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議会を終えて(談話)

9月定例会を終えて(談話)

2006/10/10 更新
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団長 松尾 孝

 9月21日から開かれていた9月定例会は、1日会期を延長し10月7日閉会した。

 今議会は、医療制度、介護保険制度、障害者自立支援法など国の福祉・医療制度の相次ぐ破壊と負担増の押し付け、新たな「認定こども園」制度の導入、「品目横断的経営安定対策」による農業・農村のいっそうの破壊など、国の悪政から、府民をどうまもるのかが問われた議会であった。

 また、来春のいっせい地方選挙を前に、「一票の格差」を是正し、府民の意思を公正に府議会へ反映させるための「府議会議員の定数是正」を行うことが求められた議会であった。

 わが党議員団は、本会議や委員会で、府民の暮らしの実態をもとに、府政が国の悪政から府民を守る「防波堤」の役割を果たすよう求め奮闘した。

 また、議案として災害対策復旧費や障害児施設利用者の負担軽減、和装関連産業緊急対策などの補正予算他14議案が提案され、わが党議員団は和田埠頭関連橋梁建設の契約議案2件に反対し、他の議案は賛成した。

 1、「痛み押しつけ」の5年余の小泉政治によって、京都経済と府民の暮らしはますます深刻になっている。

 いま「ワーキング・プア」といわれるように、働いても働いても豊かになれない、それどころか生活保護以下の収入しか得られない事態が広がっている。とくに青年の雇用の実態は深刻で、「青年雇用大調査」への回答では「正社員になりたい」「給料が安く、休めない。どのようにこどもを持って生活していけばよいのか」といった「先行き不安」、「自立や結婚できない」深刻な青年の声が寄せられている。こうした声を紹介し、格差社会と多くの青年を不安定雇用に追いやった小泉構造改革への認識をただしたのに対し、知事は雇用状況について「大幅に改善した。小泉内閣が誕生し、自分が就任時と比べれば隔世の感がある」と小泉構造改革を評価する発言を行った。しかし、同時に「臨時雇用が多くを占めており大きな課題がある」と不安定雇用の拡大を認めざるを得なく、これまで「国で行われている。」と拒否してきた派遣労働者の実態調査を「パート労働者等に関する実態調査」のなかで今年度行うことを初めて表明した。また、これまで「誘致企業に一定の割合で正規雇用の拡大などを求めるべき」とのわが党議員団の要求に対し、「そんなことを要求すれば企業がこなくなる」と拒否してきたが、今回「企業誘致条例」の見直しにあたって「立地補助金のうち、雇用補助金を正規の従業員雇用の促進に資するよう充実する」とし、「安定雇用」「正規雇用」をもりこんだ中間報告を行った。

 こうした事態は、民主党議員の「正規雇用を求めるのは時代遅れ」との攻撃などがあるもとでも、「円山青年一揆」など青年の自覚的な運動と多くの労働者、府民の世論と運動、そして議会における日本共産党の論戦が、府政をうごかしはじめていることを示している。

 今後とも、雇用問題の改善へ、府民とともに奮闘するものである。

 2、障害者自立支援法、医療制度や介護保険制度の改悪は、府民に大きな負担を押しつけるものとなっている。

 今回、障害者自立支援法の施行にともなって、障害児施設を利用する障害児の負担軽減措置と施設経営安定対策として、緊急の無利子融資が予算化された。これらは多くの関係者の運動が実ったものである。しかし、児童デイサービス利用者は、負担軽減の対象からはずされたため、障害者施設利用と格差が生じる事態となっており、引き続く改善を求めた。また、施設運営について、報酬単価の引き下げや日額計算方式が施設経営を困難に追いやっており、国におけるこれらの改善を要求するとともに、府として運営費助成を行うよう求めた。

 障害が重いほど負担が大きくなる「応益負担」の導入は「サービスは必要に応じて、負担は能力に応じて」の福祉の原則とは相容れないものである。ところが知事は「応益負担の撤回を求めるべき」との質問に、「負担軽減措置をとっているのに、応益負担というのか」と居直りの答弁をおこなった。ここには知事自身が「受益と負担」と繰り返し強調してきたように、サービスを受ければ、相応の負担をするのは当然とし、自治体の福祉行政を、すべての住民が、人間らしく生きるための施策から、負担に応じたサービスに引き下げる考えを示すものである。

