資料ライブラリー

本会議質問

山内 よし子府議の代表質問

2005/06/29 更新
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 日本共産党府会議員団の山内よし子です。私は議員団を代表して先に通告している数点について、知事並びに理事者に質問いたします。

JR脱線事故 ― 府として緊急に総点検を行い、安全対策を講じるべき

【山内】  まず、JRの安全対策について伺います。最初に、JR福知山線の脱線事故問題ですが、先ずお亡くなりになられました方々に心からお悔やみを申し上げ、哀悼の意を表しますと同時に、負傷者の皆さんの一日も早いご回復を心からお祈り申し上げるものです。

 現場には再び電車が走り出しました。しかし、失われた命は帰らず、ご遺族の方々の悲しみはもちろん、負傷されたみなさんの心の傷も癒えません。再びこのような惨事が繰り返されないためにも、原因の徹底究明と再発防止に全力を挙げることが、いま、強く求められています。

 今回の事故原因につきましては、半径300メートルという急カーブを、制限速度を大きく超える、時速100キロもの猛スピードで通過しようとした運転にあったことは大方の一致した見方です。問題はどうしてこのような無謀な運転が行われたのかということですが、この点についても、JR西日本が、余裕が全く無い超過密ダイヤのもとで、ATS-Pも設置されていない中、1秒の遅れも許されないという過酷な運転を強いてきた「儲け第一」の経営方針がその根底にあったとの共通認識が広がっており、その責任を問う声が高まっています。

 また同時に、国土交通省、国の責任も重大です。国は、国鉄民営化に際し、安全対策指導をJRまかせにし、ATS-P整備の遅れをもたらしたことは明らかです。“安全対策まで民営化した”と強い批判が出されているのは当然であり、国の責任も厳しく問われなければなりません。

 そこで知事に伺います。民営化以来、京都府をはじめ沿線各自治体は莫大な補助金、負担金をJRに投入してきました。それだけに、京都府には、JRに安全対策の抜本的強化を実行させる、府民への責任と義務があります。知事はさきに2度にわたって申入れを行なっていますが、一般的な要望に過ぎません。先日の運転再開に当たってJRが示した「安全性向上計画」の実現について、マスコミからも「その保障はJRが経営効率優先の体質から安全優先に転換できるかどうかにある」と指摘されています。知事としてJRに安全優先の姿勢と体制を確立するよう強く要求して頂きたいと考えますが、いかがですか。お答えください。また国に対しても、安全対策の指導、監督に万全を期すよう強く要求すべきと考えますが、あわせてお答えください。

 つづいて、本府の対策について具体的に伺います。

 わが党議員団は事故直後から、JR東海道線、奈良線、学研都市線、山陰線など各路線の急カーブの状況、駅ホームや踏切などの安全について調査してきました。この中で明らかになったことは、人身事故に繋がりかねない危険箇所が数多く放置されており、早急に改善が必要だということです。

 まず駅ホームからの転落事故や列車通過時の巻き込み事故防止対策です。4月にJR長岡京駅で、転落した人と、そして助けようとした人、2人が新快速にはねられて即死されました。私は長岡京駅のホームを調査しましたが、転落箇所は防止柵が途切れた箇所でした。

 また、ホームの状況ですが、奈良線の六地蔵駅、小倉駅などのホームはカーブがきつく、車両との隙間が30センチもあり、レールの傾斜が大きいため段差ができ、大変危険な状況です。学研都市線同志社前駅では、ラッシュ時に狭いホームに学生が集中し、いつ転落や転倒が起こっても不思議ではありません。

 また、合理化の中で無人駅が増加、委託化も進み、駅ホームにはほとんど駅員が配置されていないのです。転落事故があっても全く対応できないのです。一部には非常連絡ボタンや転落感知マットがありますが、車両信号とは連動していません。そのほか、危険な踏み切りも数多く残されています。

 わが党議員団は、これらの状況について、先日知事に申し入れをおこなったところですが、本府として緊急に総点検を行い、安全対策を講ずるよう、また、駅員配置についても直ちに改善するようJR西日本に求めるべきと思いますが、いかがでしょうか。お答えください。

【知事】  府としては、事故後ただちに、JR西日本に対し、(1)事故原因を徹底究明し二度とこのようなことが起こることがないようにすること、(2)人命を扱う鉄道事業者として基本となる鉄道輸送の安全確保を、あらゆる角度から至急点検し、その徹底をはかること、(3)鉄道事業者の使命に鑑み、安心・安全な鉄道輸送の確保を図ること等を申し入れた。さらに、国に対しては、(1)事故原因を早期に徹底究明し、二度とこのような大惨事が起こらないようにすること、(2)公共交通機関として重要な使命である鉄道輸送の安全が確保されるよう、安全設備の強化及び効果的な社員教育の充実等、安全対策の徹底を指導することなど、私自身、北側国交相をはじめ国に対し再三要望した。また、JR西日本においては、独自に策定した「安全性向上計画」や6月末に国に提出する「緊急整備計画」に基づき今後の安全対策が実施されるが、府としては、府域における実施計画について内容を点検し、府民の安心・安全を確保する立場から、必要なことは改めて求めていく。

「経営改革プラン」による府政の「構造改革」は京都府をどこに導くか

【山内】  次に、3月に発表された「経営改革プラン」をはじめ、知事の府政運営の基本姿勢について伺います。

 第一に、知事は、京都府の運営について「経営の視点」「採算性」を盛んに強調されています。さらに知事は、府民を「お客さん」「顧客」とみなし、「受益と負担のバランス」を強調されます。

 ここにあるのは、府民の暮らしや福祉にとって必要なものでも「採算が合わない事業はやらない」、そして、府民には「負担に応じたサービスをする」「負担できない府民はサービスを我慢すべきだ」ということではないでしょうか。これは、住民の福祉の増進をはかることを目的とする自治体を、採算性、利潤を第一とする民間企業と同じように変質させるものではありませんか。

 また、子どもの医療費無料化の拡充や介護保険料等の減免を独自に実施している自治体への支援について、知事は「補助・補助というのは中央集権的」と拒否されてきましたが、この態度は「市町村との役割分担」「自立自助」を口実に、府民の願いに冷たく背を向けるものです。府民の暮らしを支えることを第一義におくことこそ自治体の本来の役割ではありませんか。

