「京都府地域金融活性化条例」についての提案説明
「京都府地域金融活性化条例」についての提案説明
9月議会条例案提案説明
松尾 孝
2003年10月3日
日本共産党の松尾孝でございます。党議員団を代表し、わが党提案の「京都府地域金融活性化条例」について提案理由の説明を行います。
わが党議員団は、一昨年来、本会議質問や予・決算委員会などにおきまして、小泉内閣の「竹中プラン」にもとづく「不良債権早期処理」が中小企業を倒産・廃業に追い込み、落ち込んだ京都経済を一層ひどくするものとして厳しく批判し、京都府が、国のこの間違ったやり方に反対するとともに、金融機関にその本来の役割を発揮させるよう「貸しはがし・貸し渋り」防止条例を制定するよう強く求めてまいりました。そして、昨年12月には日本共産党京都府委員会として「条例大綱」を発表、「竹中プラン」の撤回をつよく要求するとともに、この2月には金融専門家の協力も得て「地域経済活性化と金融機関の役割を考える」シンポジウムを開催するなど取り組みを強めてまいりました。
この程、第2次小泉改造内閣が発足しましたが、破綻が明確になった「構造改革路線」を変えず、竹中経済財政・金融相を留任させ、不良債権早期処理をさらに加速させようとしています。これが地域経済に一層の困難をもたらすものであることは、本年4月、京都府中小企業団体中央会が行った金融アンケート調査結果をみても明らかです。資金繰りが「厳しい」、「非常に厳しい」と答えた企業が55%と半数以上、「貸し渋りを受けた」企業は借入残高1億円以上の企業では30から40%にものぼり、しかも、殆どが金利アップや追加担保を求められております。京都経済を担う中小企業は深刻な事態にさらされています。
さて、京都における地域金融は都銀、地銀、信金の三者がその殆どを担っています。この10年間の貸出金の推移を見ますと、都銀は4兆円から3兆円に激減させていますが、地銀は3兆円台を維持して殆ど変わらず、しかも都銀を上回っています。信金は二信金の破綻にも拘らず36%と高い大きいウェイトを占め、地銀、信金を合わせますと68%、全体の3分の2を上回るという他県に見られない特徴があります。このような中で、地銀や信金は京都の中小企業の72%もの主力金融機関として大きな役割を果たし、地域経済を支え、中小企業とともに歩んできました。
ところが今、「竹中プラン」のもとで「貸しはがし・貸し渋り」を余儀なくされているのです。昨年六月、国はようやく「金融マニュアル別冊・中小企業金融編」をつくりましたが、運用上の緩和措置にすぎません。また、去る3月末、金融庁からリレーションシップバンキングのアクションプログラムが発表されましたが、その中心はあくまで金融機関の収益性の向上、健全性の確保、経営基盤の強化などであり、真に中小企業の立場に立ったものではありません。
地域金融の立て直しのために今必要なことは、金融機関がその本来の役割、国民の財産を預かる業務とともに、地域に十分な資金を供給し、生産、流通、消費など地域経済を活性化させるという公共的役割を発揮できるようにすることであります。今日のように、「貸しはがし・貸し渋り」などで地域経済を壊すような金融機関ではなく、府民の暮らし、中小企業を支え、育てる金融機関として大きな役割を果たすことが強く求められているのであります。そのために国の金融政策の転換が必要なことは論を待ちませんが、同時に、地域経済、社会の振興・発展に責任を負う京都府が積極的役割を果たすべきことも当然であります。わが議員団はこの立場から「京都府地域金融活性化条例」を提案するものであります。
条例は、金融機関に本来の役割を発揮させ、地域経済の活性化を図るための京都府の責務を明らかにし、府が講ずる施策に関する必要な事項を定めるものでありますが、主な内容は次の三つであります。
第1に、府民の暮らしを守り、中小企業を育てる金融機関の育成であります。
条例第3条(基本理念)では、地域金融のあるべき姿を明らかにし、「地域金融機関が社会的に要請されている望ましい分野に必要な資金を十分に供給」するとともに、「地域経済の重要な担い手である中小企業者の事業活動に必要な資金を安定的に供給」するよう特に配慮しなければならないとしています。第5条では、この基本理念にもとづく(金融機関の責務)について、地域金融機関が「地域経済及び地域金融の活性化に寄与するように努める」こと、「正当な理由なく、一方的な融資の拒否、貸付条件の変更をしないこと等」を明確にしています。
第2に、地域経済の発展という立場で金融機関を評価することです。
条例第10条では「京都府地域金融活性化委員会」を設置し、この「委員会」が地域金融活性化に対する寄与について金融機関を評価することとしています。その内容は「住民及び事業者に対する信用供与の状況」、「産業振興等地域の振興に貢献する業務の状況」、「利用者の利便の増進を図る業務の状況」などであります。
