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議会を終えて(談話)

京都府議会2月定例会を終えて(談話)

2006/03/13 更新
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京都府議会2月定例会を終えて(談話)
2006年3月13日
日本共産党京都府議会議員団
団長 松尾  孝

 2月定例会が3月10日に閉会した。わが党議員団は、「民主府政の会」に寄せられた3万通を越える府民アンケートなどに示された切実な府民要求実現を求めて奮闘するとともに、まもなく任期を終える山田府政4年間が、府政と府民に何をもたらしたかを明らかにする論戦を行った。
 提案された06年度予算案関連など112件の議案のうち、ムダづかいを継続し、府民に犠牲と負担を押し付ける一般会計予算案や、「呑竜計画」をすすめる流域下水道事業会計予算案、ムダな和田埠頭建設の港湾事業会計予算案、乙訓地域に高い府営水を押しつける水道事業会計予算案と、市町村自治に介入する仕組みづくりである「京都府・市町村行財致連携推進審議会殷殷条例」の5件に反対し、他の議案には賛成した。

1、今議会の最大の特徴は、論戦を通じて山田府政の行き詰まりと破綻が、いっそう鮮明になったことである。
 知事の最大の「売り」であった「安心安全」が破綻し、知事の言う「安心安全」が、逆に府民の安全を危うくし、不安を拡大するものであることが明らかとなった。
 耐震強度偽装事件や加茂町におけるフェロシルト埋設事件への対応で、当初の「安全宣言」をあいついで撒回したように、まともな対応をしていなかったことが明らかとなった。これらについて知事は「国のマニュアルどおりおこなった」「信頼を裏切られる事態」とその責任を国と企業に押し付ける弁解の答弁を行ったが、いずれも最初から府民の安全に責任を持つ姿勢で対処していれば、このような事態は起こらなかったのである。これには自民党も代表質問で「より慎重な判断と迅速な対応が求められた」と指摘せざるを得なかった。
 そのうえ、加茂町ではボーリング調査の結果、フェロシルトの下に産業廃棄物が埋設されていることが明らかとなり、これについても府は「検査した結果安全」と発表したが、揮発性物質の検査が、全く不適切であったことが判明し、議会でこれを認め。再調査を約束せざるを得なかった。
 また、舞鶴における鉛精製工場「日本海精錬」周辺の土壌調査の結果、基準値の28倍、11倍の鉛が検出された。これについて理事者は、わが党議員の繰り返しての検査結果の早期公表の求めに対し、「分析中」と遅らせ、閉会本会議中に記者発表した。これは議会軽視であり、まったく許されないものである。しかも、「人の健康にかかる被害が生ずる恐れがあるもの」として定められている基準値より、はるかに高い数値が明らかとなっているにかかわらず、「多量に土を食べるようなことをしない限り、ただちに健康に影響を及ぼすようなレベルでなかった」と発表した。これは、市民の不安を無視したものである。
 当該工場は、これまでから適正な廃水処理がおこなわれず、鉛が基準値の6400倍、1600倍検出されてきたこと、「舞鶴引揚げ記念館」職員などが、喉の痛みを訴えてきたにも関わらず放置してきたこと、さらに都市計画法や建築基準法に違反した工場拡張建設を行っていたことなど、繰り返し問題になってきたものである。ところが本府は、「操業停止」など住民の「安全第一」の対策をとらず、解決を先送りしてきたもので、府の責任は極めて重大である。
 今回の調査結果からも、これ以上、大気と土壌、海水の汚染を拡大しないためにも、京都府がただちに「操業停止」措置をとり、いっそうの徹底した調査と適切な汚染土壌への対策、海底の浚渫、さらには周辺住民の健康診断など、住民の安全第一の対策をとることを強く求めるものである。
 城陽の山砂利採取跡地への産業廃棄物埋設事件でも、京田辺市で「産廃」を不法投棄したとして逮捕された業者が「同じものを山砂利採取地に埋め戻した」といっているにかかわらず、府は「産廃」としての認定を避け続け、撤去命令をだしていない。しかし、今議会でのわが党議員の追及で、知事も「告発も含め厳正に対処する」と答弁せざるをえなかった。
 また、わが党議員団は、土木事務所の統廃合によって舞鶴土木事務所がなくなり、わずか6人の駐在体制となったことが台風23号による対応に遅れをもたらしたことを指摘してきたが、今議会では地元の自民党議員からも「市民の不安は消えない。組織の見直しが考えられないか」との声が出されるなど、山田知事のすすめる「府庁の構造改革」、「職員の大幅な削減」が府民の命と安全を危うくするものであることが示された。
 これら一連の事態は、山田知事の言う「安心安全」が、まったくの「偽装」ともいうべきもので、府民の安全を脅かし、不安を拡大するものであることを浮き彫りにした。