 知事のこうした姿勢は、「住民の福祉の増進を図ること」を目的とする自治体の長として相容れないのではありませんか。お答えください。

 第二に、「経営改革プラン」では市町村、住民との協働だけでなく、わざわざ「民間企業との協働」を掲げています。その柱は「アウトソーシング」と「PFIの導入」で、これは本来府民のための行政を「民間企業のもうけ」の場に開放しようとするものです。すでに舞鶴の府営常団地の建て替えにPFI方式が導入され、これまで地元中小企業にその大半が発注されていたものが、大手企業が運営する株式会社に発注されようとしています。さらに、今議会に関連条例が提案されていますが、府の施設のほとんどを「指定管理者制度」の対象にし、福祉施設や社会教育施設まで民間企業に管理委託する道を開き、もうけの場として提供しようとしています。

 こうした公的分野の市場化、民間開放は、財界の長年の要求でした。政府の「総合規制改革会議」は「公共サービスの民間開放の促進」、「公共事業のアウトソーシングの推進」を提言し、自治体の市場化を大企業のビジネスチャンスと位置づけてきました。また、日経連も「規制緩和を通じて行政サービスを民間に開放し、この分野の膨大な潜在的需要を顕在化させるべき」との要求をつづけてきました。まさに、「経営改革プラン」にいう「民間企業との協働」は、この財界の要求にこたえようとするものではありませんか。いかがですか。

 第三に、「府民目線での集中と選択」による施策の見直しについてです。「経営改革プラン」では、「税源涵養につながる産業政策の育成」として、「将来性の高い中小企業の育成支援」「新たな産業創出」などがあげられています。しかし、「税源の涵養」というのなら、長引く不況のもと、これまで京都経済を支え、府民の働く場となってきた伝統地場産業、中小零細企業の経営を立て直してこそ、府税収入を増やし、府財政の立て直しにつながり、雇用も守れるのです。「将来性の高い中小企業の育成支援」をうたうだけでは、伝統地場産業や中小零細企業などは「将来性がない」と切り捨てられても仕方がないというものではないでしょうか。

 すでに本府では、企業誘致補助金をこれまでの1社最高5億円を20億円にまで引き上げ、空前の儲けをあげている日産の子会社・ジャトコに適用するなど、もうけている企業の応援を始めました。ところが、不況のもとで苦しんでいる、地域経済に大きな影響のある和装伝統産業予算は、その10分の1の2億円あまりです。まさに、「勝ち組」応援の姿勢ははっきりしているのではないでしょうか。「自立・自助」というのならこうした力のある企業にこそ、「自立」を求めるべきです。

 そこで伺います。知事は、京都経済の99,8%をしめる中小零細企業が、長引く不況と「競争社会」の荒波に放置したままでよいと思われるのですか。お答えください。

 知事は、京都新聞紙上で「民間活力、地域活力を利用する小泉改革の流れに同感」と述べられましたが、小泉内閣の「民間活力」とは、規制緩和の徹底で、力の強いものが勝ち残り、勝ち残れない中小零細企業や圧倒的多数の国民を負け組みとするものです。

 そして「地域活力」とは、結局、国土と環境保全、国民の食糧の供給で大きな役割を果たしている農山村、中山間地域を切り捨てるものです。

 知事がいま進めようとしていることは、この小泉改革と同じように、「もうけ第一の競争社会」「ルールなき弱肉強食」の社会をつくろうとするものであり、こうした結果、何がもたらされるかは、「他社に負けるな」と利潤第一に走ったJR西日本の悲惨な事故で示されているのではないでしょうか。

 府民はそんな社会を求めているのではありません。すべての府民が、都市も農山村も、ともに力をあわせて輝くことのできる京都を願っているのです。このことを厳しく指摘しておきます。

 また、先日発表された「中期ビジョン」では「学びと育み」や「健やか長寿」などの言葉は並んでいますが、府民の暮らしの実態もなければ、府が何をするのかまったく具体的にはなっていません。それは先に述べた市町村や府民との「協働」、「役割分担」の名のもとで府の責任を転嫁しているからです。「中期ビジョン」は府民の願いに反する知事の姿勢を、美辞麗句で覆い隠すものに他なりません。この点を指摘し、次の質問に移ります。

【知事】  昨日、明田議員に答えたとおり、ここで言う「経営」の意義は、府民福祉の増進を図るためにも、府民目線に立って、限られた資源を最大限に生かし、府民に最大のサービスを還元するという理念のもと、府政運営の推進にあたることを期しているところ。したがって、「経営改革プラン」では、府民ニーズに的確に応えること、府民の力を最大限に生かすこと、そして府民目線に立った税金の有効活用をめざす、こうしたことを基本に書いている。よく読んでいただきたい。共産党の主張は、まるで、民間はすべて利潤を追求する悪であるという、私企業に対するお考えかもしれないが、そういう決めつけが出ている。それから、地方公共団体とは、いわば株主も府民であって、そしてお客さんも府民なわけで、利潤の追求という形はあり得ない。そういう点から、私は全く的はずれな質問だと思う。

 次に、「民間企業との協働」については、生き生きとした元気な京都を創造するためには、地域の持つ力、特に人の力を生かすことができる行政というものが求められている。民間企業も、府民も、NPOも、市町村等と同様、京都の持つ力として、その力がいろんな面で引き出せるよう行政が協働することは、地域運営の基本。こうした視点から府としては、京都の有する人の力を生かす形で、十分なサービスが府民に展開できるように努めているところで、その中では柔軟かつ迅速に対応できる民間の方が効果的にできるか否か、NPOのみなさんと協働する方が地域の人たちの意欲を実現でき、府民満足度の向上とより多くの価値を生み出すことができないかどうか、という観点から積極的な協働を進めることとしている。いずれにしても府民のみなさんから見て最も効果的かつ効率的なサービスを提供することが重要で、ご指摘のような観点では全く的はずれ。

 指定管理者制度についても、昨日、明田議員に答えたように、いま外郭団体に委託している部分については、すべて議会の議決をいただく指定管理者制度に移管するという前提の中で、今回条例の審議を願っているわけで、ご理解いただきたい。

 産業振興策について、企業誘致については、これは企業誘致条例は全会一致で可決していただいた。その中で、共産党の議員さんからは、「不足すれば補正予算を付けなさい」という高いご見識の発言もあったところ。山内議員はこれをどう受け止められるのかと思うわけだが。そして、中小企業振興策について、企業誘致しかやっていないというのは、これは私は、事実に反するご質問で、到底納得できない。中小企業振興は、私は、府政の最重要課題として「中期ビジョン」にも位置づけており、ご指摘の「経営改革プラン」においても、京都経済の活性化のために中小企業対策を推進することとしている。だいたい、長引く景気傾向のもと、京都の場合には、中小企業のみなさんが元気になっていただくことが私は京都の活力の源と思っており、京都市と協調して中小零細事業者の方々へのセーフティネットを拡充するあんしん借換融資や小規模企業応援融資などを全国に先駆けて実施し、今年は中小企業の再生支援融資も創設した。また、伝統産業の職人さんの仕事づくりのための匠の公共事業も創設しており、まさにきめ細かな支援対策を積極的に推進している。共産党が応援している民商や京商連のホームページでも、この借換融資を中小企業のための画期的制度として、自分たちが実現したかのように宣伝しており、共産党も申し入れの中で中小零細企業の経営を守る上で積極的に役割を果たしたとしているが、こうした共産党以外の議員の皆様の賛成によって認められた予算にもとづく私の施策を、どう考えているのか。お答えいただきたい、と思わず言いたくなるような事実に反する質問だと思う。これからも私は、「中期ビジョン」に基づき中小企業施策の推進に全力を尽くしたい。

