

 第3に、自治体が公務労働を率先して民間委託し、結果として青年の正規採用を減らしていることは問題です。府立医大でも業務委託が進んでいますが、極端な採用抑制を改め、府民生活に必要な公的分野の人手不足を解消し、計画的な雇用拡大に踏み出すべきです。いかがですか。

【知事】  青年の雇用についてだが、長引く景気の低迷の中小企業の雇用情勢等の影響により、若年者の雇用情勢が厳しい状況にある上、職業意識の希薄さや、いったん就職してもすぐに離職してしまう若年者の増加は、今後の高齢化社会を支えていく上でも大変憂慮すべき事態と考えており、関係機関等と連携し若年者の就労支援対策に全力あげて取組んでいる。若年者の採用実態等の把握は、昨年度から経済団体等と連携し、アンケート調査により状況の把握に努め、本府の若年者雇用対策に活用している。今後も情報収集に努めたい。 

 企業に対する採用の働きかけだが、本年も京都府商工会議所連合会等の各経済団体に対して、京都労働局と連携し、新規学卒者の求人確保等について要請を行った。今後とも1人でも多くの若年者が就職できるよう努力を積み重ねたい。

 いわゆるサービス残業については、労働基準法では賃金未払いの問題であるが、監督指導権限を有する労働基準監督署の監督結果によれば、近年、増加傾向にあり、憂慮すべき事態と考える。労働基準関係法令に照らし問題が認められれば、労働基準監督署において指導・勧告がなされているところだが、京都府としては、勧告権限を持つ京都労働局との連携により、各種セミナーや事業主への効率的な周知啓発に努めるとともに、労働基準監督署において適正に対処される要請している。

 府の正規職員の採用については、行財政改革をすすめる中で、公私の役割分担をふまえ、府民ニーズを十分に見極め、府民からお預かりした税金の使い道として、必要な人員を確保する。

中小企業借換融資制度の延長と改善を求める

【前窪】  次に、中小企業あんしん借換融資制度についてお聞きします。

 この制度は、8月末現在7867件1557億4500万円の利用を得て、不況の中で何とか経営を維持しようと頑張る中小企業の経営を支えるとともに、新たな資金確保の願いに応える制度として、中小企業のみなさんに歓迎されています。

 日本共産党京都府委員会は先般、経済産業省に対し、国の中小企業借換保証制度の継続を求める要望を行い、「ニーズの強いものは、継続・充実させたい」との回答を得たところです。府としても、国に対しこの保証制度の継続を強く求めると共に、今年12月末までとされている府の「中小企業あんしん借換融資」制度を来年1月以降も継続すべきです。いかがですか。

 制度の改善についてお尋ねします。6月議会での松尾孝議員の代表質問でも取り上げましたが、料理飲食関係その他、この制度の適用条件である、国の「セーフティネット保証」の指定を受けていないため、同じように困難に直面していてもこの制度を活用できない問題です。知事は、ネクタイ製造業が追加されるなど努力しているとおっしゃいましたが、まだまだ不十分です。府として、業界団体を援助し国に積極的に要請すべきではありませんか。また、借換融資制度を利用する中小企業・零細業者にとって大きな負担となっている「保証料」の軽減が必要と考えます。国や保証協会に、保証料の引き下げを求めると共に、府独自の保証料補給の実施を求めます。いかがですか。

 関連して信用保証協会の審査について伺います。金融機関で制度の申し込みをし、制度が活用できると判断された方が、信用保証協会の審査の段階で、条件変更や売り上げの減少等を理由に保証を拒否されるという事例が相次いでいます。

 とりわけ零細な業者は、生活費を削り、多くの取引先や親戚などに迷惑をかけないため、何とか倒産だけは避けようと必死にがんばっています。そのような方々に対し、借換融資制度を活用し経営を維持してくださいというのが、制度の趣旨のはずです。にもかかわらず、書面の審査で冷たく却下するというのは、制度の精神に反するものです。

