6月定例府議会を終えて(談話)
団長 松尾 孝
山田府政二期目最初の本格的議会である6月定例会は、6月29日に開会され、7月14日閉会した。
わが党議員団は、高齢者の生存権を奪う住民税や国保料の大幅な値上げ、医療制度改悪や「自立支援法」実施による障害者への負担増の実態を明らかにし、府民の暮らしと命を守ることや、北部地域の医師確保、京都の農業と農村をつぶす「品目横断的経営安定対策」に対応した農業施策の確立、「舞鶴・日本海精錬」の公害問題など、知事選挙で寄せられた3万人アンケートと府民の願いをもとに要求実現のため奮闘した。
今議会には、「骨格的予算」の当初予算に「肉付け」する補正予算案とともに、「府税条例改正案」など15議案と教育委員、監査委員、公安委員の選任議案が提出され、わが党議員団は、府民税の定率減税を廃止し、法人事業税減税を恒久化する「府税条例改正案」、山城地域の高校統廃合を進めるための「府立高校等設置条例改正案」、木津町・山城町・加茂町を廃止・統合し、木津川市とする「市町の配置分合の件」の3件に反対し、他の議案には賛成した。
1、今議会開会中の7月5日未明に、北朝鮮がミサイルを発射したことに対し、府議会は各会派が一致して、「北朝鮮ミサイル発射に抗議する緊急決議」を採択した。北朝鮮のミサイル発射は、日朝平壌宣言に反するとともに、六者協議の共同声明とも相容れないものであり、国際ルールをも無視したもので許されるものではない。わが党議員団は、「緊急決議」の共同提案者になるとともに、梅木議員の代表質問でも厳重な抗議の意思を表明した。
今後とも北東アジアの平和と安定のため、北朝鮮が日朝平壌宣言の合意と国際ルールを守り、六カ国協議による話し合いによる解決を強く求めるものである。
2、今議会に提案された補正予算案は、府民のねばりづよい運動と府議会でのわが党議員団の論戦、そして知事選挙での衣笠候補の健闘が反映し、府民要求が一定実現した。
知事選挙でも大きな争点となった北部の医師不足問題で、これまでは「医師確保は設置者の責任」としてきたが、今回、府の「医師バンク」を通じて、医大や日赤から弥栄病院に産科医師を派遣することとなり、7月18日から産科の診療が再開された。
わが党議員団が12月に提言した「子どもたちの安全確保対策」として要求していた通学路等の安全確保対策として「小学生の通学路の安全確保、歩道のバリアフリー化など」の予算が10億円計上された。
中小企業対策でも、北部地域の中小企業支援のため、北部センターの設置を長年求めてきたが、今回、綾部と京丹後市に支援拠点を設置することとなった。また、中小企業への融資にともなう保証料についても、経営困難な企業ほど保証料が高くなる仕組みに変えられたもとで、保証料軽減措置を求めてきたが、「商工会・商工会議所の経営指導を受けること」を条件にした軽減措置がとられた。わが党議員団は、これが商工会・商工会議所未加入事業者を排除することがないよう求め、部長は「すべての事業者を対象にする」と答弁した。
農林業の分野においても、作業受託組織等の機械購入補助の制度がつくられた。これは国の「品目横断的経営安定対策」の実施に伴うものではあるが、これまで認めてこなかった更新も対象にするものである。府内産木材を活用した住宅建設に対し、これまで利子補給制度しかなかったが、年間利用者が1~2件という状況にあり、わが党議員団は「補助制度」とするよう求めてきたが、今回「緑の交付金制度」として実施されることとなった。
このほか、府立医科大学を「がん診療連携拠点病院」とし、機能の整備を図るとともに、「がん対策戦略推進会議」を設置することや吉田母子寮や婦人相談所の建て替えを含む家庭支援総合センターの整備計画予算が計上された。
これらは府民の願いに一定応えたものであり、知事選挙や住民運動など、たたかってこそ府民の願いが実現することを示すものである。
しかし、子どもの医療費助成の拡充について、知事は1月の記者会見で「補正で対応」と発言し、マニフェストに「拡充」を掲げながら「検討費」を計上するにとどまった。すでに京都市など一部の市をのぞいて、ほとんどの自治体で拡充しているにかかわらず、「市町村との協議が必要」と先送りしたことは知事の責任が問われる問題である。しかも、公明党は討論で08年4月からの「国の制度改定によって財源が生まれる。この財源を活用して」と先送りする知事を助ける質問を行った。この党が府民の切実な願いに背を向けるものであることがあらためて明らかとなった。
住宅耐震改修助成についても知事はマニフェストに掲げたが、今回の補正予算案では、具体化がされていない。わが党議員団は、子どもの医療費助成の拡充、住宅耐震改修助成の早期実現めざし、関係者のみなさんととともに奮闘するもである。
また、補正予算案では、「経営改革の推進」として、事務・事業を民間企業など外部に丸投げするアウトソーシング推進予算や事業を採算性、効率性の観点だけから切り捨てる「事業仕分け」実施の予算が計上されている。わが党議員団は、ムダを省き、効率的行政運営は当然ではあるが、公的責任を投げ捨て、不安定雇用の拡大をすすめるアウトソーシングには反対の立場をとるとともに、「事業仕分け」が住民の暮らしを支える施策を切り捨てるためのものであることをきびしく指摘した。
