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提案説明

「京都府男女平等条例」について島田 敬子府議の提案説明

2003/10/03 更新
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 日本共産党の島田敬子です。私は、日本共産党府会議員団を代表して、わが党提案の「京都府男女平等条例案」について、提案説明をさせていただきます。

 今年は、憲法施行から58年、女子差別撤廃条約が国連総会において採択されてから24年を迎えます。女性の地位向上を求める運動は、日本でも世界でも着実に前進してきました。

 京都府におきましてもあけぼのプランを策定し、男女共同参画を府政の重点施策と位置づけて、鋭意とりくみを進めてこられました。

 しかしながら、現実は、国際的到達から見てもきわめて不十分であります。この8月、国連女子差別撤廃委員会は、日本政府に対して、「コース別雇用やパート派遣による賃金格差への懸念、家庭と職業上の責任を両立させるための対策の強化、民法上の差別規定の廃止、意思決定機関への女性参画の遅れなどの22項目にわたる懸念、要請、勧告をおこない、国連・人権規約委員会は、「日本では女性差別の問題が解決されていない」と繰り返し、指摘をしています。このように、男女平等の実現には、なお多くの課題をのこしています。

 そのような中、1999年、国においては、「男女平等の実現になお一層の努力が必要」として、「男女共同参画基本法」が全会一致で可決、制定されたところでございます。

 「男女共同参画基本法」は、憲法が規定する「法の下の平等」を基本にしながら、男女が社会の対等な構成員として活動に参画する機会の確保、男女の人権の尊重、社会における制度または慣行についての配慮、政策決定過程への共同参画、家庭生活における活動と他の活動の両立、国際的強調などが明記をされました。さらに、活発な国会審議の末、超党派で「基本法に対する付帯決議」が採択をされ、「各事業者の責務の自覚と、それらに対する適切な指導」「苦情の処理や被害者救済が十分図られるよう、実効性ある制度の確立」などが盛り込まれました。

 私どもの提案した条例は、こうした憲法の理念、女子差別撤廃条約の到達にたち、国の「基本法」および、「付帯決議」をも踏まえた内容です。さらに、これまで京都府としても「あけぼのプラン」などで取り組まれた施策をより積極的に推進し、実効性が上がるようにするものであります。

 以下、「条例」の特徴について、説明をさせていただきます。

 第1に、条例の名称についてですが、共同参画にとどまらず、実質的な平等を実現するために「男女平等」を明記したことです。条例の目的、理念、目指す方向を明瞭かつ端的に示すものです。あらゆる場における女性差別の是正を求める多くの女性の期待と願いに沿うものです。

 第2に、働く権利の保障と雇用の場における男女平等を推進するために、事業主責任を明記し、報告と結果の公表をもとめたことです。大企業は、「経済のグローバル化に対応する」として、正規雇用労働者を削減し、派遣労働者やパート労働者など不安定雇用労働を拡大しています。女性労働者の半数がこうした非正規雇用に就労し、京都府の調査でも、常用労働者女性の賃金は男性の67・9%で、パートを含めれば男女の賃金格差は2倍とさらに拡大しています。賃金や昇給における差別なども依然としてのこされ、産休・育休をとるとボーナスが下がるとか、昇給・昇格にまで影響を及ぼすとか、育休明けで配転や退職干渉、最近では妊娠リストラなどと告発されるような、妊娠・出産を理由とした不利益な取り扱いなどの差別が広く存在しています。こうした点から、現行法令の遵守はもとより、パート・派遣労働者の労働条件や社会保障の向上の努力もふくめた内容です。

 第3に、母性保護の明記です。母性は社会的機能であり、その保護は人間社会の存続にとって欠かすことのできない基本条件であり権利であることを理念に明記しました。今日、過労死を生む長時間過密労働やサービス残業も横行し、女性の深夜労働も解禁とされた中で、女性の健康破壊は深刻です。労働時間の短縮など働きやすい環境の整備が求められています。事業者における責務、農林水産業、自営業に従事する女性の母性保護の充実への支援、そして、すべての女性の生涯にわたる健康支援を盛り込みました。

 第4に、京都経済を支える伝統地場産業をはじめとする自営業者や農林漁業の分野における女性労働を正当に評価し、男女平等、共同参画を進めるための環境整備をあげていることです。本府の調査でも、自営業における女性の6割近くが、「女性は業務上の仕事と家事の区別がしにくく負担が大きい」、4割近くの女性が、「女性の仕事上の対価としての賃金、給与が正当に支給されにくい」と回答しています。中小企業庁がおこなった「自営中小企業に携わる女性の労働と健康に関する調査」でも、3割の女性が産前産後の休暇が取れていない実態があります。

 また、農業就業人口の6割を女性が占めており、農林水産加工品の開発・製造や地域社会の取り組みにおいても大きな役割をはたしています。規模拡大や新作物の導入、兼業化などで、農業に従事する女性の労働時間はより長くなっていますが、それに見あった報酬を受け取っておらず、家事、育児、介護などの労働の大半を担っています。よって、農業経営における役割分担、労働報酬、労働時間などをルール化した「家族経営協定」の締結についても明記しました。

 農業委員に閉める女性の割合も依然として低水準であり、更なる取り組みが求められます。以上、国における制度改善を展望しつつ、自営業、農林業従事女性への支援を明記しました。

 第5に、苦情処理機関の設置についてです。苦情や相談に対する判断が公平に行われるものとの信頼を得るためには、行政機関から独立した第三者機関が必要です。そして、申し出者の立場に立って受け付ける「受付部門」と、公正中立な立場で双方の主張を聴取・調査し処理する「処理部門」の二階建てとしました。そして、処理機関の業務を明記し、相談苦情を受けた場合は、関係者または関係する府の機関の協力を得て、資料の提出および説明を求め、必要があると認めるときは、府機関に対しては提言、助言または勧告を、他の関係者に対しては助言、是正の要望を行うことを明記しました。実効性を挙げるためもっとも重要な規定です。条例の特徴については、以上のとおりです。

 さて、基本法制定以降、全国42の都道府県で条例が制定をされ、未制定県は5つ、そのうち岐阜、高知、群馬は今年度内にも制定予定と聞き及んでいます。本府は最後塵を拝することとなりました。

 私どもは、これまで、条例の早期制定と明記すべき内容を提案し、実効性が上がるものにするため、条例策定過程における府民参加と情報の公開を繰り返し求めてまいりました。ところが、残念ながら、条例制定のための意見をまとめる専門家会議は公開されず、審議の状況も公表されないまま過ぎ、専門家会議の最後の会議が8月29日夜、あわただしく開催され、そして初めて公開されました。

 本議会でも、他会派の皆さんからも、条例未制定の5府県の一つになっていることへの憂慮やバックラッシュへの厳しい批判も出されたところです。そして、真に実効ある条例の制定が急いで求められていることも強調されました。このように条例制定の機は熟しており、本条例を早期に制定することが府議会の重要な課題となっています。

 議員のみなさんの賛同をいただきますよう、よろしくお願いします。提案説明とさせていただきます。