 「中期ビジョン」についても、全く読んでらっしゃらないのではという部分があったので、一言いわせていただく。具体的なことが書いてないとおっしゃるが、このビジョンは、新しい京都を作る指針として活用するもので、具体的には、京都府が課題毎に作成するアクションプランや次年度の予算編成方針、各部局、地域振興局、ちゃんと書いてある。それをちゃんとお読みいただきたい。

 【山内・再質問】「経営改革プラン」だが、いま知事は、「府民目線」「限られた資源の有効活用」という答弁をされたが、しかし、知事が実際にやっていることは洛東病院の突然の廃止、「採算性」の名前のもとでの府立高校つぶしではありませんか。これは府民目線どころか、全く府民の望んでないことをやろうとしているのではありませんか。また、「民間との協働」は当然と答えられたが、地域運営をしていく、中小企業を応援するとおっしゃったが、それでは伺うが、舞鶴の府営常団地にPFI事業が導入されたが大手企業が落札したのではないのですか。中小企業に仕事が回ってないではないですか。そのことをどのようにお考えか、お答え下さい。

【知事】  「経営改革プラン」は、まさに京都の人の力を生かしていく、それによって本当に税金を有効に活用していきたいという願いで書いてあるので、ここをよく読んでいただきたい。常団地についても、私ども、地元の中小企業に対応しながら、是非とも発注していただきたいとお願いをしているところ。府立学校についてもいま申し上げたとおり、まさに教育委員会に対して生き生きとしたいい学校を作っていただきたいという観点から申しており、「採算性」などという言葉は「経営改革プラン」にはないし、ましてや府立学校の再編で使ったことはないと思う。

介護保険の改悪で事態は大変。何の支援策も具体化せず何が「人・間中心」か

【山内】  まず、介護保険制度の見直しについてです。介護保険改悪法案が、22日、自民、公明、民主の賛成多数で可決されました。この法案は、特別養護老人ホームなどの施設入所者から「ホテルコスト」の名前で居住費、食費を全額徴収し、軽度の人が利用する訪問介護サービスを制限し、必要なサービスを奪うものです。審議中の態度から一変して採決に賛成した民主党は、賛成討論で「新予防給付」について「介護保険制度本来の姿に戻ろうとするもの」と正当化し、施設入所者への負担増も「在宅と施設とのバランスから、負担を求めるのはやむを得ない」と開き直りました。民主党の山井衆議院議員は、4月6日の厚生労働委員会で、「この改正で、逆にお年寄りの症状が悪化したら、誰が責任をとるのか」「こんな大改正をやるべきでない」とまで主張されましたが、結局賛成に回りました。ご自身のメールマガジンでは「一般の方々にはなかなか理解しづらいかもしれない」と言い訳をしていますが、まったく無責任な態度です。ここには自民・民主の「オール与党」政治の害悪が象徴的に示されています。国の社会保障支出をへらすために、給付をけずり、国民負担増ばかりを押しつける、自民党と民主党の悪政の競い合いは断じて許すことはできません。

 さて、この介護保険制度の見直しについて、知事や理事者は「介護保険制度は順調に推移している」との認識のもとに、「介護予防に重点を置く国の方針は、本府の健康長寿日本一プランと一致するもの」「新予防給付において、現行制度と同様のサービスメニューも用意されている」との答弁を繰り返してきました。

 しかし、通常国会の論戦を通じて、問題点がうきぼりになりました。

 まず、「予防重視」を名目にして、軽度の方から家事援助サービスをとりあげる問題では、「家事サービスを利用すると、ヘルパーに頼ってかえって高齢者の状態が悪化する」との従来の説明が通用しなくなりました。厚生労働省の調査でも、「要介護1」の方々が在宅サービスを受けることにより、8割以上が「状態を維持・改善している」との結果が示されました。また、厚労省のモデル事業でも、筋力トレーニングの結果、要介護度が悪化した人が16%にのぼったことも明らかになり、厚労省の言い分が破たんしました。

 またホテルコストと称して、施設入所者から食費・居住費を全額取り立てる問題では、利用者負担が年金収入を上回るケースさえあることが、わが党・小池晃議員の追及で明らかになりました。政府は、その事実を認めた上で、「貯金がある人もいる」と答弁しましたが、とんでもないことです。

 先日、京都市内の在宅介護支援センターの方からお話を伺いましたが、「月7万程度の年金では、特別養護老人ホームへの入所は現在でも薦めにくい、ホテルコストの導入でまったく入れなくなる」など、特別養護老人ホームへの入所申込もできなくなってしまい、「一人ぐらしで認知症の場合、施設に入れないと、一体、どこが面倒を見るのか」とのことでした。これが、いま、介護保険に関わっておられる方々の共通の思いではないでしょうか。

 今後200項目に及ぶ政省令が、市町村におろされるとのことですが、現場に大混乱をもたらすことは間違いありません。

 そこで、知事に伺います。介護保険新制度への性急な移行を行わないよう国に強く要請すべきではありませんか。お答えください。

 また、保険料や利用料の負担感が大きくなっているもとで、さらにホテルコストなど新たな負担がかかる中、府独自に保険料や利用料の減免制度を創設して、市町村を支援すべきではありませんか。また現在の施設入所者がホテルコストの負担などで追い出されるような事態とならないようにすべきだと考えますが、いかがですか。お答えください。

 厚生労働省は、今年4月末に、特別養護老人ホームの整備目標について、「過去3年間の平均を上限として認める」方針を示しました。本府では、京都市を除いて186床、京都市も含めても356床が上限となります。昨年は、宇治市、亀岡市の整備について、「介護施設が充足している圏域だから」と国庫補助の協議対象外となりました。

 特養ホームの待機者は、京都市を含めると7,000人を超えており、新規整備の上限が356床となれば、待機者をすべて解消するのに20年もかかります。深刻な実態をふまえて、国に強く要請し、府として必要な計画をもち整備を進めるべきではありませんか。お答え下さい。