2、雇用対策についても、府民の願いに背を向けるものであることが明らかとなった。
 知事は、一昨年の完全失業率の改善幅が全国一となったと繰り返し宣伝してきたが、05年の結果は、「全国最悪」の完全失業率の上昇幅となった。また、有効求人倍率が「1.00となった」としているが、パートなど不安定雇用の求人が、増大した結果であることも明らかである。
 今日の雇用問題は、大企業が正規雇用を非正規雇用に置き換え、労働者を低賃金と無権利、「使い捨て」にしていることにある。とくに青年の2人に一人が非正規雇用であり、年収150万円以下が8割も占め、「結婚も、子どもを生むことも出来ない」事態を招くなど、日本社会に重大な問題を引き起こしている。
 このように増大する「派遣労働者の実態調査を行うべき」との追求に「『費用対効果』を考え、実施しない」と答弁し、「府が補助金を出している誘致企業には一定割合で府内新卒者の採用や正規雇用、常用雇用を義務付けるべきではないか」とのわが党議員の提案にも「常用雇用を義務付けることは非現実的」と拒否、知事も「そんなことをして企業が来なくなってもいいのか」と開き直った。府が誘致し、多額の補助金を出そうとしている日産子会社・ジャトコや島津製作所では派遣労働や短期の契約社員が多くを占めているにかかわらず、これを促進するものである。
 これでは、府民の「雇用のための企業誘致」ではなく、「勝ち組」企業応援の補助金である。
 兵庫県知事が日本共産党議員の同様の質問に「雇用の質の確保に努める」と答弁したこととも大違いである。
 知事は、雇用対策として「ミスマッチの解消」をいうが、最大のミスマッチは、大企業が非正規雇用を求め、青年が正規雇用を求めているところにある。府は、これに対し「働き方の選べる社会」「企業ニーズや新しい技術に対応できる人材を育成」(中期ビジョン)としているように大企業の求めに応じた雇用対策をとっている。
 さらに、66社の企業誘致に成功したと自慢してきたが、雇用がもっとも深刻な北部地域、とくに舞鶴以北では、誘致企業はゼロで、企業誘致補助金が府民の願い実現に役立っていないことも明らかとなった。
 これには自民党議員が「不安定雇用も仕方がないというのは、方向性としてはどうか」と批判し、北部地域への企業誘致が進んでいないことへの不満の声も出され、府民との矛盾が深刻になっていることを示した。
 この論戦の過程で民主党議員は「終身雇用の時代は終わった。正規雇用を求める考え方は時代にそぐわない」と大企業の代弁者の発言で知事を擁護したが、これはいま批判を受けている「格差と貧困」を拡大し、「勝ち組・負け組」をつくる新自由主義・「小泉改革」そのもので、民主党が府民生活の実態とかけ離れた政党であることを示したものである。これは府民の厳しい批判を受けざるを得ない。

3、医師不足や公的病院の「縮小廃止」など、北部地域医療の深刻な事態についても山田知事の責任が重大であることが明らかとなった。
 京丹後市立弥栄病院や舞鶴医療センターで、産婦人科医の相次ぐ退職で4月から分娩予約が受け入れられなくなっている事態や、舞鶴市長による市民病院の突然の縮小・民間委託発表など、北部地域では安心して子どもを生むことも、安心して医療を受けることも出来ないという深刻な事態を引き起こしている。
 ところが府は地元関係者からの医師確保・派遣の要請に「地元で主体的な検討をされている」とまともに答えようとせず、「北部医療対策協議会」も04年秋に設置したものの、それ以後一回も開催していないことが明らかとなった。わが党議員が医師派遣など緊急対策を求めたのに対し知事は「緊急、緊急といわれるが何をせよというのか」と居直り、地元関係者の願いに全く背を向ける答弁を行った。
 また、北部地域医療の深刻な事態は、知事が「経営の視点」から洛東病院の廃止を強行し、「市町村経営改革シート」で、自治体病院の「統廃合・経営委譲の検討」を求めていることが、それを加速している。これは国・総務省の方針どおり「住民の命綱」である自治体病院を平気でつぶすという山田府政の反府民的性格を端的に示すものである。
 自民党議員が知事や舞鶴市長を擁護するため、北部地域での医師不足の原因は「医師、とりわけその奥方の考えに問題がある」とした発言は許されるものではない。
 わが党議員団は、住民の命と健康を守るため北部地域での医師確保や自治体病院を守るため住民とともに全力を尽くすものである。

