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議会を終えて(談話)

12月定例会を終えて

2006/12/20 更新
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日本共産党京都府会議員団 団長 松尾 孝

 京都府議会は、11月15日まで開かれていた決算特別委員会につづいて、12月1日から12月定例会が開かれ、15日に閉会した。

 わが党議員団は、自・公政権のもとでの「逆立ち税制」による増税と医療や介護、障害者対策などの負担増と弱者切り捨てで、府民の暮らしがかつてなく深刻になっているもと、府政が「福祉の増進」を目的とする自治体本来の役割を発揮するよう奮闘するとともに、臨時国会で大きな焦点となっている教育基本法改悪許さず、すべての子どもたちの健やかな成長を保障する教育を求めるなど奮闘した。

 今議会には、児童虐待やいじめ対策、和装振興などの補正予算案と「認定こども園」の認定基準の条例案、05年度決算認定など21件の議案と教育委員選任などの人事案件3件が提案され、わが党議員団は、05年度「一般会計および特別会計決算」と「府営水道事業会計決算」の認定、「認定こども園」条例の3件に反対し、他の議案には賛成した。

1、10月に長岡京市で発生した児童虐待死問題では、京都児童相談所の対応と体制のあり方が問われた。わが党議員団は、委員会や本会議での審議を通じて①今回の事件について、検証委員会での徹底した検証とともに児童相談所職員自身による検証を行うこと②児童相談所や市町村とのネットワークの構築など体制の強化を図ることを求めた。

 とりわけ、乙訓・南丹地域4市2町を管轄する京都児童相談所では、虐待対応専門チームの児童福祉司が専任でなく、管内全域の児童虐待への初期対応とともに地域担当を持っていること、さらに土日を含む夜10時までの変則勤務に組み入れられていることからチームのミーティング回数が制約されていることなどの問題を明らかにし、ただちに児童虐待対応チームの専任化と変則勤務をやめるよう求めた。

 また、緊急対応が求められるにもかかわらず、管轄区域とは異なる上京区に所在しており、そのうえ「家庭支援総合センター」の洛東病院跡地への建設に伴って東山区に移転することは、緊急対応をいっそう困難にすることを指摘し、関係者の声を尊重し見直すよう求めた。さらに、京都府が「市町村の体制が整備された」として「子育てテレホン相談事業」を廃止したが、法的根拠を持つ「要保護児童対策地域協議会」の設置は2市(城陽市、京丹後市)にとどまっており、多くの自治体が「金も人もない」ため、児童虐待対策が遅れていることを明らかにし、市町村への財政等の支援を求めた。

 知事は、補正予算で非常勤の児童虐待対応協力員5名の増員を提案するとともに、「体制の問題を含めて必要な対応をしたい」と表明した。

 わが党議員団は、「二度とこうした悲惨な事件を繰り返さない」決意で、児童虐待防止の体制強化と児童虐待を生み出さない社会をつくるため奮闘するものである。

2、補正予算案では、和装販売大手の「たけうち」グループの倒産によって大きな打撃を受けている和装関連事業者への支援として、9月議会で「きもの職人さん仕事づくり事業」など1500万円計上されたのに続いて、今議会には「匠の公共事業」の来年度予算の前倒しとして2000万円が計上された。これは関係者の切実な声にこたえたものである。しかし、事態の深刻さや、日産子会社・ジヤトコ1社に10億円もの補助金を出すことから見れば、きわめて不十分である。わが党議員団は9月議会でも求めたように、「緊急対策本部の設置」「全面的な影響実態調査」などを行い、「伝統と文化のものづくり条例」制定の趣旨にそって、和装産業振興の総合的な対策を強化するよう求めるものである。

3、今議会に「認定こども園の認定の基準条例」が提案されたが、わが党議員団は公的保育の責任を後退させ、保育を「儲けの場」とするためのものとして反対し、修正案を提出した。

 討論で明らかにしたとおり、「認定こども園」制度は、財界の要求に沿って、大幅な規制緩和や市場原理主義の導入により公的保育の分野にまで、企業が参入できるようにするためのものである。わが党議員団は、こうした規制緩和でなく「子どもの最善の利益を保証する」ことを基本に、現行の職員配置や施設の基準を守り、「保育に欠ける子」への公的責任を後退させないための修正案を提案し、実現のため奮闘した。

 この修正案の審議の中で、民主党が「利用者によって選別をされていく中で、悪質なものは排除されていく。いいものはしっかり残っていく」と修正案に反対したが、この党の立場が、福祉にまで競争をもちこみ、格差を生み出すことを当然とし、自治体の公的責任を投げ捨ててはばからない、まさに「新自由主義」そのものの立場であることは明白である。

