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本会議質問

6月定例会 迫祐仁議員 一般質問

2007/06/25 更新
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【迫】日本共産党の迫祐仁です。質問に先立ち、議長のお許しをいただき、一言ごあいさつをさせていただきます。私はこの4月の府議会選挙において、上京区から初めて当選させていただきました。お寄せいただいた府民のみなさんのご期待に応え、いのちと暮らしを守るために全力で頑張る決意です。よろしくお願いいたします。それでは、通告に基づき、知事ならびに関係理事者に質問いたします。

下落する生産量、下がる単価、相次ぐ関係者の自殺 深刻な実態直視し、府は和装伝統産業に支援を まず、和装産業問題についてです。 和装伝統産業、繊維産業はきびしい状況が続いています。私の地元上京区は540年の歴史を持つ西陣織産地の中心として京都経済を支えてきました。以前はいたるところで機音がしていましたが、今では、西陣の中心地域を歩いても機音を聞くことが難しくなっています。 厳しい状況は、数字でも明確です。平成17年度に実施された第18次西陣機業調査では、昭和50年の生産ピーク時と比較すると、企業数が42%、織機台数が21%、従業者数が19%、そして、総出荷金額は34%と大きく減少しています。 丹後機業も同様です。先日、丹後織物工業組合を訪問し、お話を伺いましたが、丹後では、白生地の生産が、かつて996万反あったものが、昨年度100万反を割り91万反。今年は75万反を見込んでいるが、5月は前年比3割減で、このまま推移すると75万反を割るのではと言っておられました。京友禅協同組合の発表では、京友禅の生産量は、平成18年度は74万3干反で昭和46年の最高時に比べ4%台の最低を記録しています。 この事態に拍車をかけ大打撃を与えたのが、昨年の愛染蔵につづく「たけうちグループ」の倒産です。 丹後地方で自殺者が多数出て大問題になったのが14年前、バブルがはじけ大不況が国民を襲ったときでした。このときに週刊誌の「サンデー毎日」が、2年間で30人近い自殺者と報じました。ところが、いま、このとき以上の事態が起きています。丹後の自殺者が、平成17年が31人、18年が34人、そして今年は5月までにすでに23人、3年間で88人と異常な事態となっており、生活苦や経済苦を理由にした自殺が増えているのが特徴です。本当に心が痛む思いです。 私ども日本共産党議員団が取り組んだ和装関係業者へのアンケートや聞き取り調査でも、たけうちグループの倒産の影響をうけ、「仕事が減った」が8割を占め、受注見通しでも9割近くが「減少見込み」となっています。府の技術支援センターの報告でも、白生地の生産は前年比7割と落ち込んでいます。政府が言う、景気回復どころか、先行きがまったく見えません。まさに、「京都の和装伝統産業が存亡の危機」と言ってもよい事態であることを直視する必要があります。 本府として、和装産業のこの深刻な事態をどう受け止めていますか。また、昨年来、実態調査を強く求めてまいりましたが、現状をどう把握していますか。まずお聞かせください。 業者さんを訪問すると、「今、手を打たなければ産地崩壊の大変な事態になる」という答えが、どの業種の業者さんからも共通して出されました。これが多くの方の認識です。 これまでは織屋は、不況時にも優秀な出機を確保するために仕事を出していましたが、織屋にその余裕が無くなってきています。ある出機の方は、「3月までは織屋から仕事がきていたが、5月以降まったく無い。もしこの状況が夏場まで続くと、営業を続けられない」と、語っておられました。 多くの職人の仕事が減っており、仕事だけで生活ができなくなり、本人や、家族がパートに出てやっと生活を維持したり、和装の仕事をやめ、ダブルワーク、トリプルワーク状態の方も生まれています。 このような事態を放置すれば、せっかく着物への関心が高まりつつある中で、西陣や丹後で製品を作ること自体が出来なくなりかねない。これでは、元も子もありません。 そこで、私は、日本共産党のこれまでの提案の上に立って、京都の和装伝統産業の再生と振興のために、何点かお聞きします。