4、また、府民の切実な願いに背を向ける知事の道理のなさも今議会を通じてますます明らかとなった。
 子どもの医療費助成の拡充は、多くの府民の願いとなっており、これに真剣に取り組むかどうかは少子化対策の試金石ともなっている。すでに府内で京都市、綾部市、舞鶴市を除く自治体で府の制度への上積みを行い、市町村長からも「地域的格差が生じないように」との要望も毎年だされている。ところが知事は、今回提案した予算案でも拡充しなかった。
 しかも、知事は「全国トップクラス」と繰り返し答弁しているが、すでに就学前まで助成していた東京都が所得制銀をなくし、栃木県は小学校3年生まで無料にする、和歌山県でも就学前まで助成を拡充しており、このいい訳は、時代遅れとなっている。
 今議会では、自民党も「国の見直しも視野に、更なる拡充を」、公明党も「子育て世代の願いにしっかり答えるよう拡充を」求めた。民主党も「府政検証レポート」で「就学前まで引上げること」を求めた。これらの会派は、12月議会では5000人の請願を拒否し、わが党議員団提案の「拡充を求める決議案」を否決したのである。ここには知事も与党会派の主張もまったく道理がなく、いまや世論と運動によって追い詰められている姿が浮き彫りとなっている。
 少人数学級の実現についても、すでに文科省の調査でも、その教育効果が明らかであるにかかわらず、教育長は子どもたちを「できる子・できない子」にわける「京都式少人数授業」に固執し、「少人数学級も現場で選択できる」と答弁したが、実態は少人数学級の実施に圧力をかけ、「少人数」のための加配教員782人中、「少人数学級」のためには、たったの68人しか配置していない。
 年金の引き下げや医療改悪、介護保険料の値上げなど高齢者の生活と将来不安はますます大きくなっているにかかわらず、知事は、医療改悪に対して「国が決めること」「国が決めたことは尊重する義務を負っている」と、府民の暮らしに、まったく心を寄せない態度をとった。また、酸素療法患者負担軽減措置についても「国に要望している」と背を向け続けた。全国知事会が導入を求めている生活保護への「有期保護制度」について、「知事は賛成したのかどうか」の問いに対し、知事は答弁を避け、理事者が「これから国において検討されること」と責任逃れの答弁を行った。
 山田知事は「府民目線」を強調するが、これらは「府民目線」とは程遠い府政の実態を示すものである。
 自民党は討論で「冷たい府政」との批判に対し、「乳幼児医療を拡充するなど山田府政は府民にあたたかい府政だ」と弁護したが、こうした願いに応えてこそ、暖かい府政と言えるのである。

5、知事は府民の願いには背を向けながらムダと環境破壊の大型公共事業は継続しているが、その破綻も明らかとなった。
 舞鶴の和田埠頭建設は過大な貨物取扱量の予測にもとづいて建設しており、05年の予測量1940万トンに対し、04年の実績は834万トンと半分以下である。知事は11月の決算総括でこれをただされ、「鶏が先か、卵が先か」と、和田埠頭が完成したら貨物量が増えるかのような答弁で言い逃れをした。しかし、今議会で自民党議員から「500億円もかけて整備しても、貨物が集まりにくい。十分活用することができない。明るい展望があれば教えてほしい」と問われたように、和田埠頭が完成しても貨物量が大幅に増える見込みがないことは明らかである。
 また、市内高速道路について阪神道路公団が撤退した「斜久世橋区間」について、京都市の都市街路事業に前例のない補助金を出す予算を提案した。これは「府市一体」で環境と景観破壊、むだづかいをすすめるものである。
 こうしたムダづかいを継続し、借金を増やし続けた結果、府債残高は一般会計予算規模の1・6倍、1兆3000億円をこえた。山田知事4年間でも2200億円も増えているのである。府財政を困難にさせ、そのツケを府民に押し付けることとなるムダな公共事業こそきっぱりと中止すべきである。

6、「障害者自立支援法」によって、障害者に大きな負担を負わせる「応益負担」が4月から実施されることにともなって、「自己負担」を一定軽減する措置が提案された。これはわが党議員団が、知事の「受益と負担」という「応益負担」と同様の考えをきびしく批判してきたこと、障害者団体など関係者の大きな運動の前進のもとで実現したものである。
 また、児童の安全を守るため「見守り隊」への資材提供などの予算が提案された。これもわが党議員団が昨年末に申し入れた「緊急提言」が一定実ったものである。しかし、本格的な児童の安全を守るための対策にはほど遠く、今後とも関係者と力を合わせて「学校安全職員」の配置実現や社会の病理現象の克服など、その実現に全力をあげるものである。
 また、「中小企業地球温暖化対策応援事業」として、重油高騰のもとガスなど代替エネルギーへの転換補助制度や、長期療養児への家族の付き添い支援、発達障害児教育のための教員確保など、関係者の運動と議会でのわが党議員団が要求してきた課題が実現した。今後とも、府民要求の実現に向け奮闘するものである。

