意見書・決議案について梅木 紀秀府議の討論
日本共産党の梅木紀秀です。ただいま議題となっております意見書及び決議案について、4会派提案の「第二名神高速道路の整備促進に関する意見書案」に反対し、他の意見書及び決議案に賛成する立場から討論を行います。
討論に先立ち、議長のお許しを得て、わが党議員団を代表し、12月10日、宇治市内の学習塾で、講師によって命を奪われた幼い被害者のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族に謹んでお悔やみを申し上げます。あわせて、こうした事件があいついでいますが、人の命、とりわけ幼い命が大切にされる社会と地域をつくるために、わが党議員団として、あらゆる努力をつくすことを表明するものであります。
討論に入ります。まず、わが党提案の「イラクからの自衛隊の即時撤退を求める意見書案」についてです。国連決議もないまま、大量破壊兵器の保持を理由に、アメリカ軍がイラクに攻め入って、早3年が立とうとしています。アメリカ軍の捜索でも大量破壊兵器は発見されず、ついにブッシュ大統領も情報が誤りであったこと認めました。この戦争がアメリカによる侵略戦争であったことは、いまや明らかです。この侵略戦争のために命を奪われたイラク人の数は3万人、米兵の死者は2140人にのぼるとブッシュ大統領自身が、去る12日、記者の質問に答えています。数万の人々の命を奪う侵略戦争を仕掛けたアメリカの責任は重大です。イラクでは昨日、任期4年の正式な国民議会選挙が行われました。イラクの復興、平穏な社会を取り戻すための最大の障害は、多国籍軍の駐留継続であり、早期の撤退が世界の世論です。すでに有志連合38カ国のうち19カ国が撤退ないしは撤退を表明しています。にもかかわらず、小泉首相は、12月14日で切れる自衛隊の派遣期限をさらに1年間も延長しました。「非戦闘地域に限る」という自衛隊派遣の前提も、自衛隊宿営地を狙った攻撃が11回にも及び、すでに崩れています。「人道的支援のため」という目的も、自衛隊による給水活動は本年2月に終了し、現地では、自衛隊ではなくイラク人の雇用拡大につながる支援を、という声が高まっています。どの角度から見ても、直ちに自衛隊は撤退させるべきであり、京都府議会として、政府に撤退を求めようではありませんか。
次に、わが党提案の「定率減税の廃止に反対する意見書案」についてです。ここ数年立て続けに実施されている年金、介護および雇用保険料の引き上げ、医療費の窓口負担増、老齢者控除及び配偶者控除の廃止、さらに来年1月からの定率減税の半減で、勤労者の生活は苦しさを増しています。自民・公明両党は昨日、来年度の「与党税制大綱」をまとめ、政府税調の所得税・住民税の定率減税全廃を容認しました。定率減税が全廃されれば、年収400万円から900万円までの圧倒的多数のサラリーマン世帯で、所得税・住民税は2割以上の増税です。自民党は、東京都議会議員選挙でも、先の総選挙でも、「政府税調のサラリーマン増税には反対」「断固阻止」と幹事長の写真入で大宣伝しましたが、国民を欺く、許されない公約違反です。一方、定率減税と同時に実施された法人税減税は、大企業が史上空前の利益を上げているにもかかわらず減税を恒久化し、6年連続で実質収入が減っているサラリーマンや自営業者に総額3兆3千億円もの大増税を押し付けるやり方は許せるものではありません。この怒りを共有し、サラリーマン増税に反対する立場から、民主党提案の「定率減税の廃止や各種控除の縮小など安易な国民負担増を行わないことを求める意見書案」について、「所得の捕捉格差の是正」など見解を異にする部分はありますが、「小異を捨てて大道につく」の言葉どおり賛成するものです。
