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討論

11月臨時府議会 議案に対する松尾 孝府議の討論

2004/11/15 更新
[ 討論 ]
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 日本共産党の松尾です。議員団を代表して賛成討論を行ないます。

まず、台風23号災害で亡くなられた15名の犠牲者とご遺族の皆さん、被災者の皆さんに心からのお悔やみとお見舞いを申しあげます。また知事をはじめ府職員の皆さん、被災自治体職員や関係者の皆さんに心から敬意を表します。

 最初に、今回の台風23号災害の教訓、問題点について触れておきたいと考えます。

 台風23号は丹波高原から大江山山系にいたる地域の長時間におよぶ記録的な豪雨によって、由良川中・下流域一帯で大災害を引き起こしましたが、その最大の原因は由良川本川と土師川、牧川、その他の支川の洪水が中・下流に一時に集中し、かつて経験したことのない急激な水位の上昇をもたらしたところにありました。水没したバスの屋根で助けを求める人たちの映像は、今も脳裏に焼きついていますが、今回の水害を象徴するものでした。

 由良川は20日午後から水位の上昇を続け、8時頃には各地の観測点で危険水位を突破、福知山市街地に避難指示が出されるという非常事態となりました。ここで問題となりますのが大野ダムの放流であります。当日、私ども議員団は北部の各地の状況把握に努めていましたが、そのなかで「ダムの放流を止めてほしい」との強い要求が出されました。早速、府に大野ダムの放流についての検討を電話で要請しました。関係自治体からも要請があったと聞きますが、府対策本部は人命最優先の立場から慎重な検討を行い、ダム管理事務所は、放流量を大幅に増やさなければならない段階で、逆に抑える緊急操作を実行しました。救助を待っていた37人の命は守られ、福知山も事なきを得ました。台風接近時にダムの管理・操作は慎重の上にも慎重を期すべきですが、今回の貴重な教訓を生かし、更に検討を重ね、今後にしっかり生かして頂きたいと考えます。

 もう一つは連絡通報体制の問題です。水位上昇が急であればなおさらこの問題が重要ですが、今回この点では大きな問題を残しました。国道175号の通行規制問題、バス水没問題がその典型です。新聞などでもいろいろ指摘されている通りであり、マニュアルの整備、日常の訓練など万全を期すべきであります。また、広域振興局化にともなう土木事務所の体制問題についての指摘もあります。舞鶴では6名の駐在体制に若干の応援を得て対処したが、由良川筋には全く入れなかったとのことであります。統合前、舞鶴は50人近い体制だったのと比べ、その違いはあまりにも大きいのです。さらに、各自治体から住民への連絡体制です。今回この点でも多くの問題が露呈しました。浸水で役場の放送機能が麻痺した大江町のような事態は絶対あってはなりませんが、加悦町も放送機械室は一階にあり、辛うじて浸水をくいとめたものの本当に危ないところでした。早急に改善が必要です。有線放送は風や雨にかき消されて届かない状況が各地域で起こりました。やはり各家庭に直接届く防災無線が必要です。今回の大事な教訓として計画的な整備を進めるべきであります。これらについても十分な検討と改善を強く求めるものであります。

 災害は忘れたころにやってくると言われます。今回の23号台風災害は28災以来と言われますが、28災の実体験や記憶は府民の間からほとんど消えています。「備えあれば憂いなし」です。今回の災害を教訓に災害に強い街づくりに全力を挙げていただきたいと考えます。

 その点で去る9月24日に発表されました国土交通省の新潟、福井水害をうけて行われた緊急点検結果について一言しておきたいとおもいます。点検対象となった府内の11水系、300キロについて対策の必要な箇所はゼロと報告されているのでありますが、どうしてゼロなのか疑わざるを得ません。今日まで何度も小災害を起こしてきた大手川や野田川、由良川水系の各支川など素人目でも危険箇所、問題箇所は少なくありません。野田川の堤防決壊箇所は未改修部分で地元から改修促進の強い要求のあったところでありました。

 人命にかかわる水害対策は安心、安全な街づくりの基本であります。この際、知事が本府防災対策の具体化について総点検を行い、日常業務についても遺漏なきよう万全を期していただきますよう強く要望しておきます。

 提案されております予算案につきましては、被害を受けた住宅の建替え・補修にたいする助成と融資、高齢者・母子家庭など低所得者に対する特例措置、中小企業者や農林漁業者に対する緊急特別融資対策をはじめ、砂防・治山、道路河川の災害復旧、税の減免・猶予、授業料、手数料の減免などいずれも緊急に必要なものであります。

