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政策と見解

「医師確保と地域医療を守る日本共産党の五つの提言」

2006/10/04 更新
この記事は 19 分で読めます。

「安心してかかれる医療体制をつくるために」府民的運動を呼びかけます。

 医師確保と地域医療を守る日本共産党の五つの提言

日本共産党京都府委員会

日本共産党京都府議会議員団

 もくじ

 ○はじめに

 ○小泉「構造改革」のもとで、崩壊の危機に直面している地域医療体制

 ○提言1 国の責任で、地域医療を支える医師の養成・確保を

 ○提言2 京都府は地域医療を担う医師の緊急確保と医師派遣の支援体制の確立を

 ○提言3 京都府が地域医療を担う医師の積極的な養成を

 ○提言4 「自治体病院は地域住民の命綱」、医療・保健・福祉の要として機能の強化・拡充を

 ○提言5 医療大改悪をやめ、いつでも、どこでも、だれでも、安心してかかれる医療制度の確立を

 ####はじめに

 いま、府北部では、舞鶴市民病院の機能停止、舞鶴医療センターや京丹後市立弥栄病院の産科休止などで、住民の不安が広がっています。高齢化が加速し、人口が減少する府北部で、「安心して医療を受けられることはふるさとに住み続けることができる」保障です。様々な地域格差の上に命や健康にまで「格差」を持ち込んでいいのでしょうか。このような深刻な事態は、府中北部や府南部地域でも同じであり、京都府全体の問題でもあります。

 この間、日本共産党京都府委員会・党府会議員団がお願いしたアンケートや訪問の中でも、「診療報酬の引き下げで病院の経営が悪化している。医師不足で非常勤医師を招かざるを得ないが、経費負担が大変で悪循環になっている」、「在宅治療を余儀なくされ、このままでは孤独死が増大するのでは」「医師、看護師の不足で病棟を閉鎖している」、「医師が足りているという国の認識はまちがい。医師の過酷な労働で支えられているのであり、認識をあらため、国や府の責任で地方にも医師派遣を」等、国の医療制度改革への怒りと地域医療を守るため、国や府の支援を求める声が共通して出されました。

 日本共産党は、安心して医療を受けたいと願う住民のみなさんや地域医療を守るために日夜奮闘しているみなさんとともに、安心できる医療体制の確立と地域医療を守るため、「五つの提言」をまとめました。ぜひ、ご意見をお寄せいただくとともに、実現のために力をあわせていただきますよう呼びかけるものです。

小泉「構造改革」のもとで、崩壊の危機に直面している地域医療体制

 小泉内閣が強行した「医療制度改革」は、患者、国民には、窓口負担と保険料の増大を強いるとともに、療養型病床を38万床から15万床に削減するなど、過去に例を見ない大幅な病床削減計画を盛り込みました。国の責任を放棄し、都道府県に「医療費適性化計画」を押しつけ、加えて、混合診療の導入や、医療への営利企業の参入など、「市場原理主義」を持ち込もうとしています。これらは、すぐれた日本の「国民皆保険制度」や「地域医療提供体制」を根本から破壊しかねないものです。

 その上、診療報酬引き下げ、医師不足による診療の休止や閉鎖、「自治体リストラ」による病院の「閉鎖」などで、地域の医療体制が崩壊し、住民の命が脅かされる深刻な事態が進んでいます。

 京丹後市立弥栄病院の新規分娩受け入れ休止や舞鶴医療センターの産婦人科休止による府北部周産期医療体制への影響、舞鶴市民病院の機能停止や福知山市での民間、公的病院を含めた医師不足による救急医療体制への影響、南丹市美山町の宮島診療所の休止、京丹波町国保瑞穂病院でも、内科医や小児科医が非常勤の応援体制による診療、山城南部地域の公立山城病院でも、奈良県の産科閉鎖の影響で、お産の受け入れが増加し、小児をはじめとする救急医療も含め、現場の必死の努力で地域医療が支えられています。しかし、医師不足は病院経営悪化の引き金にもなり、地域医療提供体制に重大な影響をもたらしているのです。

