11月定例府議会を終えて(談話)
2003年12月15日 日本共産党府会議員団 団長 松尾 孝
11月27日から開かれていた11月定例会が12日閉会した。府議会では、定例会前に、総選挙をはさんで、2002年度決算を審査する決算特別委員会も開かれ、11月18日には知事総括質疑がおこなわれた。
わが党議員団は、イラクへの自衛隊派兵問題や消費税増税計画、年金制度の改悪を厳しく批判するとともに、介護保険やこどもの医療費助成、青年の雇用対策、伝統産業振興、農山村振興、さらには少人数学級実現など府民の暮らしを守る要求をもとに、その実現のために奮闘した。
1、今議会は、政府がイラクへの自衛隊派兵「基本計画」を決定するなど、憲法と平和をめぐって、きわめて重大な情勢のもとで開かれた。わが党議員団は、代表質問で2人の日本人外交官が殺害されるなど、イラク全土が戦闘地域であり、「戦闘地域には送らない」とする「イラク特措法」の前提が崩れていることなどを示し、府民の安全と平和を守るべき知事として「イラク派兵を中止するよう政府に求めるべきだ」と要求したが、山田知事は「安全性についての検討を公開し、そのうえで、法の趣旨にそって、できる限りイラクに対する復興支援を人道的見地からおこなうべき」と答えた。これは、イラク特措法による自衛隊派兵が米英軍の無法な占領支配に加担するものであるにもかかわらず、これを「人道・復興支援」とするもので、小泉首相の言い分と同じ立場であることを表明したものである。こうした知事の態度は、自衛隊のイラク派兵に反対し、平和を願う府民の願いに背を向けたものである。
また、最終日の本会議では、自衛隊のイラク派兵をめぐって、自民・公明・新政会の3会派が「自衛隊派兵容認」の意見書を提出し、数の力でこれを採択した。これは府議会に大きな汚点を残すものであり、わが党議員団は13日に「暴挙を糾弾する」(談話)を発表した。
民主党が提案した「イラクへの自衛隊派遣に反対する意見書案」は、「イラク特措法に基づく自衛隊派遣は見合わせる」とし、「新たな国連安保理決議」などがあれば自衛隊派兵を認めるというもので、これは憲法9条に反するものであり、わが党議員団は反対した。
2、今議会に提案された補正予算案では、SARS対策や硫酸ピッチなど不法投棄対策費などが提案された。
SARS対策では、わが党議員団はこれまでから、京都にはSARS患者の入院設備がなく、大阪の泉佐野まで搬送しなければならないことを明らかにし、京都にSARS患者受け入れ可能な医療機関をつくることを求めてきたが、今回、府立医大付属病院にSARS患者の入院設備を整備することとなった。
また、硫酸ピッチ対策では「硫酸ピッチの生成・保管を禁止する条例」が提案された。これも昨年の早い段階から、京田辺市大住内山における廃油系産廃・硫酸ピッチの問題を住民とともに日本共産党京田辺市会議員団が撤去を求めてきたにもかかわらず、本府がこれを1年近くも放置してきたことを厳しく批判し、新たに判明した京田辺市水取、瑞穂町における硫酸ピッチの不法投棄の厳正な対処を求めてきた中で、提案されたものである。わが党議員団は、すでに発生している硫酸ピッチの不法投棄には代執行を含む事態の早急な解決を求めるとともに、この条例の厳正な運用で府民の生活環境を守るため万全を期すよう求めて、関連予算と条例の制定に賛成した。
さらに「あんしん借換融資制度」についても、わが党議員団はその延長を求めてきたが、来年3月まで延長することが表明され、融資枠を1200億円と拡大するための予算も提案された。
こうした府民の切実な要求にもとづく前進とあわせ、「少人数学級」についても、新たな前進への道が開かれた。府教委は、これまで少人数学級実現を求める世論や運動が大きく広がっているにもかかわらず、「少人数授業、複数担任で対応する」とかたくなな態度をとってきた。しかし、文科省が、来年度から「加配教員」を「少人数学級にも弾力的に活用を認める」方針を明らかにしたもとで、府教委も「小学校中学年以上について、少人数授業に加え、少人数学級も選択して実施する」と答えざるを得なくなった。これは、多くの問題点を持ちながらも、府教委も「少人数学級実施」を認めざるをえなくなったことを示すもので、一歩前進である。わが党議員団は少人数学級の実施を強く要求するとともに、この「選択的導入」は教育現場や市町村教委の意見を尊重して実施することを強く求めた。今後、多くの府民や教育関係者と協力し、少人数学級の全面的な実現をめざすとともに、「加配教員」の配置が旧同和校に偏重していること、また、その基準が明確になっていない問題などを明らかにし、「選択的導入」も活用しての少人数学級実現へ奮闘するものである。
3、今議会では山田知事の地方自治についての考え方が、総務省とまったく同じで、地方自治とは程遠いものであることが、明らかとなった。
全国町村会や全国町村議長会が、こぞって怒りの声を上げている地方制度調査会の答申について、知事は「自主的な合併を促すための方途」「単にバリエーションを少し増やそうということかなと受け止めている」と発言した。これは、小規模自治体は「一人前の基礎自治体ではないとみなし」(町村会長あいさつ)合併を押し付け、自治権を奪うやり方を是認し、「自主的」と言いながら、事実上、合併を押し付けている総務省と同じ立場にたつものである。
