京都府議会12月定例会を終えて(談話)
府議会は11月15日に台風23号被害救援・復旧対策のための臨時議会が開かれ、続いて開かれた12月定例会が17日閉会した。また、10月28日から11月16日までは決算特別委員会も開かれた。
わが党議員団は、これらの審議を通じて、繰り返しての被災地調査や関係者の要望をもとに、被災者の救援、復旧対策実現に全力を挙げた。また、洛東病院の廃止に端的に現れた山田知事の「経営の視点・採算性」最優先で、公的責任を投げ捨てる府政「改革」を厳しく批判し、地方自治を守るため奮闘した。
1、10月20日の台風23号は、府中北部地域に甚大な被害をもたらした。わが党議員団は、20日夜から各地の被害状況を掌握し、由良川が警戒水域を越え、桂川渡月橋付近でホテル等へ浸水被害が発生するもとで、緊急に「大野ダム、日吉ダムの放流の抑制を」と災害対策本部に申し入れを行うとともに、21日、早朝から被災地へ調査団を派遣し、状況調査と被災者の激励に取り組んだ。
第1次のこの調査をもとに、22日、府に対し、(1)ライフラインの早急な復旧(2)市町でのボランティアセンターの立ち上げと支援、府民へのボランティアの呼びかけ(3)被災地へ府職員を派遣し、被害状況調査、災害復旧、救援支援を(4)災害救助法の早期適用、激甚災指定を早急に受け、災害復旧、生活・営業復旧支援に全力をとの緊急申し入れを行った。
さらに、26日には(1)具体的箇所を指摘し、二次災害のおそれへの緊急対策 (2)影響の大きい幹線道路の早期開通と生活道路の確保 (3)災害ゴミの撤去への支援、生活環境の回復 (4)被災者とりわけ高齢者、独居老人への訪問と健康管理、相談窓口の開設と生活支援金の給付 (5)再建支援法、救助法の適用拡大と府としての上乗せ措置、被災住宅再建への助成、被災者への支援制度創設 (6)農林漁業、商工業者の被害調査と支援などを求めた。
また、28日から始まった決算特別委員会の書面審査で各部局に対し、二次被害を防ぐための風倒木の緊急処理、パイプハウスや農機具、漁船などへの助成、商工業者の生産設備への助成、未指定文化財への助成など、被害の実態に即した対策を求めた。
こうした被害の実態と被災者や関係者の声をもとにした京都府への申し入れは、事態にかみ合ったもので、ダムの放流調整もわが党からの申し入れ後、関係自治体からの要請もあり「緊急操作」が行われ、由良川決壊の危険を免れ、水没したバスの37名の命が救われることとなった。また、災害救助法の適用も、申し入れた段階では佐村副知事は「市町からの要請がまだない」としていたが、その直後の対策本部で、救助法適用が具体化されることとなった。
11月15日開かれた臨時議会に提案された「災害復旧対策補正予算」には、被災者や関係自治体の声とわが党議員団が求めてきた対策の多くが盛り込まれ、住宅再建への助成措置、商工業者への特別融資、農林関係での緊急風倒木処理や無利子融資制度、未指定文化財への助成などが実現した。
また、11月29日には、地元議員団と府議団、京都府委員会、国会議員団が協力して、内閣府(防災担当)、総務省、国土交通省、農林水産省、経済産業省、文部科学省、厚生労働省へ52項目の要望を提出し、交渉をおこなった。その結果、生活再建支援法や災害救助法の「弾力的運用」で、被災者を可能な限り救済する道が開かれ、宮津・大手川改修の早期実現への道を開くなど前進させた。
わが党府会議員団は、新しく実現した府の制度や国の制度を知らせるパンフ「こんな制度が活用できます」を作成し、被災者に届け、さらに政府交渉の結果も、報告書を作成し、府や関係市町に届け、共同しての被災者救援、災害復旧の取り組みを前進させた。
今回の台風被害対策での議員団の活動は、「国民の苦難あるところ日本共産党あり」の立党の精神を発揮したもので、中北部地域にわが党府会議員がいないもとでも、地元市町議員や党組織と協力して大きな役割を果たしたものである。
災害復旧、生活と営業の復旧はこれからである。制度が一人一人の被災者の救済に役立つものとして適切に運用されること、農林漁業者、商工業者の生産設備への助成、災害に強いまちづくりのための河川改修や土砂災害危険箇所への対策、防災無線の配備、防災体制の強化など、多くの課題が残されている。