京都の和装伝統産業の再生と振興を 緊急の仕事確保 【迫】第1は、緊急の仕事確保の問題です。京都の和装関連業種は高度に分業化しそれぞれ、高い水準を持った業種があり、そのどれが欠けても西陣や京友禅、丹後ちりめんは成り立ちません。仕事がなくなれば、職人さんはいなくなり、分業体制も崩壊します。 現在は打ち切られている国の緊急雇用対策事業は、職人さんの仕事確保と生産体制の維持に一定の役割を果たしました。「京の伝統品教育活用推進事業」では西陣の「織額づくり」が事業化され、携わった西陣の賃織業者からは「親方に言われてではなく、自分らで物が作れ、学校関係者にもよろこばれ、収入も得られた」と三つの楽しさがあると大変喜ばれていました。 いま事業の終了により、府の「匠の公共事業」がその役割の一部を担っていますが、規模は大きく後退しています。例えば、西陣織会館での実演は「仕事がない中で、多少でも収入の確保になる」と喜ばれていますが、雇用が限られています。「匠の公共事業」の本年度予算は、1億1400万円ですが昨年度の「たけうち」の緊急対策として2000万円を債務保証で前倒し執行しており、実質的に減少しています。 補正予算編成も含め緊急に増額をはかり、雇用創出事業を通年で行うべきだと思いますがいかがですか。また、受付窓口を広げたり、多くの職人さんが活用できるよう周知徹底を改善すべきですいかがですか。 次に「たけうち」問題に関連しお聞きします。「たけうち」などによる囲い込み商法で生じた和装業界への不信の払拭、新しい販路の開拓が喫緊の課題です。新商品開発への意欲や最終消費者との直接のつながりを求める努力がメーカー以外にも広がってきています。この動きを促進するために、業界団体に加入していない人へも情報を提供し、新商品開発のための工房の創設とグループ化への助成を京都府が率先して行うべきではないでしょうか。 また、たけうち商法の影響で、今、和服の販売時にクレジット契約が結びにくくなっているという問題もあります。府として業界を支援し、金融機関の協力も得て、安心・安全で健全なクレジット制度を創設することも含め、事態の打開を図る必要があるのではありませんか。お答え下さい。

出機の工賃の改善 【迫】第2は、出機の工賃の改善の問題です。 仕事が少なくなっている上に、低い工賃が後継者の確保にも影響を与えています。工賃だけでは、生活が維持できないのですから、子どもに継がせることができないし、子どもも現状を見ているのですから、どうしても他の仕事に従事します。 丹後の織手さんに聞きましたが、織機1台で1か月5万~6万円が精一杯。時給にしたら200円から300円が実態です。丹後では家内労働法により出機(賃織)の最低工賃が定められていますが、高齢化の中で、年金を補う程度の工賃があれば仕事を請けてしまうという実態もあり、この極端な低工賃が全体をさらに引き下げています。 業界幹部も、「このような工賃を放置すると、丹後の賃機、技術者が消えていきかねない」との危機意識を持っておられます。 家内労働法の除外地域の西陣では、最低規定もなく、それぞれで決められているのが現状です。 私は、「工賃問題は京都府が後継者対策の一環として位置づけて取り組んでいくべき課題である」と思っています。府として丹後の最低工賃引き上げを国に求めると共に、その遵守を広く業界に促すことが必要なのではありませんか。また、西陣においても、この観点から労働局、織屋、出機、西陣織工業組合、全西陣織物労働組合など、関係者による「最低工賃協議会」を設置して、最低工賃の基準を設定することが必要ではないでしょうか。府が率先してその役割をはたすべきではないでしょうか。お答え下さい。

後継者問題、道具の確保 【迫】第3は、後継者問題、道具の確保の問題です。 私のお会いした「つづれ織」の業者は、学校で研修するだけではまだまだ、不十分だ。現場の工房で働きながら研修してこそしっかりとした技術ができると、これまでから「教え賃を負担してまでして技術を教えて」おられ、後継者のために雇用保険、社会保険も完備され、これまで15人の弟子を育ててこられていました。「後継者育成には親方がたくわえをはき出してでも教えんとあかんと思うが、いまのご時世ではこちらが倒れるかも」と心配されておられました。友禅の業者さんも、「伝統ある友禅の技術をきちんと受け継げる人を作りたいと思ったら個人でも努力するが、行政は何処まで支援をしてくれるのだろうか」と言っておられます。 京都には後継者育成機関として京都府立陶工高等技術専門校、や京都伝統工芸大学校などがありますが、全ての業種を網羅しているわけではありません。京都市にはきわめて不十分ながら育英資金がありますが、京部府は「伝統的工芸技術習得奨励事業」を廃止しました。府として伝統技能を継承するために、後継者の確保と雇用を支える支援制度を実施し、金沢市などが実施しているような、後継者育成のため頑張っている事業者と後継者に対し一人前になるまで少なくとも3年間以上の奨励金を設けて応援すべきだと思いますが、いかがですか。お答え下さい。 織機メーカーが実質的にダイレクトジャガードの生産をやめたり、部品や道具を作る小規模な専門業者が転業・廃業して機料品が減少しています。「これまでは廃業した業者の部品をもらったりして確保していたが、あと10年もつかどうか」と、心配の声が上っています。 危機に瀕している工程があることを踏まえ、全工程の緊急の悉皆調査を京都府としておこなうべきです。そして、現場の状況をきっちりと把握し、道具や部品の確保と、それぞれの道具作りの、各工程の技術者が生活できるよう制度作りを行うことが必要ではありませんか。お答え下さい。