7、知事は、京都府をなくすこととなる「道州制」について、「このすばらしい京都府、京都府民を愛することについては人後に落ちないと自負している」と答弁したが、これほど白々しい答弁はない。知事はこれまで、「道州制についてスケジュール感を持って」「関西州は現実的」など、京都府をなくすことについて、熱心に発言してきた。これを大あわてで覆い隠そうとするものである。
 また、今議会に知事が提案した「市町村行財政推進審議会設置条例」は、市町村の自治を踏みにじり、合併の構想を知事が示して、市町村に押しつけようとするものである。しかも、住民への負担と犠牲を押しつけるリストラを、「審議会の答申」によって、市町村に押しつけようとするものである。山田知事がいくら「京都を愛している」「市町村自治の尊重」を口にしても、地方自治の破壊者であることを覆い隠すことはできない。

8、提案された議案に「指定管理者指定」関連議案が、31件あった。わが党議員団は、指定管理者制度導入にあたって、これが自治体の公的責任を放棄し、民間企業へ市場開放するものであること、低賃金・雇用不安を拡大するものであることをきびしく指摘し反対した。今回の指定管理者の指定は、こうしたわが党議員団の追及もとで、ほとんどがこれまでの管理運営団体に継続することとなったことから賛成した。さらに、今議会でこれによって低賃金と不安定雇用の拡大にならないよう求めたもとで、理事者は「雇用状況についても、事業実績報告書に入れることを検討する」旨、答弁した。わが党議員団は、今後とも公的施設の適切な運営と低賃金・無権利な労働者を拡大することのないようきびしく監視していくものである。

9、わが党議員団は、「アメリカ産牛肉輸入に関し、アメリカ政府に厳正な対処を求める意見書案」。「郵便局の再編に関する意見書案」、「医療制度『改革』法案の撤回を求める意見書案」、「医師確保対策の抜本的拡充を求める決議案」、「京都府の安定雇用の拡大に関する決議案」の5件を提案した。いずれも府民の切実な願いに応えるためのものであるにかかわらず、与党会派は、すべてこれを否決した。
 しかし、これは、これらの会派が府民の切実な願いに背を向けるものであることを示すだけであり、府民のきびしい批判を受けざるを得ない。与党会派からは「抜本的な都市農業振興策の確立を求める意見書案」が提案され、わが党議員団は都市計画区域内農地への農業振興施策の充実や宅地並み課税をやめることなど、より本格的な対策が必要であることを指摘し賛成した。

10、今議会開会中に、京丹後市長が関西電力に対し、久美浜原発建設の「事前環境調査申し入れ」の「撤回」を求め、関西電力も「建設断念」を表明した。これは30年来にわたる地元住民をはじめ多くの住民の粘り強いたたかいの成果である。府議会での論戦や住民との共同など、ともにたたかってきたわが党議員団としても、住民と喜びを共にするものである。今後は、地元関係地域の振興のため、京丹後市とともに関西電力と京都府が支援するよう強く求めるものである。

11、今議会で府議会議員の「費用弁償規定」の見直しが行われた。これは昨年来、わが党議員団の「現行の費用弁償は、実費支給の原則から大きくはずれている。本来の実費支給となるよう改正すべき」との提案をもとに、全会派による「研究会」で検討されてきたものである。
 現行の費用弁償は、1日11300円と京都市外の交通実費となっている。わが党議員団は、あくまで「交通実費のみとすべき」と主張したが、他会派の同意が得られず、旅費規程に基づいて「公務諸費3000円」と「交通実費」とすることとなった。
 わが党議員団は、これを「改善への一歩」として賛成したが、今後ともいっそうの改善めざし奮闘するものである。

 いよいよ、知事選挙の告示が目前に迫っている。今度の知事選挙は、「府民の暮らしも京都もこわす山田府政」を継続するのか、それとも、初の「女性知事・憲法知事・衣笠洋子知事の実現で、府民と心のかようあたたかい府政」をつくるのかが、問われている。わが党議員団は、広範な府民とともに、衣笠知事実現に全力をつくす決意である。

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