わが党議員団は、被災者の生活と営業の一刻も早い復旧と災害復旧、災害に強い地域づくりへ引き続き全力をあげるものである。
2、今議会では、山田知事が「経営の視点」「受益と負担」といってすすめる府政の危険な本質がいっそう露呈した。
知事が洛東病院廃止方針を9月に表明して以降、3万を超える存続を求める署名や患者、職員、医療関係者らの厳しい批判の声にかかわらず、「患者の転院が順調にすすんでいる」として、12月議会に「廃止条例案」が提案された。
しかし、決算委員会や12月議会の審議を通じて、「洛東病院の廃止」には何の道理もないことがますます明らかとなった。
「回復期リハビリは民間で」としているが、実態は、回復期リハビリ病院は京都市内と宇治市にしかなく、府中北部、南部地域には全くなく、多くのリハビリ専門医が「京都のリハビリ医療は遅れている。洛東病院の廃止は禍根を残す」との声をあげており、廃止に道理のないことは明白になった。知事は、決算委員会総括質疑で「汚水が高価な機械の上に落ちてくる。だから廃止しかない」と、設置者としての責任を棚に上げ、4年前の洛東病院視察の時の話を最近視察したかのようにいい、全く事実に反する答弁をおこなった。これには病院の管理職を含め多くの関係者が怒りの声をあげる事態となった。
また、廃止方針を提言した「府立病院あり方検討委員会」には、医療に責任を持つ保健福祉部の職員ではなく、「経営戦略室」の島津製作所からの出向職員だけが参加していることに示されるように、「経営の視点」から、不採算部門である洛東病院を廃止しようとするものであることが鮮明になった。
ここには「住民の福祉の増進はかる」自治体の役割を放棄する山田府政の姿が浮き彫りとなっている。
また、昨年2月の予算委員会で「新しい回復期リハビリ病棟を新設するなど充実強化を図る」との議会答弁すら山田知事がトップダウンで覆したものである。
知事は、「府民発・府民協働・府民参画」をいうが、今回の洛東病院廃止はこれが全くのごまかしであることを露呈した。
わが党議員団は、こうした暴挙を厳しく批判し、リハビリ医療の充実強化のため、引き続き奮闘するものである。
3、昨年6月の地方自治法の「改正」に伴って、「公の施設」管理を委託する場合「指定管理者」に委託することとなり、そのための「条例」が提案された。
この「指定管理者制度」は、「官から民へ」のかけ声のもと、公の施設管理に民間企業が参入できるようにしようとするもので、「数兆円の市場」として財界が求めてきたものである。
府はこの指定管理者制度の導入に当たって、「公の施設」だけではなく、「府の施設の管理に関する条例」とし、庁舎や議会棟を含むすべての府の施設を「効果的かつ効率的に管理」することや、これまで普通財産として議会の議決を経て貸し付けていたフラワーセンターや中小企業会館などについても指定管理者制度を活用するとした条例を提案した。これは他府県に例のないものであった。ここには山田府政が府民福祉の向上のために設置された施設や府民の財産をすべて「経営の視点」で「効率性・採算性優先」、民間企業に儲けの場として提供しようとするものである。
わが党議員団は、討論を通じて、指定管理者制度のねらいを明らかにするとともに、法が施行されているもとで、「公の施設」がその設置目的に沿って運用されるよう「公の施設が公正・適切・平等に供される」との当然の基本を明確にし、「指定管理者の指定を受けようとする者」は「施設の性格、規模、機能等にふさわしい活動実績、専門性、技術、人材等が確保されていること」や知事や議員などの「兼業禁止」を盛り込んだ修正案を提案した。
自民、民主など与党会派は、「民間を活用するのは当然」「修正案は財界排除が明白」と、施設管理の公的責任の放棄と財界の意向に沿った態度をとり、わが党の修正案を否決した。
委員会および本会議で自民党などは修正案への質疑をおこなったが、その反対の理由は全く道理のないものであった。「『ふさわしい』という主観的であいまいな規定は条例になじまない」をあげたが、「青少年育成条例」でも「おそれのある図書」と規定し、その具体的運用は規則等で定めており、反対の理由にならないものである。また、「兼業禁止規定があると、知事や副知事が役員に入っている公社などが排除される」としたが、社会福祉事業団や府民総合交流事業団などは、所管の担当部長や職員が役員となっており、理事者が適切な措置を執れば何ら排除されるものではない。さらに、公明党などは「情報公開に整合性を欠く」との批判をおこなったが、修正案が現行「京都府情報公開条例」が府の出資法人を実施機関に含めていないことをふまえ「指定管理者は、情報公開に努める」としているのは当然である。