 修正案は否決されたが、今後とも関係者と力をあわせて、保育の後退を招かないよう奮闘するものである。

4、「05年度一般会計及び特別会計」決算では、予算に比べ府税収入が383億円、地方交付税が124億円増となっているにかかわらず、「財政が厳しい」として、250億円の「経営改革を断行」し、生活保護世帯への夏季・年末見舞金廃止、敬老祝い金の縮小など府民サービスを切り捨て、府民の切実な願いである子どもの医療費助成の拡充や住宅改修助成制度創設などに背を向けている。他方、和田埠頭建設や市内高速道路、畑川ダムなど不要不急の大型公共事業や、同和奨学金償還対策事業を継続していることから認定に反対した。

 決算委員会の審議を通じて、「本則化(継続)」された法人事業税の減免額は約100億円、府民税の「定率減税廃止」による負担増は約40億円であることがあきらかになった。儲けを上げている大企業には減税、所得が減っている府民には増税という「逆立ち税制」の条例「改正」に賛成した与党会派の責任が問われている。

 舞鶴港和田埠頭建設については、今議会でも舞鶴市出身の自民党議員が「IT全盛の時代を迎えた今日、船で輸出するようなものは非常に少なくなっている。これはどこの港も同じ」と発言したが、まさにわが党議員団が「『大物流時代』といって、過大な貨物取扱量見込みで大規模な埠頭建設を進めるやり方は間違っている」と指摘してきたことに先見性があり、正しかったことを証明するものである。

 また、畑川ダム建設についても、今議会での松尾孝議員の質問で、水需要予測について「人口減少時代に京丹波町だけが6000人も人口が増える根拠があるのか」、「水の増量を求めている企業は、1社だけ。2倍以上も増量が求められている根拠はどこにあるのか」との追及に、理事者は「地元からの切実な要望。総合的な判断」と繰り返すだけで、まともに答弁ができない状況に追い込まれ、ダム建設の根拠のなさがますます明らかとなった。

 これらのムダな公共事業をきっぱりと中止してこそ、財政を立て直し、府民の暮らしを守る財政を確保できることは明白である。

 「水道事業会計」も乙訓府営水道事業で過大な水需要予測にもとづく施設建設のつけとして、使わない水の料金も住民に押し付けるもので、決算認定に反対した。

5、障害者自立支援法によって、障害者福祉に「応益負担」が導入されたことが深刻な事態を招いており、「応益負担の撤回」が関係者の共通した声となっている。わが党議員団は、知事に対し「応益負担の撤回を国に求めるべきだ」と繰り返し要求してきたが、知事は「府の軽減措置があるから応益負担とはいえない」との答弁に固執してきた。今議会ではとうとう「『利用者負担の見直し』を国に要望している」「府として所得の低い方に対する応能負担措置を講じた。国に対して同様の措置をとるよう要望している」と、事実上「応能負担を国に求める」との態度を表明した。

 これは障害者をはじめとした多くの国民の世論と府議会でのわが党議員団の論戦の結果であり、「応益負担」の撤回こそ求められていることを示すものである。

 また、自民・公明・民主がすすめた介護保険改悪で、10月から要介護度1以下の高齢者から介護ベッドなど福祉用具のとりあげが進められているが、この問題でも9月議会でわが党議員団の「深刻な事態がうまれている。府として支援措置を」と求めたのに対し、知事は「福祉用具がなければ日常生活に支障をきたす方は引き続き利用できる仕組みとなっている」と答弁していた。しかし、今議会では「国の仕組みには該当しないものの、福祉用具の利用による改善効果等がある事例もあることから、国に改善を強く提言した。国の改定の動向を見て対応したい」と必要な人からの福祉用具取り上げの実態を認め、「対応」を約束した。

 しかし、リハビリ日数の打ち切り問題では「改善が期待できると医学的に判断される場合は除外される」と、すでに全国で20万人もの患者がリハビリを打ち切られている実態に目を向けない答弁を行った。療養病床の大幅削減についても、すでに退院を余儀なくされ、退院後の急死や介護心中など不幸な事例が起こっているにもかかわらず、「府内の医療機関は慎重な対応をしている」とこれも実態とかけ離れた答弁を行った。

 他方、知事も「制度の見直しに伴い、必要なサービスがうけられない方が生じることがあってはならない」と答弁しており、わが党議員団は、府民の命を守るため、引き続き奮闘するものである。

 また、生活保護受給をめぐって、京都市や北九州市など多くの自治体で、国の指導に沿って申請する権利すら奪い、市民を死に追いやっている深刻な事態がうまれている。こうした事態を府内で起こさせないため、「窓口に申請用紙を置くと言った荒巻前知事の答弁を守るべきだ」とただした。理事者は「申請の意思のある方には、すみやかに申請していただけるよう府保健所、市福祉事務所、町村役場の相談窓口などに配置し、適切な保護を実施していただいている」と答弁した。この答弁をもとに、窓口に申請用紙を置き、生活保護を受けたいと願うすべての人が、「相談」の名で申請拒否される事態が起こらないよう全力をあげるものである。