 現在の医師不足の背景には、政府が「医療費の抑制」を目的に、医師の絶対数が不足しているにもかかわらず、「医師過剰論」に基づいて医学部定員の削減など医師養成の抑制策を取るとともに、医師の過酷な勤務条件、地域偏在、産科、小児科、麻酔科の医師不足などの解決を放置してきたことにあります。その結果、日本の医師数は、アメリカの5分の1、ドイツの3分の1など、OECD加盟国平均に比べると12万人も不足しています。

 さらに、2004年度からはじまった「新臨床研修制度」で、大学医学部や医科大学の医師が不足する事態となり、大学への派遣医師の引き場げが始まり、医局に依存してきた自治体病院をはじめ、多くの病院の医師確保の困難に拍車がかかっています。府北部地域の主要10病院だけでも2年間に17名もの医師が減少しました。

 このような中で、病院関係者の多くが、地域医療の確保と向上に献身的努力をしていますが、36時間も働き続けたり、当直明けのまま手術に入るというような勤務が常態化する中で、「このままでは身体が持たない」と、勤務医を辞める医師が少なくありません。また、女性医師は、結婚して子どもを生み育てることができない労働環境で、出産、育児による休職や離職を余儀なくされている現状です。

 全国自治体病院協議会会長小山田惠氏は「医師不足を解消し、過重な労働条件を改善するために、医師の養成数を増やす必要がある。医学部入学定員を増やし、勤務医師がこれ以上辞めないよう、待遇の面で改善が必要。医師の過酷な労働の根源にある低医療費政策を変える必要がある」と述べています。こうした声は、全国知事会や京都府、府議会からも医師確保のための意見書を提出したように、国民的な声になっています。

 こうした中、今年8月31日には、地域医療に関する関係省庁連絡会議が、医師不足地域10県の医学部定員を、条件をつけて暫定的に増やすことや、奨学金制度の創設、地域枠の拡充などを盛り込んだ「新医師確保総合対策」を取りまとめました。しかし、これまでの方針を一部修正せざるを得なくなったものの、「医師は充足している」との認識を変えておらず、従来の医学部定員削減策を大きく転換するものではありません。

 また、京都府は、小泉「構造改革」と総務省の「自治体リストラ方針」を受け、「経営の視点」から、府立洛東病院を廃止しました。また、この間、総務省「新地方行革指針」を受け、「市町村経営改革支援シート」を市町村に送り、「統廃合や経営移譲を検討しているか」と迫り、自治体病院のリストラを推進しています。民間医療機関を含めて地域医療を支える中小の医療機関を診療報酬で締め付け、医師不足を理由に、「重点化、集約化」「経営効率」では、地域医療は守れません。

 住民の命と健康を守るため、どこでも安心して医療が受けられる体制を築くことは、国、自治体の重要な責務です。その立場から、日本共産党は、この間の調査活動などの中で出された関係者の声をもとに、以下の「提言」をおこなうものです。

京都府北部地域主要10病院の医師数の推移

 年 15 16 17

 医師数 283人 275人 258人

 増 減 ▲8人 ▲17人

 京都府北部地域主要10病院の産婦人科医師などの推移

 年 16 18 減少数

 産婦人科医 19人 13人 ▲6人

 小児科医 18人 16人 ▲2人

 麻酔科医 10人 8人 ▲2人

 合 計 47人 37人 ▲10人

 (各年の数値は2006年4月現在)

提言1国の責任で、地域医療を支える医師の養成・確保を

 安全で質の高い医療を求める患者と国民の願いに応えるために、医師をはじめ医療従事者が安心して勤務できる体制を整えることが求められます。そのため、以下のことを国に求めます。

 (1)国は深刻な実態を直視し、「医師は足りている」との認識をあらため、医師養成数を抜本的に増やすこと。削減された京都大学医学部入学定員を元に戻すとともに、全国の医学部入学定員や自治医大の養成定数を増やすこと。

 (2)新しく小児科や産婦人科を目指す医師の三分の二が女性であり、女性医師が子育てと両立できる労働条件とすること。当直勤務を見直し、交代制勤務の導入を含む勤務時間の改善、妊娠、出産後の職場復帰の支援や院内保育所への補助など職場環境の改善、産休・育休の代替医師の派遣など育児支援を拡充すること。

 (3)小児科、産婦人科、麻酔科、リハビリ専門医などの医師の養成確保のために、医学教育や研修制度の見直し、診療報酬の改善をおこなうこと。とりわけ、医師の過酷な労働条件の原因となっている「低医療費政策」を見直すこと。

