2月定例会を終えて
日本共産党京都府会議員団 団 長 松尾 孝 2月5日に開会され、09年度予算などを審議してきた府議会2月定例会が、9日閉会した。 わが党議員団は、格差と貧困の拡大、ワーキングプアといわれる深刻な事態が広がるもとで、京都府政が住民の暮らしを守り、「福祉の増進」という自治体本来の役割を果たすよう本会議や予算委員会審議の中で奮闘した。 今議会には、19年度一般会計予算をはじめとする予算とともに、「中小企業応援条例案」や「雇用の安定・創出のための企業誘致条例の改正案」など88議案が提出された。 わが党議員団は、一般会計予算、和田埠頭建設をすすめる港湾事業特別会計予算や巨大貯留管「呑龍トンネル」建設をすすめる流域下水道事業特別会計予算、住民が使わない府営水を押し付ける水道事業会計予算など7議案に反対し、他の81議案には賛成した。
1、今議会の特徴のひとつは、新年度予算に、長年の住民運動やわが党議員団が指摘、要望してきた子どもの医療費拡充、地域医療確保のための奨学金制度の創設などの医師確保対策、青年の安定雇用の拡大、児童相談所の体制強化、在宅酸素療法患者への医療費助成、木造住宅耐震補強への助成など、多くの府民の願いが反映されたことである。 与党会派は、これまで、こうした願いがこめられた請願をことごとく不採択とし、知事も「医師確保は設置者の責任」「正規雇用を要求すれば企業が来てくれない」など、背を向けてきた。しかし、多くの府民があきらめず粘り強い運動を続け、これと結んだわが党議員団の奮闘でついに実現したのである。 もうひとつの特徴は、公明党など与党会派と知事は、議会の場で、こうした事実を打ち消そうと必死で攻撃を強めたことである。公明党も知事も「予算案に反対しておいて、自分たちの実績にするのはおかしい」と攻撃したが、事実の経過を見れば、どの党が府民の願い実現に真剣に取り組んできたか、どの党が妨害してきたかは明らかである。ある病院長は「客観的事実として、共産党以外の政党は事態の把握もしていない。共産党には、調査・提言とよくやっていただいている」と語り、マスコミ関係者も「日本共産党の主張がたくさん生かされていますね」と語るように、このことは誰の目にも明らかである。
2、07年度一般会計予算は、こうした府民の願いを一定反映した予算案であるが、全体を見れば、府民への新たな負担増や無駄な事業の継続など、府民の願いに背を向ける予算が多く含まれており、わが党議員団は反対した。 第一に、昨年の府税条例の改定で府民には50億円の府民税の負担増、儲けている大手企業には100億円の減税継続となっている。 さらに、ジヤトコ1社に10億円も補助金を出しながら、「たけうち」などの倒産により大打撃を受けている和装伝統産業振興予算が1億3千万円と従来どおりであり、大型店のあいつぐ進出に対し、その影響調査も行わず、商店街振興予算も削減するなど、京都経済を担う中小企業の振興に背を向けた予算となっている。また、「品目横断的経営安定対策」で圧倒的多数の農家が除外され、地域農業の破壊に拍車がかけられているとき、府の農政が国の制度に参加できる経営体づくりにとどまっているなど、府民の営業と暮らしに新たな負担と困難をもたらす予算となっている。 さらに「集中と選択」の名のもとに、福祉施設への産病休代替職員配置補助金の大幅削減や障害者手帳更新時の診断書助成事業の廃止など、弱い立場の人たちに新たな負担増を押し付けている。 第二に、関西空港第2期工事や京都市内高速道路出資金をはじめ、斜め久世橋線、畑川ダム、舞鶴和田埠頭、海と星の見える丘公園など多額の不要不急の事業予算が計上されていることである。 とりわけ、和田埠頭建設は、舞鶴港湾計画の目標年次であった05年に1940万トンの貨物取扱量予測が、その実績は920万トンと半分以下であり、既存の埠頭で十分対応できており、その必要性のなさがますます明らかとなっている。 また、畑川ダムについては、12月議会で、わが党議員団の全企業を訪問しての「企業の水需要はほとんどない」という追及に理事者は答弁不能となったが、今回の予算委員会総括質疑では、ダム建設の前提となっている丹波町・瑞穂町水道事業組合の「水道事業計画」の破綻も明らかとなった。水道事業計画では7114区画を対象にしたアンケート調査結果が「水増し」であり、6000人増の人口予測が成り立たないことを暴露した。知事は、まともな答弁を避け、「人口増がなくてもダムは必要というのが、再評価委員会の結論」「再評価委員会が認めたから事業を続ける」と居直ったが、再評価委員の中からも「人口が今後増えるという予測に疑問を感じる。もう一度勇気ある再検討する必要がないか」「倍近く人口が増えることは信じがたい。事業所からの要望が現在の(全水量の)50%も増えるとは信じがたい」などの意見が出されたにかかわらず、事務局案(土木建築部)どおり「継続」とされたものである。 