9月定例会 久守 一敏府議の代表質問
日本共産党の久守一敏です。議員団を代表して通告にもとづき知事ならびに関係理事者に質問いたします。
さて、小泉政権が終わりました。5年余にわたる小泉政治は一体何だったのか。一言でいって、社会的格差と貧困の増大の中で国民に大変な痛みを押し付けた5年余だったのです。財界主導、アメリカ言いなりの構造改革路線のもとで、「改革なくして成長なし」、「聖域なしの規制緩和」、「官から民へ」、「小さな政府」、「地方行革」などを標榜し、雇用・賃金の破壊や社会保障の相次ぐ切捨て、負担増の押し付けなど、強きを助け、弱きをくじく政治を進めてきました。市町村合併と郵政民営化、農林漁業の破壊で地方の切り捨てもいっそう進みました。
その結果、純利益1,000億円を越える企業は、10年前のトヨタ、日立の2社から、43社にも膨れ、大企業はバブル期を上回る史上空前の儲けを上げているのです。
一方、中小零細企業は景気の回復はおろか、いまだに倒産が相次ぎ、勤労国民は7年連続の所得減に苦しんでいます。高齢者や障害者も苦しみに喘いでいるのです。
だからこそ、いま全国で、小泉構造改革をやめ、暮らし地域を守る政治への転換を求める声がますます強まっています。こうした小泉改革を継続する政権には未来はありません。以下、具体的問題で伺います。
深刻な青年の雇用問題。実態調査し、正規雇用の拡大に全力をつくせ
【久守】 まず、なかでも深刻なのは、青年の不安定雇用の問題です。
この問題では、とくにNHKテレビのドキュメンタリー「ワーキングプア」が、大きな話題となりました。20代から派遣労働を続けてきた青年が、30代に入って失業してホームレスになり、努力してもそこから抜け出せなくなっている場面では、本当に胸が締めつけられる思いでした。
わが党議員団は、この7月から青年雇用のアンケート調査を行なっています。すでに府内全域から400人を超える青年の返事が届き、さらに連日返信があります。その実態は本当に厳しいものです。
26歳の京丹後市のアルバイトの男性は「給料が安い。今は金持ちでないと結婚できない」といいます。東舞鶴の27歳の正社員の女性は「給料が安く休めない中で、どのように、子どもを持って生活をしていけばいいのか」と訴えています。このほか、多くの青年が「正社員になりたい」、「社会保険に加入させてほしい」と要望し、「先行きが不安」、「自立や結婚ができない」と述べています。
また、「残業代を払ってほしい」、「賃金カットが当たり前になっている」、「労働基準法を守ってほしい」という切実な声が寄せられています。伏見区の23歳のパートの女性のように「人を使い捨てにしないで」という青年が何人もいました。多くの青年たちが、人間として当たり前の「安定した働きがいのある仕事」を望みながら、毎日つらい思いでいるのです。
そこで知事に伺います。最大の問題は、財界や大企業の要望をうけて労働法制の規制緩和を次々と進めてきた小泉改革にあります。知事は、300万人を超える正規雇用を非正規雇用に追いやり、格差社会と深刻な不安定雇用をつくり出してきた小泉構造改革についてどのように認識していますか。
また、私たちはこれまでも、京都府が青年の派遣労働の実態調査を行なうことを強く求めてきましたが、知事はなぜ実態調査をおこなおうとしないのですか。お答え下さい。
府の若年者就業支援センターが行なった意識調査でも、全体の76%の青年が、「正社員になりたい」と答えています。青年たちの強い願いにこたえ、企業の社会的責任として、必要な労働力を正規雇用として採用するよう、企業に強く働きかけるべきです。また、本府が補助金を出す誘致企業に対し、正規雇用の拡大を強く求めるべきと考えますが、いかがですか。
昨年、京都の青年たちが雇用問題の改善を求めて「円山青年一揆」という集会を全国に先駆けて開催しました。そしてこの問題は、日本の未来に関わる国民全体の問題として取り上げられるようになりました。
今月に入り、厚生労働省は、「偽装請負」を解消するための通達を初めて出しましたが、これはトヨタや松下、キャノンなどのトップ企業でも行なわれてきた違法労働に対して、政府がようやく指導強化に踏み切ったものです。
私は、京都府としても新しい認識に立って、「偽装請負」根絶のとりくみを推進すべきだと思います。一例を紹介します。長岡京市に住む31歳の青年は、コンピュータープログラマーとして大阪の派遣会社に採用されました。彼は、久御山町のトヨタの関連会社に派遣され、毎日出社しましたが、その労働条件は過酷で、朝8時から深夜の11時、12時まで、土・日も休みなく働かされました。月190時間もの時間外労働をこなしても、時間外手当はゼロ、社会保険・労働保険は未加入、彼はいつ倒れてもおかしくない状況に、心身ともに追い込まれました。
この事例のように、派遣先企業が「請負」の形で契約していても、実際には勤務時間が拘束され、派遣先社員に指示・監督されている実態は、明らかに「派遣」であり、これこそが「偽装請負」そのものです。企業が労働者保護の義務をまぬがれる「偽装請負」は、悪質な犯罪であり、許されないものです。
ここに紹介した青年は、その後、京都労働相談センターに相談し、労働組合に加入して団体交渉を進めるなかで、会社と雇用契約を正式に結び、社会保険・労働保険の加入を実現することができました。
そこで知事に伺います。今のべた青年のように問題が解決できた例は、全体からみればごく一部です。私は、京都府として労働相談窓口をつくり、労働局と協力して、「偽装請負」などの犯罪を一掃すべきだと思いますが、いかがですか。
また、日本の学校教育では、労働者として不当な扱いを受けた場合にどのように解決すべきか、労働者の権利についての教育がほとんどされていません。府として、青年向けの「労働者の権利」を知らせるパンフレットをつくり、広く普及すべきだと思いますが、いかがですか。