3、6月に住民税納税通知書が届けられ、連日各市役所や区役所に多くの高齢者が押しかける事態となっている。これは、自民・公明が強行した老年者控除の廃止、公的年金控除の縮小、高齢者の非課税限度額の廃止、定率減税の半減が、高齢者に耐えがたい痛みを押し付け、生きる権利すら奪うものであることを示すものである。わが党議員団は代表質問で、このような負担増を知事はどう受け止めているのか、ただちに中止し、今後実施予定の負担増を凍結・見直しを行うよう国に要求するよう求めた。ところが知事は、これまでと同様に「受益と負担のあり方も含めて総合的に議論され、税制や社会保障全般にわたり大きな改革がすすめられている」と負担増を当然視し、「大企業や大銀行に応分の負担を求める」ことは、一言も言わなかった。
それどころか、国と同様に「住民税の定率減税の廃止、法人事業税減税の恒久化」のための「府税条例改正案」を提案した。
今議会には、年金者組合から「高齢者への住民税などの大増税の撤回を求める請願」が提出されたが、自民・民主・公明・新政会の与党会派の反対で不採択とされた。この審議の中で自民党委員は「生活苦というほどの負担増ではない」「年金は十分貯金にまわせる」旨の、高齢者の生活実態にまったく背をむけた発言を行った。わが党提案の「高齢者への住民税などの大増税の中止を求める意見書案」もオール与党会派は否決した。民主党は、国会では定率減税の廃止などに反対したが、府議会では自民・公明とまったく一体で、負担増を押し付ける立場にたっていることを示した。
今日、高齢者の生存権すら奪う負担増に立ち向かい、暮らしを守るのは、わが党しかないことが浮き彫りになった。
4、先の国会で医療制度改悪関連法案が自民、公明によって可決されたが、これについても知事は「医療保険制度は社会全体で支えるという制度の趣旨から、高齢者にも負担していただく」と高齢者の負担増を当然視する答弁を行った。介護保険施設のホテルコスト負担についても「国の軽減措置の効果により、影響があまり見られなかった」と、負担増から退所を余儀なくされている利用者にまったく冷たい態度をとった。
さらに、療養病床の大幅削減によって、京都では、現在4000床ある介護型療養ベッドが全廃、医療型療養ベッドは3500床が2100床に減らされる。しかも、すでに診療報酬の改定により、療養ベッドが減少している事態にあるにかかわらず、知事は「医療機関で模索されている段階」という認識であったが、保険医協会のアンケート結果など深刻な事態を示す中で、保健福祉部長は「医療が必要な人が医療を受けられ、介護を必要な人が介護が受けられる、そういった立場で国に言うべきは言い、府としてやるべきはしっかりやっていく」と表明した。
わが党議員団は、広範な医療関係者や府民と共同して、医療制度改悪実施を中止させるため、引き続き奮闘するものである。
5、今議会では、教育基本法改悪についても重要な論戦となった。知事は教育基本法の改定について「新たな課題が深刻化している。こうした今日的な課題に対応するため改正案が提案された」と答弁したが、梅木議員の「愛国心の強制、学力テストの実施で競争を激しくする、教育に介入できるようにする。これが時代の要請というのか」との問に、「人を愛する、地域を愛する、家庭を愛し、国を愛し、世界の人々を愛していく、それを私ははっきりと時代の要請だと思っている」と教育基本法改悪論者であることを表明したが、「なぜ改定が必要なのか」にはまともに答えられなかった。
また「愛国心通知表」について、教育長は「子どもの内心に立ち入って国を愛する信条を持っているかどうかを直接的に評価するものではない。愛国心を評価するのは適切でないとの総理や文科大臣の答弁は私もそう思う」と答弁し、「愛国心の評価」はおこなっていないと弁明した。この立場にたつなら、学習指導要領にもとづく「愛国心通知表」は、見直し、廃止するのが当然である。
これらはいま自民・公明・民主がすすめようとする教育基本法の改悪が、知事のように教育基本法改悪論者であっても、その理由をまともに説明できないものであり、「愛国心」を教育の目標に掲げること公然と口にすることができないことを示している。
秋の臨時国会に向け、広範な府民の運動を広げ、教育基本法改悪を許さないたたかいの前進のためいっそう奮闘するものである。
6、補正予算で「2008年関西サミット京都誘致」のため当初予算450万円につづいて補正で600万円計上された。また府議会においても与党会派が提案して「誘致決議」が行われた。
サミットの開催時期は、6月若しくは7月であり、祇園祭の観光客や6月ピークの修学旅行客を事実上排除することになり、京都経済に多大な被害をもたらすことは明らかであり、しかも、警備のための警察官が2万人~2・5万人にも及び、車のトランクやバス乗客の手荷物まで検査されるなど、市民生活に被害をもたらすものである。また、誘致理由とされている「京都を世界に発信する」ことは、サミット開催に頼ることなく十分できるものである。