【知事】  これまで京都府は、利用者にとって過度の負担とならないよう低所得者対策等の充実を図るとともに、市町村の施行準備や財源措置などについて国に提案・要請を行ってきた。その結果、今回の制度改革においては、保険料の設定を低所得者に配慮して細分化、保険外とされた居住費・食費について所得者の場合は一定額を給付する新制度の創設、新予防給付については体制が整わない市町村は2年間を限度に条例の定める日まで施行延長可能等の措置が、これはいずれもこれまで京都府が国に提言していたことが、盛り込まれている。保険料・利用料については、介護者を社会全体で支える趣旨から国・地方公共団体はもとより高齢者の方も含めた負担となっているが、府としても今年度、約162億円を負担し、全力をあげて制度を支えている。今後、制度の詳細は検討することとなるが、低所得者対策の充実や制度の円滑な施行にむけ国に対し提案・要請していく。

 また、特別養護老人ホームの整備については、今回改めて府内の入所申込者数の実態調査を行ったところ、京都市を除くと実入所申込者数は2,639人。今後、市町村では今回の調査結果を基礎資料の一つとし、申込者数をもとに、さらに必要性の高い方等を考慮し、在宅サービスの基盤整備状況や地域密着型サービスなど多様なサービス展開なども勘案して、次期計画の利用者見込み数などの算定を行う予定。府としては、市町村が最終的に算定した数値をもとに、今後、適切に計画を策定し、特別養護老人ホームの整備にむけて最大限努力するとともに、国に対して引き続き十分な財源措置がなされるよう強く要請する。

 【山内・再質問】介護保険についてです。全力をあげて制度を支えているとおっしゃいましたが、いま私は質問で、独自の減免制度を実施すべきだがどうかと聞いたが、お答えになっていない。国で確かに低所得者に対するホテルコストの上限が、一昨日の課長会議で明らかにされ、上限が設けられたが、しかし、上限額はあくまでホテルコストの上限額で、利用料にプラスして新たな負担が生じる点では、どの段階の方でも負担が増えるのは間違いないのです。例えば、月収が6万円の方、いままでの負担が2万4,600円だったものが、ホテルコストの負担が加わってユニット型個室では4万2,000円の負担、準個室では3万2,000円の負担、多床室では2万7,000円の負担と、負担があがっているのです。そこのところを府独自でどのようにして支えて行くのか、お答えがなかった。痛みを感じないのですか。お答え下さい。

【知事】  介護保険については、国に対し、積極的な提案をしているということを申し上げた。

「応益負担」を導入する障害者「自立支援」法案にキッパリ反対せよ

【山内】  関連して、障害者施策に原則一割の定率負担を導入する障害者自立支援法案について質問します。

 現在、国会で法案の審議中ですが、その中で重大な問題点が明らかになりました。それは1割負担の問題です。現在は、所得に応じた負担のため、利用者の95%が負担ゼロですが、「応益負担」すなわち1割負担が導入されると、ホームヘルプサービスでは、平均で月約1,000円が約4,000円と4倍に、通所施設では、食費の負担も加わって月約1,000円が約1万9,000円と19倍になることが、厚生労働省の試算で明らかになりました。

 「利用料に上限を設け、低所得者に配慮した」と厚労省は弁解していますが、その利用料の上限額は、障害基礎年金1級、8万3,000円の方で2万4,600円、2級の6万6,000円以下の方で1万5,000円と、負担が収入の2割、3割以上にもなっています。しかも、負担の上限額は、本人の収入ではなく、同居する家族の収入に応じて決める仕組みとなっており、「自立」に反するものと言わなければなりません。

 5月22日に、京都では、「障害者自立支援法案に異議あり」と、「応益負担」に反対する大集会が開かれました。集会では、「障害者が、あたりまえに日常生活をおくり、自分らしく生きていくために必要なサービスをうけることを『益』と言われることは、断じて許せません」「収入の不平等にもかかわらず負担の平等だけを強いられることは、認められません」「これでは、私たちの生活は、『自立』どころか、破壊されてしまいます」などなど、関係者の怒りの声が相次いで出されました。

 そこで、知事にお伺いします。

 「自立支援」とは名ばかりで、障害者とその家族に重い負担をおしつける障害者自立支援法案についてキッパリと反対し、府としても施策の充実をはかるべきと考えますが、いかがですか。お答えください。

 知事が、本当に「人・間中心」といわれるのなら、こうした高齢者や障害を持つ方など、弱い立場の人々の命とくらしを守るためにこそ、国にものを言うべきではありませんか。お答え下さい。

【知事】  障害者自立支援法については、本当の意味でのノーマライゼーションの理念が実現し、本人の願いにそった、施設を出て地域で暮らせる制度とすべきと考える。特に、障害者の応益負担については、低所得者や重度障害者などのみなさんが、負担増によって必要なサービスをいままで通り利用できない状況が生じ、安心した自立生活を行えないようなことがあってはならない。こうしたことでは基本と違う方向に行くという懸念があるので、この観点から、国に対してあらゆる機会を捉えて提言・要請等を行っているところで、法案の十分な審議を行うよう強く要請している。

 府としては、高齢者や障害者の方々が、その介護や障害の程度、さらには所得にかかわらず必要なサービスが提供され、できる限り普通の生活が送れるようにすることが重要と考えており、今後とも国に対し提案・要請を行っていく。

有効性がいっそうハッキリした少人数学級。小中学校全学年への導入を決断せよ

【山内】  次に、少人数学級の実施について伺います。文部科学省はこれまで小中学校で一律1学級40人としてきた学級編成基準を改め、来年度から小学1,2年生については1学級35人とする方向性で検討を始めました。

 5月10日に中教審に出された文部科学省の調査でも、習熟度別の少人数指導に比べて少人数学級の方が全体として教育効果があがることが示されています。とくに、「生活面での問題行動が減少したかどうか」という評価では、習熟度別指導では小学校で64%、中学校では43%にすぎませんが、少人数学級になると小学校で89%と中学校で77%。評価が格段に高くなっています。「児童生徒の基本的生活習慣がついたかどうか」という項目でも、習熟度別指導より少人数学級のほうが、断然、効果が高いことが証明されています。また6月の義務教育意識調査では少人数学級に賛成する保護者は72%、校長・教頭では91%にも上っています。