6、また、医師確保と地域医療を守る課題はますます重要となっている。わが党議員団は、その解決の方向を示すものとして「5つの提言」を発表し、府議会でその実現へ奮闘するとともに、シンポジウムなど引き続き関係者との対話と共同を拡げてきた。こうしたもとで12月18日に開かれた「府医療対策協議会」では関係者の積極的な討論で、緊急対策案(当面の検討事項)を盛り込んだ中間的とりまとめが行われたが、マスコミ報道によれば、行政、大学病院、民間病院などが連携して、府職員としての身分や研修の保証、期限を限定した「医師派遣制度」の創設、医師の労働条件や手当ての見直しなど、多くの点で「提言」と一致する内容が盛り込まれている。これは「提言」に道理があり、現実的提案であることを示している。わが党議員団は、どこに住んでいても、安心して医療が受けられるよう、「提言」の実現めざし、全力をあげるものである。

7、わが党議員団は、この間、くりかえして青年雇用の問題をとりあげてきたが、決算委員会知事総括質疑でも、今定例会でも、1000名近い「青年雇用大調査」に示された深刻な青年の雇用の実態を明らかにして奮闘した。とりわけ、違法・無法をなくすことや誘致企業の正規雇用拡大、そのための「雇用計画書の提出」を求めることなどを提案した。

 知事も、青年雇用の課題として「非正規雇用の比率が高いこと、長時間労働など労働条件の課題があると考える」との認識を示し、「正規雇用の促進について新しい条例に盛り込みたい」と答弁した。これは「誘致企業に正規雇用の拡大を求めるべきだ」とのわが党議員団の質問に、「そんなことを要求すれば企業が来なくなる」と答弁してきたことからみれば大きな前進である。

 しかし、10億円の企業誘致補助金を予定している日産の子会社であるジヤトコが、派遣会社を通じて大量の派遣労働者を募集していることを示し「大量の派遣労働者が使われることがないかチェックすべきだ」との質問には、「法令に触れていなければチェックはできない」と消極的な姿勢にとどまった。

 また、今議会で民主党・山本議員が「不安定な非正規雇用の増加が課題」であるとし、「正規雇用を望む若年者」の声にこたえた施策を求めたが、これは同じ会派の熊谷議員が「日本共産党が要求する正規雇用の要求は時代遅れ」としてきたことが破綻していることをしめすものである。

 わが党議員団は、今後とも、青年の安定雇用の拡大、労働条件の改善のため奮闘するものである。

8、今議会は、臨時国会で教育基本法改悪が審議されているもとで開かれた。わが党議員団は、府教委がおこなっている学力診断テストによって「点数引き上げ競争」がひろがり、「授業が計画通りにすすまない」事態まで招いていることなどを指摘するとともに、教育基本法の改悪、「教育再生プラン」で、「全国一斉学力テスト」や学校選択制の実施が学校間の競争を激化させ、子どもたちをいっそう激しい競争に巻き込み、過度のストレスにさらすことになることを指摘して、「全国一斉学力テスト」への参加をやめるべきと求めた。

 知事も、教育長も実態を覆い隠して「子どもたちの学力向上を目指すもの」「学力テストは競争をあおるようなものではない」と答弁した。

 しかし、文教委員会では、わが党委員の突っ込んだ質問に、教育長は、「点数引き上げ競争」や学校の序列化など、「過度な競争主義は好ましくない」と答弁せざるを得なかった。これは、一斉学力テストなどで子どもたちを競争に追い込み、学校間の序列を付けるやり方が、教育とは相容れないものであることを示すものである。

 本議会の最終日に、教育基本法改悪が自民・公明の暴挙によって強行可決されたが、わが党議員団は、大きく広がった子どもたちの健やかな成長を願う府民の運動を力に、憲法をもとに、学校間格差と競争の押し付け、内心の自由を奪う「愛国心」の強要を許さないため、引き続き奮闘するものである。

 また、同和特別対策事業が終結しているにもかかわらず、「支援加配教員」を旧同和校に特別配置し、依然として、旧同和地域生徒を対象にした「補習学級」が実施されている事態を取り上げ、「ただすべきだ」と要求。理事者も「ご指摘のような不適切な事例があるとすれば、私たちの責任において把握したい」と答弁した。このほか、「解同」の要求にこたえ、同和地区生徒の学力などの情報を提供していることについても、「同和地区の固定化であり、同和問題解決に背を向けるもの。ただちにやめるべき」と厳しく指摘した。こうした教育分野に残されている同和特別扱いは、子どもたちの中に新たな垣根をつくるものであり、一掃するため引き続き奮闘するものである。