 (4)地域医療を担う医師の身分保障を図り、医局との連携、必要なローテーションと研修・学会への参加の保障の仕組みをつくること。同時に、休暇の保障や身近に相談できる医師の配置をおこなうこと。医師不足地域の医師に対して手当ての割増支給、研修費用の支援や代替医師確保システムを確立すること。

 (5)医療機関が医療過疎の地域でも運営できる財政基盤を保障する診療報酬にあらためること。

提言2京都府は地域医療を担う医師の緊急確保と医師派遣の支援体制の確立を

 (1)京都府医療対策協議会に医師派遣の緊急要請に応えるシステムを確立すること

 京丹後市立弥栄病院、舞鶴医療センター、国保瑞穂病院、美山診療所、民間医療機関を含め、緊急に医師派遣が必要な地域に派遣できる体制を確立することが必要です。

 京都府医療対策協議会に、「連絡調整会議」を設け、府内の医療機関全体の力で医師確保困難病院への医師派遣の協力体制を確立するとともに、府に「医師確保対策監」を専任で配置、ドクターバンクへの登録の積極的働きかけ、インターネット上での単なる情報発信にとどまらず、個別のマッチングなどをおこなうことや派遣にあたっての条件整備などの役割を果たすことです。

 (2)医療センターの機能拡充で地域医療を担う医師を確保すること

 京都府立与謝の海病院や京都府保健所などへの医師派遣に大きな役割を果たしてきた京都府立医科大学医療センターの機能を拡充し、地域医療を担う医療機関に医師を派遣する体制をつくることです。この「医療センター」への医師確保については、府立医科大学の医師だけでなく、ドクターバンク、女性医師バンクなどに登録された医師を、京都府職員として採用し、「医療センター」をとおして、地域医療機関に派遣する仕組みにすることです。また、派遣医師の身分の安定、医局との連携、研修の保証、必要なローテーションの確立など、医師に対する相談や、バックアップ、ステップアップの体制をきめ細かく整え、地域医療を担う医師の「安心」を確保することです。

 (3)実態調査を急ぎ、医師確保の基本計画を策定すること

 京都府において、どれだけの医師や医療スタッフが必要かの実態調査を緊急に実施すべきです。今後とも常時必要な調査や関係者からの意見聴取に努め、地域医療の状況把握をおこなうことです。

 府立医大や京都大学医学部、医師会、自治体病院関係者、民間病院、住民代表が入った「医療対策協議会」のなかで、京都府の中長期的な「医師確保基本計画」を策定する必要があります。また「へき地医療確保計画」をともに策定し、地域医療提供体制の確立を図ることが必要です。

府内各地の深刻な実態と問題点/産婦人科医の不足で、北部周産期 医療体制が危機的状態に

 京丹後市立弥栄病院の産科が4月に新規分娩の受け入れを休止。7月18日から京都府の緊急医師派遣により、一部再開されたものの、本格的な体制とはなっていません。2003年には舞鶴市民病院の産婦人科が、今年4月から、舞鶴医療センターが産婦人科を休止。府北部の周産期医療のサブセンターでもある舞鶴医療センターの産科休止は一病院だけの問題にとどまらず、府北部の周産期医療、母子の命にかかわる重大な問題です。

舞鶴市民病院の機能停止は北部医療全体に重大な影響

 舞鶴市民病院が今年4月から事実上の機能停止状態になっています。これまで、舞鶴市民病院も含め四つの公的医療機関が、救急搬送の受け入れや脳神経外科、心臓病、がん、人工透析などの医療をそれぞれに機能を分担しながら府北部地域の医療を担ってきましたが、その市民病院が機能停止同然の状況にあることは府北部の地域医療全体に影響を与えています。

丹後医療圏、中丹医療圏域で脳外科医などの不足で救急医療の深刻に

 京丹後市、福知山市、綾部市など、府北部全体で、産婦人科医だけでなく、小児科、整形外科、脳外科、麻酔科などの医師不足も深刻さをましており、人工透析や救急医療体制にも重大な影響を与えています。