 これまで文科省の指導のもと、全国でも京都でも、「習熟度別指導」が進められてきましたが、日本教育学学会会長の佐藤学さんは、「習熟度別指導」が学力向上ではなく、むしろ学力の低下と学力格差の拡大につながることは諸外国の多数の研究によっても明らかだと述べています。また、ある研究者は、「できる子」と「できない子」に分けて競争をさせるよりも、少人数の学級で集団とし共同で学ぶことの方が学力が向上していると指摘しています。いわゆる「できる子」も、他の子のつまずきを教えることにより、自分の学習の質が深まり、他人とのコミュニケーション能力や問題解決能力が向上しているのです。少人数学級の方向性は、当然の流れです。

 そこで伺います。中教審と文部科学省の「少人数学級」導入への検討方向をどのように評価されますか、まずお答えください。

 わが党府会議員団は、長年、本府における少人数学級の導入を求めてきましたが、知事、教育委員会はあくまで子どもを「できる子」と「できない子」に差別、選別する「習熟度別指導」を中心とする「京都式少人数教育」にこだわってきました。京都の教育を全国から立ち遅れさせ、子どもたちにしわ寄せすることは許されません。いまこそ府の姿勢をあらため、すべての小中学校全学年で少人数学級に踏み出すときではありませんか。知事及び教育長の答弁を求めます。

【教育長】  中央教育審議会義務教育特別部会においては、少人数学級を推進すべきという意見もあるが、加えて、今後も少人数指導や習熟度別指導を充実すべき、あるいは現場の実情に応じた柔軟な制度とすべき等のさまざまな意見が出されている段階で、今後、地方の実情を踏まえながら十分な論議が尽くされるべきと考える。本府では、児童生徒や学校の実情にあわせ、少人数授業、TT、少人数学級を柔軟に選択して実施できる「京都式少人数教育」を先進的に取り入れ、たいへん高い評価を得ており、今後とも各学校の実情に即した取組みをいっそう推進することとしている。

府立高校再編―ごり押しでなく、府民意見を聞き、当然、見直し、再検討すべき

【山内】  次に、府立高校の再編・統合について伺います。京都府は、父母が望む少人数学級などの要求には応えず、「経営採算」の観点から、府民も生徒も望んでいない高校つぶしを強行しようとしています。

 教育委員会はさる5月24日の新聞報道を受け、その日の午後に急遽記者会見を開いて、府立学校再編整備方針案を発表しました。その中身は、城南高校と南八幡高校を廃止して、それぞれ西宇治高校と八幡高校に統合し、その跡地に新設養護学校を建設するというもので、突然の発表に驚きが広がりました。

 今回の府立学校再編整備方針案は、生徒不在、府民不在の府立高校つぶしにほかなりません。

 第一に、こうした大問題を生徒や保護者、地元関係者にも議会にも説明をおこなわず、トップダウンで結果を押し付けるやり方です。1月22日におこなわれた府民説明会はたった一時間半、「再編の対象校はどこになるのか?」「実施時期はいつになるのか?」「統合される4校の基準は何か?」など多くの疑問が出されましたが、何一つお答えになっていません。しかも、八幡高校では5月24日の報道と発表を待っていたかのように、翌日25日に校長名で「今後この方針に基づき早急に八幡高校と南八幡高校の発展的な統合に向けて、必要な措置を講じていきたいと考えています」と、まるでこの方針案が決定したかのような文書が保護者に配布されています。

 これでは、まさに「先に高校つぶしありき」です。府民不在、議会軽視です。当然、保護者、同窓生、地域の関係者に説明し、意見を聞くべきです。そして必要ならば再編案の見直し、再検討も行うべきです。そうでなければ知事のおっしゃる「住民発」「住民参画」「住民協働」は口先だけということになります。いかがですか。知事の明確な答弁を求めます。

 第二に、今回の府立高校統廃合は、知事が「経営の観点から効果的な再編成、再整理がせまられている」と発言されているとおり、府民の共有の財産である府立高校を「経営効率」でつぶそうとするものです。その最大の根拠とされるものが、府教委のいう「1学年8学級」適正規模論です。この立場を推し進めるなら、府内全域の高校統廃合に拍車がかかることはハッキリしています。知事は、今後、府域全体の府立高校つぶしに進まれるのですか。いかがですか。さらに、今回の府立高校統廃合計画は、「特色ある学校づくり」といって普通科を減らし、専門学科や中高一貫教育の導入で、高校の序列化とランク付けをするものであり、地元の学校で学ぶ権利を奪い、競争と選別をいっそう激化させるものです。また、本府の高校教育は将来にわたって40人学級として固定化されますが、少人数教育の全国的流れの中で、こうした固定化がされることをよしとされますか。教育長の答弁を求めます。

 また、山城地域の子どもの数は、昨年時点で、中学3年生4,619人に対し、小学生6年生が5,150人、4年生が5,324人、1年生が5,305人ですから、今後、増加する傾向です。府教委も「平成24年には公立中学生が微増する」との予測を立てています。今後10年近く生徒が減るどころかわずかながらも増えるもとでなぜ高校を減らすのか、府民が納得できないのは当然ではないでしょうか。いかがですか。お答えください。

【知事】  山城地域の府立学校の再編・整備の具体的な内容は、教育委員会が責任を持って進めているところだが、私としては、教育委員会が計画を進めるに対しては、関係校の在校生、保護者の皆さんに対し、不安に思われないような説明をしてほしい。これから高校をめざす子どもたちにとって、その保護者の方々が安心して通学ができ、期待できるものであるようにしてほしい。卒業者のみなさんにも、母校の継承・発展についてよく理解していただくほか、府民のみなさんによくお知らせし、理解を求めながら進めてほしい。このように教育委員会には申している。引き続き、府議会での審議を賜りながら、未来を見据えた魅力ある高校づくりにむけ検討を進められることを期待している。学校の適正規模等については、教育委員会が教育的視点に立って専門的に判断することが、私は基本であると考える。教育委員会では、高校改革を推進するに際し、高校の特性や地域状況等を十分に踏まえながら検討していると伺っているところで、私からは、今後とも地域の皆さんのご意見をよくお聞きしながら、とにかく財政が厳しい中でも、教育は長い目で見るべきものだから、遠慮することなくよい学校づくりに取組むように申し上げている。

 「経営」ということをさっきからおっしゃるが、実は、「経営改革プラン」には「採算」という言葉は一つもない。「採算性」という言葉は。よく読んでいただきたいと思うが、まさに「経営」という言葉は広辞苑を見てもわかるように、「事業を計画的、系統的に実行していくこと」である。

【教育長】  高校の学級編成は、いわゆる標準法の基準によることとしているが、各高校では学科や教科の特性により、習熟度別授業や多様な選択講座を実施するなど、すでに多くの授業で少人数教育を取り入れている。