今後、この条例に基づいて関係施設の指定管理者の選定がおこなわれていくが、わが党議員団は、その一つ一つについて、施設の設置目的にふさわしい指定管理者の選定となるよう、また公の施設等への府の公的責任の放棄とならないよう奮闘するものである。
4、市町村合併について、来年3月までの期限を前に、府の市町村への介入はますます激しくなっている。とりわけ、すでに法定合併協議会が休止となっている宮津与謝の1市4町合併について、府は「調整」と称して直接介入に乗り出した。
総務常任委員会で、このことを厳しく批判すると、総務部長は「意見交換だ」と弁明したが、総務部地方課がマスコミに配布した資料には府が「調整」のため会議を招集したことを明記している。部長は、この文書について「承知していない」と虚偽の答弁をおこなった。
これは、押しつけ合併に反対し「町の将来は住民自身が決める」との住民自治を求める大きな運動が各地で広がり、総務省や府の思い通りに合併が進まないもとで、総務省から出向の総務部長がなりふり構わず介入に乗り出していることを示している。
こうした住民自治、地方自治を踏みにじるやり方は、住民の厳しい批判を受けざるを得ない。
また、12月定例会には、京北町と京都市の合併に関する「市町の廃置分合」が提案された。わが党議員団は、この合併により子どもの医療費助成の大幅な後退、国保料の引き上げ、保健師の削減、除雪作業などの道路管理の後退など、これまで町と住民が協力して作り上げてきた京北町の住民のための施策が大幅に後退させられることが明らかとなっている。わが党議員団は、住民の将来と幸せな暮らしを考えたときに、その利益に反する合併として反対した。
5、昨年度の決算認定議案については、「一般会計および特別会計決算」と「水道事業会計決算」の認定に反対した。
山田知事が初めて組んだ本格予算の決算であったが、「財政健全化のため」として215の事業が廃止・縮小され、府民や関係市町村に新たな負担を押しつけるものであった。子どもの医療費助成を「通院は8000円を超えた分」としたため、わずか0・6%程度の子どもたちしか利用できず、しかも国の制度変更に伴い府の負担は2億7000万円も減額している。また、不況のもとで深刻な事態になっている伝統産業振興について、知事は「全国一の施策」と答弁したが、実態は石川県に比べ伝統産業品目あたりでは半分にも満たない状況であることが明らかとなった。また、台風による甚大な被害がもたらされたように、河川改修や土石流危険箇所対策が急がれなければならないのに、関係予算が年々減らされる一方、丹後大規模公園や舞鶴和田埠頭建設など不要不急の公共事業にメスが入れられていないことを厳しく批判した。
また、決算委員会総括質疑で知事は、府営水道の水利権の一部を放棄することを表明したが、これは府営水道計画が過大な水需要予測をもとにすすめてきたことを知事自身が認めたものである。このことはこれまでのわが党議員団の批判が正しかったことを証明するものである。
少人数学級について、府教委はこれまで「小学校低学年は複数指導を基本とする」としてきたが、知事は「選択は、学校、市町村教委の判断を尊重する」と答弁した。これは当然のこととはいえ、府教委が複数教員配置にこだわるもとで、学校と市町村教委が判断すれば、小学校1・2年生からの少人数学級実現への道を開いたものである。
6、今議会に「犯罪のない安心安全なまちづくり条例」がわが党議員団を含む全会派から共同提案され、採択された。
これは2月議会において議長から「京都府議会では議員提案による政策条例が1件もない。議会の立法機能を強化する一歩として、全会派による条例づくりをすすめたい」との提案があり、そのテーマに「安心安全条例」が選ばれた。わが党議員団は、「安心安全条例は各党の意見が分かれる問題があり、適切でない」と主張したが、他会派が議長提案を了解するもとで「全会派が一致できるものとすること」を条件に協議に応じた。