 出捐金を出している府として、京都信用保証協会に対し、中小零細企業の経営のこれまでの経営努力や返済実績に着目した弾力的な保証業務を行うよう指導すべきです。いかがですか。

 府の創業支援の融資制度は、ベンチャー関連にシフトしたものであり、リストラなどを契機に自営業にチャレンジした人が、安心して利用できる融資制度としては不十分です。2年3年と返済のスタートを遅らせる、「長期の据え置きを認める融資制度」の声も高まっています。積極的な創業支援として、ぜひ実現すべきです。いかがですか。

【知事】  中小企業金融対策だが、京都府としては府内中小企業者の厳しい経営状況をふまえ、かねてよりセーフティネット保証をはじめ、保証制度の継続・充実を国に繰返し要望してきた。

 なお、セーフティネット保証の不況業種の指定については、国が全国的な状況をふまえ、売上減少などの指定基準により行なっているものだが、京都府としては従前からその基準をもとに、厳しい状況にある関係業種の府政要望等に積極的に取組んでいる。中小企業あんしん借換融資については、年度末の資金需要期の経営を支援するためにも、さらなる延長について京都市をはじめ関係機関と積極的に協議したい。保証料については、信用力、担保力が不足している企業を守るため、保険制度を維持するための必要な負担であるが、京都府としても無担保・無保証人融資制度の保険でカバーされていない部分を負担することによって、制度の維持に努めている。この小規模事業者むけの無担保・無保証人融資等の制度融資については、京都府からの申入れをふまえ、京都信用保証協会においても保証料の引下げを実施している。信用保証業務については、京都信用保証協会において、従来から個々の中小企業の経営状況や将来性、返済の見通しなど総合的に考慮し、一件一件きめ細かな審査を行っており、借換や条件変更の保証の際にも、中小企業の返済計画に応じた審査が行われるよう既に京都府としても要請している。

 創業支援については、本年4月に従来の創業資金を改善して創業改善資金を創設し、従来の要件を大幅に見直し、幅広い業種の開業を支援している。また創業主の負担軽減をはかるため、据置き期間は制度融資としては最長の1年とし、最低金利である1・5%で実施しており、昨年を上回る実績を得ているが、今後とも活用の促進に努めたい。

高齢者医療費、せめて本府も受領委任払いを認めるべき

【前窪】  次に、医療について伺います。

 国民に「痛み」をおしつける医療改悪の影響は、年金の切り下げや介護保険料の値上げなどとあいまって、ますます深刻になっており、自民党・公明党の責任は重大です。

 4月から本人負担が3割に引き上げられましたが、府保険医協会のアンケート調査では、51%の医療機関が「患者数が減った」と答え、38%が「受診抑制や治療中断があった」と回答しています。3割負担の導入が深刻な受診抑制を引き起こしていることは明らかであり、「2割に戻せ」と国に強く要求すべきではありませんか。いかがですか。

 本府の医療行政について、知事は「全国的に高い水準」と口グセのように言われますが、実際には、他県と比べても、国いいなりで府民に冷たい姿勢が明らかです。

 その1つは、高齢者の自己負担限度額をこえる高額医療費の問題です。府保険医協会が府内の全自治体を対象に行った第2回調査の結果では、払い戻しの申請率はやや改善されているものの、申請割合や方法について自治体間の格差が拡大しており、府内でなお7500人が未申請で、約3400万円が未払いとなっています。

 6月定例会でのわが党議員の代表質問に対し、知事は「市町村や医療機関と連携し周知徹底している」と答弁されましたが、すべての自治体で払い戻し手続きの負担軽減措置がとられるよう、改めて徹底すべきです。また、振込口座が銀行だけとなっていて、郵便局で払い戻しできない点も問題です。先日のわが党の政府交渉で、厚生労働省は「改善を検討したい」と答弁しています。郵便局でも払い戻しがうけられるように国に改善を要求すべきですが、いかがですか。