 私どもは今回災害発生の翌日21日より、被災地域に入り被害実態の調査をおこなうとともに、住民の皆さんを激励し、要求を聞いてまいりました。その結果に基づき3度にわたって知事に申入れを行なってきましたが、そのなかで、住宅の改築・補修をはじめ畳その他、生活必需品等への助成が被災者の一致した強い要求であり、府として、国の法制度を大きく上回る積極的な独自対策を講じるよう強く求めてまいりました。今回の補正予算案は知事がこの住民の声に応えたものとして歓迎するものであります。特に、所得制限なしの住宅本体への助成は、阪神淡路大震災以来、「住宅再建なくして生活再建なし」と被災者が強く求めてきた個人補償の実現であり、大きな前進であります。

 この間、被災者支援の地方の取り組みは2000年鳥取から始まり、03年の宮城、北海道、今年に入って七月に福井、新潟、徳島、8月に愛媛、岡山、兵庫と続き10月に再び新潟、そして京都と内容的にも大きく発展しております。個人住宅に公的資金の投入はできないとする国の主張は崩れつつあります。今後、国の「被災者生活再建支援法」を改正し、住宅再建支援を国の法制度として確立していくことがますます重要であります。京都府としても積極的に取り組んでいただきたいと思うところであります。また、災害救助法の運用についても問題があり改善が必要です。国に強く求めていただきたいと思います。

 次に 予算案に盛り込まれていないいくつかの問題についてです。

 一つは商工業者の被害に対する助成です。床上浸水による機械設備等の被害についてですが、融資だけで助成はありません。今なお機を動かせないちりめん業者をはじめ写真の現像機や練り製品の製造機などが買い換えられず、営業再開のめどが全く立たない業者もあります。一定の助成措置がどうしても必要であります。リースなども含め支援対策を講じていただきたいと考えます。

 農業関係についても幾つかあります。トラクター、コンバインなど農業機械一式がだめになったケースが少なくありません。修理がきかず買い換えなければならない場合、共同利用はもちろん個人でも助成対象にする必要があります。規模の大きい受託農家がこれを機会にやめるようなことになれば地域農業の崩壊が加速されることになりかねません。また、ハウス栽培農家、特に新規参入農家の場合、生産再開、出荷までの間の生活支援がどうしても必要です。さらに、農地の災害についても荒廃化を防ぐ為には全部を災害復旧にかかるようにすることが必要ではないでしょうか。

 漁業では漁船の損傷問題があります。保険があるにはありますが、評価が低くてとても買い替えできません。やはり一定の助成がなければ元に戻れません。

 林業については作業道の復旧問題があります。もともと作業道は助成対象ではありませんが、林道の復旧の為にも作業道が欠かせません。林道復旧と一体のものとしての助成が必要であります。また、風倒木の処理は2次災害を防ぐ上で不可欠であり、助成が必要です。

 農業金融についても担保、保証人の問題があります。他の条件がいくら良くても担保、保証人が必要となれば農家はまず借りられません。商工金融なみに無担保、無保証にすることがどうしても必要です。検討いただきたいと考えます。 

 自治体の財政負担の問題も大きな問題です。床上浸水や一部損壊の多い舞鶴市、宮津市、京丹後市などでは市負担分が住宅関係だけでも2億数千万円にのぼります。大きな財政負担を余儀なくされる自治体への支援が必要ではないでしょうか。未来づくり交付金・基金の運用、活用を含めぜひ検討していただきたいと考えます。

 最後に予算執行に当たっての問題です。被災自治体ではすでに住宅対策について全壊、大規模半壊、半壊などの確認作業が始まっていますが、今回の補正予算算定の基礎となっている被害戸数がかなり減少するのではないかといった声が関係者から出ています。国も支援法の弾力的運用を具体的に指導しているのですから、実態にあわせよく状況を把握し、折角の予算が被災者支援に積極的に活用されるようにすべきではないかと思います。

 また、商店街などの店舗併用住宅の場合、店舗の1階が浸水被害を受けても、居住する2階部分が漬からなければ助成対象とならないとされていることは全く不合理ではないでしょうか。居住部分の基礎は1階であり、その補修に対する助成は当然ではないかと考えます。運用改善を強く求めるものです。

 以上で討論を終わりますが、本格的な復旧作業はこれからです。冬に入り降雪もあります。作業条件は悪くなりますが、人家に近い崩落箇所の応急安全対策や冬季間の生活道路の確保、除雪車が投入できる条件を是非整えていただきたいと思います。また、高齢者など被災者の皆さんの健康、保健対策などに万全を期していただきますよう強く御願いしておきます。ご清聴ありがとうございました。