新井 進府議の代表質問
【新井】 日本共産党の新井進です。私は、日本共産党議員団を代表して、知事ならびに関係理事者に質問をいたします。
まず、質問に入ります前に、先におこなわれた京都市長選挙について一言申し上げます。
今回の京都市長選で、私ども日本共産党は、広範な市民団体や市民のみなさんとともに、前府立大学学長、広原もりあきさんを市長にと奮闘しました。残念ながら勝利をすることができませんでしたが、京都を愛する多くの皆さんから、政党支持の枠を超えて、ご支持、ご支援いただいたことに、心からお礼申し上げます。
広原候補の市民マニフェストは、巨額の借金財政、壊れゆく景観や伝統的なまちなみ、そして深刻な事態に直面する京都のものづくりや市民の暮らしなど、日本の顔・京都が直面する課題について、その再生の方向を明快に示したものであり、今後、このマニフェストが大きな役割を果たすものと確信するものです。
今回の選挙は、6割以上の市民が投票に参加しないという低投票率となりました。これは本来、選挙戦は、今後の京都市政をどうするか、その候補者の政策と人柄を明らかにし、広範な有権者にその選択を問うものですが、桝本陣営は、NPO団体や市民団体が、公開の討論会を呼びかけてもこれに応じず、もっぱら「反共」の大合唱で組織の内部固めに終始し、多くの有権者に政策を堂々と語りかけることを避けたところに大きな問題があったことは明らかです。
同時に、わずか3ヵ月前に「京都から国政をかえる」と自民・公明に対決したはずの民主党が「国と地方は別」と言い訳し、自民党と手を結ぶという、道理のない態度をとったことが、有権者の不信をかったことにもあり、これらの政党の責任が問われるものです。
今回の選挙戦でつくられた幅広い共同の組織である「市民ネット」のとりくみは、今後の京都の政治を変える大きな力となるものです。日本共産党は、「政治を変えるのは国民・住民自身」との立場を貫き、広範な市民の共同を大切にし、その前進のため奮闘する決意を表明し、質問に入ります。
大義も道理もないイラクへの自衛隊派兵/人道支援の障害でしかない派兵を、知事は当然視するのか
【新井】 質問の第一は、自衛隊のイラク派兵についてです。
いま、自衛隊のイラク派兵に、多くの国民が心を痛めて、怒りの声をあげています。しかも、国会の審議で小泉内閣は、まともに国民の疑問には答えられず、居直りとごまかしに終始し、7割以上の国民が、説明責任を十分果たしていないとしています。これは、自衛隊派兵の根拠がことごとく崩れているから、小泉首相には説明がつかないのです。
まず、第一には、戦争の大義とされた「大量破壊兵器」が、みつからないだけでなく、アメリカの調査団長が、「もともとなかった」と言明し、この戦争が大義のない戦争、侵略戦争であったことが、ますます明らかとなったことです。
小泉首相も公明党も「イラクには大量破壊兵器がある」としてこの戦争を支持してきましたが、この大義のないことがはっきりしたのですから、誤りを認めるべきです。
第二に、憲法違反であることが明白となったことです。派遣された自衛隊が占領軍の指揮下に入ることも、明らかとなりました。まさに自衛隊は、占領軍の一員として活動するのです。これは憲法が禁じている「交戦権」の行使に当たることも明白であり、絶対許されるものではありません。
第三に、政府は「人道支援のためだ」といっていますが、占領支配と人道支援は両立しません。
イラクで人道支援をおこなっているNGO団体も「イラクの子どもたちや市民は、迷彩服や銃におびえて暮らしている。そこに軍服を着て、銃を持った自衛隊が来ることこそ、非人道的だ」と批判し、赤十字国際委員会の委員長も「イラクでは最大の人道組織である赤十字国際委員会でさえ攻撃の対象とされている。米英軍主導の占領統治が続く限り、この状況の改善は望めない」と発言しているのです。国際社会の人道支援を不可能にする戦争と侵略に加担しながらの「人道支援」はありません。
第四に、自衛隊派兵はイラク特措法にも反するものです。特措法は「戦闘がおこなわれておらず、かつ戦闘行為がおこなわれないと認められた地域」に派遣するとしていますが、今日、バグダットでも、サマワでも、迫撃砲による攻撃がおこなわれるなど戦闘地域そのものです。それをごまかすために、先遣隊の報告書が調査以前につくられ、都合の悪い情報は隠すよう指示したりしているのです。まさに戦前の大本営発表と同じやりかたで、国民をごまかすようなことは許されません。
そこで質問ですが、知事は9月議会で「イラクへの自衛隊の派遣は、国際社会の一員としてその一翼を担うもの」と答弁されましたが、こうした占領支配に加担することも、国際社会の一員としての役割だとお考えなのですか。
また、国連安保理決議1483は、国連加盟国がイラクへの人道援助や復興に役割を果たすことを決めましたが、軍隊を派遣することは決めていません。だからこそ、軍隊を派遣しているのは国連加盟国191ヵ国の内38ヵ国、安保理15ヵ国の内わずか5ヵ国だけです。知事は、人道支援のためには、軍隊を派遣しなければならないと考えておられるのですか。お答えください。
同時に、知事は「イラク特措法第2条にもとづく原則が堅持されるべきだ」と言われましたが、そうであればイラクの現状では派兵すべきではないというのが当然だと考えますが、いかがですか。
いま、自民党、公明党の小泉内閣は、憲法を踏みにじって派兵を強行し、さらに憲法改悪をすすめようとしています。そして民主党も憲法改悪を競い合っています。しかし、憲法9条こそ、平和の宝であり、戦争のない21世紀の世界をつくるうえで先駆的なものです。日本共産党は憲法9条を守るためにも、平和を願うすべての国民と力をあわせて奮闘することを表明するものです。
【知事】 報道によると去る21日から来日中のアナン国連事務総長は、政府に対し、日本がイラク支援の主要な貢献国となっていることや自衛隊の人道復興支援の役割に感謝し、イラクをいかに助けるかがいま大事であり、国際的連帯なども大切になっていると話されたところであり、昨日も小泉首相との会談で同趣旨のことを述べられているところ。私どもは国際社会の声について、どのような内容にしろ、今後とも謙虚に受け止めるべきと考えている。
今回の活動は、食料品や医薬品、経済基盤の復興に必要な資源の供給など、国連加盟国に対して人道支援を求めた国連安全保障理事会決議第1483号を踏まえ、昨年7月に成立したイラク特措法に基づいて行われるものであって、あくまでも人道復興支援活動であるべきことは法においても明らかにされている。
人道復興活動は、イラク特措法第2条に規定されているところであるが、戦闘活動が行われていない地域での活動が前提でなければならない。万が一、その前提が崩れるようなことがおきれば、その場合には私は、自衛隊が速やかに撤退することが真に勇気がある行動だと思うし、イラクの復興支援に自衛隊が貢献していただきたいと思うけれども、事態に応じ自衛隊員はもとよりイラクの人たちが戦闘で傷つくことをできる限り避けることに躊躇すべきでないと考えている。
イラク特措法にも反し、米英の占領支配に加担・協力/それでも知事は、派兵反対の立場にたたないのか
【新井・再質問】 知事は、アナン事務総長の来日されての発言をもとに答弁をされましたけれども、その前にお聞きしたいのは、1つは、イラク特措法第2条によって、戦闘が起こるおそれのある場合は派遣をしない、このように明記をされています。しかし現実に、自衛隊が行っているバグダッドであれ、サマワであれ、迫撃砲による戦闘が行われているわけで、こうしたもとで自衛隊を派遣すべきではないというのが、前回9月議会での知事の答弁だったと思うのです。それが今日の時点で明らかなこういう事態のもとでも、これは特措法に反しないというふうにお考えなのかどうか、これについては1点お聞かせください。
