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本会議質問

2月定例会 山内 佳子府議の一般質問

2006/02/13 更新
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 日本共産党の山内よし子です。事前に通告しています数点について知事ならびに関係理事者に伺います。

生活保護基準の引き下げ、生存権を侵害する有期保護制度に反対せよ

 最初に生活保護について伺います。現在生活保護受給者は増え続け、京都では10年前の1.4倍、3万世帯をこえています。この背景のひとつには長引く不況と非正規・不安定雇用の増大などで所得上位4分の1の世帯が、全所得の4分の3を占めるにいたっている、国民の間での所得格差が7年連続で拡大していることがあげられます。

 ふたつめには、この間の社会保障制度の改悪により、これまでは年金で生活できていた方々が医療費や国民健康保険料の値上がり、介護保険料、利用料の負担などにより、生活できなくなっていることです。

 一方で、生活保護の高齢者に対する加算が減額、廃止されたり、母子加算の見直しや多人数世帯の基準の引き下げなど、国民の最低生活を保障する生活保護基準の引き下げが相次いでいます。

 一昨年と昨年に、高齢者の加算が合計で14000円減額されましたが、そのことにより健康で文化的な最低限度の生活を送ることができなくなったと、山科の松島さんと北区の三島さんが京都地裁に提訴を行い、また全国各地でも裁判が始まっています。生活保護の老齢加算の減額で人間らしいくらしができなくなったという方々の声を紹介します。

 「一昨年加算が減額されて、今まで週に3日銭湯に通っていたのを週に1~2回にした。昨年さらに減額されたので仕方なく1日の食事を3回から2回に減らした」という方、また「母親の一周忌に交通費がなくて帰れなかった。その後の法事にも帰れなかった。これまで冠婚葬祭の付き合いもできず、故郷の人や親戚との付き合いを一切断ち切りましたが、近所のみなさんとの付き合いは大切にしてきました。それは、ふるさとを捨てた私たちの唯一の心のよりどころだからなのです。しかし、加算が減らされて近所の付き合いもできなくなってきました」こうした実態が報告されています。

 そこで伺います。こうした人間らしいくらしを奪う生活保護基準の引き下げに、反対するべきと考えますがいかがですか。 知事の答弁を求めます。

 さて、生活保護の国庫負担削減をめぐる国と地方の対立は、国が今年度国庫負担削減を見送ることで、一応決着がつきました。しかし、その背景には、12月1日の国と地方の生活保護の適正化推進確認書があります。しかし、今でも適正化の名の下で、本来生活保護を受けることができる人が受けられないといった人権侵害が多発しています。

 国は、国庫負担の維持と引き換えに更なる適正化を地方に求めているものであり、許せない問題です。また、確認書に先立って発表された、昨年11月の全国知事会と全国市長会の、「生活保護制度等の基本と検討すべき課題」とされる提言にも、見過ごせない問題がありますので知事の見解を伺います。

 提言には、「生活保護制度の根源的責任」として憲法第25条の理念に基づき、国の責任において実施するべきであること。また、健康で文化的な最低限度の生活を保障される機会や最低限度の生活水準の内容については、地域あるいは個人によって、実質的な差が生じることがあってはならない、とするなど積極面も見られます。しかし、みすごせないのは次の2点です。

 第1の問題は、国民年金との均衡を図るとした上で、見直しを検討する。つまり生活保護の基準額をさらに引き下げることを提言していることです。

 そこで知事に伺います。満額支給されても66208円、平均受給額で4~5万円という国民年金を基準に生活保護を引き下げるのではなく、年金を引き上げるべきだとはお考えにならないのですか。お答えください。

 また、第2の問題は、有期保護制度の創設、つまり期限付きの生活保護を設けようというものであります。

 現在でも、違法に期限を切った生活保護行政が行われていますが、その結果は山科区生活保護廃止事件に象徴されています。栄養失調で衰弱し、生活保護を受けて入院された38歳のAさんが、退院翌日に生活保護を打ち切られ2ヵ月後の平成11年7月に遺体で発見されました。死因は餓死でした。ご両親が裁判を起こされ、平成17年4月28日に京都地裁で判決が下りました。判決文では「山科福祉事務所長は『入院中のみ保護』との方針を採って、退院後のAさんの生活について、なんらの配慮もせず、違法に生活保護を廃止した」と行政の方針を厳しく断罪しています。

 本来生活保護は、保護を必要としなくなったときに廃止するものであり、期限を切って実施するものではありません。有期保護制度が創設されれば、憲法と生活保護法で保障された生存権が侵害され、第2、第3の山科事件が起こっても不思議ではありません。