 北海道では、知事が「国保と同様に、受領委任払いが可能である」との見解を示し、市町村に徹底しています。その結果、夕張市をはじめ16市町村が医療機関による代理申請を認め、限度額をこえる分の窓口払いが不要になっています。ところが、本府では今日まで、高額医療費について「受領委任払いは認められていない」との立場に立ってきました。北海道で実行されていることが、なぜ、京都ではできないのですか。お答えください。

 2つめに、自己負担が急増した在宅酸素療法患者の救済の問題です。2月定例会での私の質問に答えて、知事は「他府県における同様の制度との均衡をふまえて」と答弁されましたが、すでに全国20都道県では、障害3級までの障害者への医療費助成をおこなっています。「他府県との均衡」というのなら、本府もただちに、重度心身障害者健康管理事業の対象を身体障害者3級まで拡大すべきではありませんか。ハッキリ、お答えください。

 子どもの医療費助成制度についても同様です。わが党は、「通院も入院と同様、小学校入学前まで無料にせよ」と繰り返し求めてきました。これにたいして、知事や理事者は「9月実施の状況を見てから」と答弁されてきました。制度がスタートして1ヵ月が経過しましたが、通院で月8000円をこえるのは、どこの病院・診療所でも、ごく一部に限られているではありませんか。「世代間の負担のバランス」と称して、高齢者の「高額医療費」と同じ8000円を自己負担限度額とするのをやめ、ただちに、制度を拡充すべきだと考えますがいかがですか。

 また、自己負担限度額をこえた場合の払い戻しが、領収書をそえて市町村の窓口まで手続きに行かなければならず、振込口座に郵便局を指定できないことになっている点も問題です。「子どもを連れて交通費を使い手続きに行くのは大変」との声に、兵庫県や千葉県では、今年から窓口払いが不要になりました。本府としても、「償還払い」方式の見直しを検討すべきですが、いかがですか。

【知事】  わが国の皆保険制度は国民のすべてが安心して医療を受けられる制度であることを基本にしており、少子高齢化が急激に進む中で、この制度を国民全体でどう支えていくかが大きな課題。京都府としては、従来から医療保険制度改革による財政負担の増加が見込まれる中で、府民を守るため全力をあげてセーフティネットを構築している地方公共団体の立場から、地域や府民の実情を踏まえての医療制度のあり方についてこれまでから提案や要望を行ってきた。今後とも府民生活や医療保険財政、地方財政に与える影響を十分見極めた上で制度改革を進めるよう国に提案したい。

 高齢者の医療制度だが、自己負担限度額を超える償還払い制度については、改正内容や償還の申請手続きの簡略等を知ってもらえるよう努力している。先月も償還申請の負担軽減について市町村に対し改めて制度の趣旨の再徹底をはかった。郵便局での払い戻しについては、府民の利便性も考えなければならないが、公金の取扱いに関しては地方自治法の制約もあリ、現時点では難しい。また高齢者医療制度は、高齢者にも現役世代と負担を分かち合うために、窓口で一定の額を負担いただき、限度額を超えた場合に償還を受けるということで、その中で努力したい。なお、私どもも北海道に確認した限りでは、北海道も京都府と同様である旨の回答を得ている。

 在宅酸素療法についてだが、重度心身障害者老人健康管理事業は、国の年金と同じになっているが、在宅酸素療法を受けている呼吸機能障害者については身体障害者手帳の等級の改善について他府県とも連携して厚生医療の対象とするよう国に対し提案・要望している。

 乳幼児医療助成制度についてだが、特に経済的にも精神的にも負担の重い入院について、無料対象を小学校就学前まで引き上げた。通院については負担の上限を明らかにすることにより、親御さんが安心していただくようこの9月から制度拡充したところで、制度の定着に努めたい。なお、受任払いについては、複数の医療機関にわたるシステムの構築が必要であり、難しい問題がある。

高次脳機能障害の実態把握と対策の具体化を求める

【前窪】  医療問題の最後に、高次脳機能障害の対策についてお聞きします。福知山市のTさんは、交通事故で頭を強打し、半年間、意識不明となりました。医療関係者と家族の懸命の治療と介護で奇跡的に回復されましたが、記憶力が低下する、喜怒哀楽の感情をコントロールできないなどの後遺症に苦しんでこられました。