金融庁は、この間、すべての金融機関を一律に機械的な「金融マニュアル」で評価し、地域の中小企業への資金供給を主たる業務とする信金・信組、地銀を深刻な事態に追い込み、その多くが破綻させられてきました。しかし、これでは地域金融を支える金融機関を育てることはできません。条例は「地域への貢献」という物差しを定め、地域に根ざした金融機関を積極的に育てるとともに、「貢献」が不十分な金融機関をただし、地域金融の活性化を図ることとしているのであります。
本府はこれまで、本条例の制定を求めるわが議員団の質問に対し。「金融庁において適正に行われている」との答弁を繰り返してきましたが、こうした国任せの姿勢は改めるべきであります。地方自治体が自らの地域の経済と金融を支援・育成することは地方自治・地方分権の精神に照らして当然のことであります。地域経済との関係で金融機関を評価し、地域への貢献について協力を求める条例の制定は現行法上なんら違法ではなく、むしろ、「地方の条例に馴染むもの」との専門家の意見もあります。
第3に、銀行にものが言える仕組みをつくることです。
条例第9条では「地域金融活性化委員会」は「地域金融に関する苦情について...相談に応じ、...必要な助言をし、...解決の斡旋を行うものとする」としています。これは、いままで、中小事業者などが「貸しはがし・貸し渋り」、その他の条件変更をもとめられても、「銀行にはものが言えない」と諦めていたところを、銀行にものが言える仕組みをつくり、公正な地域金融の確立を図ろうとするものであります。
以上が条例の柱でありますが、この条例の制定により地域金融の真の活性化を図ることができるものと確信いたします。また、地域経済の安定的発展によって地域金融に携わる金融機関の健全な経営の維持・発展にも資することとなります。
最後に今定例会に提案されています「中小企業金融支援対策協議会」の設置は、知事が「金融は国の権限」とされてきた従来の姿勢を一歩前進させたものとして評価しますが、今後、府のとりくみをより実効性あるものにするためにも、この条例の制定が必要と考えます。
議員各位のご同意を心からお願いし、提案理由の説明といたします。ご静聴ありがとうございました。
京都府地域金融活性化条例(案)
目次
第1章 総則(第1条一第5条)
第2章 地域金融活性化に対する寄与の程度に関する評価(第6条一第8条)
第3章 苦情の処理(第9条)
第4章 京都府地域金融活性化委員会(第10条一第16条)
第5章 雑則(第17条・第18条)
第6章 罰則(第19条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、地域金融の健全な発展と地域経済への貢献にかんがみ、地域金融の活性化に関する府の責務を明らかにするとともに、府が講じる地域金融の活性化のための施策に関し必要な事項を定めることを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「中小企業者」とは、中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第1項に規定する中小企業者であって、京都府内に店舗、事務所、工場、事業場、施設等を有するものをいう。
2 この条例において「金融機関」とは、預金保険法(昭和46年法律第34号)第2条第1項に規定する金融機関であって、京都府内に営業所等を設けて地域金融に係る業務を行うものをいう。
(基本理念)
第3条 地域金融については、地域の住民、事業者等の金融上の要望にきめ細やかに対応し、地域経済の健全な発展に貢献する重要な機能を有するものであることにかんがみ、利用者の利便の増進が図られ、地域において社会的に要請されている望ましい分野に必要な資金が十分に供給される等その活性化が図られなければならない。
2 地域金融の活性化を図るに当たっては、地域経済の重要な担い手である中小企業者の事業活動に必要な資金が安定的に供給されるように特に配慮されなければならない。
(府の責務)
第4条 京都府は、地域金融にかかわる金融機関の健全な育成に必要な施策を実施し、もって地域経済及び中小企業等の金融の活性化を図るものとする。
2 京都府は、地域金融にかかわる金融機関が、経営の安定を図りながら、この条例の目的にそって健金に発展するよう指導を行わなければならない。
(金融機関の責務)
第5条 金融機関は、金融業務の公共性にかんがみ、基本理念にのっとり、利用者の利便の増進を図り、地域において社会的に要請されている望ましい分野に必要な資金を十分に供給する等地域経済及び地域金融の活性化に寄与するように努めなければならない。
2 金融機関は、基本理念にのっとり、中小企業者め事業活動に対する信用の供与に関して、均等な機会を保障すること、十分な説明を行うこと、正当な理由なく一方的な融資の拒否並びに貸付条件の変更をしないこと等、中小企業者の事業活動に対する必要な資金の安定的な供給に特に配慮し努めなければならない。