それから、もう1点は、今回のアメリカとイギリス軍によるイラクヘの攻撃が大義のない戦争であった、侵略戦争であったことはもう明らかです。同時に、その上に立った占領支配に加担、協力をする、これが国際社会の一員としての役割なのか、このことについて知事はどう考えておられるのか改めてお聞かせいただきたいと思います。というのは、国連のアナン事務総長も、今回、日本に来て小泉総理に対するああいう発言がありましたが、しかしもう一方では、イラクで秋に予定している国会の選挙がおくれても、主権を占領支配からイラクの国民に移すべきだとの発言をされています。そして、国連の場でも、いわゆるアメリカ、イギリス軍による占領支配は一刻も早く終わる、そして国連に復興支援の体制を移す、このことが大事だと言われています。そういった意味でも、今回の自衛隊のイラクヘの派遣はまさに占領支配への加担になる、これが人道復興への障害になる、このようには考えておられないのかどうか、改めてお聞かせください。
【知事】 戦闘行為がなされている地域であるかどうかということについては、まさに先遣隊の派遣等により国において確認をされていることであるが、それだけに私どもとしてはもしもそういう事態が起これば、先ほど申したように撤退を躊躇しないということが真に勇気のある行動であるということを申し上げてきたところ。
復興支援については、これは主権を移すのは当然であると私も考えているが、そういった過程の中で復興支援のために各国が力を尽くす。そしてそれに対して、アナン事務総長が日本の対応を評価したというのも事実であるので、そういう全体の中で私どもは国際社会の中の評価というのを考えるべきでないかという風に、私は思う。
新たな負担なしに年金問題の解決できる/給付は削り、負担は激増する年金大改悪にストップを
【新井】 次に、年金制度改革についてです。
政府は、今国会に年金制度改革案を提案しました。その内容は、公明党の言う「年金100年安心」とは程遠く、国民の将来への不安を拡大するものです。しかも、今回の改悪は、これまでのように5年に1回見直しの際、国会で審議し、国民の暮らしの実態を反映させるのではなく、2017年まで毎年保険料の値上げ、給付の引き下げを自動的にできるようにするものです。
保険料は、厚生年金は、毎年0・354%づつ値上げし、現在の1・35倍に値上げです。年収が450万円のサラリーマンで、10万円も負担が増え、年間41,1750円となります。1ヵ月分以上の給与が年金の掛け金となるのです。この負担増は、不況のもとにある中小企業にも企業主負担として押し付けられます。
国民年金も現在の年額159,600円が、月16,900円、年額202,800円となります。自営業の夫婦であれば2人で405,600円です。いまでも滞納が4割近くになっているもとで、これでは払えない人が増え、多くの国民が年金から排除されることになります。
給付について、政府や公明党は現役世代の50%は確保するとしていますが、現行の59・4%を50%まで下げるのですからそもそも約2割の削減です。しかも、これはごく一部の世帯であって、共働き世帯は、現役世代の39・4%に、単身者は3割台、4割台となります。多くの国民にとって「50%確保」は絵に描いたもちでしかありません。
国民年金も同じように削減されます。国民年金給付はいま平均で月額51,700円です。その2割近くも削減するのです。これでは「老後をどうやって暮らしていけばいいのか」と怒りの声が上がるのは当然です。
この年金改悪は、年金財政が大変になったからだとしていますが、国民に新たな負担を押し付けずに解決できます。
第一は、基礎年金の国庫負担を2分の1へと引き上げることです。1994年の年金改悪の際、全会一致でこれを決め、本来なら1999年の改定時に実施すべきものでした。これを先送りし、政府・与党が2004年までに引き上げると、国民年金法に明記したのです。今回、これをさらに2009年度まで先送りするというものです。
国民には20才になれば収入がなくても「年金加入は義務だ。法を守れ」といいながら、政府が法を守っていないのです。こんなひどい話はありません。
まず、政府が国庫負担を2分の1に引き上げることです。財源は2兆7,000億円必要ですが、6兆円近くある道路特定財源の一般財源化など税金の使い方を改めればできることです。
第二に、年金財政を急速に悪化させている原因となっているリストラの推進、中小企業つぶしをやめることです。
2001年度には厚生年金加入者は、予測を282万人も下回り、賃下げの影響で保険料収入も2兆9,000億円も下回っています。加入者の見込み違いのうち約半分が青年です。900万人の青年の加入予想が、2001年では768万人にとどまっています。大企業のリストラで、多くの青年がフリーターとなり、厚生年金の加入者になれない事態をつくっているのです。
高齢化社会を迎えるもとで年金制度を維持するためにも、大企業のリストラを規制し、正規雇用の拡大など社会的役割を果たさせることです。
第三に、積立金を活用することです。厚生年金だけでも175兆4,000億円もあります。しかし、政府はこの積立金を株式投資にまわしたり、大規模な保養施設を作って失敗し、昨年度末の累積損失で6兆717億円という大変な赤字を作っています。
政府も積立金の活用を言い始めましたが、その中身は2100年までに1年分だけ取り崩すというものです。しかも、当面は積立金を増やし、2050年までに360兆円まで増やすというのです。こんなやり方をやめ、積立金を年金の改善にこそ活用すべきです。
小泉首相も知事も、社会保障の問題をいうと「給付と負担」の関係をいいますが、民間の保険会社の話なら通用しますが、政治の仕事の第一は、国民の暮らしを安定させることです。そのために税金の使い方をあらためて、社会保障を充実させる、この方向に切りかえるべきです。
府民の暮らしを守る立場から、こうした年金改悪はおこなわないよう求めるべきではありませんか。府民の大きな関心事だけに、知事の態度も注目されています。お答えください。
【知事】 年金制度は、国民の生活を支える社会保障制度の根幹として国において運営されている。その中で、少子高齢化の急速な進行等、制度を取り巻く環境が大きく変化しており、国民全体でこの制度をどのように支えていくのかということが大変大きな課題となっている。こうした中で、保険料水準の固定、将来の給付水準の一定確保など、最終的な負担と給付の関係を国民に示すとともに、基礎年金の国庫負担の2分の1への引き上げ時期の明確化などを骨子としている年金制度の改革案が国会に提出されている。しかし、このような改革については必要な財源確保の問題や短時間労働者の厚生年金への加入の問題、さらには国民年金の未加入・未納問題等、全体を通じた議論が必要であり、国会においてこれら検討すべき問題についてまず十分な議論がなされるべきと考えている。
京都府としては、これまでから国民生活の基本的なセーフティネットとして、持続可能で安定的な制度が構築されるよう国に強く要望してきており、今後、負担と給付のバランスが取れ、国民に過度の負担を強いることことのない、将来に渡って安定した制度が構築されるよう引き続き要望してまいりたい。
制度が持続しても、国民生活が持続不可能では、本末転倒
【新井・再質問】 それから年金問題ですが、知事は持続可能な制度にすべきよう要請をしているというふうに言われていました。しかし今、制度が持続可能になっても、国民の暮らしを持続不可能にするような制度に年金制度が改悪されようとしているのです。これでは国民の暮らしを守ることはできません。国民の暮らしを持続可能なものにするように、国に求めるべきではないですか。改めてお聞かせください。