 残念ながら現時点では、薬物治療や外科手術で症状を改善することはできず、リハビリで代償機能や社会に適応する能力を身につけるしかありません。Tさんのご家族によりますと、京都には、高次脳機能障害について相談でき、診断書が書ける病院や医師がおらず、舞鶴市民病院に唯一診てくれる医師はいるが、そこは言語治療室で、高次脳機能障害者として通院し、リハビリをうけることはできないとのことです。

 現在、厚生労働省は「高次脳機能障害支援モデル事業」を3ヵ年計画として実施中で、2月に中間報告書をまとめています。私も参加した政府交渉では、「モデル事業の内容を全国の医療機関等に知らせ、社会的支援の制度化も考えていきたい」と答えています。

 そこで、知事に伺います。本府における実態をどのように把握されていますか。高次脳機能障害者とその家族や医療関係者からの意見を聞きましたか。国の事業とも関わって、本府における拠点病院の設定や専門医の育成、医療費補助制度やリハビリテーション等の対策を国に要求するとともに、本府としても具体化すべきだと考えますが、いかがですか。

【知事】  高次脳機能障害についてだが、この障害は脳卒中や交通事故による脳挫傷の後遺症により社会生活に支障をきたすもので、外見からはわかりにくいことから障害の定義や診断、治療方法等が確立されていない状況にある。京都府では精神保健福祉総合センターや身体障害者更生相談所などを窓口に相談に応じており、実情把握とともに、障害の状況によってリハビリテーション医療機関への紹介や福祉施設への入所などの助言や相談を行っている。国においては国立身体障害者リハビリテーションセンターに専門的な組織を設け、実態把握を始める一方、障害程度の評価基準や支援プログラムの確立にむけて平成13年度から3ヵ年で、高次脳機能障害支援モデル事業を実施しており、今年度末にはその最終結果が公表される予定。京都府としては、医療機関等と連携し、精神保健福祉総合センターなど専門機関での指導・助言に努めるとともに、障害認定や具体的な支援策の確立が早急に図られるよう国にはたらきかけたい。

30人学級実現、南部養護学校の早期建設を求める

【前窪】  次に、教育問題について質問します。

 政府が来年度導入をねらう義務教育国庫負担制度の総額裁量制は、国の負担を一方的に削減し地方に押し付け、義務教育への国の責任を放棄するものです。

 現在、34の都道府県議会で反対の意見書があがっていますが、本府議会ではわが党議員団の意見書案に対し、自民、公明、民主などオール与党が反対し否決しました。今日の深刻な教育状況を解決するには、国や府が、子どもの成長発達よりも財政の都合から出発する安上がりの教育をあらためることが必要です。教育長は、義務教育国庫負担金の削減に反対されないのですか。伺います。

 次に少人数学級について伺います。

 都道府県一律の少人数学級の実施が、今年4月の文部科学省通達によって可能となり、実施県はさらに広がっています。1学級33人までに踏みきった山形県では、導入校のすべての校長が、「子どもたちの学習の集中」「積極的に発言」「学級のまとまり」といった成果をあげています。ある校長は「子ども同士の人間関係がうまく機能しており、こうした人間関係の深まりがやがて不登校などの未然防止となっていくことも期待される」と語っておられます。

 また、長野県では30人規模学級を小学校六年生まで拡大しましたが、人件費は県が半分負担することに加え、市町村の財政力に応じて、12分の7、3分の2と三段階で県が上乗せで負担します。

 このように全国の自治体で、子どもの成長発達を土台にすえて、必要な財政も出そうという流れが広がっているときに、臨時講師による少人数授業に固執する京都府の姿勢は本当に問題です。