 自民、公明、民主などが、わが党議員団が提案した「応益負担の撤廃」を求める「障害者自立支援法の抜本改正を求める意見書案」に反対し、対案を提出し、「障害者自立支援法」を「障害者の自立を促進し、福祉サービスを安定・拡大させることを目的に」制定されたものと評価していることは、障害者や関係者の声に背を向け、国いいなりの知事の態度を容認するものである。

 介護保険制度の改悪で、介護ベッドや電動車いすの取り上げなど、障害の程度が低い高齢者や低所得者が排除される深刻な事態が生まれている。しかし、知事は「制度維持のために」府が多くの負担をしていることを強調し、なんら具体的な支援策を示さなかった。

 また、わが党議員団が提案した「軽度者」に対する介護ベッドなど福祉用具の取り上げの中止や介護施設の居住費・食費の負担軽減措置などを求める「介護保険制度の緊急改善を求める意見書案」を自民・民主・公明などオール与党は否決した。これらの党は国会でも制度改悪を強行し、府議会でも府民の切実な声に背を向け、新たな痛みを府民に押し付けようとしている。

 3、医師不足問題は、北部地域のみでなく南丹地域や山城地域でも深刻な事態となっている。わが党議員団は、この間、医療機関や医師との懇談、アンケートにとりくみ、切実な声をもとに、 府が医師確保・派遣の新たな体制をつくることや府立医科大学での地域医療を担う医師の養成、奨学金制度の確立など「医師確保と地域医療を守る日本共産党の五つの提言」を本議会中の10月4日に発表し、知事あて申し入れを行った。

 これらをもとにした代表質問で、知事も「府として実効ある対策を講じるため、府立医大と連携し、新たな医師派遣システムの構築にむけて、現在、派遣医師の処遇等の取り扱いや医療センターの機能拡充を含め検討している」ことを明らかにした。これまでから、わが党議員団が「府として医師確保・派遣を」と求めてきたが、知事は「京都は医師が多い。医師確保は設置者の責任」としてきた。しかし、今回「新たな医師派遣システムの検討」を表明したことは、一歩前進である。わが党議員団は、どの地域に住んでいても安心して医療が受けられる地域医療体制を築くため、「提言」の実現めざして医療関係者や広範な府民と力をあわせて奮闘するものである。

 4、小泉改革で京都経済は大打撃を受け、「景気は回復基調」といわれるもとでも府内の8月の企業倒産は、過去最悪水準となった。とりわけ、和装販売大手「たけうちグループ」の倒産は、従業員5400人、うち府内関連労働者1600人が職を失い、多くの関連企業が連鎖倒産の危険に直面する深刻な事態を招いている。丹後機業ではすでに8月に27%の生産調整をおこなっており、今回の事態は、いっそう大きな先行き不安を与えている。わが党議員団は、「緊急対策本部の設置」やセーフティネットの5号指定、別枠の繋ぎ資金融資制度の創設など求めた。知事は「連鎖倒産の防止のため1号の早期指定及び5号指定の継続拡大を国に要望。和装産業取引改善等特別融資や経営支援特別融資などで対応する」と答弁した。今後とも、関係者の要望をもとに、京都の和装産業を守るため奮闘するものである。

 また、先の国会で成立した農業構造改革関連法によって、日本農業を支えてきた家族経営や零細農家切り捨てが進められるもとで、京都の農業と農村をどう守るかが問われている。わが党議員団は、こうした国の農政の転換を国に求めること、農業・農村を守る基本条例を制定すること、生産費を償う価格保障・所得保障制度の拡充、農家の知恵と力をあつめた集落営農組織への支援などを求めた。しかし、理事者は、国の農政をそのままに引き続き規模拡大や効率化を求め、検討中の「農の担い手確保・育成アクションプラン」でも、価格保障・所得保障の検討はなんらなく、農業ベンチャー法人等の確保・育成や農地流動化システムの構築など、大規模農家などの育成・強化を図ろうとするものとなっている。これでは、いま危機に直面している京都の農業と農村を守ることはできない。わが党議員団は、いまとりくんでいる農業関係者との懇談やアンケート活動をさらにすすめ、農業と農村を守るため奮闘するものである。

 一昨年の台風23号被災に続き、7月豪雨で京丹後市・間人地区などで大きな被害をもたらした。土砂災害の危険が大きいもとで「避難勧告」がだされなかったことなど、大きな課題を残しており、いっそうの防災体制の強化が求められている。同時に、生活再建支援法の指定要件を満たしていないため、被災住宅の再建支援がない事態となった。わが党議員団は、豪雨、台風、地震など自然災害によって、住宅が損傷・破壊された際、支援できるよう、国に指定要件の緩和を求めるとともに、府として恒常的な住宅再建支援制度を創設するよう求めた。