そして、負担と給付の関係で議論されるべきだと言われましたが、今回の改革案は先ほど言いましたように、負担も給付もすべて国民に押しつけようというもので、まさに今の小泉内閣のやり方が痛みばかりを国民に押しつける、そういう意味でいいますと、むだな公共事業や軍事費を削減するなど、税金の使い方を改めてでも国民の新たな負担をなしにする、こういう方向は知事自身にもこの選択肢はないのか、このことをお聞かせください。
【知事】 府としてはこれまでから国民生活の基本的なセーフティネットとして、広く安定的な制度が構築されるよう国に強く要望してきているし、今後とも負担と給付のバランスが取れて国民に過度の負担を強いることのないよう、将来に渡って安定した制度が構築されるよう国に対し要望してまいりたい。
深刻な「国保崩壊」の危機 国に負担割合の引き上げを強く働きかけ、市町村に一部負担金減免の基準づくりを求める
【新井】 次に国保についてです。
いま「国保の崩壊」という言葉が広がっています。これは、国保料が毎年のように値上げされ、滞納世帯が増え、滞納すれば保険証が取り上げられて医療が受けられない、こんな世帯が増えていることを示しています。
昨年6月の厚生労働省の調査でも、滞納世帯が1年前より43万世帯も増え455万世帯で、約2割にのぼっています。短期証や資格証明書の発行も120万世帯にもなっています。
なぜ、国保の崩壊が起こっているのか。それは、ひとつには、国民健康保険制度が発足した当時と現在では加入者の状況が大きく変わってきているからです。国保がスタートした当時1965年度には67・5%が農林水産業や自営業者であったのが、2000年度ではこれが23・8%へ減少し、無職の世帯が6・6%から57・1%へと9倍近くに増えているのです。しかも25%が無収入者です。二つには、保険料もかつては所得や資産をもとにした応能割が7割で、所得に関係なく負担させる応益割が3割でしたが、これが政府の方針で応能割5割、応益割5割と改悪されることにより、低所得者への負担が大きく増やされたことです。
三つには、国の負担割合を医療費の45%から38・5%に減額、これを契機に自治体の国保会計は赤字に転落し、国保料を大幅に引き上げることになりました。こうした状況は京都でも同様です。
いま、国保を守るため緊急に必要なことは、国の負担割合をすくなくとも元の45%に戻すことです。知事として、このことを強く国に求めるべきだと考えますがいかがですか。
第二に、国保法には保険料と一部負担金の減免が明記されています。ところが府内の市町村では、一部負担金の減免について、その基準が明らかとされておらず、事実上その制度の活用ができないところが多く残されています。このことについては、一昨年、沖縄県の国保審査会が、保険料や一部負担金の減免は、法に定められた国民の権利であり、自治体が実施しないのは国民の権利の侵害にあたるとの裁決を出しました。
本府としても、国保法44条に定められた一部負担金の減免が活用できるよう「市町村長が認める場合」の基準を明確にするよう市町村に求めることは、府民の権利を守るうえで必要だと考えますが、どう対処されていますか。お伺いします。
【知事】 国の負担割合の変更は、被用者保険に加入していた退職者の医療費を被用者保険により負担する制度が導入されることなどにより、市町村保険者の負担が軽減されるという制度全般の見直しの中で行われたもの。府としては、その中にあって、国に財政支援の強化を強く働きかけた結果、保険基盤安定制度や保険者支援制度の創設等、各般の財政調整が講じられてきたところ。しかしながら、国民健康保険は、被保険者に高齢者や離職者が多いため、医療費が高く保険料負担能力が弱いという構造的な問題があり、市町村は懸命な運営努力を行っているが、年々負担は厳しさを増しており、今年の交付税の削減はこのような市町村の努力に背を向ける結果になるものと考えている。府としては、将来にわたり安定的に運営できる制度となるよう、抜本的な制度改革を国に対し市町村とも連携して求めるとともに、当面は厳しい財政状況を踏まえ、財政支援の更なる強化を働きかけているところ。
府としても厳しい財政状況の中で、平成16年度においても保険基盤安定制度等に基づく財政支援について、必要な予算をお願いしているところ。
医療費の一部負担金の減免措置は、国民健康保険法上も保険者の判断により行うこととされており、被保険者の生活実情を最もよく承知している市町村が給付と負担のバランスを踏まえ判断すべきものであるが、減免制度の運用にあたっては、被保険者の信頼の確保が重要であり、先般2月6日に行った市町村会議でも、各市町村が減免措置を講ずる場合の基準の明確化等について助言に努めたところ。
「三位一体改革」の名による地方自治体の切り捨て
【新井】 次に、地方自治の振興について伺います。
今回、政府が「三位一体改革」の名で2兆9,000億円もの交付税等の大幅削減をおこなったことに、福島県知事は「地方分権で残された税財源の改革を三位一体改革でできると思ったら大間違いだった」と言い、新潟県知事も「12月段階でいきなり収支不足が倍増するやり方はむちゃくちゃ。強い怒りを感じる」としています。これは自治体関係者の共通した声です。
本府でも削減が300億円にものぼり、府内市町村でも京都市を含め約255億円もの減額が予測されます。政府の地方交付税削減は地方自治つぶし以外の何ものでもありません。こうした「三位一体改革」について、わが党議員団は早くから「これは本来の地方財政の確立ではなく、財政負担を地方に転嫁し、国の支出を削減しようとするもの」と厳しく批判し「財源調整・財源保障機能を持つ地方交付税の充実強化こそ求められている」と指摘してきたものです。ところが、昨年11月、本府議会で与党会派は、「三位一体改革を着実に推進されるよう要望する」というまったく的を射ない意見書をわが党の反対にかかわらず、採択しました。
地方交付税は、憲法が定める地方自治を保障するためのものです。これを国の財政悪化を理由に、一方的に削減することは、憲法上も許されるものではありません。わが党は、政府のこうしたやり方に厳しく抗議するものです。
また、国庫補助・負担金の削減もおこなわれていますが、「奨励的補助金」や「有利な起債」でムダな大型公共事業や全国画一的なハコモノ建設を、地方自治体に押し付けてきたこれまでの政府のやり方や、これに迎合してきた本府を含めた自治体のありかたが厳しく批判されることは当然で、こうした補助金の見直しは必要です。
しかし、国庫補助・負担金の7割以上は、福祉や医療、教育など、国民がどの地域に住もうとも、一定の水準を保証するため、国の責任において措置しなければならないものです。これを知事のようにすべて「補助金は中央集権化をねらったもの」かのようにいって、国の責任放棄を弁護することは、許されません。
知事も、今回の地方交付税の削減に批判の声をあげておられますが、この際、本府議会をはじめ、自治体関係者があげてこうした国の無法なやり方を許さない大きな運動が必要だと考えます。知事が先頭に立って立ち向かうべきだと考えますが、いかがお考えかお聞かせください。
【知事】 京都府をはじめ、府内の市町村は、国に先んじて公共事業の削減や人件費抑制などの内部コストや事業見直しなど、財源を捻出し、住民サービスの維持に現在懸命に努めてきている。国は、このような努力をかえりみることなく、地方が予算編成の大詰めを迎えている段階で国の財政再建を優先するような、今回のような地方交付税の突然の大幅な削減を断行したことに、私も怒りを感じざるを得ない。国の三位一体改革の補助金の削減は、来年度は1兆円であるが、今回の交付税等の削減は2兆9千億円であって、三位一体についても問題は多いのだが、交付税の削減はそれとは別の次元で行われたものであり、まさに三位一体の陰に隠れて年末のドサクサに地方財政計画で決められたもの。十分な地方団体に対しての説明もないまま、また地方団体の意見を聞くこともなく行われた点では、総務省と財務省の談合と言われてもしょうがないものである。