さらに、同和特別対策事業への厳しい批判が向けられているとき、京都府も依然として、「同和奨学金返還事業」を継続し、今後さらに20億円も負担しようというものであり、府民の目線から見て、とうてい認められるものではない。。 第三に、知事は、「経営の視点」で改革を行うとして「経営改革プラン」にもとづいて「行財政改革」をすすめてきた。その結果、土木事務所や保健所が統廃合され、災害対策や環境対策などで府民の安全・安心が脅かされる事態が明らかとなってきている。 そのうえ、今年度から副知事3人制としたが、自民党議員から「行政改革をすすめているとき、なぜ3人副知事が必要なのか、地方分権といいながら、なぜ総務省出身の副知事か」との質問がだされた。知事は、「京都の常識」にとらわれない猿渡副知事が「全国の常識」で「行財政改革をすすめること」と答弁した。これは「山田・猿渡コンビ」で総務省モデルの「行財政改革」を京都府民に押しつけようとしていることを表明したものである。すでに洛東病院の廃止、府立高校の統廃合が強行され、今度の予算では、府民の合意はもちろん、大学関係者の合意もないまま府立大学の法人化を強行しようとしている。 こうした府民への負担と犠牲を押し付ける予算に、わが党議員団が、府民の立場に立って反対するのは当然である。自民党や民主党などオール与党は、討論で知事への「賛辞」を競い合って述べ、すべての議案に賛成したが、これは、チェック機能を投げ捨て、議会の役割を放棄するものである。 3、わが党議員団は、貧困と格差が広がるもとで、「福祉の増進」という自治体の役割を発揮するよう求めた。 とりわけ、国保証の取り上げは、府民の命綱を奪うものである。知事総括質疑で、高すぎる国保料が払えない滞納世帯が増え、国保証取り上げが急増していること、京都府が市町村に対し「資格証明書発行ゼロはありえない」と迫っている実態を示し、「生活困窮者や子育て家庭から保険証を取り上げることのないよう」求めた。知事は、資格証明書の発行は、「納付相談にまったく応じない、あるいは保険料を払う資力があるにかかわらず納付計画が示されないなど、真にやむをえない場合の施策としていくべき。子育ての乳幼児医療についても適切な対応をはかれるようにしていきたい」と答えた。今後、生活困窮者や子育て家庭、高齢者世帯などから保険証を取り上げないよう、さらに運動を強めるとともに、払える国保料に引き下げるため、国や府の助成を拡充するよう求めて奮闘するものである。 また、障害者自立支援法による「応益負担」の廃止、負担軽減策のいっそうの拡充、施設への助成の拡充、さらに視覚障害者へのガイドヘルパー派遣への支援と養成を強く求めた。介護保険法改悪による介護ベッドや車椅子取り上げについても、府として独自の措置を実施するよう求めたが、知事は「国に対し引き続き早期の制度改正を働きかけていきたい」と答えるにとどまった。 障害を持つ子どもたちが学ぶ南山城養護学校は、生徒の増加にかかわらず施設整備が放置され、児童・生徒に多大な犠牲を押しつけ、教育を受ける権利すら奪うものとなっている。わが党議員団は父母や関係者とともに、緊急の施設整備・改善を繰り返し求めてきた。 しかし、これまで自民党などオール与党は、これらの改善を求める請願にも背を向けてきたが、今議会で、とうとう自民党議員も改善を求める事態となり、理事者も「学校周辺用地の活用も含めて検討し、教育活動に支障をきたさないよう教育環境の整備に努める」と答えた。これは多くの関係者の運動が切り開いたものであり、障害を持つ子どもたちにふさわしい教育環境の整備へ、引き続き奮闘するものである。
4、今議会には、中小企業応援条例が提案された。この条例は、当初案では「がんばる中小企業応援条例」とされていたとおり、京都経済を支えるすべての中小企業を対象にした条例ではなく「がんばる中小企業」に限定されたものであり、関係者から批判の声が出され、名称からははずされた。しかし、内容はそのまま残され、条例の目的には「中小企業の経営の安定等に関する施策を総合的に実施する」としながら、研究開発事業に取り組む中小企業を認定し、税による優遇制度や補助制度を設けるなど、特定の中小企業に限定されたものとなっている。わが党議員団は、こうした問題点を指摘し、すべての中小企業の振興を図るための基本条例の制定を求めた。 また、「雇用の安定・創出と地域経済の活性化をはかるための企業立地促進および育成に関する条例」の一部改正が提案された。わが党議員団は、これまで「府が補助金を出して誘致する企業が安定した雇用の拡大に結びつかなければ、条例の目的に合致しない」と批判してきたが、今回の改正は「基本指針」で「安定した雇用及び障害者の雇用の促進に関する事項を定める」とし、補助制度も従来の「常用雇用1人30万円」を「障害者雇用50万円、正規雇用40万円、その他10万円」としたものである。これは、正規雇用から非正規雇用へと置き換えがすすむもとで、「正規雇用の拡大」へ府が誘導するものであり、積極的な意味を持つものである。 