9、今議会には、5万8800人をこえる署名をつけての「ゆきとどいた教育を」求める請願や「社会保険京都病院の存続・拡充を求める」請願など411件が提出された。

 「社会保険京都病院の存続と拡充を求める」請願は、わが党議員が紹介議員となった400件を超える請願と、与党会派紹介の同趣旨の請願が提出された。これは地域の自治会関係者など運動が大きく広がるもとで、わが党紹介の請願とは別に、与党会派も「国への意見書提出」を盛り込んでいない請願を組織したものである。本来なら同趣旨であり、両請願とも採択すべきところを、与党会派は400件を超える請願を不採択とした。これは住民の願いを党利党略で弄ぶものである。しかし、多くの住民の請願は不採択とされたが、本会議では、この請願趣旨に沿った「社会保険京都病院の存続・拡充を求める意見書」が全会一致で採択された。

 「就学前まで通院も無料に」と求める「子どもの医療費無料化拡充」の請願に対し、与党会派は「知事がすでに拡充を約束している」として反対したが、アクションプランの最終報告では「拡充する」としながら拡充の内容はまったく触れていない。府は世論と運動に押され「拡充」は約束したものの、その内容は財政問題を最大の検討課題としており、多くの保護者の願いとなっている「8000円の負担をなくしてほしい」との声にこたえることは表明されていない。これはわが党議員団が「通院の8000円の自己負担をなくすこと、償還払いを受領委任払いとすること、対象年齢を小学校卒業まで引き上げること」を求めたことに対し、知事は「本制度を共同で実施している京都市をはじめとする市町村も負担の問題があるので、予算議論を通じて検討を深めたい」と答弁しており、改善内容はこれからの課題となっている。それだけに関係者の切実な請願を採択し、知事にその実現を求めることが必要であったにかかわらず、与党会派は不採択としたものであり、知事のいいなりのオール与党の姿を示すものであった。

 30人学級の実施や障害児教育の充実、養護教員の複数配置など、切実な願いをこめた58800人を超える府民の教育関係請願は、与党会派の道理のない態度ですべて不採択とされた。

 わが党議員団は提出された請願や府民の声に応えて「難病対策の縮小でなく充実を求める意見書」「療養病床再編・廃止方針の撤回と診療報酬の改善を求める意見書」「リハビリテーションの診療報酬算定日数制限を中止するよう求める意見書」「障害者自立支援法の『応益負担』を撤回し、抜本的見直しを求める意見書」「介護ベッドなど福祉用具の取り上げの中止を求める意見書」「『品目横断的経営安定対策』と米価対策に関する意見書」を提出したが、オール与党は、これらについて反対理由も明らかにせずに否決するという道理のない態度に終始した。

 難病対策の縮小計画に反対する意見書に対して、与党会派が対案として、わが党提案と同趣旨の「特定疾患治療研究事業の見直しに関する意見書」を提出し、わが党も賛成して、全会派一致で採択された。こうした「意見書」や世論、そして患者らの運動によって、厚生労働省も18日、「難病補助打ち切りの撤回」を明らかにした。

10、9月定例会で、自民と民主が強行した、民主主義を踏みにじる党利党略の「府議会議員の定数是正」に対し、京丹後市議会は「説明と再考を求める決議」をおこない、2度にわたって府議会議長に要請にきた。ところが議長は「決議」の受け取りさえ拒否し、他会派もこの「決議」に背をむけ、まったく無視する態度をとった。わが党議員団は、こうした議長や他会派の態度を厳しく批判するとともに、「憲法の要請と地方自治法、公職選挙法の原則にもとづいて、府議会として、再度道理ある定数是正を行うことこそ、信頼を回復し、議会の権威を高める道である」ことを強く指摘した。

 聴覚障害者からの長年の要求であり、わが党議員団が「府民に開かれた議会」とするため求めてきた「手話通訳の配置」が12月定例会から実施されるようになった。当面、本会議傍聴の際だけの実施となっており、今後テレビ放映やインターネット放映等にも実施できるよう奮闘するものである。

 今回の議会でも、府民の願い実現と「福祉の増進」を目的とする自治体らしい自治体をつくるため奮闘する日本共産党と府民の願いに背を向け、府民に負担を押し付けるオール与党との違いがますますはっきりとした。

 いよいよ、いっせい地方選挙まで3ヶ月となった。府民の暮らしと地域、平和を守る力をさらに大きくするため、過去最高の15名以上の議員団実現へ奮闘するものである。

2006年12月定例府議会を終えて(談話)[PDFファイル 248KB]