 府北部地域の医療提供体制は、心臓疾患や脳血管外科などの高度医療が不足し、いまだに夜間の小児救急医療体制をはじめ三次の救急救命センターがなく、医師、看護師、OT、PTなど医療従事者も圧倒的に不足しています。

南丹医療圏でも医師確保に綱渡り

 京丹波町国保瑞穂病院では、産婦人科が医師の退職により既に休止されたままであり、内科、小児科、整形外科などがいずれも他の病院や京大大学院からの非常勤派遣で綱渡りの運営となっています。看護師の不足で診療報酬が削減され、病床削減などを余儀なくされています。

 南丹市美山町では、医師不足から宮島診療所を休止。美山診療所の医師確保も綱渡りの状態です。美山地域に残る唯一の診療所であり、24時間の往診など地元住民のまさに命綱です。また、看護師の不足で療養病床の入院を制限しています。

山城南医療圏 公立山城病院に患者集中

 周産期や救急患者を一手に引き受けている公立山城病院に患者が集中し、医師の過酷な労働でかろうじて地域医療が支えられているのが現状であり、府立医大からの医師派遣がとまるようなことがあれば医師確保の見通しは立たないなど声が出されています。

提言3京都府が地域医療を担う医師の積極的な養成を

(1)京都府立医科大学で地域医療を担う医師の養成をより積極的に行うこと

 京都府には、京都府立医科大学、京都大学の二つの医師養成の大学があり、定員は200人となっているものの、府内の医師の実人員は減少しており、府内の研修医の在籍数はこの3年間に131人も減少し、しかも都市部に集中するなど地域偏在が加速しています。

 両大学が、臓器別・高度先進医療など、高度な技術を必要とする医師の育成とともに、地域医療を担う医師養成の役割を果たすことも強く求められています。

 沖縄県、兵庫県、北海道など、全国各地域で、地域医療を担う医師の養成が多彩に始まっています。本府でも、府立医科大学に「地域医療総合医学講座」を開設し、系統的な卒前、卒後教育プログラムの中で、プライマリーケアを担う医師を政策的に養成するなど、地域医療に貢献する医師の育成をより積極的にすすめることが求められています。府としても「総合医養成支援事業」を実施し、これらを支援することです。

(2)地域での研修医受け入れ体制を確立し、地域医療を担う医師を養成すること

 「地域医療を担う医師を地域で育てたい」という現場の声に応え、地域で、民間医療機関と公的病院が協力して研修医を受け入れる体制を確立すること、臨床研修指定病院の連携の強化と、臨床研修指定病院に対する指導医の確保や指導単位の保障のための支援や調整システムの確立、研修医手当てなどの財政的支援、優れた指導医の養成と確保を府が積極的に行うことが必要です。

 特に、府北部では、へき地医療支援機構にも位置づけられた府立与謝の海病院に北部医師研修センター(仮称)をつくり、これら地域医療の研修医育成の拠点としての役割を果たすことです。

(3)自治医大の定数枠の大幅増、奨学金制度の確立で、地域医療の担い手を確保すること

 自治医大の出身者がこれまでからへき地医療の担い手として大きな役割を果たしてきました。しかし、京都の定数枠は2人であり、この定数を大幅に増やし、地域医療の担い手を積極的に養成することが求められています。国に対し、大幅な定数増を強く求めることです。

 また、地域医療を担う医師育成のための医学生に対する奨学金制度を創設することです。

地域医療を担う医師養成のとりくみ

 神戸大学では、「大学院における卒後臨床研修改革と新たな専門医養成の試み」が始まり、2006年1月から兵庫県からの寄附講座「へき地医療学講座」を設置、社会から求められる総合医・家庭医の育成をめざしています。但馬地域のへき地中核病院である公立豊岡病院と神戸大学医学部総合診療部が協力しながら、病診連携や保健、福祉、医療連携などのとりくみを地域で学ぶ教育へと新しい試みが始まっています。

 北海道では、道内の3医育大学の総合診療部門と公立、民間の地域医療機関が連携して「北海道プライマリー・ケアネットワーク」を設立、独自の後期研修プログラムを創設しましたが、道も「総合医養成支援事業」でこれを支援するなどのとりくみが始まりました。