さらに、国のジョブカフェ・モデル事業の補助は、今年度で終了となりますが、今ほどこうした事業の維持と充実が望まれている時はありません。若年者就業支援センターの今後の展開をどのように考えていますか。お答え下さい。
【知事】 若年者を取り巻く雇用問題だが、最近の府内の雇用情勢は完全失業率が4.5%、有効求人倍率も1.06倍と過去30年間で最高の水準にまで回復。小泉内閣が成立し、私が知事に就任した当時の府内の雇用情勢は、完全失業率が6%を超え、有効求人倍率も0.5倍を下回るというたいへん厳しい状況であったことを思うと数字的には大幅に改善してきたことに隔世の感がある。とはいうものの、若年者の雇用やパートやアルバイトなどの臨時雇用が多くを占めており、依然として大きな課題が生じている。このような状況を踏まえ、府内の派遣労働に関しては、指導権限を持って任に当たっている京都労働局から必要な情報提供を受け状況把握を行っているところだが、今年度実施予定の「パートタイム労働者等に関する実態調査」において派遣労働者などの就労者数、派遣契約期間、業務内容などの就労状況をあわせて調査することとしている。
企業などに対しては、新たに公労資で昨年末に策定した「新京都府雇用創出就業計画」にもとづき、常用雇用等安定的な就労機会の創出の拡大を図るため、これまでから新卒者等の求人の拡大を京都労働局や教育委員会とともの要請するとともに、企業誘致にあたっては、雇用の場の確保を図ることが重要と考え、立地企業に対しても強く要請しているところ。
いわゆる偽装請負の問題に関しては、指導監督の任に当たっている京都労働局において、違法な労働者派遣の解消等のための専門の部署を設置し、事業主への厳格な対応や監督指導強化がなされている。府としても、中小企業労働相談所において労働相談に幅広く応じている他、京都労働局からその都度必要な情報提供を受けるとともに、今月開催の労働関係連絡会議でも偽装請負の対応をはじめ労働者派遣法の指導監督の充実強化を要請した。
また、青年等が労働関係法令を正しく理解していることがたいへん重要となってくるので、冊子や府民だよりなどで啓発している他、労働関係法等の講座を開講している京都勤労者学園に対し支援を行っている。
さらに、ジョブカフェ・モデル事業については、今後とも若年者の常用雇用対策を進める必要があり、国の事業は今年度で終了するが、これまでの成果を十分に検証するとともに、幅広い府民にワンストップで就業支援サービスを提供する拠点となる「京都ジョブパーク構想」を年内にとりまとめる。
府として緊急対策本部を設け、和装産業の連鎖倒産防止、緊急雇用対策を
【久守】 次に、経済問題について伺います。
小泉「構造改革」による規制緩和や不良債権処理で、京都経済は大打撃を受けました。事業所・企業統計を見ると2001年からの3年間で、2万3,000に近い事業所が倒産・廃業に追い込まれ、うち個人事業所がその6割を占めています。また、製造業の出荷額では2000年比で、京都は2割以上の減少、最も落ち込みが激しい府県の一つとなっています。
こうした傾向は引き続いており、府内の8月の企業倒産は、過去最悪水準となりました。たけうちや府内大手の酒販卸など負債額10億円以上の大型倒産が9件にのぼる一方、個人業者の破産も29件と高水準が続き、建設、食品、繊維、サービスの4業種で全件数の90%近くを占めたとされます。
なかでも、たけうちグループの負債額は約200億円で、代金を受け取っていない室町問屋をはじめ連鎖倒産や雇用不安、西陣や友禅、丹後など産地への直接的影響は深刻です。
たけうちの納入関連業者は、約2,400社と言われ、和装及び和装関連、貴金属・毛皮など宝飾品関係と幅広く、取引業者のうち大口債権をもつ主要40社は、大規模なリストラで対応するか、連鎖倒産するかの選択を余儀なくされています。また、丹後の白生地は、夏の2割程度の生産調整をした上に今回の事態です。「今後、丹後機業はどうなるのか」。当面本社工場を閉鎖し、従業員を自宅待機としているある工場では、先行きへの大きな不安に包まれています。
また、たけうちグループの従業員5,400名のうち京都関係者は1,600名とも言われ、関連する産業での大規模なリストラ・解雇への対応は喫緊の課題です。
そこで伺います。京都の和装産業崩壊の危機とも言える事態について、知事はどう認識されていますか。緊急に実態を調査すべきと考えますが、あわせてお答え下さい。また、府として商工行政、労働行政を統括する「緊急対策本部」をもうけ、実態の把握、連鎖倒産防止などの緊急的措置をとれるよう総合的な体制を確立すべきではありませんか。また、国に不況業種認定にかかる5号認定などセーフティネットの早期発動を強く求めるとともに、府としてすでに制度融資を受けている業者に対し別枠のつなぎ資金制度を緊急に創設すべきです。いかがですか。また、数千名規模と予想される離職者への雇用創出策をどうお考えですか、あわせてお答え下さい。
【知事】 大手着物小売事業者の倒産にかかる影響については、全国最大規模の小売事業者であり、室町をはじめ京都での取引も多いことから、産地等への影響を最小限に食い止めるとともに、消費者の信頼を回復するため、ただちに和装関係団体や京都市と緊急会議を開催し、業界の実態把握及び対策について協議を行ったところ。
同時に、セーフティネット保証の早期発動のために、連鎖倒産防止のための1号の早期指定及び和装関連業種にかかる不況業種の5号指定の継続・拡大を国に要望するとともに、金融機関等には関係企業の資金調達に支障がないよういっそうの配慮を要請し、府においては京都市とともに緊急経営相談窓口を開設したところ。つなぎ資金については、府としては緊急対策資金としてのあんしん借換融資の他、和装産業取引改善等特別融資や経営支援特別融資などきめ細かな融資制度により対応する。