 そこで伺います。生存権を侵害するおそれのある有期保護制度の創設に、知事は賛成をされたのですか。お答えください。

【知事】  生活保護制度については、生活に困窮する全ての国民に、国が責任を持ってナショナルミニマムとしての生活を保障すべきものです。これは、地域の裁量や工夫によってという話しではない。基準について、国に於いて一般低所得世帯との均衡を考慮して、適正な水準の決定が行われるべきであり、国民のセーフティーネットとしての役割を果たすことが出来るものでなければならないという考えです。

【保険福祉部長】  昨年11月の全国知事会、全国市長会の生活保護についての提言は、三位一体改革にかかる国と地方の協議の場で、国の負担割合見直し案に反対する立場から提出されたものです。その提言の中で、年金制度と生活保護水準との関係や有期保護制度については、検討課題とされているところであり、国との協議は打ち切られたものの、全国知事会と全国市長会において検討を深めるとともに、地方自治体と検討していく場を開催するよう、近々国に対して要請することになっており、その中で京都府としても意見を申し述べていきたいと考えている。

【山内】  知事は、当たり前のことだが、生活保護基準は国が設定するものだと言われました。当たり前のことですが、今、大変不十分な国民年金で、十分な医療を受けることが出来ない高齢者の生活実態をご存知なのか。国が決めたことだということで、府民の生活の厳しさには目をつぶっておられるのでしょうか。また、私は全国知事会の提言について、知事に対して質問をしましたが、知事の答弁がございませんでした。保健福祉部長は、今検討中だと言って答弁を避けられましたが、京都府として、こうした有期保護制度の創設に対して反対をせよという立場で意見をあげていないのか、再度質問します。

【保健福祉部長】  年金制度との関係であるとか、有期保護制度の問題については、全国知事会でこれから検討組織を設けた上で、これから国と検討すべき課題とされているところであり、これから私どもも十分に、検討の意見を申し述べていきたいと考えている。

【山内】  知事も答弁に立たれなかったし、保健福祉部長もまともに答弁されませんでした。一体、知事会でどういう検討が行われ、京都府としてどの様な意見をいっていくのかということが、全くはっきりしなかった。逃げたというふうに思います。

府立高校のアスベスト対策/子ども・教職員の安全と健康を守る責任を果たせ

【山内】  次に府立高校のアスベスト対策について伺います。

 昨年、府立高校の教室などで一般大気中の濃度の10倍から30倍ものアスベストが検出されていたことが、明らかになりました。現在の大気1リットル中のアスベスト濃度は、本府の調査では宇治総合庁舎の敷地で0,4本、長岡京市役所で0.36本、国道沿線で0.5本から0.6本の水準です。

 ところが、昨年12月6日に発表された調査結果によりますと、大気濃度が工業高校で9.6本、加悦谷高校で7.8本、大江高校で7.6本、東舞鶴高校浮島分校で5.8本、田辺高校で3.4本と、5校で大気中のアスベスト濃度が非常に高いことが判明しました。ところが、立ち入り禁止の措置がとられたのは吹き付け材のアスベスト含有率が高かった桃山高校と、劣化が確認された城南高校体育館のみで、大気濃度が高かった5校については1月末の対策工事が始まるまで、立ち入り禁止の措置も取られず、使用が継続されたのです。何よりも安全と子どもたち、教職員の健康が守られなければならない学校で、なぜすぐに立ち入り禁止の措置がとられず、対策工事が始まるまで放置されてきたのか。それは府教委が、これまで大気汚染防止法で定められたアスベスト工場の敷地境界線の規制濃度の、1リットル10本を基準にし、それ以下だから安全だ、という立場に立っていたからではありませんか。

 しかし、アスベスト濃度が1リットル1本の空気を50年間呼吸したときの肺がん・中皮腫の発生率は、アメリカの環境保護局によると10万人あたり51人、がん研究所で88人としています。またWHOの「環境と健康に関わる諸評価」という文書には「単純な安全基準評価はアスベストにとって不可能である」と述べられているのです。そこで教育長に伺います。第1に、これからも1リットル中10本以下なら、安全だとの認識をもたれるのですか。また、立ち入り禁止にされなかった根拠をお示しください。 第2に、大気中のアスベストが一般大気中の濃度を上回ったところについては、生徒と教職員等を対象に健康診断を実施するべきと考えますが、いかがですか。お答えください。

【教育長】  府立高校のアスベスト問題ですが、吹きつけアスベストが確認された全施設について、府教育委員会として児童生徒への健康への配慮から、いち早く粉塵濃度調査を行ったものであります。その結果、いずれの施設においても、アスベストの本数については、国会の場でも再三に説明されている、世界保健機構の環境保健クライテリア、即ち1リットル中10本程度までは、危険度は判別出来ないほど小さいとされていること等から、現時点で直ちに健康に懸念があるものとは考えていない。