自治体要求連絡会や自由法曹団が指摘しているとおり、「生活安全条例」は全国的に警察庁主導ですすめられており、監視カメラの設置や不審者の摘発など「監視社会」をつくる危険があるものである。
わが党議員団は協議に際して、プライバシーなど住民の基本的人権を侵害する危険を排除するとともに、警察活動に住民を協力させる体制づくりではなく、住民の自主的とりくみを尊重することなどを主張した。
18回の検討委員会の結果、条例は(1)「犯罪発生」の要因として無秩序な経済活動や有害な情報の氾濫などをあげ、安全なまちづくりのため、第一義的には府民生活の安定を図る行政の責任と警察の役割を明記した。(2)「監視社会づくり」とならないよう「互いの基本的人権を尊重」「プライバシーの保護をはじめ基本的人権に最大限の配慮」が明記された。これは地域における防犯活動などはあくまでも自主的なものであること、そして監視カメラの設置などを無制限に拡大することへの歯止めとなるものである。(3)施策の実施の重点として「子ども、高齢者、障害者その他犯罪の被害を受けるおそれが高い者」をあげ、府がそのための対策を講じるように定めた。これは、今日の国民の不安に応えるものであり、他府県の条例のように「住宅や商業施設の防犯性を高める」などの条項はすべて排除した。(4)さらに、犯罪被害者への支援を明記した。
わが党議員団は、相次いで児童殺傷事件が発生するなど国民の不安が高まっているもとで、犯罪から子どもや高齢者などを守ることは、警察力を中心に対応すべきであると考えるとともに、地域の人々が協力し合っての取り組みも重要な役割を果たすものと考える。しかし、同時にこのことが「監視社会づくり」とならないようこの条例が適切に運用されるよう奮闘するものである。
7、今議会には「洛東病院の廃止に反対し、リハビリ施策の確立を求める」請願など11件が提出され、看護協会等から「三位一体改革」の名による国庫補助負担金の切捨てに反対する要望も提出された。
わが党議員団は、こうした請願を採択するよう求めて奮闘するとともに、「地方交付税等の維持・拡充を求める意見書案」「三位一体改革の名による国庫補助負担金の廃止に関する意見書案」「定率減税の縮小・廃止に反対する意見書案」「イラクからの自衛隊の早期撤退を求める意見書案」「京都府のリハビリテーション医療の充実を求める決議案」を提案した。
与党会派は、こうした府民の願いに応えた当然の意見書案・決議案に反対し、否決した。
与党会派がそろって提出した「三位一体改革を国の財政再建の手段に利用しないことを求める意見書案」は、今日「三位一体改革」が地方財政切捨ての口実となっていることが明らかであるにかかわらず、その実現を求めるものであり、わが党議員団は反対した。
民主・府民会議が提出した「イラクへの自衛隊派遣延長の撤回を求める意見書案」は、自衛隊の派遣延長に反対しながら、イラクへの自衛隊派兵の大本である「日米同盟に基づく信頼関係を軸としながら、人道復興支援・治安維持対策をすすめること」としており、根本的な矛盾を持つものであり、反対した。
また、12月議会開会冒頭に、北朝鮮が「横田めぐみさんの遺骨」として日本側に提供したものが別人のものであることが明らかとなった。府議会は全会派一致で「北朝鮮による虚偽証拠資料提出に抗議し、日本人拉致事件の早期全面解決を求める意見書」を採択し、議会の抗議の意思を示すとともに、政府が毅然たる態度をもって交渉にあたるよう求めた。
山田府政3年目を向かえ、山田知事が「経営改革プラン」の作成や「経営戦略室」の設置などですすめようとしている府政の「改革」が、自治体の公的責任を投げ捨て「受益と負担」の名のもとで府民に痛みを押し付けるものであることが、鮮明になってきた。同時に、強引な市町村合併の押し付け、自衛官の採用など、憲法と地方自治に背を向ける危険な府政である事も明らかである。
わが党議員団は、1年余と迫ってきた次期知事選に向け、こうした山田府政にきっぱり対決し、憲法と地方自治にもとづく府民の暮らしと平和を守る府政実現へ奮闘するものである。
2004年12月定例府議会を終えて(談話)[PDFファイル 240KB]