 5、今議会には、「認定こども園の認定基準に関する条例」(案)骨子や「京都府大学改革基本計画(中間案)」「京都府建築物耐震改修促進計画(中間案)などの検討状況が報告された。

 「認定こども園」は、先の国会で関連法が成立したが、これはいままで市町村がおこなっていた「保育に欠ける子」の保育に対する公的責任を投げ捨て、保育園との直接契約、保育料の「自由設定」、職員配置基準や施設基準の緩和など、民間企業にあらたなもうけの場を提供しようとするものである。

 わが党議員団は、こうした狙いを明らかにするとともに、府の条例において、公的責任の明確化と保育園や幼稚園の現行水準の後退を招かない条例とするよう強く求めた。しかし、府が条例案骨子として示したものは、ほとんどが国のモデル案のままである。12月議会の条例提案にむけ、多くの関係者、府民の声が反映されるよう、奮闘するものである。

 「府立大学改革基本計画(案)」は、六月議会において知事が大学関係者の合意もないままに「08年4月に1法人2大学の独立行政法人化をすすめる」と表明したのをうけて作成されたものである。しかし、知事は「なぜ、法人化しなければならないのか」、「すでに法人化した東京や横浜、大阪などで生じている混乱や教育・研究の後退を生じさせない保証はあるのか」との質問に対し、なんらまともに答弁ができなかった。自民党の議員も「なぜいま、独立法人、民営化なのかということがもう一つわからない」と発言し、公明党議員も「気がかりな点がある。まず法人化ありきで、効率化のためとの印象を与えていないか」といわざるを得なくなっている。

 知事のトップダウンで「法人化」を既成事実として強行するのではなく、「計画」は撤回し、大学関係者はもとより、広く府民の声をもとに100年を超える歴史を持つ府立医科大学や付属病院、府立大学のあり方を検討すべきである。

 「建築物耐震改修促進計画(中間案)」では、「耐震診断・改修の促進を図るための支援をおこなう」ことを明らかにした。これは、国の制度改正と一体のものであるが、長年建築労働者を中心とした運動が一定実ったものであり、わが党議員団は引き続き耐震改修に実効性ある制度となるよう奮闘するものである。

 「乳幼児医療助成制度等福祉医療制度のあり方(中間案)」も報告された。乳幼児医療については「経済的及び精神的負担の軽減につながる対象年齢の引き上げなど助成対象の拡大」「緊急性にかんがみ早期の実施」が盛り込まれた。これも長年の運動と世論に応えざるを得なくなったものである。すでに、府内の多くの市町や東京都などが小学校卒業まで助成を拡大しており、「通院8000円の自己負担をなくしてほしい」の声に応えた改善となるよう引き続き府民のみなさんと力をあわせて奮闘するものである。また、この医療制度検討の中で母子医療の所得制限の引き下げや、老人医療制度を「年齢のみを主な理由にした優遇制度は見直す時期」として改悪する方向が示されている。こうした改悪を許さず、社会的に弱い立場や低所得の人々をしっかりと支える福祉医療制度となるよう奮闘するものである。

 6、今議会には、乙訓2市1町の住民32180人から、府営水道協定を抜本的に見直すことと、府営水道料金の引き下げを求める請願が提出された。これは乙訓地域の異常に高い水道料金と、水道会計の多額の赤字を抱える原因となっている府営水の押し付け問題の解決を求める切実な住民の願いであり、2市1町の首長からも毎年、協定水量の見直しが求められてきたものである。

 ところが、総務常任委員会での請願審査では向日市選出の新政会の委員が「契約者である地元市長などに言うべきこと。」と不採択を主張し、民主の委員も「ダムの建設とかその償還も含めて、受給者負担だということで協定が先にできている。」と高い水道料金や使わない水の負担も「受給者負担は当然」との態度をとった。これは、もともと工業用水と上水道の二つの計画を一本化し、過大な水需要予測をもとに建設をすすめた府の責任であることは明白であり、さらには企業が府営水を使用しないもとで、その分まで住民に負担を上乗せする道理のないものである。しかも、府営水道条例では、知事と受水市町が協議をして「基本水量を決める」となっているにもかかわらず、これを拒否し続けている府の態度には何の道理もないものである。

 こうしたことに背を向けて住民と市町に過大な府営水を押し付ける自民、民主、新政の態度は、許されない。わが党議員団は、引き続き基本水量の全面的な見直しと府営水道料金の引き下げ実現のため奮闘するものである。