 また、立ち入り禁止の措置については、こうした判断を基本としながら、劣化や損傷の状況も十分に考慮して、適切に判断してきたところであり、議員ご指摘の学校を含めて、年度内の早期の完了を目指し、現在、除去工事等の必要な対策工事に取り組んでいるところです。

 生徒と教職員の健康管理については、定期健康診断を実施しており、専門家からも日常的な健康観察を適切におこなうことが適切であるという意見をいただいているところから、特別な健康診断は予定していないが、生徒や教職員の不安を解消するために従来から設けている学校医等による健康相談の中でアスベストに関する相談もおこなっているところです。

【山内】  今、WHOの文章と国会の審議の中味をいわれたが、WHOの文書には、教育長が今いわれたすぐ下に、単純な安全基準評価は、アスベストにとって不可能だということがかかれているわけです。劣化、損傷がなくても、飛散が問題なわけですから、空気中の濃度が一般濃度より高ければ、飛散していると考えて、措置をとることが当たり前ではないでしょうか。

 兵庫県では、1988年から16年間、38のアスベスト事業所の敷地境界線の濃度測定をされていますが、1リットル1本を越えたのは3回だけです。しかも、最高でも2.2本なのです。そうしたところよりも大幅に高い数値が学校の、それも教室ででたのです。府教委は成長期の生徒の安心・安全をおろそかにしたのです。大問題です。そのことを厳しく指摘して、次の質問に移ります。

発達保障に大きな役割を果たしている寄宿舎を/新設する養護学校へ設置せよ

【山内】  次に、府立養護学校の寄宿舎問題について伺います。

 障害のある子どもの子育ては、介助が必要不可欠のためどうしても親子関係が密接になりがちですし、思春期の問題や葛藤などは、障害があることでよりいっそうの困難さを伴います。

 学校教育法には盲・聾・養護学校には寄宿舎を設けなければならない。ただし、特別の事情のあるときは、これを設けないことができる」と定められています。昨年の12月の議会答弁で、教育長は「新設する養護学校は自宅からの通学が可能」として寄宿舎を設置することを拒否されました。しかし、寄宿舎は単に「通学保障」にとどまらず、子どもたちの発達保障に大きな役割を果たしているのです。

 京都府では1979年に養護学校が義務化されましたが、それに先駆けて、重度、重複障害児にも権利としての教育を保障するために養護学校を建設し、あわせて寄宿舎も設置してきました。

 向日が丘養護学校は1969年に開校し、その5ヵ月後には寄宿舎が開設されました。当時の運営方針には、寄宿舎が学校とともに障害を持った子どもたちの人間的発達を保障する教育・訓練・集団生活の場であること、また家庭的雰囲気を大切にし、自らが身辺自立、社会的自立へ向かって互いに生活を開拓し、自己を実現していく生活指導を進めること、また学校の中に寄宿舎の位置づけを明らかにしていくことなどが掲げられ、1976年には同校の寄宿舎で中学3年生13人全員の通年入舎が取り組まれたり、短期入舎形態の追求など、必要な時期に必要な期間、寄宿舎教育を保障してきました。本府の障害児教育と寄宿舎教育は全国的にみても高い実践と研究を行ってきましたし、全国にも大きな影響を与えてきたのです。

 文科省の「21世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議」の最終報告書には「盲・聾・養護学校の寄宿舎は、入舎した障害のある児童生徒等が毎日の生活を営みながら、生活のリズムをつくるなど生活基盤を整え、自立し社会参加する力を培う重要な場」と位置づけ、寄宿舎の教育的意義を評価し、環境整備の必要性について言及しています。

 寄宿舎に子どもを入舎させたことのある保護者の声をいくつか紹介します。

 「以前はテレビやゲームがお友達だった。中学部から入舎しましたが、家に帰ってくると変化があり、自分のことは自分でするようになりました。」とか「高1の寄宿舎に入れていただきました。家ではパニックになったとき、兄弟を倒したり、首を絞めたりしたので怖がり、逆らわないようになりました。そんな中、寄宿舎で『順番』ということを指導していただいています」という声、また「母親が入院したときも、寄宿舎のおかげで離れた施設にいくことなく乗り切れた」といった声などからわかるように、寄宿舎の役割は通学保障にとどまらず、生活保障であり、また発達保障の場でもあるのです。