 それどころか、昨年から今年にかけて小学校2年生からの習熟度別授業が導入され、子どもや学校現場に混乱が生じています。「移動教室が多くなり、忘れ物や落し物が増えて落ち着かない」「週5時間ある算数の授業を5人の教員が交代で教えている」という実態に加え、子どもたちが低学年から競争の中に投げこまれ傷つけられている姿はとりわけ深刻です。「たった2年生の息子が落ち込んでいる」「子どもが『自分は今一番いいグループにいるけど、○○君は違うグループにいる』と話すようになったのが気になる」というお母さん方の言葉に胸が痛みます。習熟度別授業については、文部科学省のアンケートでも半数の校長、教員が「児童生徒の間に優越感や劣等感などが見られる」と回答しているのです。

 さらに、打合せや報告書作成などで現場の教員は多忙を極め、本来の少人数教育の目的である一人ひとりの発達にあわせたゆとりある指導すら困難にしています。「このまま続ければ、学力、生活両面で深刻な事態になりかねない」と危惧する専門家の声を教育委員会は真剣に受けとめるべきです。本府も少人数教育の基本を少人数学級に置き、30人学級の早期実現を図るべきです。いかがですか。

 次に、京都南部に養護学校の早期建設について伺います。

 私の地元宇治市には養護学校がないため、100人を超える障害の重い子どもたちが、桃山、向ヶ丘、南山城など遠くの養護学校に通っています。気管切開で人工呼吸器を付けている子どもも大変な苦労をしながら通学しています。障害の重い子どもたちにとって、とりわけ大切な生活圏と教育圏域がばらばらにされてきたのです。

 養護学校の新設を求める父母や教職員による粘り強い運動が進められ、2002年3月にはようやく府教育委員会が「府立養護学校再編整備計画」を策定しました。ところが、宇治、八幡、城陽3市と久御山町を2通学区に再編するとされており、これでは100人を超える規模となります。現在の大規模・長時間通学を解消し、地域に根ざした学校としての役割を果たすためには、 宇治、城陽、八幡の3ヶ所に養護学校がどうしても必要です。

 また、新しい養護学校には寄宿舎や専攻科、幼稚部の設置と障害児学童保育所の常設などの要望も出ています。 保護者や関係者の意見もしっかり受けとめて早期の建設を求めるものです。市町村との調整の状況も含め建設計画を明らかにしてください。あわせて答弁を求めます。

【教育長】  義務教育費国庫負担金制度についてだが、義務教育において国が教育の機会均等と教育水準の維持向上を構ずるとともに、そのための一括した財源を講ずることは当然のことである。この基本的な考えのもとに、地方分権時代にふさわしい特色ある教育を地方が行えるようにすることが大切と考えており、こうした考えを国に要望している。

 少人数教育についてだが、市町村教育委員会連合会や府下小学校長会からも、画一的な一つの方法によるのではなく、子どもたちの発達段階の特性や学習内容に応じた指導形態を組み合わせて実施することが効果的であると聞いており、そのことを基本に指導体制の充実をはかっている。今後とも義務教育9年間を見通した、より効果的な少人数教育のあり方について検討したい。

 南部地域の府立養護学校の再編整備だが、関係市町の教育委員会と調整しながら設置方法や設置形態について検討している。

 学校施設の耐震化だが、学校施設は児童生徒の学習の場であると同時に、地域の応急避難場所の役割を果たすことから、その安全性の確保は重要であると考える。府教育委員会としては、平成7年度から府立学校の耐震補強事業を計画的に行ってきており、今年度も5校で補強工事を実施している。各市町村においても地震防災緊急事業5カ年計画を着実に実施し、学校の耐震化が促進されるよう本年度文部科学省が策定した学校施設耐震化推進指針などを活用し、府としても引き続き助言していきたい。

活断層調査と、学校・公共施設の耐震補強工事の促進をもとめる

【前窪】  次に、地震対策について伺います。

 まず、先の十勝沖地震で被災された皆さんに、心からお見舞いを申し上げます。国の中央防災会議の専門委員会は、いつ起きてもおかしくない東海地震と同時に東南海・南海地震が発生した場合、最悪で2万8千人を超える死者が出ると被害想定を公表しました。そして、東海から四国にかけて太平洋沿岸を中心に497市町村を、東南海・南海地震防災対策推進特別措置法に基づき「防災対策推進地域」に指定する原案を承認し、これから各自治体の意見を聞いて年内にも地域指定するとしています。府内では京都市が入っています。指定されれば財政、金融の支援が受けられることから、地震対策の強化が期待されます。今後、少なくとも京都南部をはじめ、京都市に隣接する地域が指定されるよう求めておきます。