 「京都肝炎友の会」からウイルス性肝炎対策の推進を求める請願が、与党会派の紹介で提出され、全会一致で採択された。本来なら請願者の意向を尊重し、委員会として国への意見書案を取りまとめるべきところ、与党会派は委員会提出を拒否し、会派としての意見書提出も表明しなかった。わが党議員団は、国と製薬企業の責任を明確にし、請願者の要求である患者救済制度の創設など国に求める意見書案を提出した。これに対し、与党会派は要望項目はまったく同じで、国と製薬企業の責任に触れない「対案」を提出し、わが党提案の意見書案に反対した。

 わが党議員団は、こうした党利党略のやり方を厳しく批判するとともに、与党案の問題点を指摘しながらも、請願者の願いを反映した与党案にも賛成し、全会一致で採択した。

 7、府立高校における「難関大学進学競争「生徒獲得競争」がエスカレートする中で、一部の「塾」主催による「山城高校専門学科説明会」が、授業時間中に、山城高校を使って開催されようとした。しかも、新聞折込の案内ビラでは「あまり公表できない問題も含まれます」と紹介するなど、公教育の場を一部「塾」に便宜供与するもので許されないものである。わが党議員団の「中止」申し入れに府教委も「特定の塾への便宜供与であり、不適当」と中止を表明した。こうした通常では考えられない事態を招いた原因は、府教委がすすめる「高校改革」が、府立高校を「特色ある学校づくり」「生徒集め競争」にかりたてているところにある。わが党議員団は、こうした生徒、父母、学校を「受験競争」に追い込む「高校改革」をあらためるため奮闘するものである。

 8、府議会議員の定数是正については、6月議会以後、各会派代表による小委員会が設けられ、検討がすすめられてきた。わが党議員団は、法定定数69名に対し、すでに7名削減されており、基本は、定数69名を人口にもとづいて配分することが、一票の格差を最小限とし、住民の意思を議会に正しく反映させ、議会の機能を強化するうえで必要との立場で協議に参加した。しかし、定数増について会派間の調整が図れないもとで「3倍以上の格差は違憲状態であり、定数是正が必要」との各派の一致した考えをもとに「2増(京田辺市・綴喜郡と西京区選挙区各1増)2減(南丹市・船井郡と舞鶴選挙区各1減)」を提案した。これによって2倍以上の格差はすべて解消し、人口と議席の逆転区も19通りから4通りに大幅に改善される。

 しかし、民主・公明は南丹市・船井郡の1減、自民は1増(京田辺市・綴喜郡)1減(京丹後市)を提案、新政会は自民案に同調し、小委員会では一致した案をつくるまでには至らなかった。

 府議会最終日、こうした状況のもと会期を延長して、調整が図られたが、3案が本会議に提案される事態となった。わが党議員団は、民主・公明の1名減は、府議会議員の定数をさらに減らし、府民の声を議会と府政に反映させることを狭め、議会の機能を後退させるものとして賛成しなかった。そして自民案は、もっとも人口比が少ない南丹市・船井郡や2番目に少ない舞鶴市をとばし、3番目の京丹後市を削減するものであり、なんら道理がなく、党利党略で府民を愚弄するものと厳しく批判し反対した。

 しかし、民主が党議拘束をはずし、1期・2期目の7名の議員が自民案に賛成、副議長が棄権するもとで、まったく道理のない自民案が可決された。これは公明党と共同提案しながら政党間の信義を裏切り、個利個略で自民党に助け舟を出すという政治家としての節操すら投げ捨てるものである。

 マスコミも、「なぜ、京丹後市の減か?」と批判の声をあげているとおり、府民の厳しい批判は避けられないものである。

 わが党議員団は、もっとも公正で平等であるべき定数問題を、党利党略、個利個略でもてあそぶこれらの党をきびしく糾弾するものである。

 いま、国の相次ぐ悪政で府民の暮らしも京都経済も、地域も大変になっているとき、府政が暮らしと地域を守る「防波堤」としての役割を発揮することが求められている。今議会の審議を通じ、国政でも、府政でも悪政を府民に押し付ける自民、公明、民主の姿が浮き彫りとなった。そして、府民とともに暮らしと地域を守るため奮闘するわが党議員団の役割発揮がますます重要となっている。

 来春のいっせい地方選挙で、現有議席を絶対確保し、過去最高の議席獲得で、府民の暮らし守る力をさらに大きくするため奮闘するものである。

2006年9月定例府議会を終えて(談話)[PDFファイル 204KB]