特に私どもは、今回の予算において、ローカルルールの適用等、工夫を重ねながら公共事業の削減等で何とか予算を組んできた。その結果を捉えて、さらに地方の単独事業が減ったからといって交付税を減らされれば、まさに来年度は私どもは死活問題になる。これは国による地方の行財政改革の横取りであると考えている。
2月16日には、近畿ブロック知事会として地方財政見通し等の早期公表と地方の意見を反映すべきことなどを国に対し提起するとともに、さらに2月17日には、京都府と府内全市町村の総意として地方交付税の削減に対する緊急提言を行ったところだが、来年度以降も今回と同じような削減が強行されることのないよう、今後とも他の知事さんや市町村長さんとも連携をしながら、引き続き様々な機会を通じ国に対し厳しい対応をしていかなければならないと考えている。
財政締め付けをテコにした市町村合併の強要をやめよ
【新井】 次に、政府がいま強引に進めている「平成の大合併」も地方自治の前進のためではなく、国の地方への財政支出を削減するためのものであることは、明らかです。
知事は、これまで「合併は市町村が決めること」と言いながら、実際は、国の交付税削減など、財政締め付けをテコに、「小規模自治体は生き残る道はない」と国と同じ言い分で合併を強要してきたのです。
この間を見ても、2月18日おこなわれた宮津与謝法定合併協議会において、町長らが参加する新市建設計画策定委員会の結論として、小委員長の岩滝町長から「協議がととのわなかった」ことが報告され、野田川町長が議会での協議や住民の声を踏まえて、離脱の方向を表明されました。しかし、ここにいたる経過の中では、協議が不調となりつつあったとき、京都府が関係町長や議会関係者に繰り返し、合併推進を働きかけてきたことは地元関係者から伝えられています。さらに、18日当日も、地方課長と振興局長が協議会の冒頭に「合併しなければ大変な困難になる」と延々と話しています。
船井北桑でも、船井北部3町の協議が進められているときに、関係町長に「7町合併に戻すよう」府が働きかけをおこなっています。こうしたやり方に多くの関係者が「府の圧力は本当にひどい」と批判の声をあげているのです。
知事。これらは市町村自治への介入そのものではありませんか。こうしたやり方は、即刻やめるべきです。いかがですか。
さらに、本府がつくった「市町村行政改革支援委員会」は「市町村合併の円滑な推進をめざす」ものとされており、「有識者の意見」なるものを後ろ盾に、市町村合併を何が何でも推し進めようとするものです。
住民の意思を問う住民投票には「合併特例法で決められていない」と市町村を指導し、他方、合併を進めさせるためには、第三者機関をつかって、押し付けるというやり方は許されません。こうした委員会の設置は止めるべきです。いかがですか。
知事は、府の財政を困難にする交付税の削減には「地方切捨てだ」と批判の声をあげるけれども、市町村に対しては、財政削減をテコに、合併を押し付ける総務省のお先棒を担ぐという、「地方切捨て」の立場におられることを示すものです。
いま、地方自治を守るために知事に求められていることは、住民自治を奪う合併の押し付けではなく、「地方交付税の削減」にきっぱり反対し、小規模な自治体も住民自治を守ってがんばれるよう支援することです。こうした方向への転換を強く求めるものですが知事の見解をお伺いいたします。
【知事】 それぞれの地域において、いままさに真剣な議論が行われているところだが、市町村の住民もまた府民であり、市町村の集合により京都府ができているのだから、市町村から助言等を求められれば府が親身になって相談にのるのは、これは当然のことだと思っている。ましてや、振興局長たちは、法定協議会の委員として発言をしているので、何も発言しないのであれば、単なる「でくの坊」でしかない。今後とも、市町村の求めに応じ、助言等の支援をおこなってまいりたい。
ご指摘の支援委員会については、市町村から助言を求めたいとする声を踏まえ、できるだけ客観的な助言を行えるよう、学識経験者で組織する第三者委員会を市長会、町村会と共同で設置したもの。各地域から具体的な助言の要請があれば、積極的に応えていただけるものと期待している。
国による地方分権が進む中、現在、各市町村においては、地域の自立に向け必死になって努力を行っているところであり、府としては、規模の大小にかかわらず行財政基盤を充実し、自立をめざそうとする市町村を積極的に応援していきたい。一方、今回の突然の地方交付税の大幅な削減などのように、市町村の行財政基盤の充実の方向に反するものについては、断固反対してまいりたいと考えている。
市町村への介入、合併強要は断じてすべきでない
【新井・再質問】 それからもう1点は、市町村合併についてです。先ほど知事は、助言等が求められているから振興局長等が対応しているのだと、このように言われました。しかし、それは事実に反する。再度お調べいただきたいと思うのですが、助言を求めて、そして振興局長や地方課長が話をされているときもあります。しかし、それとは別に、現実に町長を呼んで、そして先ほど紹介したような事例が起こっているわけです。
知事がこれを御存じないのならば、改めて調べていただきたい。そして、そういうことを知った上で、それらがすべて助言だと言われるならば、まさに市町村に対する介入だと言わざるを得ません。そういった意味では、市町村から、府から圧力を受けている、このようなことが言われることのないように、きっぱりとした対応をすべきではありませんか。これについて改めてお聞かせください。
【知事】 振興局長も地方課長も先ほど申したように、合併協議会の委員として活動しているもの。まさに合併について助言を求められ、そして発言することを前提に委員を委嘱されているものであるので、その発言自身をとって介入というのでは、これは委員にもなれないという風になろうかと私は思っている。
学研都市開発など大型公共事業の中止、見直しを
【新井】 次に、2004年度予算案に関連して質問いたします。
予算案では、府債を総枠で抑制したとされていますが、臨時財政対策債が160億円も減額されているのになぜ、86億円の抑制にとどまったのかということです。昨年10月の「京都府財政の現状と今後の取り組み」の中では、「臨時財政特例債」を除けば、府債発行額は着実に減らしています」と自慢し、予算編成方針では府債の発行について「極力抑制し、実質的な府債残高の抑制を図る」とされていました。ところがこうした方針とは違って、今度の予算で実質的に府債が増えたのは、相変わらずの不要不急のムダな大型公共事業にはメスが入れられていないからです。
府債の中には、市内高速道路や関空の出資金、木津川右岸運動公園、丹後大規模公園、和田埠頭、畑川ダム、学研都市開発など不要不急の事業が多く含まれています。「財政が厳しい」というのなら、こうした事業は、いったん中止する、その決断こそが、いま知事に求められているのではないですか。お答えください。
この大型開発事業に関連して、学研都市開発についてお伺いいたします。
学研都市開発について昨年五月、都市整備公団が「木津北、東地区の開発計画の中止、中央地区の見直し」を決めました。理由は住宅需要が見込めずというものです。これはもともと予想されたことで、私も、2002年2月議会で当時の荒巻知事に学術研究施設用地も住宅用地もすでに売れ残りがたくさんあり、「これ以上の開発は無駄になる、中止、見直しすべきだ」と求めました。ところが前知事は「産・官・学あげて建設促進が進んでいくものと確信している」と聞く耳を持たない態度をとりました。さらに昨年12月には、研究施設の目玉でもあったバイエルの撤退が発表されました。