ところが、今年度10億円の助成をするジヤトコは、正規雇用の増は、06年度はたったの15名であり、07年度5名の予定で、地元雇用は5名に過ぎないにもかかわらず、雇用補助金は限度額いっぱいの167人分出されることが明らかになった。わが党議員団は、「これは他工場からの移動であり、雇用増とはいえない。改善すべき」とただしたが、理事者は「17年度に事業所認定をしているので改正条例の対象外。いずれは地元雇用の場になる」との言い訳に終始した。 今後とも、こうした企業誘致が、真に安定した雇用の拡大、地域経済の活性化と結びつくものとなるよう奮闘するものである。 さらに、消費生活の安定及び向上に関する条例の全部改正が提案された。これは生協の関係者など消費者団体が求めてきた条例改正であり、わが党議員団は、消費者の権利をより明確にする立場から、公明党が提出した「消費者団体を組織し、行動する権利」を加える修正案にも賛成したが、自民党と民主党の反対で修正案は否決された。 5、意見書の提出では、自民、公明とともに介護保険法改悪で、低所得者や「軽度者」など多くの高齢者を介護から排除する事態をつくりだした民主党が発議し、「介護保険制度の改正に関する意見書案」を与党会派で提案した。その内容は、自らが法改悪でつくりだした「サービス水準を低下させ、新たな自己負担の導入によって介護保険が使いづらいものになっている」として、サービス実施状況の全国的な調査の早期実施や認定基準の適正化、福祉用具を継続して使用できるように求めたものである。これは制度改悪をすすめた自民党、公明党、民主党に対し、厳しい批判の声があがる中で、こうした意見書を提案せざるを得なくなったものである。わが党議員団は、抜本的な改善を求める意見書案を提案するとともに、この意見書案が府民の願いを一定反映したものとして賛成し、可決された。 また、雇用・就業対策の拡充を求める意見書案も民主党が発議者となって、与党会派が提案した。ここでも「非正規雇用が増えているといわれる若年者の就労支援」の確立、「過労死など長時間労働に歯止めをかける対策を拡充することが喫緊の課題」としている。しかし、民主党が小泉政権と競い合って「規制緩和」「構造改革」をすすめ、働くルールを壊し、非正規雇用を増大させてきたことや、「正規雇用の要求は時代遅れ」とわが党を攻撃してきたことへの反省はまったくなく、労働者の厳しい批判を取り繕おうとするものである。しかも、労働契約法の制定を求める項目もあり、わが党議員団は、この労働契約法に財界が「解雇の金銭解決制度」を持ち込もうとしていることや就業規則で一方的に労働条件の切り下げができる制度としてはならないことを指摘し、若年者への就労支援や介護・医療・教育・環境・防災などの分野での雇用拡大、パート労働法の改正による正社員とパート社員の格差是正などが含まれていることから賛成した。 同時に、わが党議員団は、労働法制の規制緩和路線から、安定した雇用の確保を大原則とする雇用政策に転換することや最低賃金を時給1000円とすること、人間らしく働くルールの確立を求める意見書を提案したが、与党会派はこれを否決した。 さらに、公明党が発議者となって与党会派は「医師不足を解消し、安心できる地域医療体制の確保を求める意見書案」を提案した。内容は、新医師確保総合対策の抜本的見直しや周産期医療体制の整備・維持、診療報酬の抜本的見直し、女性医師の仕事と生活の両立支援など当然のものであったが、今日の医師不足の原因について、政府の医師養成抑制策にあることはまったくふれていない。 わが党議員団は、問題点を指摘し、この意見書案に賛成するとともに、医師数抑制路線を改め医師数の抜本的な増員を図ることや公的病院の産科・小児科切捨てをやめることなどの意見書を提出したが、これは与党会派によって否決された。 こうした意見書をめぐる与党会派の動きは、介護保険でも、雇用の問題でも、医師確保の問題でも、府民いじめの悪政を進める自公政権とそれに加担してきた民主党に、府民の厳しい批判が高まっていることの反映である。 これらの党は、府民の願いを一定反映した意見書を提出したが、自らの責任を棚上げにして、何の反省もないままでは、府民の願いに真にこたえることはできない。 わが党は、国政でも、地方政治でも、社会保障制度の改悪を許さず、安心して暮らせる制度とするため、引き続き全力を挙げて奮闘するものである。
いよいよいっせい地方選挙が目前に迫ってきた。今議会でも明らかになったとおり、府民とともに暮らし、福祉の増進のため奮闘する日本共産党が前進するのか、それとも府民の願いに背を向け、負担増や無駄な公共事業を続けるオール与党かが問われる選挙である。 わが党議員団は、現有議席の絶対確保と前回失った議席の回復、そして選挙戦をめぐる新たな情勢を生かし、過去最高の議員団を実現し、府民の期待にこたえるため奮闘するものである。