3 金融機関は、基本理念にのっとり、債権の回収に当たっては金融機関の公共性を踏まえ、債務者との十分な協議の上で行うこととし、一方的な回収をしてはならない。
第2章 地域金融の活性化に対する寄与の程度に関する評価
(地域金融の活性化に対する寄与の程度に関する評価)
第6条 委員会(第10条に規定する京都府地域金融活性化委員会をいう。次条から第9条までにおいて同じ。)は、個々の金融機関について、第8条の規定により提出される報告書に基づき、府内における地域金融に係る業務の運営に関し、次に掲げる事項の調査を行い、その結果に基づき、毎年1回、地域金融活性化に対する寄与の程度に関する評価を行うものとする。
(1)府内の住民及び事業者に対する信用の供与の状況に関する事項
(2)府内の産業振興等地域の振興に貢献する業務の状況に関する事項
(3)営業所又は事務所その他の施設の設置状況、利用者の金融上の要望の把握の状況等利用者の利便の増進を図る業務の状況に関する事項
(4)その他地域金融の活性化に対する寄与の程度を評価するために必要な事項として委員会が定める事項
(評価報告書の作成及び公表)
第7条 委員会は、毎年、前条の調査及び評価の結果を記載した評価報告書を作成し、これを知事に提出するとともに、京都府公報で公表するものとする。
(報告書の提出)
第8条 金融機関は、各営業年度又は事業年度ごとに、知事の定めるところにより、第6条各号に掲げる事項の調査に必要なものとして知事が定める事項を記載した報告書を作成し、委員会に提出しなければならない。
第3章 苦情の処理
第9条 委員会は、府内の地域金融に関する苦情について解決の申出があったときは、その相談に応じ、申出人に必要な助言をし、苦情の解決のあっせんを行うものとする。
2 委員会は、苦情の解決に当たり、第17条の規定による知事の要請が必要であると認めるときは、知事に対し、速やかに、苦情の内容を通知しなければならない。
第4章 京都府地域金融活性化委員会
(設置)
第10条 京都府内の地域金融の活性化に対する寄与の程度に関する評価、苦情の処理等を行う合議制の機関として、京都府地域金融活性化委員会(以下「委員会」という。)を置く。
(所掌事務)
第11条 委員会は、この条例の規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、知亊の諮問に応じ、地域金融の活性化に関する重要事項を調査審議し、及びこれらの事項に関して知事に建議することができる。
(組織)
第12条 委員会は、委員10人以内で組織する。
2 委員は、次に掲げる者のうちから知事が任命する。
(1)学識経験を有する者
(2)住民、事業者、金融機関、中小企業団体等の意見を代表すると認められる者
(任期)
第13条 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。
(委員長)
第14条 委員会に委員長を置き、委員のうちから、委員の選挙によってこれを定める。
2 委員長は、会務を総理する。
3 委員長に事故があるときは、委員のうちから委員長があらかじめ指名する委員が、その職務を代理する。
(会議)
第15条 委員会の会議は、委員長が招集し、委員長がその議長となる。
2 委員会は、委員の過半数が出席しなければ会議を開くことができない。
(委任)
第16条 この章に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は、委員長が定める。
第5章 雑則
(金融機関等への要請)
第17条 知事は、第6条の調査及び評価又は第叺条の苦情の処理に関し必要があると認めるときは、金融機関、関係行政機関その他の関係者に対し、地域金融の活性化に関する事項について必要な要請をすることができる。
(条例施行の網則)
第18条 この条例の施行に関し、必要な事項は、知事が定める。
第6章 罰則
第19条 第8条の規定による報告書の提出をせず、又は当該報告書に記載すべき事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をしてその書類の提出をした者は、50万円以下の罰金に処するとともに、公告を行う。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して前項の違反行為をしたときには、その行為者を罰するほか、その法人又は大に対して前項の罰金刑を科する。
附 則
1 この条例は、平成16年4月1日から施行する。
2 第8条の規定は、金融機関の平成16年4月1日以後に開始する各営業年度又は事業年度に係る同条に規定する報告書について適用する。