 活断層の地震では、琵琶湖西岸断層帯の発生率が比較的高い地域とされており、花折断層、黄檗・井手断層と連なる京都市から南部一帯の危険性もはらんでいます。京都の地形は、断層によって形成された盆地に街がつくられているのが特徴です。本府でも、西山断層帯の調査が一定すすみましたが、黄檗・井手断層、木津川断層帯など断層調査をすすめ直下型地震対策を急ぐべきと考えます。いかがですか。

 阪神大震災では、死者の9割近くが建物の倒壊などによる圧迫死だったことから、命を守るために建物の耐震化が改めて教訓となりました。震災で倒壊した大半は、1981年に改正された建築基準法以前の建物で、老朽化した木造住宅が大きな被害を受けました。また、宮城県北部地震では、住民が避難している学校体育館などが大きな被害を受けました。本府では、公立学校施設の耐震診断実施率は32%、耐震化率は49%であり、耐震補強のため特段の努力が求められています。

 学校施設の耐震診断を3ヵ年で完了させると同時に、公共施設の実施計画もつくるべきです。さらに、学校施設・公共施設の耐震補強工事実施の年次計画をつくり、市町村とも連携し一気に促進すべきです。あわせてお答えください。

 1995年に耐震改修促進法が制定されましたが、民間住宅の耐震診断・補強は対象外とされ、すすんでいません。住宅の耐震診断・補強をすすめる上で、最大の障害は工事費用の負担が大きいことです。政府は、2002年度から、避難や消火活動の確保を理由にきわめて限定的な耐震補強工事の補助制度を作りましたが、1件の活用もありません。    

 自治体の取り組みでは、補助限度額最高540万円まで引き上げた横浜市、1戸あたり30万円の補助金で補強工事をする静岡県、最高20万円の補助をする兵庫県など、既存住宅の耐震化が公共性の高い緊急課題としてすすめられています。京都は、81年以前の木造住宅が約40万戸存在しています。すすんだ自治体の地震対策から学び、民間住宅の耐震調査、耐震補強工事への助成制度をつくるべきです。いかがですか。

【知事】  活断層調査についてだが、京都府においては阪神・淡路大震災以降、国と協議する中で活断層調査を積極的に実施している。調査にあたっては、尾池和夫京大副学長を委員長とし、専門家により構成された京都府活断層調査委員会の議論をふまえ、調査の対象となる断層や調査方法を決定し実施している。その結果、平成8年度、14年度、15年度の3年間にわたり地元市町村の協力を得て西山断層系について物理調査やボーリング調査等を実施している。今後も専門家の意見をふまえ活断層調査を進めたい。

 耐震対策だが、防災対策の拠点となる公共施設の耐震化は大変重要であり、阪神・淡路大震災を契機に積極的に進めている。京都府においては、市町村と連携し、平成8年度から第1次京都府地震防災緊急事業5カ年計画を、平成13年度からは第2次5カ年計画を策定し、公共施設の耐震化に努めている。なた、府立施設の耐震診断については、現行の耐震基準前に建設された一定規模以上の建物について計画的に実施している。来年度中にすべての調査を完了するとともに、耐震改修が必要な建物について逐次改修を進めている。今後も高齢者や障害者等の災害弱者への対策を優先し、できる限り迅速に公共施設の耐震化を進めたい。

 民間住宅の耐震化に対する助成制度についてだが、住宅の耐震化のためにはこれまでから府民の取り組みを支援するため、啓発等を進めるとともに、耐震改修工事に対するう融資としては全国でも最も低利な融資制度をこの8月に創設した。今後も国土交通省における制度改善や他の都道府県の事例を参考にしながら、適切な施策の検討を進めたい。