本府は、この学研都市開発に、すでに1,500億円をこえる税金をつぎ込んでいます。これだけの財政を投入したにかかわらず、計画どおり住宅が張り付かない、研究施設がこない、それどころか今回のバイエルだけでなく住友金属などすでに進出していた研究施設の撤退まで始まる。民間だのみの過剰な投資であったことは明らかです。
そこでお伺いいたします。木津南地区では学術研究施設用地として62ヘクタールの造成がすすめられています。バイエルの跡地活用はどうなるのか。木津南地区の残りの研究施設用地活用のめどはあるのか。さらに造成中の木津中央地区でも学術研究施設用地は58ヘクタールですが、京都大学の一部移転の話がなくなったもとで、どういう見通しなのか。明らかにしていただきたいと思います。
財政が厳しい中で、具体的見通しもなしに投資をつづけることは許されないと考えます。知事の見解をお聞かせください。
また、地元自治体の財政負担も大きなものです。この財政負担軽減のため、そのひとつとして、当初の予定通り住宅が張り付かないもとで、公団による代行事業で建設された学校等の償還期限の延長を公団に申し入れるべきではありませんか。さらに、開発地区と結ぶ地区外の都市計画道路について、これまでは公団も一定の負担をおこなってきましたが、今後はおこなわない意向を示しています。地元自治体の負担を軽減するためにも、受益者である公団が当然負担すべきであり、このことも求めるべきです。いかがですか。
そして、南部地域の多くの住民が望んでいる山手幹線が、「狛田・南田辺地区」の3・34キロがまったくすすんでいません。この区間は、京阪と近鉄によるクラスターの開発と一体ですすめると答弁されてきましたが、いつ事業者が開発にかかるか見通しが立たないのではありませんか。この際、この区間については、事業者から用地提供を受け、府の事業として着手すべきではありませんか。お伺いします。
【知事】 来年度予算においては、公共事業のいっそうの見直しを行い、ローカルルールの適用などにより事業費を抑制しているが、一方、臨時財政対策債以外の府債発行が増えているのは、この中で有利な減収補填債等の活用をはかっているから。しかし、臨時財政対策債を除く府債の今後の発行をこのペースで管理していくと、今後10年間は臨時財政対策債以外の残高は1割程度は増加するものの、その後は緩やかではあるが減少に転じることのできる一定の目途を立てているところ。
また、元利償還を国の責任により交付税で行うものを除いた実質的な府債の発行についても、元利償還額を下回る発行となるよう長期的な財政運営にも配意しているところ。
今回の予算編成にあたっては、2つの緊急対策と4つの重点方針を重点課題として取り組む一方、社会資本整備については、真に必要な事業を精査した上で取り組んできた。社会資本整備は、21世紀の京都府を築き上げていく上で欠かせないものであって、その中で行財政改革を推進する観点から、ローカルルールの適用などの重点化をはかる一方で、臨時生活関連施設整備に要する経費については現下の不況雇用情勢を勘案し、府内中小企業の経営の下支えとして5割増の予算を講じたところ。社会資本の整備については、今後も、事業の選択と集中をはかり、戦略的効率的に事業展開をはかってまいりたい。
学研都市は、わが国トップレベルの学術研究施設の立地が進み、現在では関西における最大規模の研究開発拠点の一つに成長している。京都府域の学研都市区域では、平成14年度には国会図書館関西館など4施設が、平成15年度にはオムロン、けいはんなイノベーションセンターなど4施設が開設され、すでに41の文化学術研究施設が立地している。居住人口も着実に増加し、約3万6,000人がクラスター内で増加しており、約1万9,000人の学生が就学し、2,700人の研究者が就労するなど、バブル崩壊後の厳しい社会経済情勢により多くの構想が挫折する中、京都南部に新しい都市が形成されているのは事実である。
木津地区については、用地の多くを所有している都市基盤整備公団が昨年夏に事業の見直しを発表したが、私から公団には、学研都市は国家プロジェクトであり、長期的視点に立って引き続き公団が主導的役割を果たすよう要請し、公団総裁からは、新法人後も都市建設に努力する旨の表明を得ている。
同地区の学術研究施設用地については、今後とも公団と十分に連携を取り、学研都市にふさわしい施設立地を推進してまいりたい。バイエル薬品中央研究所の撤退は、同社の世界戦略に基づくものと聞いているが、学研都市にふさわしい土地施設利用が進むよう現在要請を行っているところ。府や市町の公共施設整備にかかる負担については、府としても市町とともに国や公団に対し、制度の存続や拡充について要望しているところ。
学研都市建設は、国、府県、および市町、都市基盤整備公団、経済界等が密接に協力し進めているところであり、基盤整備については、現在、地域の基幹道路である山手幹線をはじめとする関連道路、さらに河川改修、下水道整備等、地域の住民のための基盤整備を行っていることであり、今後とも長期的な観点から、将来を見据え必要な整備を行っていきたい。
党議員団の要求が実り、マル小融資の拡大、納税要件撤廃/金融支援・経営指導、技術開発など中小企業対策の拡充を
【新井】 次に、中小企業振興についてお伺いします。
いま述べた学研都市開発や丹後リゾート開発のように「呼び込み型」の地域経済対策のゆきづまりは明白です。私ども日本共産党はこれまでから、京都の持つ技術力や資源を生かした「内発型」の経済振興こそ、京都経済を立て直す道であることを繰り返し指摘してきました。今こそ、そうした方向へ切りかえることが必要だと考えます。
そのためには、高い技術力を持ち、京都のものづくりの宝である伝統地場産業をささえ、この不況を乗り切れるように支援することです。
政府は、盛んに「景気が上向いてきた」と宣伝していますが、多くの国民は「そんな実感は持てない」というのが実態です。たしかに徹底したリストラで、トヨタが空前の1兆円の純利益をあげるなど、一部の大企業は儲けを増やしていますが、一方、京都の企業倒産は昨年も500件をこえ、失業率も高水準です。今度の予算案でも、個人府民税や個人事業税をマイナスにしなければならなかったように、府民の暮らしは冷え込んだままです。
こうした中で、今回の予算案で、「あんしん借換融資」を本年末まで延長することや中小企業融資を大幅に改革することが提案されています。わが党議員団は、これまでから赤字経営に陥っている零細業者も使えるマル小については、融資限度額を引き上げること、新マル小については、納税要件を取り払うことを繰り返し求めてきましたが、こうした指摘に答えたものとして評価するものです。
ただ、これらの融資について、「金融機関受付による融資の効率化、迅速化を図る」とされていますが、本来制度融資は、銀行など金融機関からの融資が受けにくい中小零細企業への円滑な資金繰りをはかるためのものです。その制度融資にあたっての経営診断を金融機関に委ねることになります。これによって「不況業種」であることなどを理由に、「貸し渋り」がやられたり、資金が必要な中小企業が排除されることがないようにする必要があります。その保障はどうされるのかお聞かせください。
また、そのためにも、銀行や保証協会が貸し渋り、保証しぶりを行ったとき、その苦情を聴き、解決するための仕組みが必要だと考えますが、いかがですか。
さらに、京都府の中小企業総合センターなどの指導金融や斡旋融資をなくさないことを求めるものです。
これまで中小企業総合センターでは、職員が研修を受け「中小企業診断士」の資格を持って、中小企業の経営相談にのるなど、指導金融が重視され、積極的な役割を果たしてきました。しかし、現在ではこの診断士の資格を持った職員は一名ほどと聞いていますが、零細な企業が多い京都では、経営指導と金融支援とを一体で進めることがきわめて重要です。今後どうされますか。お聞かせください。