次に、わが党提案の「医療制度改悪を行わないよう求める意見書案」についてです。12月1日、政府与党が決定した「医療制度改革大綱」に高齢者の怒りは高まっています。ただでさえ「減るのは年金、増えるのは保険料と自己負担」と高齢者の将来不安が高まっているところに、さらなる保険料と窓口負担増は、高齢者の命と健康を奪い、やがて年金生活に入る世代の夢と希望を奪うものであり、日本の未来そのものを暗くする医療改悪です。また、景気動向で医療費を抑える「医療費の総額管理」などという経済優先の考えは、憲法の定める基本的人権や社会保障に対する考えを根本からくつがえすものであり、許せるものではありません。日本の総医療費の対GDP比は、OECD加盟30カ国中17位であり、無駄な大型公共事業や軍事を削減すべきです。
次に、わが党提案の「私立大学への助成の抜本的増額に関する意見書案」「国際人権規約・『学費無償化条項』の批准を求める意見書案」および「学生の就職難、就職活動をめぐる問題の解決を求める意見書案」の3件についてです。
大学のまち京都の学生自治会の連合組織である府学連から、今議会に3件の請願が提出されました。3意見書案は、学生諸君の切実な願いにこたえて、提案するものであります。まず、私立大学への助成増額の意見書案ですが、日本の大学生の75%は私立大学に在学していますが、初年度納入金は、1985年に91万3千円だったものが、今や130万2千円と20年間で1・4倍、およそ40万円もの負担増です。一方、私立大学への国の一般補助は、20年間に2672億円から2198億円へ、マイナス20%、およそ500億円もの削減になっています。学費の重さは子どもを持つ親として、私自身実感しましたし、ここにおられる議員諸氏の共通の思いであろうと確信しています。大学自治会の役員諸君の話でも、学費や生活費をアルバイトで稼ぐことを第一義的に迫られ、まともに授業を受けることができないという状況であります。学生諸君をこういう状態にしておいて日本の未来が開けるでしょうか。私立大学への助成を抜本的に増額する意見書案への賛同を求めるものです。
さて、日本は国際人権規約を1979年に批准していますが、その13条2項(C)はいまだに批准せず留保し続けています。この条項は、高等教育の学費無償化をすすめ、親の収入にかかわらず、すべてのものに均等に高等教育を受ける機会を保障しようというものです。9月に、本議会からフィンランドとデンマークに、北欧の教育と福祉の状況を調査する代表団を派遣しました。今議会の開会日に全員協議会で、その視察報告を団長から受けましたが、大学まで教育費が無料であることが、感動を込めて報告されたことは、記憶に新しいところであります。北欧はもとより、学費は無償か最小限の負担にとどめ、生活費も含めた「給付制」の奨学金制度が、世界の主流であります。先進諸国では、国際人権規約13条2項(C)の「学費無償化条項」を批准し、実行しているのであります。国際人権規約を批准しながら、この条項を留保している国は、日本、マダガスカル、ルワンダの3カ国だけです。日本の高等教育費は、対GDP比0・5%で、OECD加盟30カ国中、じつに28位であります。この日本の遅れた実態が、国連社会権規約委員会で問題になり、2001年に、日本政府に対して「学費無償化条項」を批准するよう国連委員会から勧告が行われ、来年6月末までに、どういう措置をとったのか報告が求められています。世界からも、経済大国日本の高学費が、教育の機会均等という世界の流れの足かせになっているのです。北欧視察団を派遣した京都府議会として、「学費無償化条項」の批准を政府に求めようではありませんか。
さらに、学生諸君の就職難の問題は、来年度卒業予定者の就職内定率がやや改善したとは言うものの、依然深刻であります。政府の、青年・学生への雇用政策は、職業意識の啓発や職業訓練、ミスマッチ解消が中心ですが、問題の根本原因は、大企業が正規採用を抑制し、パートやアルバイト、派遣など非正規雇用を拡大し、政府がそれを促進していることにあります。また、就職活動の時期が早まり、「就職活動で授業に出られない」という実態があります。こうした問題の解決のために、政府が率先して、企業に対して正規雇用の拡大や就職協定の確立を働きかけるよう求める意見書案への賛同をもとめるものです。