医師の確保と派遣/各県のとりくみ

 北海道では、既に、北海道医療対策協議会を設置し、医師派遣(紹介)連絡調整会議を設けて、医療確保が困難な市町村立病院、診療所における医療確保のために、3医育大学、市町村、民間病院、道が協力して医師派遣に係る再調整をおこなうシステムを確立しています。

 青森県では、平成17年9月には「あおもり地域医療・医師支援機構」を立ち上げ、機構の中に医師会や自治体病院開設者協議会などの入った「運営委員会」を設置、医師確保対策監を顧問医師として配置し、医師に対する相談やバックアップ、ステップアップに対するきめ細かな相談と支援の体制がつくられました。(1)明確な将来見通しのもとで勤務できる(2)医師としてのステップアップ(3)学会や研修会に参加できる(4)公務員の身分を継続し、身分が安定する(5)出身大学との関係を保ちながら県内で働けるという五つの安心によりUIターンの医師をふくめ、地域医療の確保のための真剣なとりくみがすすめられています。

 島根県では、「へき地医療支援計画」を策定し、「へき地医療支援機構」に専任担当者の医師を配置し、平成18年度からは、医師確保対策室長を専任で配置して、「赤ひげバンク」や「専門医養成プログラム」など地域医療の支援と活性化のユニークなとりくみがすすめられています。

 三重県では、へき地医療支援機構に専任担当官を配置し、県職員の身分で、地域医療機関と研修を組み合わせた勤務が可能な「三重県ドクタープール制度」の創設やへき地医療、小児、産婦人科医療に携わる医学生、研修医を対象とした就学資金の貸与制度やへき地医療機関への転任医師に研究資金を貸与する「医師就学資金等貸与事業」などのとりくみがすすめられています。京都府としても、全国の積極的な経験をとりいれ、実効ある医師の確保、派遣システムを確立することが緊急の課題です。

医療センター

 (1) 設置目的

 医療センターは、医学の教育、研究及び診療という医科大学の本質を踏まえながら、本学がもっている高度な教育、研究の成果及び医療を社会に還元し、また、逆に社会から要求される医療の問題、地域医療体系の整備の遅れによって生じた量的質的な医療過疎に広く対応するため、学内の衆知を集めて最も適切な方策をあみ出し、それを推進する機関として昭和46年6月、府立医科大学の附属施設として設置されたものである。

 (2) 業務

 医療センターは、教育及び研究の機能をもつとともに、次の業務を行う。

 ア 地域医療の推進に関する助言並びに指導協力

 イ 地域における公衆衛生、環境衛生に関する助言並びに指導協力

 ウ 大学における研究成果の地域社会への還元

 エ その他府民の健康確保に関する民生衛生行政の推進協力

 

提言4「自治体病院は地域住民の命綱」、医療・保健・福祉の要として機能の強化・拡充を

 (1)京都府立医科大学及び附属病院の独立行政法人化など、切り捨てをやめ、拡充すること

 京都府立医科大学及び附属病院は、京都府内の地域医療の確保・向上、医師、看護師等医療従事者の養成、教育、研究活動などで重要な役割を果たしてきました。ところが京都府は現在、「大学改革」の名で、府立医科大学と府立大学の統合、「独立行政法人化」をすすめようとしています。府民への医療・看護のサービスの低下や地域医療と医師の養成確保の点でも大きな障害を生みだすものです。府立医科大学及び附属病院の独立行政法人化や府立与謝の海病院を経営効率、採算性優先で切り捨てるのでなく、充実させることこそ必要です。また、不採算医療や政策医療をになう医療機関への財政支援の拡大が必要です。

 (2)府、市町村は地域医療確保の役割をしっかり果たすこと

 国は、医師不足を放置したまま、医療費縮減のため、医療機関の「重点化、集約化」と「広域化」を念頭に「役割分担」をすすめています。中小病院を競争の中で切り捨て、「自治体リストラ」の流れに乗って自治体病院の縮小・廃止をすすめるのではなく、自治体病院、民間病院、開業医の連携で、地域住民の命を守る体制を確立することが、いま求められています。日常的に住民の暮らしと結びついた地域で必要な医療提供体制を整えるために、二次医療圏域や市町村単位で、地域にどのような医療提供体制をつくるのか、真剣な議論が必要です。そのために、市町村、自治体病院、民間病院、開業医、住民による「地域医療協議会」を設置し、知恵と力を集めることが必要です。そのために、府が積極的な役割を果たすことです。