中小企業振興の質問の第二は、京都の持つ技術力や中小企業経営者の意欲を生かした新しい商品や技術の開発を支援することについてです。
先日、産業雇用活性化特別委員会として石川県の工業試験場を視察してきましたが、ここでは、あらたに「ものづくり支援センター」が作られ、「工業試験場の設備を開放し、あなたの製品開発を応援します」と地域産業の製品開発を支援する体制が強化されています。また、私ども議員団が調査した新潟県でも、金属加工が地場産業である燕・三条に、新技術・新商品研究開発支援や創業・新分野開拓支援機能を持った「リサーチ・コア」がつくられています。今、多くのところでこうした地元の地場産業の技術や人材を生かした新商品・新技術開発などを全面的に支援する体制の強化が図られています。
ところが、本府の中小企業総合センターのおこなうこうした分野の事業では「試験分析測定および新技術開発研究事業」がありますが、その事業費は平成10年度5,000万円余であったのが、14年度では1,800万円余に、また「中小企業の経営と技術の相談、診断指導事業」でも7,000万円近くが3,500万円に、さらに丹後の織物・機械金属振興センターの事業費も、平成10年度には北部支援室とあわせて3,400万円余あったのが、昨年度では1,000万円余と大幅に減少しているのです。
こうした分野の予算を削減するのではなく、中小零細企業、伝統地場産業のこうした活動を支援する体制を強化すべきではありませんか。また中北部地域の機械金属などの振興を図るためにも、中北部地域に、「中小企業支援センター」を設置すべきではありませんか。お伺いいたします。
【知事】 今回制度の大幅な再編統合を行い、制度融資をさらにわかりやすく、利用しやすいようにしようと考えている。その場合、受付を金融機関とすることも、融資窓口の大幅な増加と専門性の活用による迅速化をはかり、制度のいっそうの利便性の向上に努めようとするもの。すでに、「あんしん借換融資」では、金融機関を受付とすることにより、約1年間で1万1,000件、2,100億円以上の従前にない多くの活用をいただき、制度融資全体のうち、金融機関の受付による実績は1月末現在すでに件数で90%、金額で95%を占めており、融資業務の円滑化には欠かせないものとなっている。
厳しい経営環境を反映し、「あんしん借換」等の融資制度は府内中小企業者の皆様の大きな下支えの機能を果たしているが、新しい無担保無保証人制度についても多くの融資業務や相談等が予想されているので、受付を金融機関にし、支店担当者までを対象に繰り返し制度の説明会を開催するなど、十分な理解のもと円滑な推進が図れるよう努めることとしている。
また、中小企業総合センターをはじめとする府の窓口においても、引き続き丁寧な融資相談等に応じることとしており、中小企業の方々の意向も十分に踏まえた対応に心がけることにしているが、さらに来年度は各広域振興局管内において金融機関等と定期的な協議の場を設けることなど、金融機関と行政が一体となり制度融資の円滑化を図ることとしている。
小規模企業や伝統地場産業の新商品、新技術開発を支援する対策については、多くの中小企業が集積している京都においては、その力を生かすためにもチャレンジ精神を持つ中小企業に対する支援を総合的立体的におこなうことが必要であり、特に産・学・公の連携による中小企業支援が重要であることから、京都産業21を平成13年4月に設立し、中小企業総合センターと連携しながら事業を進めるよう体制を強化したところ。
したがって、予算的には、中小企業総合センターから京都産業21への事業移管等の環境を考えれば、トータルでは所要額は確保されているところであり、特に新商品、新技術開発予算については平成10年度の約2億4,000万円から、平成16年度には約3億8,000万円へと大きく伸ばしてきたところ。加えて京都府では、全国的にも例を見ない京都版知的クラスター制度の創設や創造法や経営革新支援法に基づく活動助成の実施、産学公連携の促進、伝統産業における海外との交流事業の展開やインキュベート施設の充実など、中小企業支援事業の大幅な充実に努めてきたところ。
なお、北部地域における中小企業支援については、その役割を京都産業21の北部支所が担っており、平成12年度に機械金属部門を強化した織物機械金属振興センター、さらには京都工業繊維大学のサテライトオフィス等関係機関と連携し、中北部地域の産業振興に取り組んでいるところであり、今後とも中小企業支援に全力で取り組む。
京都交通の「更生計画」に地元市町村や府民の要求を反映させ、府の補助制度の見直しなど生活路線を維持のための対策を
【新井】 次に、京都交通株式会社の会社更生手続きにかかわって、府民の足を守る立場から、数点質問します。
今回の京都交通の会社更生手続きの開始は、多くの府民と自治体関係者に衝撃を与えました。京都交通のバス路線は中北部を中心に府内13市町に及び、府民の日常生活に欠かせない足となっています。この生活路線バスがどうなるかは、地域住民にとってきわめて重大です。
すでに本府としても「京都交通対策部会」をたちあげ、国土交通省や京都交通保全管理人などに、要望もされているところですが、あらためて数点お伺いいたします。
第一は、今後、管財人の下で「会社更正計画」がつくられることとなりますが、この更正計画が公共交通のもつ社会的役割にふさわしい計画となるよう強力に働きかけることが必要だと考えます。同時に、更正計画に地元市町村や本府の意見が反映できるような仕組みが必要と考えますが、どのように対処されるのか、お聞かせください。
第二に、生活路線を維持するため、国および本府の補助制度の見直し、さらには、経営改善のために、金融機関の全面的な協力がなければできません。これらについてどう対処されるのか、お聞かせください。
第三に、連鎖倒産を防止することや雇用を確保するための万全の対策を講じることが求められています。どう対処されるのですか、お伺いいたします。
【知事】 路線は13市町、161路線という広域にまたがり、高齢者や学生などの生活交通を担っていることから同社の会社更生手続きが進められることは地域の生活に重大な影響を及ぼす問題と考えている。このため、同社の申し立てに対して、直ちに庁内連絡会議を立ち上げるとともに、関係自治体等で構成する緊急京都府生活交通対策地域協議会を開催し、対応策の協議を進めてきた。管財人に対しては、私自身、更生手続き開始決定前の段階で、すでに生活交通の確保の要請をしたが、13市町とも協力し、管財人に対し、路線の確保、雇用の確保、取引関連中小業者に対する十分な配慮、さらには関係地方公共団体等に対する十分な情報提供と緊密な連携の確保等を要望したところ。管財人としても、公共交通の重要性を踏まえできる限り地域の交通を確保するために努力する、その考えを表明されたところ。
しかし、そのためにも管財人は、まず再建の基礎となる路線ごとの収支を把握する必要があるとしており、府としてもその調査を踏まえながら地元市町とともに利用状況や支援制度の点検を進め、管財人と十分に連携を取っていくことを話し合ったところ。今後、管財人から各方面に対する様々な協力を求められるものと考えているが、府としては生活交通の確保を最優先の課題として対応してまいりたい。
連鎖倒産の防止については、保全管理命令後ただちに各地方振興局等に、特別経営相談窓口を開設するほか、中小企業信用保険法のセーフティネット保証の指定を国に要請し、その結果、2月2日に指定をされたところで、今後とも地元経済への影響ができるだけ少なく最小限となるようつとめたい。雇用確保については、現時点でただちに雇用不安がおきる状況にはないが、まさに京都交通の今後のあり方が大きく影響するので、再建にむけての努力が重要と考えている。今後とも国や関係市町、管財人等といっそう連携を密にし、幅広い関係の方々の協力も得て、地域の生活の足や雇用の確保等に全力をあげたい。