経営を支える融資制度の充実 【迫】第4に経営を支える融資制度の充実も必要です。 たけうちグループの影響を受けた上京区のある織屋は6割も売り上げが減少し困っておられました。「京都府の制度融資を受けてなんとか当面の危機を乗り切れた」と喜んでおられましたが、現状の景気の悪さでは、無担保無保証人融資の枠の拡大とともに体力が回復するまで、返済猶予期間の延長がほしいといわれていました。 染呉服製造販売業者は借り換え融資を受けようとしましたが、不況業種に認定されず、資金繰りに大変困られました。これまでの不況の影響を受けている多くの方が悲鳴を上げている中で、融資条件の緩和、返済猶予の長期化と利子補給を行っていくなど、さらに借りやすく返済しやすくしていくお考えはありませんか?お答え下さい。

相談機能を持った施設を西陣産業の集積地に 【迫】併せてお聞きします。上京区にあった、京都市産業技術研究所繊維技術センターが平成22年度をめどに同工業技術センターと統合し、リサーチパークヘの移転が計画されています。西陣の業者や織手さんからすぐに駆けつけて技術のトラブルや新製品開発のことなどいろいろなことが聞ける場所がなくなることへの不安、不満の声を多数聞いています。府としても京部市や西陣織工業組合などと話し合って繊維技術、機器のことについて相談できる機能を持った施設を西陣産業の集積地の上京区に維持するようにすべきではないでしょうか。いかがですか。 以上、私の提案は、京都府の「伝統と文化のものづくり産業振興条例」における、京都府の責務の具体化の提案の一つであり、府民の命と暮らしがかかった切実な願いでもあります。関連業者を含めると非常に従事者の多い、京都府の基幹産業である和装伝統産業にもっと予算を増やして京都府経済の活性化につなげることが必要です。積極的なご答弁を求めるものです。

【知事】和装伝統産業は京都を代表する重要な基幹産業であるとともに、京都の社会的な財産ではないかと私は考えている。しかしながら、どの数字を見ましても近年大変厳しい状況が続いているところでありますし、その上、昨年のたけうちグループの倒産が追い打ちを掛けており、私も直接業界の方に何度もお話しを聞きましたが、非常に深刻な状況になっておりましたので、本議会において何回も答弁をしたところであり、その中で昨年度におきましては、2度にわたり補正予算を編成し、9月には新たな着物の製作など、12月には、職人さん方に対し切れ目のない仕事づくりを進めるための債務負担行為の設定など緊急対策を行なってきたところ。今年度、匠の公共事業については1億円を越える予算枠を計上しており、債務負担行為は債務保証による執行ではないので、実質的に昨年度を上回る事業規模を確保しており、そして、こうした職人さんの仕事づくりに関しましては、平成11年度から、のべ約5万4000人分の仕事を講じたところ。 府が発注する仕事づくりの主な受付窓口については、それぞれの産地の状況をもっともよく把握されている産地組合にお願いしているが、ハローワークへの掲示等を含め幅広く周知を図っている。 伝統と文化のものづくり産業振興条例に基づき、新たな取り組みを進めようとする方々のグループ化や、職人さんの仕事作りの需要開拓、後継者の育成の取り組みなども総合的に取り組んでいるところ。 販売対策については、府として産地と取り組む展示会など販路開拓に対する積極的な支援を行なっているところですが、販売の手法のあり方については、消費生活条例を8月から施行するが、その立場から不当な販売等を規制することによって消費者のみなさんが安心して着物が買える環境作りに努めることが先ず重要だと考えている。 今後とも和装伝統産業の振興を総合的に推進することにより、地域経済の維持活性化について積極的に取り組んでまいりたいと考えている。 【商工部長】和装伝統産業の後継者育成等だが、家内労働者の最低工賃については京都労働局の所管であるが、府としても地域の実情を十分お伝えするなど関係機関と連携し啓発等に努めたいと考えている。 後継者確保には何よりも仕事確保が重要であると考えており、これまでから匠の公共事業等を通して職人さんの仕事づくりを進めてきた。さらに、伝統と文化のものづくり産業振興条例にもとづき、京もの認定工芸師を制度化すると共に、今年度から新たに、京の名工と若手職人の共同製作による匠の技継承事業に取り組んでいるところである。 部品や道具類の確保についても平成18年度から調査を進めており、今年度も調査を継続するとともに、匠の公共事業の中でも道具類を製造する職人さんへの仕事作りを既に行なっているところ。 融資については、あんしん借換融資や小規模企業おうえん融資に取り組むと共に、和装産業取引改善等特別融資の金利を今年度、制度融資の中でも最も低い利率に据え置くなど、全国でもトップクラスの制度としている所です。 加えて、繊維関係をはじめとする中小企業の技術相談については、府市が役割分担をしながら協調して取り組んでいるところであり、京都市と一層連携して対応して参ります。 今後とも職人さんの実状を十分お聞きしながら、和装伝統産業の振興にしっかりと取り組んで参りたいと存じます。