また、わが党議員団が介護保険の減免や住宅改修助成を実施する自治体への助成制度を求めたことに対し、知事は「補助、補助というその共産党のお考えは、大変、中央集権的」「地方自治の否定につながる」というとんでもない暴論で、市町村への助成制度創設を拒否した。しかし、これは「福祉の増進を図る」という地方自治体の役割を投げ捨てるものである。わが党議員団は「住民の暮らしを守るため、府県と市町村が協力し合うことは当然ではないか。全国の都道府県が行っている乳幼児医療費助成など数々の市町村助成はすべて中央集権化を狙ってやっているとでも言うのか」と厳しく批判した。
わが党議員団が、今年から年金が削減されたうえ、大幅に値上げされた介護保険料が、お年寄りに大きな負担となっており、減免制度創設を求めたのに対し、知事は「京都府の負担も20億円増えている」とお年寄りの負担増に心を痛めるのではなく、府の財政からだけしか考えていないことをさらけだした。これは、知事としての住民への「思いやり」ではなく、自らが「官僚的」立場にしかないことを示したものである。
また知事は、補助金制度が「上下関係をつくり」「地方分権を進めるうえで弊害になっている」としたが、これは「ひも付き補助金」や「画一的な基準による補助制度」、「有利な起債」などで、地方自治体にムダな公共事業を押し付けてきた自民党政治の責任やこれに飛びついて丹後リゾート開発や学研都市開発をすすめてきた府政の責任を棚上げにし、すりかえるものである。
地方自治の確立を言うのなら、こうした補助金の見直し、地方交付税の充実強化や税財源の移譲などをすすめることであり、「三位一体改革」と称して、生活保護や義務教育など国の責任をなげすて、地方自治体への財政支出を削減しようとする小泉内閣のやり方に反対することである。山田知事は、こうした事態にまったく目をむけず、総務省と一緒になって、補助金などをなくしてしまおうというものである。
4、知事は答弁で「公共事業のあり方については知事就任直後から見直しに着手し」「南丹ダムの事業中止、丹後リゾート公園や木津川右岸運動公園の見直しをすすめている」と答弁した。これは「ムダな公共事業はやめよ」という府民の大きな世論と府議会でのわが党議員団の追及の中で、一定の手直しをせざるをえなくなったことを示している。
しかし、この見直しもきわめて不徹底であり、限られた事業であることが明らかになった。
畑川ダム建設について、決算委員会でダム建設事業費が当初の40億円が77億円にも膨れ上がることが明らかとなったが、これは96年に断層が発見され、20m上流に移すことが決められていたにかかわらず、議会に報告もせずにきたもので、これを厳しく批判した。また、わが党議員団は水需要予測が過大であること、生活用水として水質に問題があることを繰り返し指摘してきたが、知事も理事者も水需要予測の根拠はなんら示せず「水確保は地元住民の長年の悲願」としか答えられない状況におちいった。しかし、知事は「公共事業再評価審査委員会」の「継続妥当」との「結論」を口実に、地元住民一人当たり10万円もの負担増となるダム建設を進めようとしている。わが党議員団は、資料を全面的に公開し、「先にダムありきでなく、代替案を含め再検討を」求め、地元の住民と共同して奮闘するものである。
また、来年度予算編成に当たっては「府債等は極力抑制する」としながら、市内高速道路建設では事業費が新十条通線648億円、油小路線945億円で、この2路線だけで、府の出資金は現行でも107億円必要であり、出資率が35%に引き上げられれば117億円にもなる。これらはすべて府債でまかなわれるにもかかわらず、これは継続するというものである。
丹後リゾート公園も「丹後エコパーク」に見直したとしているが、それでも事業費は75億円にものぼるものである。「木津川右岸運動公園」も用地買収だけで100億円もかかる事業である。学研都市開発についても、これまで総事業費は公表してこなかったが、今回これが明らかにされ、総額は1660億円にものぼっている。その多くが起債であり、その返済のための公債費の増加が財政「硬直化」の要因となっている。
「公共事業の見直しをすすめている」というのならこうした事業についてもきっぱり中止・凍結することが求められており、府財政立て直しのためにも緊急の課題となっている。
5、今議会には、「自衛隊のイラク派遣計画の中止を求める請願」をはじめ、「保健所の支所設置を求める請願」や2万人近い署名を添えての「障害児に多様で豊かな進路保障を求める請願」など34件、約13万7000人から請願が提出された。わが党議員団はすべての請願の紹介議員となり、その採択のため奮闘した。
しかし、マニフェストに「30人学級実現」をかかげている民主党が「マニフェストは政権をとったとき4年間でやるもの」と理由にならない理由でこれに反対したり、公明党は「乳幼児医療費の通院も就学前まで」との予算要求を知事に出していながら、請願には反対するなど全く道理のない態度で、与党会派はすべての請願に反対し、不採択とした。
これら与党会派の、府民の切実な願いに背を向ける党利党略の態度は、府民の厳しい批判を受けざるをえない。
本年の府議会は11月定例会が最後となった。わが党議員団は4月の選挙で新しく選ばれた12名の議員が、府民の願い実現と「住民が主人公」の府政実現のため奮闘した。
いよいよ年明け早々に、京都市長選挙が行われる。わが党は広範な市民とともに広原盛明京都市長を実現し、希望の持てる新しい政治実現へ全力をあげて奮闘するものである。
2003年11月定例府議会を終えて(談話)[PDFファイル 208KB]