 また、山城地域の公立中学3年生の生徒数は、すでに昭和63年のピーク時の約半数となる5,000人程度で、微増・微減しながら今後も推移していくものと考えている。こうした状況の中、今回の再編整備は、各学校が活力ある多様な教育活動を展開することにより、生徒一人ひとりの能力や個性を最大限に伸ばすことのできる教育体制を整備しようとするもの。

 【山内・再質問】府立高校再編について、知事に伺います。不安を生まないような説明をし、よく理解を求めるように教育委員会を指導しているとおっしゃいました。けれども、まだ案の段階で、八幡高校と南八幡高校で再編準備委員会がすでに開かれています。高校統廃合がもう決まったかのように準備をしています。形だけの意見募集で一部の人たちが決めた方針案をごり押しをするのは許せません。これは府民不在、議会軽視も甚だしいのではないのですか。本当に説明を聞くという姿勢なら、八幡の再編準備委員会は中止すべきではありませんか。

【知事】  教育委員会に対して、(知事は)指導できるんでしょうか。できないと思うのですけれども。指導しろと言うのはちょっと議員の質問の趣旨がおかしい。再編については、十分な説明をしていき、よい学校を作ってもらいたい、そして、財政が厳しい状況でも、教育とは長い目で見ないといけませんから、やっていきたいと言っている。

府南部の養護学校。宇治、八幡だけでなく、城陽にも新設すべき

【山内】  第三に、養護学校の新設についてです。これまで府教委は養護学校の早期実現を望む関係者に、「養護学校の建設は高校統廃合とはリンクしていない」と何度も弁明を行ってきました。しかし、今回の新設方針は、廃校となる城南高校・南八幡高校の跡地の活用によるものであり、今後5~6年、発表からは8~9年と待たされ、障害がある子どもたちの教育は二の次とされ、高校つぶしと一体のものであることは明らかです。

 さらに、桃山養護学校の閉校が、職員も子どもも保護者も知らないなかで突然明らかにされました。現在、桃山養護学校には隣接の入所施設である桃山学園の子どもたち23人が通学しています。自閉症やパニックを起こすなど重度の子どもたちや自宅から通学できない事情のある子どもたちです。この子どもたちは遠い八幡に通学する案になっています。それは宇治にできる養護学校は、スタート時点で、府教委の発表でも200名近い超マンモス校となるためですが、八幡までスクールバスで1時間、重度障害を持った子どもたちの成長と発達をいったいどのように考えておられるのですか。お答えください。また、早急に城陽市にも養護学校を新設するべきと考えますが、いかがですか。お答えください。

【教育長】  桃山学園の児童生徒については、専用のスクールバスによって新設校に直行することで、乗車時間は概ね40分程度になるものと見込んでおり、一人ひとりの障害の状況や特性に応じ、安心して通学できるよう十分に配慮することとしており、また、高校と同一敷地内に新設する養護学校に通学し、高校生と学校行事や授業等で日常的に交流することは、知的障害児施設で生活する学園生にとっても、人間関係を広げ社会性を培う上でたいへん有意義なものと考えている。

 なお、今回の再編案では、南部地域に養護学校を2校新設する予定であるが、宇治市内の新設予定校は城陽市に極めて近いことから、地域社会に密着した教育活動が展開できるものと考えている。

「勝ち組」応援の経済対策でなく、京都経済を支える中小企業への手厚い支援策を

【山内】  次に、中小零細企業への支援対策についてお聞きします。

 トヨタ・日産などの大企業が、「リストラ効果」で空前の利益を上げる一方、京都府の中小零細企業の経営は、厳しい状況が続いています。この間発表された景気動向調査でも、「府内の企業倒産、今年最多の38件」、「4~6月期の景況見通しは、38・7%が悪い」(北部機械金属)などと、厳しい見出し、数字がつづきます。

 こうしたときだからこそ、府民の雇用の場の確保、近い将来の京都府の税源の涵養、府民の福祉の向上に直接結び着くという点からも、厳しい状況にある中小零細企業への経営支援対策を抜本的に強化することが求められています。

 ところが、知事が行なったことは、京都府中小企業総合センターの経営支援部門を、財団法人京都産業21に移管することでした。中小企業総合センターは、43年の歴史を持つ、全国で唯一の「経営と技術の総合的指導・研究機関」であり、経営分析力や専門的知識を持った職員を多数配置する、中小企業に頼りにされるセンターとしての役割をこれまで果たしてきました。

 しかし、自民党府政になって以降、センターが本来の役割を十分に発揮するために必要な経営診断能力を持つ職員など人材の育成を怠り、経営相談体制の弱体化、巡回相談活動の大幅な縮小など、その機能を後退させてきたのです。そして、一方で、ベンチャー・新産業育成、ITやバイオ支援などに重点をシフトしてしまいました。

 そして、今回の経営指導部門の京都産業21への移管で、本府として中小企業の経営指導から手を引いたのです。

 産業21は、理事長、副理事長、事務局幹部は京都の大手企業トップが占めており、その事業の内容は、企業のIT化や新産業の創出、ベンチャー支援等が中心であり、京都の経済を支えてきた中小零細企業への支援体制は極めて不十分です。実際の利用も中堅企業が中心となっており、日々の経営に追われる零細企業が、産業21を利用することはなかなか困難です。

 京都経済の99,8%をしめる中小零細企業への経営支援体制のこれ以上の後退は許せません。経営指導部門の産業21への移管を元に戻し、経営診断・指導能力を持った職員の育成、配置を行い、伝統地場産業、中小零細企業への経営と技術支援、そして金融斡旋受付の再開も含めた金融支援を一体的に展開するなど、京都府の総合的な中小企業支援体制を復活・強化すべきではありませんか。お答え下さい。

 府の制度融資の運用についても、いま大きな問題が発生しています。

 本府は「利便性の向上、迅速化」のためと、受付窓口を金融機関とするという重大な制度変更を行い、昨年度からは、制度融資の府の直接の受付をやめてしまいました。

 私どもは、府の融資の受付中止に際し、資金が必要な中小企業が排除される恐れがあると指摘しましたが、知事は、金融機関の十分な理解のもと、円滑な推進が図られるよう努める、さらに、金融機関等と定期的な協議を行なうから問題は無いとの答弁をされました。しかし、実際はどうでしょうか。

 京都市内で建設業を営む青年は、昨年7月、金融機関を通じ、事業を拡大するための制度融資を申し込みました。金融機関が保証協会の保証を求めたため、彼は保証協会の窓口にも行きましたが、保証はされませんでした。半年後に改めて申し込みましたが、やはり今度も、融資は実行されない。がんばって仕事をしてきた、我流だが帳面もつけている。確定申告もちゃんとしたのになぜか。ご本人は大変悩まれたそうです。この5月に3度目の申し込みをされ、保証協会が調査をおこなって6月上旬、ようやく融資が実行されましたが、初めての申し込みから融資実行まで10ヵ月もかかったのです。