雇用対策については、9月7日に京都労働局と雇用支援策に関する緊急対策会議を開催し、情報収集に努めるとともに連携して対応することを確認したところ。これまでのところ、京都労働局や府に寄せられた相談は約140件であって、今後とも関係機関との連携を密にし、雇用情勢についての情報収集に努め、必要に応じジョブカフェや就職面接会を開催するなど的確に対応するとともに、職人さんの仕事づくりをはじめとする産地対策や着物のすばらしさを消費者にPRするため、今議会の補正予算に「京のきもの元気づくり事業費」をお願いするなど、庁内の全力をあげて総合的な対策をすでに進めているところ。
原油価格の高騰の中、苦しむ中小業者への親身な支援策を実施せよ
【久守】 こうした状況に、さらに追い打ちをかけるのが原油価格の高騰問題です。
今回の原油高騰は、発展途上国を中心とした急激な需要の増大、さらには産油国側の供給調整を背景に、世界的な投機筋による原油買い占め、価格つり上げ、石油元売会社の利益優先の姿勢が深刻に影響したもので、ガソリンは、1リッター90円台であったものが、ついに湾岸戦争時の高値を超えて140円の大台に乗りました。こうした中、京都市内の老舗のある運送業者は、「燃料代が高くなり、月70万円も利益が減った。年間で800万円。この値上がりは本当に厳しい」「仕事そのものがいい時の7割になる中で、これ以上軽油が高くなれば到底やっていけない」と嘆いておられました。また、ある公衆浴場では「月12万円ほど燃料代が増えた」「このままでは営業をやめるしかない」とギリギリの状態です。クリーニング店でも、売上げ減とのダブルパンチに悲鳴の声を上げておられました。
そこで、知事に伺います。原油価格をつり上げ、莫大な利益を上げている異常な投機を規制することが必要です。「ひとり勝ち」といわれる石油元売各社に対して、利益を消費者に還元し、価格を引き下げるよう、強く働きかけることです。国に対し、より踏み込んだ対策を求めるべきでありませんか。また、中小企業むけに、緊急に超低利の原油高騰対策融資をつくるべきではありませんか。いかがですか。
本府は、来年度予算要望において、「下請け事業者が原材料の価格上昇分を親会社に価格転嫁できるよう、下請中小企業振興法にもとづく親事業者団体への指導」を求めていますが、実際は、京都の約8割の中小事業者が「競争の激化」を理由に「価格転嫁はできない」と答えています。府として窓口を設け、こうした事態を改善するための親身な相談体制を立ち上げるべきです。いかがですかお答え下さい。
【知事】 原油価格高騰に対する中小企業対策については、これまでから国に対し価格の安定を図るよう強く要請を行っているところ。また、融資制度については、私自身が出向き、直接要望し、原油価格高騰により利益が減少している中小企業も新たにセーフティネット保証5号の不況業種の対象に追加され、あんしん借換融資を利用していただけることとなったところ。
相談体制については、京都府産業支援センターお客様相談室等において、技術や経営に関する相談窓口を設けているところで、今後とも業界と連絡を密にして引き続き適正な対応に努める。
大企業の正規から非正規雇用への置き替えにこそメスを入れるべき
【久守・再質問】答弁いただきました。しかし、府民のおかれた深刻な状況から考えると、さらなる取組みをしていただきたい。特に、青年の雇用問題について、知事は正規雇用の拡大を企業に働きかける旨を明言をされなかった。
いまフリーターの青年うち「正社員になりたい」と考える青年は7割をこえています。ところが、大企業ほど正社員の新規採用を抑え、パート、アルバイト、派遣におきかえる動きが顕著です。
例えば、島津製作所の服部社長は、「週刊東洋経済」のインタビューにこたえ、「これからは子会社を作ることで安い労働力を会社の中に持ってくるようにしたい」と言っています。島津のような、もうけも体力もある大企業が、分社化をしてどんどん不安定雇用に置き替える。ここへの対策を抜きにして青年の雇用問題は解決ません。実際、京都府内の有効求人倍率は1.06倍に回復しましたが、正社員は0.59倍にとどまっています。また、全国の若年年の完全失業率は7.8%と飛びぬけています。
いま、京都府がやろうとすれば、できることはたくさんあります。例えば、当面、「残業代が払われない」「社会保険に入れない」と悩んでいる青年が気軽に相談できる窓口をぜひ府として設置すること、また、本府が補助金を出している企業には若者の正規雇用の拡大を求めるべきです。
青年の雇用問題は、日本社会の未来に関わる大問題です。本府の真剣な努力を強く求め、次の質問に移ります。
障害者の生きる権利うばう自立支援法。応益負担撤回、軽減策の拡充を
【久守】 次に、福祉、医療の問題です。小泉内閣がすすめた「改革」の5年余は、福祉、介護、医療の分野にも、差別、格差を生み出しました。
まず、障害者の自立支援法の問題です。最大の問題は応益負担の導入です。人として生きるための空気のような存在であるべき、介助サービスの利用や、作業所・授産施設への通所に、一割の自己負担が導入されたため、施設からの退所やサービス利用の手控えが広がっています。作業所を利用する人は、これまで負担がかからなかったのに、平均月1万数千円を負担しています。
知事、10月の本格実施を目前に、今こそ、応益負担の仕組みの撤回を含め、制度の抜本的な改善を国に求める時ではありませんか。決意をお聞かせ下さい。
合わせて、今の制度の下でも影響を最小限にして、障害者の自立を真に支援するために、福祉サービス利用料の負担上限の引き下げや負担軽減制度のさらなる拡充、そして、世帯単位での収入、資産認定をやめ個人単位の収入認定とするよう、府として国に強く求めるとともに、この際、府として対象者の拡大や食費、居住費のさらなる軽減措置など制度の拡充を行なうべきです。いかがですか。