 そこで伺います。今後新設する養護学校には寄宿舎を設置するべきと考えますがいかがですか。

【教育長】  養護学校の寄宿舎は、遠距離などの理由で自宅から通学できない児童生徒が、支障なく学べるように設置しているものです。宇治市と八幡市に新設する養護学校は、自宅からの通学が十分に可能となっており、寄宿舎の設置は考えていない。また、府立養護学校では、寄宿舎の有無に関わらず、日常生活の指導等の授業や宿泊学習等を通じて、児童生徒の自立に向けた取り組みとすすめており、新設養護学校においても、地域社会で育てるという視点を大切にしながら、家庭との連携を図り、学校教育の中で自立し、社会参加する力を十分に育成していきたいと考えている。

【山内】  養護学校については今までと全く同じ答弁でした。しかし、京都府も府教委もよく一人ひとりのニーズに応じてという言葉を使われます。養護学校に子どもを通わせている保護者のニーズが寄宿舎なのです。障害のある子どもたちの発達保障よりも、安上がりの教育・経営の視点で寄宿舎を切り捨てようとしているのではありませんか。

 京都の障害児教育は、障害を持つ子どもの発達にとって何が必要なのか、あきらかにしながら全国に先駆けて寄宿舎教育に取り組み、国をひっぱってきたのです。本府には誇るべき蓄積があるのです。その蓄積をいかしてこそ、全国に誇る養護学校ができるのです。新しくできる養護学校には、寄宿舎をぜひともつくられるよう強く要望します。

全ての子どもが教育を受けられるよう府は役割を果たせ

【山内】  続いて就学援助について伺います。

 親のリストラや収入減など、経済的な理由で就学援助を利用する世帯は、全国的にも増加しており、京都では受給率が、15.7%と全国平均を上回っています。京都教職員組合が、不況による児童・生徒への影響調査を行っておられますが、「パートにでかけるため、夜も子どもだけの世帯がある」「家賃が払えずに転校した児童がいる」「修学旅行費が払えず、参加を取りやめた生徒がいる」などの状況が報告されています。保護者の生活困難が増大するもとで、子どもたちの就学と成長にも困難が増大しているのです。

 就学援助は、こうした児童・生徒に憲法で定められた「教育権」及び、学校教育法第25条で定められた教育の機会均等を保障するためになくてはならない制度です。ところが国は、今年度から就学援助の国庫補助金を準要保護に関して、一般財源化してしまいました。こうしたことによって、すでに全国各地で、受給要件の見直しや廃止を検討するなどの動きが出ています。京都でも同様な事態が懸念されます。

 また、現在でも就学援助の申請に、民生委員さんの印鑑がいるなど、慈恵的、恩恵的な運用を行っている自治体もありますが、これはやめるべきではないかと思いますが、いかがですか。

 また、支給対象者の客観的な判断基準が明らかになっていない自治体も多く、給食費を滞納している子どもの多くの家庭が、就学援助をうけていないという事例もあります。本制度が、教育の機会均等を保障するという本来の役割を果たすことができるよう、市町村と協力して、万全を期すべきではありませんか。また、支給対象者の客観的な判断基準を明らかにし、本府の授業料減免基準が、生活保護基準の1.5倍であることからして、せめて、同程度の基準を設けるべきと考えますが、いかがですか。お答えください。

【教育長】  就学援助については、国の三位一体改革により、準要保護児童生徒援助費補助金が本年度から廃止されましたが、所得譲与税や地方交付税により市町村への財源措置がなされたところであり、全ての市町村教育委員会において引き続き学用品費や修学旅行費等必要な援助が実施されているところです。支給対象者に関わる認定基準や申請の際に、民生委員等の意見を聞くことについては、援助義務者である市町村教育委員会において定められるべきものであり、それぞれ生活保護法の基準を一定目安にしたり、児童生徒の日常生活、家庭状況等を総合的に勘案するなど、より地域の実情に即した就学援助となるよう適切に対応されている。

【山内】  就学援助について、東大の苅谷教授は「教育環境が義務教育段階でこんなに差があって、次世代の社会はどうなってしまうのか。こうした中で、国は補助金を一般財源化した。今後、自治体が財政難を理由に切り捨てを進めるおそれもある。機会の均等もなし崩しになっては、公正な競争社会とは呼べない。」と指摘されています。父親がリストラされたとか、一時金が入ってこなくなった、今の小泉構造改革のもとで、保護者の生活が大変な困難を極めている。一方では、私立の小学校ができて、そこではプリンスホテルが給食をつくるというような、小学校、義務教育の段階から格差が拡大してきているわけです。そうした中で、市町村と協力して教育の機会均等が崩されないようにするのは、京都府の役割ではないでしょうか。

 私の質問を終わらせて頂きます。ご静聴ありがとうございました。