 なぜこんなにかかったのでしょうか。金融機関は窓口で営業実態の調査・聞き取りもせず、営業の改善方向なども指導していないのです。この他にも、「白色申告では申し込めない」「売り掛けが多いから」「よその金融機関で申し込んだら」など、府が実施する「制度融資」では本来考えられないような扱いが次々と起こっています。

 経営基盤の弱い零細企業や青年業者、そして、はじめて融資を利用する事業者らに対して、金融機関は、保証協会のメッセンジャーの役割しか果たさない状況があります。府の制度融資といいながら、実態は金融機関まる投げで、これが府の斡旋受付中止の実態です。こんな事態を一刻も放置することはできません。

 そこで伺います。制度融資の運用を改善するため、京都府中小企業技術センターや各広域振興局の商工観光室を窓口として、府による融資の斡旋受付を再開すべきです。そして商工会など、業者事情に精通した中小企業団体が相談窓口になって申込ができるよう制度の改善をはかるべきと考えますがいかがですか。また、制度融資を実行できない場合には、その理由を本人に開示するよう、システムを改善すべきですが、いかがですか。

 また、金融機関で本人の意に反し、制度融資が利用できなかった場合、希望すれば府が改めて調査し、診断をするなどの救済システムも設けるべきですがいかがですか。お答えください。

【知事】  平成12年度以降、国の中小企業経営支援対策の窓口が、従来の都道府県であったものが、民間支援機関を窓口にすることに変更された。そのため、府では財団法人京都産業21を創設し、中小企業の支援対策を実施してきた。このような中、中小企業総合センターの業務との重複が生じ、利用される中小企業の中からも分かりにくいとの指摘があり、今回、効果的な支援体制を確立する考えから整理を行った。従来から行ってきた経営・技術両面からの一体的支援については何も変わらない。さらに、両機関の共同相談窓口としてお客様相談室を開設し、両機関が継ぎ目なく、きめ細かく支援を行っているほか、産学公連携による新事業展開の支援、ホームページや機関紙の統合によるニーズにそった情報提供など、サービス体制を強化している。こうした取組みにより、財団法人京都産業21の有する支援ノウハウの活用もいっそう容易になり、複雑多様化する中小企業のニーズへの対応力も向上していくと思う。経営・技術の一体的支援体制の重要性はご指摘を受けるまでもなく考慮しており、今回の改正で中小企業のサポート体制はいっそう強化されたと考えている。

 融資制度については、中小企業にとって金融の果たす役割はたいへん大きく、府は広域振興局、産業支援センターなどにおいて引き続き事業者からの相談にしっかり対応していくこととしている。同時に、金融について専門的ノウハウを有する金融機関のいっそうの活用が重要と判断し、また、利用される中小企業者の利便性や迅速性も考慮し、金融機関を受付窓口とすることとした。従来、府の14ヵ所の窓口だけで受け付けていたものを、金融機関の約400の窓口で受け付けられるようになった。利便性が大幅に向上するとともに、申し込みから融資実行までの大幅な迅速化が図られた。この結果、あんしん借換融資、小規模企業応援融資をはじめ、過去最高の利用をいただいている。それをこなすことができたと考えている。府としては、この仕組みが円滑に機能するよう、本庁及び各広域振興局毎に中小企業地域金融対策協議会を設け、金融機関との意見交換や情報交換を行っており、さらに各広域振興局をはじめとする府の窓口や商工会等の中小企業団体においても丁寧な融資相談に応じている。

地球温暖化防止条例の制定について

【山内】  次に、地球温暖化防止条例の制定について伺います。本府では、本年3月に知事の諮問を受けて環境審議会の条例検討専門委員会で、「京都府地球温暖化対策条例」の策定に向けて議論がなされているところです。私も傍聴を続けてきましたが、委員会での議論は条例を真に実効あるものにするための熱心な議論が展開され、大変有益なものだと感じています。また、温暖化防止活動推進センターが主催した府民意見交換会にも70名を超える府民が参加し、すでに実行している温暖化防止の取り組みの紹介や、府への提言などがおこなわれました。

 私はこうした府民の熱い思いや、企画部会、専門委員会の議論をしっかりとうけとめ、条例に盛り込んでいただきたいと思います。同時に本府では、90年と比較して産業部門の排出量が大きく減少しているとのことですが、依然として産業・運輸・民生業務系で府内全体の排出量の8割近くをしめています。産業・運輸部門などへの取り組みをいっそう求めて質問にいります。

 さて、わが党府会議員団は条例の策定に当たっては、現在の排出量の把握が前提であることを指摘し、2月議会で、再三、「早急に排出量の調査を」と求めて参りました。6月16日にようやく温暖化ガスの排出状況について、2002年の結果が公表されたところであります。

 そこで排出量について伺います。2002年の排出量の調査結果によると、温暖化ガスが1990年と比べて3・5%減少したということですが、これは消費電力をCO2に換算する際に用いる係数を、1990年の「京と地球アース共生計画」では全国係数の0・42を使用しているのに、今回は関西電力係数の0・26を使用したためです。2002年の全国係数の0・38を用いると本府の排出量は、逆に2%増加しているという試算も出されています。プラスマイナスでは、5・5%もの差があるのです。

 そもそも、関西電力の係数というのは、関西電力の原発依存度が全国的にも高いことから、たいへん低く設定されているものです。しかし、これは、昨年8月の美浜原発3号機事故に見られるように、長期にわたる稼動停止など、大きな不安定要素を持っています。昨年の原発の稼動停止で、2004年の関西電力の係数は、過去最高を示すのではないかとも言われていますが、2002年度のものはこの10年間で最も低い係数となっています。こうした不安定な排出係数を用いることになれば、どんな係数をかけるかによって温暖化ガス排出量の数値そのものが大きく左右されるのです。これでは、「5年、10年先を見通しての計画目標策定の積算の根拠としてはいかがなものか」「府民や企業、行政の努力が数字に反映されにくい」との、専門家の指摘もあります。

 そこで伺います。電力係数について、京都府では1990年の「京と地球アース共生計画」では全国係数を使用しているのに、なぜ2002年分は関西電力の係数を用いるのですか。京都市では、これまで全国係数を用いていますが、これは条例制定と今後の対策の基礎になる重要な点です。知事の見解をお聞かせ下さい。

 つぎに、温暖化対策を進めるための体制整備について伺います。

 第一に京都府が責任を持って全庁的に温暖化防止対策を進めるための体制を作ること、また温暖化ガスを削減する視点で府の政策の点検、見直しをおこなうことが必要だと思いますが、いかがですか。