施設・事業所の運営にも大きな影響がでています。報酬単価の引き下げや、日割り方式の導入で、障害者施設の収入は、平均1割から2割減少しています。ある比較的障害の重い身体障害者の入所施設では年間2,000万円から3,000万円の減収が予想されるとしています。30名規模の知的障害者の通所施設で同様に1,500万円から2,000万円の減収。このままでは、経営が破綻すると悲鳴が上がるのは当然です。
国に対し、報酬単価の引き上げや、日割り方式を、月割りの支払いに改善すること等を国に求めるべきではありませんか。合わせて、府として、施設・事業所が安定的に事業を運営できるように、日割り方式による減収を補填する運営費助成を行なうべきです。
また、小規模作業所への補助制度を維持すると共に、作業所が新事業体系に移行した場合も、補助額の水準を維持できるよう府独自の助成制度を創設するよう求めるものです。いかがですか。また、社会福祉法人減免制度が、低所得者の負担軽減対策として実施されていますが、減免制度を適用すればするほど、施設・事業所の負担分も増える仕組みとなっています。また、国、自治体の負担分が施設に支払われるのが年度末であるため、それまでは施設が肩代わりすることになっています。国に対し、社会福祉法人の負担割合の大幅な引き下げ、補助金の年度末払いの改善を求めると共に、府としても法人負担分への独自補助等を実施すべきではありませんか。
10月からは、これまで市町村が無料で行なってきた移動ヘルパー等の移動支援や、手話通訳などのコミュニケーション支援が、地域生活支援事業として実施され、その内容、利用料等は市町村が決めることになります。これらのサービスは、障害者が生きていくためにどうしても必要なものであり、本来無料が当たり前のものです。だからこそ、この間、多くの障害者団体のみなさんが繰り返し府や市町村に無料化を求めておられるのです。
今、市町村では、利用者負担を軽減するための努力が進められています。京田辺市では、月に50時間までの移動ヘルパーの利用を無料化することが提案されました。舞鶴市では月30時間、超過分は1時間100円に抑えています。これらの決断を心ら歓迎するものですが、まだ一部の自治体にとどまっています。京田辺市にお住まいの、京都府視覚障害者協会の役員さんは、「京田辺の決断は歓迎します。しかし、本来、視覚障害者の移動ヘルパーの利用は、利用料負担のある地域生活支援事業とはなじまないものであり、国が保証すべきものです。それがならない今、府として実施してほしい」と、私どもに語ってくださいました。府として市町村と協力し、移動支援やコミュニケーション支援の事業について無料制度を実施し、府内全ての障害者の生活を支えるべきです。いかがですか。
【知事】 障害のある方々にとって、必要なサービスを受けることができない状況が生じ、自立した生活を阻むことがあってはないという基本的な考え。このため、先日の質問に答えたとおり、本年4月からの法の施行に対しては、府内の全市町村と協調しながら全国でもトップ水準となる利用者負担軽減措置を講じており、関係者からも高い評価を受けている。くわえて10月からは、障害児施設についてもサービス利用への1割負担が導入されることから、今議会において現行の負担額にまで引き下げる等の軽減措置をお願いしている。
施設経営については、施行半年後の状況を見ると、施設によって報酬の減収幅に差があるなど、制度改正の真の影響は今しばらく見極めることが必要。しかしながら、現時点でも影響が出ている施設もあることや、新しい制度への移行を踏まえ、経営のあり方を見直す必要があることから、緊急支援策として経営分析や相談窓口の設置を行うとともに、施設に対する独自の貸付制度の創設や利子補給等も本議会に提案している。
府としては、このように独自の支援策を講じてきているが、社会福祉法人減免制度も含め、利用者負担は基本的には全国一律であるべきであり、地域格差があってはならないものと考えている。このため、国に対し、地方自治体の独自の軽減措置の状況等も踏まえた利用者負担の見直し、経営安定化等を図るための報酬水準の確保など、制度を見直すよう要請をしてきたところ。
なお、ご指摘の共同作業所については、全国トップ水準の補助を行ってきており、今年度も助成額を増額し、今後も共同作業所の役割を十分に踏まえて対応していきたいと考えている。
移動支援やコミュニケーション支援については、本年12月からの実施にむけて市町村で検討が進められているが、府としてもこれまでの経緯をふまえ、障害のある方々がサービスを安心して利用できる取組みを要請している。市町村では創意工夫をし、無料化や軽減措置をふくめた対応を講じられるものというふうに今考えている。
今後も、関係団体、市町村と連携し、真に障害者の自立支援に資するよう、引き続き国に積極的に要請するとともに、府としても的確に制度の運用を行い、ノーマライゼーションの確立にむけて歩みを進めていきたい。
「保険あって介護なし」が介護保険の実態。抜本改善を国に強く求めよ
【久守】 介護保険の実態も深刻です。
先日、京都地裁で、今年2月に起こった、京都市伏見区の54歳の男性が、認知症の86歳の母親の命を絶った「認知症母殺人事件」の判決があり、執行猶予付きの判決が言い渡されました。認知症の母を介護するために仕事を辞めざるを得なかった男性は、介護と両立する仕事を探しましたが、適当な仕事が見つかりませんでした。特別養護老人ホームへの入所がかなわず、生活保護の申請をするために福祉事務所を訪れても、仕事を探しなさいとか公的貸付制度の紹介だけで、相手にされませんでした。年が明け、家賃も払えなくなった1月末、男性は車いすに母を乗せ、新京極などの思い出の地をめぐったあと、自宅近くの桂川河川敷で母親の首をしめ、自らも包丁で頸を刺し自殺をはかりました。京都地裁の裁判長は、「この事件前後も介護に絡んだ心中事件が続き、何がこれら悲しい事件を起こすのかと考えている。行政の在り方を再度考える余地が残されているのではないか。」と生活保護行政の問題点を指摘するとともに、介護保険がこの親子を救えなかった問題点についても鋭く指摘しています。