 (3)保健師、助産師、看護師などの確保と連携で、地域医療・保健活動の充実を図ること

 自治体の健康診断の充実など、保健・予防活動や、公衆衛生全般の向上のために充実が求められます。そのために保健所や保健センターの体制を拡充し、市町村の活動へ府の支援が必要です。

 また、産科問題では、助産師や産科医師を確保するとともに、病院診療所における正常妊産婦を対象とした「助産師外来」「院内助産所」の開設、助産所との連携など、産科医師や助産師の役割分担、連携をすすめ、よりよい産科医療の提供体制をつくることが必要です。

 看護師確保について、診療報酬改定で新設された「入院基本料7:1看護師配置」基準取得のために看護師の争奪戦が起きており、大学病院や都市部中核病院への看護師が集中し、府北部地域などの看護師不足に拍車かかっています。府北部地域の医療を担う人材養成の中長期的な計画をたて、そのため府立医科大学看護学科の分校の設置を含め、看護師養成定数と体制を拡充することが求められています。また、准看護師の移行教育機関を京都府内に設置する事も喫緊の課題です。

 国に対し「第六次看護職員需給見通し」の見直し、診療報酬の改善を求めます。

提言5医療大改悪をやめ、いつでも、どこでも、だれでも、安心してかかれる医療制度の確立を

 10月1日から、高齢者や重病者への窓口負担増で悲鳴があがっています。国の療養病床削減方針では、府内で現在7500床ある療養病床が3000床に減らされることになります。すでに、診療報酬の引き下げで、医療療養病床を経営する医療機関が経営難に陥る結果となり、一般病床への転換を余儀なくされる事態が広がっています。こうした中、4月には療養病床を退院した患者が10日後に死亡するという痛ましい事件が起こりました。また、高齢者、障害者のリハビリが日数制限で打ち切られる事態に患者、医療関係者の改革を求める運動が広がっています。

 都道府県には、医療費抑制をねらって、「後期高齢者医療制度」の具体化や「適正化計画」の策定、「地域医療計画」の見直しなどが押し付けられています。

 こうした政府の「改革」の名による医療破壊は、受診抑制による低所得者や社会的弱者の医療からの排除、過疎地域や中山間地にとどまらず、多くの地域での医療提供体制の崩壊という事態を招きます。このことに多くの関係者が心を痛め、診療報酬の改善、療養病床の削減中止、医療制度改悪の具体化を中止する声が大きく広がっています

 日本共産党は、医療と地域を守るために、医療大改悪を中止し、すべての関係者が立場の違いを超えて、力を合わせとりくむことを呼びかけるものです。

 地域医療の確保、保健・予防活動の充実は街づくりの基盤…自治体首長の役割は重要

 地域医療の確保は単に患者を診るという医療の視点だけでなく、保健・福祉行政の充実とともに、地域づくり、街づくりの基盤です。住民にとって、住みやすい街には若者も定着し、産業も根付き、街の活性化ともなります。

 このような視点から、糖尿病の予防と管理で人工透析患者を減らした町、病気だけでなく生活への支援も合わせた取り組みで脳卒中を半減させた村、また、先駆的に乳幼児・老人医療費の無料化に取り組んだ村など、住民健診や保健予防活動の充実と早期発見早期治療の体制の確立で、住民の生命と健康を守ってきた自治体が、全国には数多くあります。

 地域の医療センターを核に、地域の医療・保健・福祉の拠点として充実させた北海道瀬棚町では、老人医療費が半減し、住民が元気に過ごせる街として全国の地域医療のモデルとしての評価をされていました。ところが、今春の自治体合併後、新「せたな町長」の診療所の縮小、予防医療予算の削減方針により、診療所長が退職、蓄積された町の医療福祉が壊されようとしています。

 舞鶴市でも、市長が、病院幹部を含む現場や地域医療関係者の声を聞かず、一方的に舞鶴市民病院の民営化方針を打ち出す中、この4月から病院運営が事実上休止に追い込まれ、救急医療をはじめ地域医療に重大な影響をもたらしました。地域医療の確立にとって、自治体の首長の認識や役割、リーダーシップが大変重要です。

この提言へのご意見を、ぜひお聞かせ下さい

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