少人数学級導入へ新たな一歩/学級編成は、市町村教委の自主的判断を尊重せよ
【新井】 次に、教育問題にかかわって質問します。
今回の予算案で「こどものための京都式少人数教育推進事業」が計上されました。これまで本府は、少人数教育は、少人数授業やティームティーチングしか認めてきませんでしたが、今回、国の方針変更を受けてのものとはいえ、「少人数学級についても市町村の判断により、基準を下回る人数で学級を編成」する場合にも加配教員を当てることができる」と改善されました。これは、永年の父母や教職員の少人数学級を求める運動や議会での議論が一定反映されたものです。
そこで質問の第一は、これまで「まなびプラン」では、少人数学級については、「小学校中学年以上において、少人数授業の充実に加え、少人数学級も選択実施する」とされ、小学校1・2年生は複数教員配置で対応するとしかされていませんでした。
しかし、今回の予算説明資料で「加配教員778人全部を使うと小学校1年から中学3年まで、すべてで35人学級ができます」とかかれています。これは当然、小学校1・2年生から少人数学級編成とすることも認めるということだと考えますが、いかがですか。
そして、すでに京都市は小学校1・2年生について少人数学級編成とし、それでも30人を超えるクラスは複数教員の配置を行っているのですから、これと同様の措置は、府内の市町村でも可能だと考えますが、いかがですか。
第二に、少人数学級について「市町村の判断により編成する」とされていますが、これは、府教委が加配教員778人を一定の基準にもとづいて、市町村教委へ配分し、その活用については、市町村教委が、各学校の状況をもとに、判断して行うというもので、あくまでも市町村教委にその判断をゆだねられるものだと考えますが、いかがですか。
府教委が、さまざまな形で介入することはないということを、念のため伺っておきます。
【教育長】 少人数教育についてだが、府教育委員会としては、「学び教育推進プラン」において小学校1・2年生では、早期に学習習慣の確立をはかるため実施している2人の教員による指導を柔軟に運用できるようにすること、小学校中学年以上では興味関心や習熟度程度に応じた少人数授業に加え、少人数学級も組み合わせて市町村教育委員会の判断で、学校や児童生徒の実態に応じたいっそう効果的な教育が行なわれるようなことを基本としているところ。こうした考え方を基本に、子どものための「京都式少人数教育」を推進するための予算を本議会にお願いしているところ。こうした中、市町村教育委員会から小学校1・2年生で少人数学級実施の要望がある場合は、内容を十分聞きながら対応していきたいと考えている。したがって、小学校1・2年生において、少人数学級を選択する市町村があれば、体制上は京都市と同様となる。なお、少人数授業、ティームティーチング、少人数学級については、「まなび教育推進プラン」の考え方を示しながら、市町村教育委員会の判断で選択して実施したいと考えているところ。
山城養鶏生産組合の食品衛生法違反事件/同組合に5割以上の補助金が集中。特別扱いはないのか
【新井】 次に、山城養鶏生産組合の問題についてお伺いします。
山城養鶏が6ヵ月前に採卵した卵を出荷した事件は、多くの国民に衝撃を与え、食品表示への信頼性を揺るがす大問題となりました。
この事件は事業者のモラルが問われる問題であると同時に、食品の安全に責任を負う京都府の対応にも多くの問題があると考えます。以下、数点質問いたします。
第一は、事件が明らかとなった昨年12月段階で、本府は「食品衛生法に反するとはいえない」としながら、本年1月20日には「食品衛生法違反」として7日間の営業停止処分をおこないました。なぜ、このように異なることとなったのか、明らかにしていただきたいと考えます。
平成7年2月17日付けの厚生省生活衛生局長名による通知では、賞味期限等の設定は「食品の特性等に応じて、微生物試験や理化学試験および官能検査の結果等にもとづき、科学的・合理的におこなうものであること」とされています。しかし、山城養鶏は、半年間冷蔵庫に保管してあった卵を出荷する際「卵を割って点検した」としており、しかも、消費者から現に腹痛や下痢の症状が訴えられ、「異臭がする」との苦情も寄せられていたのです。当然、この段階で、「科学的、合理的に賞味期限を設定」したとはいえないことは明らかだったはずです。いかがですか。
また、約70パックについては、「12月2日採卵」と表示して出荷されており、この表示が虚偽表示であり、食品衛生法第12条「食品、添加物、器具または容器包装に関しては、公衆衛生に危害を及ぼす虞がある虚偽のまたは膨大な表示または広告はこれをおこなってはならない」に違反しているとなぜされなかったのか。お伺いいたします。
さらに、保健福祉部が1月13日付でだした文書で「山城養鶏生産組合の社告などにより、未消費の卵の自主回収はほぼ完了」としていますが、12月11日の「社告」は「高槻市内の関西スーパー2店舗で販売した68パックに古い卵が混入した」としたものです。京都でも半年前の卵が販売されていたのですから、当然府内でも事態を府民に知らせる意味からも「社告」を出させる必要があったのではないか。なぜ、ださせなかったのかお伺いいたします。
そして、こうした事態が生じたとき、本府としてもその情報を広く府民に公表することが必要だったのではありませんか。マスコミが大々的に報道してから後追い的に公表しており、それどころか、本府のホームページでは、山城養鶏を「安全安心の卵を供給する生産者」として紹介され続けられました。府民に正確な情報の公開をもっと積極的に進めるべきだと考えますが、いかがですか。
第二は、このように12月段階での府の対応は「手ぬるい」との批判がでるように、山城養鶏を特別扱いしていたのではないか、との疑問がぬぐえません。
この山城養鶏生産組合には、1986年の鶏舎移転補助を皮切りに、各種補助金を3億5,510万円もだしています。
この補助金額は、本府の1985年以後の養鶏関係補助金総額の5割以上を占めています。府内には、1,000羽以上の養鶏農家だけでも80数軒あります。それなのにこの山城養鶏に半分の補助金が集中されているのです。このような特別扱いをしてきたことと、今回の対応の「手ぬるさ」に特別な事情があるのではないか。こうした疑念が出るのは当然ではありませんか。なぜ、このような特別に集中的な補助金が出されてきたのか。今回の「対応が手ぬるい」と批判を受けるようなことと結びついていないのか。お答えください。
第三に、食品の安全性と食品表示の信頼を取り戻す問題です。
今回の大きな問題のひとつに食品衛生法では、賞味期限の設定は事業者に任されており、常識では考えられない半年後の賞味期限を決めても、当初は「法違反とはいえない」とならざるをえなかったわけです。しかし、山城養鶏も今後は、採卵日の表示をおこなうことを明らかにし、農林水産省も「いつ、どこで、どのように生産・流通されたか消費者にわかるよう」「鶏卵のトレーサビリティシステム」の実証開発試験をおこなうことを発表しました。これらをみると、消費者の信頼をうるためには、製造日の表示が必要だということです。消費者が安心できるようにするため、「製造日」の表示を義務付ける方向へ食品衛生法の改正を国に求めるべきだと考えますがいかがですか。
そして、府の食品衛生監視体制の強化を図る問題です。本府の場合、これまでから指摘してきましたが、専任の食品衛生監視員がいなく、すべて兼務です。専任がいないのは全国で10県程度です。雪印食品事件、BSEや鳥インフルエンザ、そして今回の事件など、食の安全性が問われているとき、この際、専任の監視員を保健所に配置すべきではありませんか、いかがですか。