次に、わが党提案の「乳幼児医療費助成制度の拡充を求める決議案」についてです。3万人の府民から回答が寄せられた民主府政の会の全戸配布アンケートでは、府政に望む施策の第1位は、子どもの医療費助成の拡充でした。30代の女性は、アンケートの自由記述欄に「少子化、少子化というが、まるで私たちが悪いかのように言わないでほしい。子どもがほしくても、収入が少ない、教育費が高い、医療費だって、何だって高い。政治や社会の責任もあるのではないか。」と記入しています。知事は、今議会で、わが党の原田議員の代表質問に、「乳幼児医療費助成制度は、荒巻府政の時にできたもの」と答弁しましたが、乳幼児医療費無料化を求めて運動し続けた人たちから、「この制度ができるまで、どれほどの運動があったか、知事は知っているのだろうか」という声が上がっています。十数年の長きに渡って、「子どもの医療費無料化などできもしないことを」という妨害をはねのけて、府民の運動と議会での論戦、市町村でのとりくみの広がりの中で、この制度ができたのです。2003年9月に制度が拡充されて2年が過ぎました。府内36自治体中、28自治体が府の制度に独自に上乗せしていることも、切実な要求の反映であります。子育て世代の切実な要求に答え、拡充を求める決議をあげようではありませんか。
次に、わが党提案の「『品目横断的経営安定対策』の全面的見直しを求める意見書案」についてです。今年3月、政府は「新たな食料農業農村基本計画」を策定し、10月に、この「計画」に基づく「品目横断的経営安定対策」の大綱を示しました。この対策では、支援の対象が、規模の大きな認定農業者や一定の要件を満たす集落営農組織にしぼられるため、京都の農業の支えてきた高齢者、女性を中心とした家族経営農家や兼業農家が支援の対象から、ばっさりとはずされるという重大な問題をかかえています。このまま、2007年度から実施されるならば、農業のみならず、集落と農村を崩壊に導くものであり、日本の将来にかかわる問題として、農業団体、自治体関係者に不安と批判が広がっています。家族経営など多様な担い手による農業生産を維持・発展させるために、農家の再生産と所得を保障する価格安定対策への拡充を求める本意見書案への賛同を求めるものであります。4会派提案の「品目横断的経営安定対策を含む担い手の確保・育成に関する意見書案」は、不十分さはありますが、多様な担い手育成・確保対策を求める点で一致できるものであり賛成します。
最後に、4会派提案の「第二名神高速道路の整備促進に関する意見書案」についてです。第二名神高速道路の建設計画では、大津-高槻間だけで1兆2000億円、1キロ当たり300億円という膨大な建設費用がかかります。そして、ほぼその全額は借金として、国民にさらなる負担増をもたらすものであります。意見書案は、「万一、名神高速道路が地震で通行止めになった場合の代替機能を」などと主張していますが、旧日本道路公団や国交省も、京滋バイパスの完成で、渋滞緩和だけでなく、事故災害時の補完機能が向上したとして、第二名神の見直しを表明しているのです。万一の代替機能というならば、高速道路よりも生活幹線道路の整備に力を入れ、日常の渋滞緩和、交通安全の確保と合わせて代替機能を持たせる方が、費用対効果の面からも、理にかなっています。また、地球温暖化防止の視点からも、自動車交通を極力抑制する方向に政策転換するべきであり、本意見書案には反対するものです。
そもそも、国と地方の借金が1000兆円を超え、財政再建が最優先だと大騒ぎして、医療、介護、福祉、教育とあらゆる分野で国民には負担増を押し付け、さらには大増税を押し付けようとする、その一方で、膨大な借金をつくった原因である無駄な大型公共事業はすすめよという主張は、府民の生活実感からかけ離れたものであるということを指摘して、私の討論を終わります。