この間、同様の事件が相次いでおり、今、介護保険が介護の必要な人を支える制度として改善することが求められています。しかし実際はどうでしょう。介護保険料の引き上げと、税制改悪による住民税の課税世帯の急増等による負担増、そして、今年4月からの介護保険の改悪による容赦ない介護サービスの取り上げが、高齢者を襲っています。
「要支援」や「介護度1」と介護認定で介護度が低いとされた高齢者は、これまで利用してきた介護用のベッド・電動車イス、ヘルパーやデイサービス等のサービスを取り上げられたり、利用の制限をされています。昨年10月からの特養等での居住費・食費の全額自己負担の導入の影響で退所者が相次ぎ、ショートステイ・デイサービスも利用の断念や利用回数を少なくする例も後を絶ちません。介護保険料は、給料や高齢者の年金から天引きしながら、いざ利用しようとすれば、「あなたは介護の必要はありません」と門前払いするのです。「保険料だけとりたてて、介護は受けさせない」制度ではありませんか。高齢者を寝たきりにし、「老老介護」の現実をますますひどくしかねません。今の介護保険を、一刻も早く本来の役割を果せる制度に転換しなければなりません。
国に対し、「保険料、利用料を支払い能力に応じたものに改める。」「在宅でも施設でも安心して暮らせる条件整備を進める。」「介護、医療、福祉などの連携による、健康作り体制の強化。」「介護労働者の労働条件の改善。」そして、これらを実現するために「国庫負担を抜本的に増額する。」こと等を、府として強く求める時ではありませんか。知事の決意をお聞きします。
合わせてお聞きします。「予防重視」と言いながら、要介護1以下の福祉用具利用を制限する「貸しはがし」の問題です。
国は、改善を求める声におされ、電動車いすと昇降機については、ケアマネージャーや主治医らの判断で継続利用に道をひらきました。介護ベッド等、その他の福祉用具についても同様にするべきです。府として国に改善を求める必要があります。また、府として独自に貸与や支給する制度を実施すべきです。いかがですか。また、ホームヘルパーなどの利用時間や回数が制限されている問題もあります。生活援助の長時間加算の復活もふくめて介護報酬を改善し、要支援1・2の人の利用限度額も引き上げるよう国に強く求めるべきではありませんか。
【知事】 利用者本位の安定した制度とするとともに、高齢者の経済的負担が過度とならないようにすることが重要。また、社会全体で介護が必要な高齢者を支え合うという社会保険制度の趣旨から、保険料や公費による負担割合が定められている中、府においても制度発足時の平成12年度では約107億円の負担であったものが、今年度はそのおよそ2倍となる205億円を負担し、全力をあげて制度を支えているところ。また一方で、府としてはこれまでから国に対して、高齢者の経済的負担の軽減、介護サービス提供基盤の整備、生活習慣病予防、介護予防対策など健康づくりの推進、質の高いサービスの提供が可能な報酬体系の確立、地方自治体の財政負担が過大とならない仕組みの構築などを提案・要望しているが、現在、改正後の制度の実施状況を市町村と連携して点検しているところであり、その結果を踏まえて、改善が必要な点について引き続き国に要請していきたい。
軽度者への福祉用具貸与については、例えば起きあがりや寝返りができないなど、福祉用具がなければ日常生活に支障をきたす方は引き続き利用できる仕組みとなっている。これらの内容については、市町村や事業者に対し周知徹底を図り、適切な運用にむけて助言・指導を行っているが、10月から始まる制度でもあり、実施状況を今後把握していきたい。
訪問介護の利用についても、適切なケアプランを通じて必要な利用回数が提供されるよう市町村やケアマネージャーを指導しており、月単位の締約方式の導入は一律に利用回数の上限を定めるものではなく、利用者の状況、ニーズに応じた利用回数の変更等が可能な仕組みとなっており、その旨を事業者等に周知を図っているところ。
今後とも、保険者である市町村と連携し、介護を必要とする高齢者の方々にとって必要なサービスが適切に利用できる制度として維持されるよう努めたいと考えている。
府北部など深刻な医師不足。常勤医師の確保へ、府の本格的な対応を
【久守】 次に、医師不足問題です。
この7月から京都府からの医師派遣により、京丹後市立弥栄病院の産科が一部再開されましたが、年齢や体重増加率など厳しい条件のもとで分娩予約がわずか3件にとどまっています。リスクを負った妊婦さんが、30分、40分かけて自動車に乗り、遠く離れた病院に通わねばならない事態が続いています。
舞鶴では舞鶴市民病院の産婦人科が閉鎖され、舞鶴医療センターの産婦人科の休止されたままです。現場の必死の努力がされていますが、北部の周産期医療は綱渡りの状態です。一刻も早く、弥栄病院、舞鶴医療センターへの常勤医師の確保が必要です。現在の見通しについてお聞かせください。
この間、私ども議員団は、府内各地の病院を訪問し、直接お話しを聞きましたが、どこでも、「診療報酬の引き下げで病院の経営が悪化し、医師不足で非常勤医師を招かざるを得ないが、経費負担が大変で悪循環になっている」「地域医療は医師の過酷な労働で支えられているがもう限界だ」「医師が足りているという国の認識はまちがい」「国や府の責任で地方にも医師派遣を」等の声が相次いで出されました。
綾部、福知山、京丹波、美山を含め、府中北部全体で、産婦人科医だけでなく、小児科医、整形外科医、脳外科医、麻酔科医なども不足し、人工透析や救急医療体制にも支障をきたしかねない中で、「このままでは地域医療が崩壊しかねない」との切羽詰った声が出されているのです。
知事はこの現状をどのように、認識されていますか。まずお答えください。