【知事】 昨年12月に組合から報告を受け、ただちに京都市とも連携しながら自主回収の徹底や消費者苦情への適切な対応について指導する一方、下痢等、症状を訴えられた方の調査などを実施した。検便や回収卵からはサルモネラ菌などの食中毒菌は検出されなかったが、厚生労働省に対し約半年前に採卵された鶏卵が出荷されたことや、採卵日について虚偽表示があるとの事実を伝え、法的見解を求めたところ、「違法とまでは言えない」との見解が示された。本件は、消費者の信頼を揺るがす問題であることから、府としては厳正な措置が必要と考え、本件事案については、法定受託事務であることから、厚生労働省の見解の範囲内でできる限りの措置として、文書による指導を行ったところであって、報道機関からの問い合わせにも誠実に対応したところ。
こうした中、1月になって、厚生労働省においては、採卵後半年近く経過した卵について、通常と同じ品質検査方法のみで新鮮な卵と同じ賞味期限をつけたのは、科学的合理的な根拠があるとは言えず、「食品衛生法第11条に定める表示基準違反である」との見解の変更がなされた。私としては、このように時間が経過した後に見解が変更されたことについては、正直驚いたが、また、府民に対する信頼の上からも大変遺憾な問題であると思ったけれども、直ちに厳正な処分を指示し、営業停止処分を行ったところ。
事業者の自主回収については、販売ルートをたどる方法、店頭表示、顧客訪問、社告等といった様々な方法があり、当該事業者と出荷先の事業者が協議し、もっとも有効な方法を組み合わせるなどにより実施されたところであるが、自主回収が進んでいなかった高槻市内において社告が実施されたと聞いている。
製造年月日の表示については、従前は製造年月日または加工年月日の表示が義務付けられたものの中に鶏卵は入ってなかった。食品の安全性の確保のためには、その食品がいつまで食べられるのかという期限の情報が有用との判断で、法改正により、鶏卵等も含め賞味期限等の表示に変更されたもの。しかし、現行の賞味期限に関する規定では、業界の自主基準に任しており、府は去る1月14日、国に対し、賞味期限の設定にあたり必要とされる客観的基準を明確にするなど、表示制度のあり方について検討するよう要望したところ。
これを受け、厚生労働省と農林水産省は、賞味期限の決め方を改め、国として科学的に根拠のある設定指針を決め、示すこととされ、きたる3月に専門家らによる検討班を設け、平成16年度中にも指針を決定するとの方針である。
食品衛生指導員については、その半数が、食品衛生を主たる業務としており、監視指導施設の重点化、広域食品衛生指導班による迅速な対応、府食品衛生協会との連携など、実施方法に創意工夫を凝らしながら効率的計画的に監視を実施しているところ。
山城養鶏生産組合への補助金については、昭和60年度から、平成13年度にわたり、これまでに養鶏団地の整備や鶏糞処理施設、鶏卵選別施設等の整備のために支出されているが、主なものはいずれも国の補助事業により実施されたもので、補助基準に合致し、国の採択を受け適切に執行されたものと考えている。
府民の食の安全を本当に考えるのであれば、なぜ最初から「違法」との判断に立たなかったのか
【新井・再質問】山城養鶏の問題についてです。確かに、当然、京都府や国が補助金を出すわけですから、補助金を出すのに違法なことがやられているとは思いません。ですから、手続的に違法性があるとは私は言っていません。ただ、先ほど紹介したように、この17年間で京都府のかかわった養鶏関係の補助金の総額のうちの半分までが山城養鶏に出ているわけです。京都府が養鶏農家の振興策を講じているというふうに全体として言うならば、このような偏りは本来なら起こらないはずです。そういった意味で、特別扱いがあるのではないかという疑念が出ても仕方がない、このように思います。
それからもう1点は、厚生労働省と協議をした上で対処したのだと、このように言われました。しかし、厚生労働省がその時点でどのような協議になったか我々はわかりませんが、先ほど紹介したように、厚生省自身が出した平成7年の通知やそして食品衛生法の第12条を見れば、素人の我々でもこれは違法性が問われるということを判断するのが当たり前です。京都府が本当に府民の食の安全、そして府民の暮らしの安全を考えておられるならば、この時点で京都府として、本来ならばこの法や通知に基づいて、違法として処分すべきだという声を、態度を上げるべきだったと思うのです。そのことについてはどうであったのか、お聞かせいただきたいと思います。
【知事】 補助金については、私どもはこれは国の補助において、適正な採択基準に基づき申請がなされ、そして採択をされているわけで、それについて特別な配慮うんぬんということがあったとは考えていない。
厚生労働省の見解の問題だが、この問題がやはり難しかったのは、法定受託事務としての見解が、これは示されている。ですから法的には、私どもはその範囲内でしか行動ができないというのが、これは法的な前提になっているわけで、その点で大変遺憾な状態になったということについて、私どもも府民の信頼を損なって点については、遺憾と思っているところ。
鴨川の環境保全のための条例制定について
【新井】 最後に、鴨川の環境保全にかかわって質問します。
これまでからも繰り返し求めてきましたが、美しい鴨川の環境を保全するうえで、上流域での産業廃棄物の中間処理施設や資材・残土置場などを規制し、保全ゾーンを設定するなどの措置が必要となっています。最近、調査したところでも、既存の中間処理施設の資材置き場が1ヘクタールを超えてどんどん拡大される、さらにはあらたなところで資材置き場がつくられるなど、環境の悪化がいっそう進んでいます。急いで対策を講じなければ手遅れになります。
そこでお伺いしますが、昨年「世界水フォーラム」を前に知事は、「水の管理体制、そして環境を守る体制をつくっていきたい、そのなかで実効ある規制措置が取れるのであれば『条例』も考えていく」と表明されました。「美しい鴨川を守りたい」と願って、さまざまな運動をされている関係者の方々は、この発言に期待をもっておられます。この検討は現在どのようになっていますか、制定の目途はどうなるのか、お聞かせください。
また、これまでからわが党議員団は、1ヘクタール未満の林地開発を規制するための要綱等をつくるべきだと提案してきました。知事も昨年九月議会において「小規模森林開発を規制するための『豊かな緑を守る条例』の制定を表明されましたが、この条例についても、その検討状況と制定の時期はいつになるのか、お聞かせください。
【知事】 水環境を保全するためには、1府県にとどまらず、水や水をはぐくむ森林から都市地域に至る流域全体で水源の涵養や水質保全など各分野の取組みを総合的に進めることが重要と考えている。条例の件については、昨年2月の代表質問等でも答えたとおり、流域としての一体的な水管理を検討していく場合の一つの手法として考えられるものと思っている。昨年11月には、第3回世界水フォーラムの成果も踏まえ、琵琶湖淀川流域圏の再生が都市再生プロジェクトに決定されたところであり、今後、国、流域府県、京都市等と共同して流域全体として水観のあり方も含めて議論を進めてまいりたい。
小規模森林開発規制については、現行の森林法に基づく林地開発行為の許可が不要な小規模な開発行為が次第に面積を広げ、その結果、1ヘクタールをこえる違法開発にいたる事例が見受けられている。このため、緑の公共事業の理念をさらに広げるとともに、放置森林や森林における適正な土地利用の確保につながる新たな条例の制定が必要と申し上げてきた。条例制定については、すでに府森林審議会や緑の公共事業政策検討会議に趣旨説明を行い、その必要性について理解いただいているところであり、今後は行政法の専門家や関係団体の代表者など有識者からなる委員会を設置し、具体的な検討を進めてまいりたい。