 第二に、温暖化防止活動推進センターの充実です。現在京都市内に1ヵ所で、府内全域を常勤職員3人で回っておられます。せめて北部と南部にも推進センターを設けるとともに、思い切った常勤職員の増員が必要だと考えますが、いかがですか。

 第三に、条例で定められた事項の進行を管理する組織が必要です。推進センターや事業者、市町村も含めて第三者による管理組織を設置する必要があると思いますがいかがですか、お答えください。

【知事】  現在、環境審議会において進められている温暖化対策条例の検討における温室効果ガスの排出量の推計については、京都府内の排出量だから、京都府の地域実態に応じて算出すべきであり、府域の電力のほとんどが関西電力から供給されている現状を踏まえ、関西電力の排出係数を使用した。

 庁内の推進体制については、COP3の開催を契機に知事を本部長とする地域環境対策推進会議を設置し、また、横断的に環境施策を統括する環境政策監を地球温暖化対策プロジェクト長として、全庁あげて地球温暖化対策に取組んできた。また、地球温暖化対策プランや環の公共事業行動計画により、地球温暖化を防止する視点から府の施策や事業の点検・見直しを全庁的に行っている。

 地球温暖化対策を推進していくためには、日常生活や地域生活の中で、身近なところ、足下からの取組みが何よりも重要で、このため、京都府地球温暖化防止活動推進センターが府域全体における温暖化防止活動の中核的支援機関、組織として役割を担うとともに、各地域には取組みの核となる地球温暖化対策地域協議会がすでに5団体設置されており、また、地域に密着した活動を行う地球温暖化防止推進員も本年4月に、昨年度の2倍に相当する168名を委嘱した。今後とも、センターの活動基盤の強化をはかるとともに、地域協議会の組織化や推進員の人材育成など、その活動をさらに支援をしていきたい。

 条例の進行管理については、「中間まとめ」において、条例の実施状況の定期的な評価、見直しを行う体制の整備についても盛り込まれており、今後、答申の内容を踏まえ、条例化の中で、より実効性を確保できる組織のあり方について検討していきたい。

憲法9条2項について、知事の認識はどうか

【山内】  質問の最後に、知事の憲法9条についてのご認識を伺います。この間のアジア諸国の動向などからも、今ほど憲法9条にもとづく平和の発信が切望されている時はありません。いま、小泉首相の靖国神社参拝にたいする批判・非難の声が、中国や韓国などアジアの国々はもとより、国内からも一段と高まっています。靖国神社は、戦前、軍国主義と侵略戦争を遂行するための精神的支柱となり、現在は「日本の侵略戦争は正しかった」との戦争観を内外に広めようとしている神社であり、こうした神社への首相の参拝に怒りと非難の声がでるのは当然です。アジアとの友好のためにも、知事として小泉首相の靖国参拝の中止を求めるべきですがいかがですか。

 同時に、いま「戦争する国づくりは許せない」と、日本の知性と良心を代表する加藤周一さんや澤地久枝さんら9名が呼びかけた「憲法9条まもれ」の運動が空前の広がりを見せています。

 ところが、こうした中、知事は、たいへん危険な方向に踏み出しつつあります。知事は、5月24日には、全国知事会の憲法問題特別委員会の初会合に出席し、「地方から憲法についてものが言えるよう本質的な議論をしなければならない」と、憲法改正論議に地方が積極的に関与すべきとの考えを示し、「自治の章に限定すると幅の狭い議論になる」と、憲法全体に対する改憲議論を熱心に呼びかけたと報道されています。

 現在の国内での改憲議論の焦点は、憲法9条2項をめぐるものです。戦後、自民党政府は、憲法9条に違反して自衛隊をつくり、増強してきましたが、戦力の保持の禁止という明文規定が歯止めになって、海外での武力行使はできないという建前までは崩すことができなかったのです。これは、中曽根元首相が「2項において『戦力』の不保持を規定している結果、集団的自衛権の発動が否定されてきた」と述べている通りです。9条2項を変えるということは、この歯止めを取り払い、海外で戦争する国に日本を変質させることになります。すなわち、9条2項を廃棄することは、戦争放棄を規定した9条1項を含めた9条全体を放棄することになります。これは、日本国憲法の戦争放棄、平和原則そのものの放棄になるのではありませんか。憲法9条2項にまさに憲法の魂が込められているのです。

 そこで伺います。知事は憲法9条2項の改正議論についてどのようなご意見をお持ちですか。お聞かせ下さい。

【知事】  小泉首相の靖国神社の参拝は、小泉首相が「私人としての参拝」とされている以上、首相ご自身が総合的な判断をして行動されるべきと考える。私は、中国、韓国をはじめアジア各国との良好な関係を保つことについては、国際化の時代にあって非常に重要と考えており、府としては、友好提携など様々な事業を通じて交流を図ってきたところであり、これからもこうした観点をしっかりともってアジア各国との友好交流に貢献していく。

 憲法問題については、平成12年1月に国会の衆・参両院に憲法調査会が設置され、日本国憲法について、総合的な調査が進められ、本年4月にこの5年間の議論の成果が報告書としてとりまとめられた。この調査会では、前文を含む103箇条の憲法全体について調査が行われ、安全保障に関しても詳細な議論が行われ、戦争の放棄の概念を堅持し、平和主義を今後も維持すべきであるということについては共通認識であったようであり、私も全く同感。一方、憲法の条文改正の必要性を含め、安全保障に関する各論点についての結論は、今後の議論に委ねられているが、私は京都の知事として、各国の人々が国境を越えて協調し、人類の共存と未来を守ろうとする精神、これは京都議定書の精神にも通じるが、これを踏まえて議論されるべきと考える。

 私は、全国知事会の憲法問題特別委員会の委員として、地方自治に関して憲法の見直しの有無を含めて検討作業に参画をしているが、先ほどおっしゃったのは、環境権のような地方にも関係のある議論がある場合には、そういったものもいろんな観点から私どもは議論していく必要があるということを申し上げたわけで、十分に事実を踏まえて質問いただきたい。

 【山内・再質問】憲法問題で、知事は議論は当然と、憲法を守るのかどうかという明言を避けられました。改憲議論の中心は憲法9条2項をどうするのかということです。環境権といいますが、いまの憲法の下でも十分に環境を守ることはできるはずです。憲法9条2項について、どういうお考えをお持ちか、きっちりともう一度お答え下さい。

【知事】  9条2項については、先ほど申し上げたように、各国の人々が国境を越えて協調し、人類の共存と未来を守ろうとする精神、こういうものを踏まえて議論すべきであると答えたところ。