こうしたことから、わが党議員団は、関西サミットを京都に誘致する必要はないと、補正予算案と決議に反対した。
7、これまでから疑惑がもたれていた府警の捜査(報償)費のと活動旅費の裏金疑惑について、府警本部から「不正や不適正な支出はなかった」とする調査報告が行われた。99年度から02年度の捜査報償費では、現金支出された7億4千万円のうち4割以上が領収書がなく、99年度から01年度の捜査旅費約1億8600万円が捜査員に支払われず、プールされていたにかかわらず、そのすべてについて「不正はなかった」としてまく引きをはかろうとするものである。
わが党議員団はこれまでからこれらの支出が府警の「裏金」として使われていたのではないかと、北海道の事例などを示し、知事の要求に基づく「特別監査」を要求してきた。今回の調査報告は、識者からも「第三者機関による監査」を求められるなど、なんら府民の納得を得られるものではなく、「幕引きは許されない」として、わが党議員団はあらためて知事に「特別監査」の実施を求めた。
8、6月1日から「改正・道交法」が施行され、医療や介護関係事業所、運送や配達にかかわる零細な業者に大きな混乱をもたらし、「これでは仕事ができない」「違法駐車の取り締まりは当然だが、営業が成り立つようにしてほしい」と強い要望が出されている。
わが党議員団は、介護事業所や業者団体との懇談をもとに、駐車許可書の発行など運用にあたっては、実情にあったものとすることや申請処理の簡略化、プライバシーの保護など、府警に申し入れるとともに、関係常任委員会で改善策を求めた。
介護や看護の事業は、公益性が高いことからも、事業認可をしている保健福祉部が府警と協議し、安心して訪問看護や介護ができるよう求めた。また、業者についても、引っ越しなどと同様、5分以内に貨物の積み卸しができない業務については、駐車許可するよう商工部が府警と協議するよう求めた。しかし、保健福祉部も商工部も深刻な事態を掌握しておらず、実態と要望を掌握し、改善するよう求めた。
9、今議会には、新日本婦人の会からの「子どもの医療費の拡充に関する請願」「学校給食のパンに関する請願」や府学連からの「高額費問題」の3件の請願、京都医師会からの「医師確保対策に関する請願」など、7件の請願が提出された。
「医師確保対策に関する請願」は、深刻な医師不足問題の解決のためのものであり、全会派が一致して採択し、国への意見書も採択された。これは、この間の北部地域を中心とした深刻な医師不足問題が社会問題化するもとで、医師会が請願を出したものであり、今後とも関係者が力をあわせてとりくむことが求められている。
なお、この請願の取り扱いをめぐって、正副委員長が議会運営に関する申し合わせに反して、わが党を提案者からはずそうとしたが、こうした「ルールに反するやり方は認めない」とのわが党議員団の抗議で、是正が図られた。議会運営を党利党略でゆがめることは許されない。
その他の請願は、府民の切実な願いであるにかかわらず、与党会派はそろって拒否し、不採択とした。
わが党議員団は、提出された請願や府民の声に応えて「高齢者への負担増中止を求める意見書案」のほか、過疎地域の郵便局を統廃合につながる「集配郵便局の再編計画の撤回を求める意見書案」「医療制度改革関連法案の撤回と負担増中止を求める意見書案」、高等教育の高額費関連の3意見書案、「米国産牛肉の輸入再開に反対する意見書案」を提案し、採択のため積極的に討論を行ったが、与党会派はすべてに反対し、否決した。
集配郵便局の再編計画について、わが党議員団は、その撤回を求める意見書案を提出したが、与党会派これに反対し、「郵便局機能の維持とサービス堅持を求める意見書案」を提案した。わが党議員団は、機能維持、サービス堅持を求めている点で同趣旨であるとして賛成し、全会派一致で採択された。
また、弁護士会等から出された要望・陳情をもとに、高金利による貸付で多重債務者を作り出している出資法の上限金利を、利息制限法の制限金利まで引き下げることを求めるなどを内容とした意見書がわが党も含む全会派提案で可決された。
いよいよ来春のいっせい地方選挙にむけて、各党・候補の動きが激しくなっている。今議会の論戦を通じても、どの党がのびれば府民のいのち・暮らし・平和を守る力になるか、ますます明らかとなっている。また、与党会派が常任・特別委員会の正副委員長から、わが党を排除し続けているが、府民の声が大切にされ、行政へのチェック機関としての議会の役割を発揮するためにも、非民主的運営を打破する大きな議員団が求められている。
わが党議員団は、府民の願い実現のためいっそう奮闘するとともに、府議会の中での「いのち・暮らし・平和守る力」をさらに大きくするため奮闘するものである。
2006年6月定例府議会を終えて(談話)[PDFファイル 228KB]