この間、国では「新医師確保総合対策」の中で、一部医師不足県での医学部定員の暫定的増員など示しましが、「医師は基本的に足りている」という認識を変えてはいません。
全国自治体病院協議会会長の小山田惠さんも、「そもそも日本の医師は少ない。人口1,000人あたりの医師数は、OECD諸国のうち27位、医師の過酷な労働条件の根元には、低医療費政策のもとでの医師不足がある。打開のために、医療費抑制政策を変える必要がある」と語っておられます。
そこで知事にうかがいます。国にたいし、低医療費政策の転換を強く求めるとともに、医師の養成を抜本的に増やすこと、20名が削減された京大医学部入学定員を元に戻すこと。とりわけ、自治医大の京都府枠の拡大を不退転の決意で国に求めるべきです。いかがですか。
医師確保は緊急課題です。これまでも府立与謝の海病院や府の保健所等への医師派遣に大きな役割を果たしてきた医療センターを拡充し、自治体立病院や民間病院に医師を派遣する体制をつくることです。ドクターバンクや女性医師バンクに登録された医師を京都府として採用し、医療センターから派遣するのです。そして、医師の身分の安定と研修の保障、ローテーションの仕組みや女性医師の勤務環境の整備など、きめ細かな医師へのバックアップやステップアップの支援を行うことです。いかがですか。
また、「京都府医療対策協議会」には、医師派遣の緊急要請に応えるための連絡調整会議を設け、医師確保困難地域での医師派遣に実質的に応える機能を持つことです。これらのために、府に医師確保対策監を専任で置き、ドクターバンクへの登録の積極的働きかけや個別の医療機関と医師の条件の調整等を行なうことが必要ではありませんか。
地域医療を担う医師の積極的な養成が必要です。府立医科大学に「地域医療総合医学講座」を開設し、系統的な卒前、卒後教育プログラムの確立と、地域医療を支える総合医の育成をめざす医療機関への支援をすすめるべきです。さらに、地域医療を担う医師育成のための医学生に対する奨学金制度を府として独自につくることも必要です。いかがですか。
【知事】 京都府においては、府立医大において長期的な視点から医師の養成・確保に努める一方、今年度医師バンクを創設し、弥栄病院に産婦人科医を派遣するとともに、関係病院の連携による周産期医療体制の維持など緊急対応に全力をあげている。こうした体制を整えるために、前府立医科大学長を特別参与に迎えるとともに、医師バンクを担当する課長級の職員を配置するなど体制の強化を図っている。しかし、新しい医師臨床研修制度の導入や医師の意識の変化等により、全国的に地域間、診療科間の医師の偏在が激しく、京都でも特に中北部地域において医師の確保が厳しい状況が続いている。医師不足の課題については、教育研修等の課題に関わる問題であり、国が抜本的な対策を講じることはもとより、自治医科大学の定員等の見直しとあわせて大学医学部の定員の弾力的な取扱いを、私自らが先頭に立って強力に要望してきたところ。
北部市町と今後の医師確保方策について相談・協議を現在行っているが、厳しい状況を踏まえ、府としても実効ある対策をさらに講じるため、府立医大と連携し、新たな医師派遣システムの構築にむけて、現在、派遣医師の処遇等の取扱いや医療センターの機能の拡充もふくめて、よりよい派遣方法の検討を行っているところ。さらに、医師の身分や研修の保障、女性医師の勤務環境の整備、医学生に対する奨学金制度等について、府域における医師確保のあり方を中長期的観点から議論いただくため、近く開催予定の地域医療対策協議会において具体的実施方策をふくめて検討いただくことにしている。
府立医大における地域医療については、昨年、医学教育研究センターを設置し、体系的な卒前、卒後教育の充実に努めるとともに、今議会で予算をお願いしている地域医療教育推進費において、北部地域をふくめた府内の基幹病院と大学が一体となった実習教育を充実させ、地域医療の重要性を認識し、使命感を持った人材の育成を図ることとしている。
引き続きこうした取組み等を進めるとともに、市町村の医師確保への取組みを積極的に支援し、地域医療の確保に努めてまいりたい。
なぜ、知事は障害者への「応益負担」撤回を国に求めないのか
【久守・再質問】答弁いただきました。本府として、軽減措置を拡充していただく、支援をしていただくことは当然必要なことだと思います。いっそうの努力を求めます。
その上で、私は、自立支援法の最大の問題は、「応益負担」の導入ではないかと質問しました。この点、知事はお答えになっていません。
制度の施行直後に軽減施策を行なわねばならない、また、軽減措置を行なっても、なおこれだけの改善要望が寄せられる。このような制度は、まさに欠陥制度です。こうした問題の根底に、「応益負担」を持ち込んだことがあります。重い障害者ほど重い負担が強いられるのです。
そこで再度伺います。障害者の自立と社会参加、生きる権利を奪う「応益負担」の撤回を国に強く求めるおつもりはありませんか。いかがですか。
また、医師不足問題については、北部の問題、たいへん厳しい状況だと答弁いただきました。舞鶴医療センターの産婦人科の休止で府北部の周産期医療はまさに綱渡りの状況と、私も質問させていただきました。府として、舞鶴医療センターと弥栄病院に常勤医師を早期に派遣・確保し、問題を一刻も早く解決していただくこと。これは強く要望しておきます。
【知事】 今の制度は、低所得の方に対しては一定の上限で切っています。これを応益負担というのか、応能負担というかは、これは言葉の定義の問題だ。私どもはしっかりとした負担軽減措置を講じることで、低所得者の方の上限を一定に抑える努力をしてきた。そして、国に対しても、私どもの措置を見て、しっかりとした対策を講じるよう要請している。そうした措置の内容をしっかりと、私は共産党の先生も見ていただき、その中で質問いただきたい。