迎賓館の警備で市民生活に多大な影響 過剰な警備やめるべき 【迫】次に京都迎賓館の問題について質問いたします。 私は、京都御苑の北側に住んでおりますが、ご近所のみなさんから「京都迎賓館ほど、近隣住民に迷惑をかける施設はない」という不満をお聞きしています。京都御苑は近隣住民のみなさんにとっては、市内の中心部に住みながら、豊かな自然環境を満喫できるエリアです。ところが、建物を立ててはならないはずの国民公園に、強引に建物を立て、府民から憩いの場を奪って、京都迎賓館が建設されました。「公園の樹木は1本たりとも伐らない」と荒巻知事は私の先輩である三木一弘議員の質問に答えていますが、実際には、御苑の緑と自然環境は大きく、破壊されました。建設工事期間中も、相当な我慢が周辺住民には強いられました。 また、賓客が京都に来るたびに通行規制や厳しい警護のために、我慢を強いられます。一昨年の11月アメリカのブッシュ大統領が入洛したときには、2週間前から、全国から動員された警察官によって、異常とも思われる厳戒態勢がとられました。住民にとっては、迷惑極まりないことです。 寺町通りを挟んで迎賓館の東側に暮らしておられるみなさんから、特に不満の声をお聞きしましたが、この2週間は、本当に大変だったとのことです。 パトカーが御苑周辺を1分間隔で巡回をする。各門には機動隊の大型車が停車する。いつものとおり御苑に散歩に行こうと思ったら、入り口で呼び止められる。荷物を手にした人は、かばんの中身をすべて調べられる。寺町通りの周辺のお宅では、マイカーで自分の家に出入りするにも通行証がなければ通行できない。商売人は交通規制のために商品の搬入も思うにまかせない。飲食店などでは、お客が来ないので店を休むというところもありました。一般の市民のみなさんからも、「御池の市営駐車場の入り口には、4~5人の警官が立ち、入場する車のナンバーを一台残らず控えていた」など、大変な不満の声が聞かれました。 11月15日の夕方、ブッシュ大統領を乗せた大型ヘリが住宅地の近くを低空飛行で飛び、冨小路グランドへ着陸しました。近隣のみなさんの中には、「身体が突き上げられるような轟音で、家の床が揺れ、ビックリして外へ飛び出した」という方がありましたが、夕闇の中での離着陸は、まるで映画の「地獄の黙示録」のようだったとご近所の方が、今でも語っておられます。 京都は千年の都としての格式をもっています。とりわけ御苑周辺のみなさんには、ゆったりとした「いかにも京都」といった格式のあるくらしがあるのです。京都府は、さまざまな記念行事を取り組むわけですが、京都の人々の感覚からすれば、「賓客が来るから我慢しろ」というような押し付けは、いかにもそぐわないのです。「そんなお客さんはいりまへん」というのが、京都の人々の感覚ではないでしょうか。 賓客が来るときに、くれぐれも過剰な警備にならないように、一般市民や観光客、周辺住民のみなさんの生活に配慮した警備になるようにお願いしたいと思います。警備を担当される警察本部長に答弁をお願いします。 以上をもって質問をおわります。ご清聴ありがとうございました。

【警察本部長】京都迎賓館を内外の要人が利用する場合は、施設の管理者をはじめ関係機関等と連携しながら、その時々の情勢に応じた適切な警戒警備を実施することとしております。その実施にあたりましては、府民の皆様のご理解とご協力を得られるように努めつつ、京都を訪れる要人の身辺の安全確保に万全を期したいと考えております。