【久守】 再質問に答弁をいただいたが、知事は「応益負担」の撤回を国に求める、この点についてはまったくおっしゃらない。理解してほしいということだが、本来、欠陥制度そのもの対して知事が府民の立場で国にものを言っていくのは当たり前のことだと思う。
障害者は生きるため、日常の生活に周りの支えが必要です。その支えを全て「受益」と見なして負担を押しつけるやり方は、私は、福祉施策にはなじまないと思う。障害者の生きる権利を奪うものではないのかと言っているのです。この点、厳しく指摘して次の質問に移ります。
【知事】 障害者自立支援法について、応益負担、応能負担の話をされたが、私は再質問の答弁として、府の場合はしっかりと所得区分に応じて上限を決めて、それでやっていく。さらに混合するものについてはさらに上限を決めていく。久守議員はこれを応益負担だとお思いか。応能負担だとお思いか。それをしっかりと定義をせずに応益負担をおかしいとするのはおかしい。まず私どもの負担軽減措置をどう考えているのか。私どもはこれを地方自治体の実態を反映して、国に対して要望している。そのことについて述べないで、応益負担、応能負担のことを言うのはおかしいと思う。
【久守】 再質問の中身について知事は答弁されたが、私は、応益負担の制度そのものが根本的に欠陥を持っている、こういった制度そのものの改正、抜本的改革を国に求めるべきだと質問したのであって、府民の立場に立つならば、しっかりと府民の声を聞いて、国にものを申す知事になっていただきたい。このように改めて思っている。
「減災」のため、府として住宅の耐震改修助成制度の創設を決断せよ
【久守】 次に、耐震改修助成と府営住宅の問題について質問します。
先日、静岡県の地震対策の視察に行ってまいりました。静岡県では、「減災」つまり「災害を減らす」という考え方を基本に「東海地震で想定される死者数を半減させる」という「減災目標」をたて、「県民の命を守る減災対策」の第一に、住宅の耐震化を掲げています。
静岡県が30万円の助成を実施して市町村施策を誘導し、市町村が10万~30万円の上乗せ補助をし、さらに高齢者・障害者同居世帯には、20万円の割増補助を行っています。行政による無料の住宅の耐震診断はすでに4万3,000軒で実施され、そのおよそ1割、4,678軒で耐震補強工事が実施されています。
静岡県の話では、耐震改修費用の平均は170万円余りで、高額の耐震工事も含まれていることから、実際には140万円以下の工事が半数を占めています。業界専門誌の「日経アーテクチャー」の調査では、「100万円前後の負担であれば地震対策工事を実施する」との結果がでています。愛知県でも60万円の補助が実施されていますが、個人負担を100万円前後に抑えることが一つの目安になっています。
全国的に、耐震改修助成制度を実施している市町村の数は、静岡や兵庫県が100%、愛知97%、三重93%、岐阜・徳島88%、富山87%となっていますが、本府では京都市だけという極めて遅れた状況です。住宅の耐震改修助成を促進する上で、都道府県の果たす役割は決定的です。
京都府では、南海地震や丹後地震、湖西や花折などの活断層による地震など、いつ大規模な地震が起こっても不思議ではないとされており、府民の命を守るために、減災対策として、耐震住宅改修助成を実施すべきです。
現在、国において、耐震化に向けての支援制度を充実させた改正耐震改修促進法が施行され、京都府でも建築物耐震改修促進計画の策定で2万棟の対策が必要だとお聞きしています。先進県の事例にならって、ただちに助成制度を創設し住宅の耐震改修促進をすべきと考えますが、いかがですか。
【知事】 耐震対策は、府民の安心・安全にとって重要な課題。先ほどお答えしたとおり、耐震改修促進計画の中で、住宅については、所得税減税と連携しながら密集市街地内の木造住宅等から重点的優先的に助成する制度や、京都府独自の取組みとして伝統工法による民家や町屋などの建築物についても減災につながる支援策を検討しているところ。
新しい府の住宅基本計画に府営住宅の新規建設の目標・計画を明記せよ
【久守】 次に、府営住宅の問題です。
1996年の公営住宅法の大改悪以来、政府は一貫して公営住宅予算を削減し、公営住宅の戸数を増やさない一方で、収入基準の引き下げることで働き盛りの世代を公営住宅から追い出す政策をすすめてきました。「人権としての住まい」を保障すべき公営住宅の役割を、「真に住宅に困窮する人たちのために」と「救貧対策」におとしめてきたのです。その結果、現在、どこの公営住宅でも団地の高齢化が進行し、人が住むためには欠くことのできない地域コミュニティの形成が困難になっています。
この問題の解決のためには、「住まいは人権」という考えを基本に、住宅政策の抜本的な転換が求められています。何よりも、公営住宅の建設によるストック増が求められています。
ところが、国土交通省の社会資本整備審議会住宅宅地分科会は8月30日の「今後の公的賃貸住宅制度のあり方に関する建議」で、「民間賃貸住宅の長期空家率が6.6%」、「公営住宅の収入超過者は8.2%」という数字を根拠に、公営住宅の収入超過者を民間賃貸住宅に追い出すことを求めています。
まさに、机上の空論としか言いようがありません。格差社会と貧困の拡大のもとで、多くの府民が高い民間賃貸住宅に入れず、安くて良質な公営住宅への入居を希望しています。本府の場合も、昨年の府南部地域の空家募集は9.2倍の応募となるなど、10倍前後の応募倍率はめずらしくありません。
ところが、本府の第8期の5ヵ年計画には、新規の府営住宅建設はありませんでした。すべてが建替えだけで、新規建設の実績はゼロです。
そこで伺います。府南部の競争率は9.2倍。多くの府民が府営住宅をと希望しているのに、なぜ知事は新規建設を行わないのですか。既存の公営住宅の改善とともに、新規建設を計画的に進めることが必要です。いかがですか。
国土交通省は「建議」と並行して、「公営住宅法施行令等の一部改正案」について、8月から9月にかけて、パブリックコメントをおこないました。「改正案」では、入居世帯の収入基準を政令月収20万円から15万8,000円に引き下げ、さらに公営住宅のコミュニティを破壊しようとしています。同時に、家賃算定基礎額や応益係数・規模係数等の見直しによって、入居世帯に家賃の値上げを押し付けようとしています。政令月収15万円の世帯の家賃算定基礎額は、4万5,000円から5万1,200円に14%もアップします。こんなことが許されるでしょうか。
そこで伺います。すでに、京都府はこれまでの収入区分の見直しで、政令月収20万円を超えれば、近傍同種家賃として民間なみの家賃を課しています。その世帯は1,609世帯に及びます。政府の「改正案」によれば、この1,609世帯はもちろん、政令月収15万8,000円の世帯に近傍同種の家賃を押し付け、追い出すことになります。その数は850世帯余ということですが、こういう政府の「改正案」に反対すべきです。こうした公営住宅法本来の目的に反するやり方はキッパリと改めるべきですが、いかがですか。知事のご所見を伺います。
【知事】 府営住宅の新規建設は、南部地域においても地域間の人口移動が沈静化し、今後は人口や世帯数の減少も予測される中、既設住宅の質的向上や有効活用により多様化する住宅需要に適格に対応していきたいと考えている。
収入基準については、世帯所得や民間賃貸家賃水準等も変化する中で総合的な見地から見直しが行われると聞いているが、私どもとしては、真に住宅に困窮する入居希望者ができる限り入居できるよう、収入超過の方については公営住宅の明け渡し努力義務があるので、申し込み可能な公共賃貸住宅の情報を提供するとともに、近傍同種家賃の範囲内で割増し家賃を課し、真に住宅に困窮する方が入居できるよう努めている。
「住まいは人権」の立場にたった住宅政策へ、府の姿勢を転換すべき
【久守・再質問】耐震住宅改修制度については、知事は国の施策の範囲の中で、実施すると答弁されたと思うが、このことは当然です。しかし、耐震改修は、府民のいのちを守るという政策で、大事です。国そのものも90%まで(住宅の耐震改修率を)引き上げる。府も90%に引き上げる。そういった努力を今後の政策の中で実施されるわけですから、それに対して本当につれない答弁だと思う。今、真剣にこの対策をどう実施するのか、そこに具体的な提案がない限り、(住宅の)耐震改修は進んでいかないと思う。これは強く求めておきたい。
次に、府営住宅(建設の)問題についてです。知事は、ストック活用などと、新規建設を抑制する姿勢は変えない旨、答弁されました。
実際、府南部の人口の状況、今後の変動等について、雇用問題や産業問題、その他いろいろとあるが、公営住宅は本当に求められているということに変わりはない。
府の施策として、新しい「府住宅基本計画」を今たてられるという状況にある中で、(府営住宅の)新規建設は、ぜひとも目標に盛り込むべきではないですか。改めて知事の答弁を求めます。
【知事】 府営住宅の新しい計画については、その見込みのあり方はあくまで既存の住宅の状況、そして民間のこれからの新設の状況、そしてその中で府営住宅の状況を総合的に勘案して、これから計画を立てていきたいと考えている。
【久守】 知事の答弁は、府民の要望、実態に背をむける本当に冷たい答弁と言わざるをえない。
かつての住宅政策は、不十分ながらナショナルミニマムとしての住宅保障を掲げていました。ところが、小泉前首相は、この考えを変え、「民にできることは民に」と、財界・民間大企業の要求に応え、彼らにもうけ口を与える「改革」を徹底して進めてきました。
いま、銀行は、住宅融資にシフトし、大手住宅メーカーもいっせいに住宅ローン専門会社を設立して、新しい住宅市場の構築に虎視眈々です。
だから、国は公営住宅が約170万戸不足しているのを認めながら、新規建設を抑制しているのです。府の計画がこれに追従するものであってはなりません。
「住まいは人権」の立場で、今の住宅政策を根本から転換していただきたい。このことを厳しく指摘しておきます。
小泉内閣以上に危険な安倍政権に、国民と共同して正面から対峙する
【久守】 最後に、小泉政治の害悪ともいうべき深刻な諸問題についてお聞きしましたが、知事の答弁は府民の切実な願いとはほど遠いものでした。知事がこの姿勢を改めて、府民の命、くらしを守る立場にしっかり立たれるよう強く求めるものです。
さて、昨日、安倍政権が誕生しました。この内閣が今の政治のゆきづまりを打開できないことは明らかですが、内閣の布陣を見ただけでも、小泉内閣以上に国民に痛みを押しつけ、日本をいっそう危険な方向に導くことがあらわになっています。
歴史認識問題でも、「植民地支配と侵略」への「お詫びと反省」を表明した従来の政府の立場さえ認めようとしない重大な後退があります。憲法前文を「詫び証文」とまで言って、公然と5年以内の改正を掲げ、日本を戦争をする国に変えようというのであります。そして、「国に命をささげる人がいなければこの国は成り立っていかない」と、教育基本法を変えようというのであります。「再チャレンジできる社会の実現を」と謳っても、格差と貧困をもたらした構造改革路線は継承・強化し、大企業にはいっそうの減税を打ち出しながら、国民には2009年消費税の引き上げを押しつけようというのです。
このような安倍新政権に対して、早くも国民各層から強い不安と懸念の声があげられ、また、韓国、中国をはじめアメリカからさえも憂慮の声が出ています。
私ども日本共産党は、「たしかな野党」として、安倍新政権とキッパリと対峙し、広範な国民のみなさんと力をあわせて、行き詰まった自民党政治を変えるため、全力をあげてたたかいます。また、府民の立場に立ったしっかりとした府政、みなさんと一緒につくっていくために全力をあげてたたかう決意を述べ、質問を終わります。