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本会議質問

6月定例会 光永敦彦議員 一般質問

2007/06/26 更新
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「医療難民」を生み出す後期高齢者医療制度  払える保険料へ、国へ財政支援求め、府として対策を 【光永】日本共産党の光永敦彦です。通告にもとづき、知事ならびに関係理事者に質問いたします。 まず、来年4月から実施される後期高齢者医療制度について伺います。  この制度は、昨年6月に自民党・公明党による医療制度改悪法の強行により、75歳以上のすべての後期高齢者が、寝たきりの方も含め、一ヶ月およそ6200円、介護保険と合わせると約1万円が、年金から天引きされることとなります。高齢者にとってはさらに負担増で、「医療難民」をさらに生み出すもので、「京都府医療推進協議会」主催による『これからの医療・介護・福祉を守る府民集会』が各地で開催されたように、高齢者や医療関係者からいっせいに批判と不安の声があがっています。

 新たな医療制度を作る最大の狙いは、医療給付費を2025年までに8兆円削減し、その責任を都道府県や医療機関、住民におしつけることです。 この制度の問題は、第一に、高齢者医療に差別を持ち込もうとしていることにあります。 さまざまな病気を抱えがちな高齢者を、75歳以上になれば、どこまで治療しても、医療機関に保険から支払う金額は同じとする包括定額制が検討されています。これは後期高齢者医療を「終末期医療、看取りの医療」とし、できるだけお金をかけずに、そこそこの治療でいいという、医療に予算制をもちこむもので、日本の医療のあり方を根底から壊してしまいます。まさに、高齢者への「差別医療」そのものではないでしょうか。 さらに、「後期高齢者を総合的に診る医師」または「かかりつけ医」をコーディネーターに、「地域ごとの医療連携体制の構築」が検討されようとしています。そうなると、75歳になったとたん、かかれる医療機関やさらには回数まで制限されることになりかねません。しかも地域医療に献身的に取り組まれている医師に、さらに24時間の患者対応や地域連携強化の直接責任を負わせることで、地域医療そのものが崩壊する危険が十分に考えられます。京都府保険医協会のアンケートでは「フリーアクセスを制限する『かかりつけ医』の導入は本末転倒であり認められない」と答えられた方が85%にも達しているのです。 そこでまず伺います。後期高齢者医療制度は「医療難民」を生み出し、地域医療を崩壊させる危険がありますが、知事の御所見をお聞かせください。 第二の問題は、治療の「手遅れ」という事態がいっそう広がる懸念があることです。 制度発足時は費用の一割が七十五歳以上の高齢者保険料で賄われるため、これまで扶養家族で保険料負担がなかった七十五歳以上の方も含め、原則全員が対象となります。たとえば、息子さんの扶養家族で健康保険に加入されていた75歳以上の方は、来年から本人に保険料が新たにかかることになります。また75歳を越える夫と73歳の妻の世帯の場合、これまで世帯で保険料を払っていたのに、夫は後期高齢者医療制度に加入し、新たな保険料がかかり、妻は夫が離脱したために新たな保険料がかかるようになります。収入が生活保護費よりも低くなる基礎年金のみの人でも月額900円、寝たきりなどであっても、高齢者の実態にかかわらず新たに保険料が徴収されるのです。また病院窓口では、現役並みの収入がないご夫婦の場合では、これまで窓口負担は二人とも一割だったのが、どちらかが75歳未満であれば一人ひとりの収入で判断するため、三割負担になってしまうこともあります。しかも、保険料が払えなければ、保険証の取り上げや資格証明書の発行が義務付けられるなど、あまりに過酷なものになっています。  すでに大山崎町、旧加茂町、京田辺市議会では、保険料は低所得者へ配慮することや資格証明書の発行はしないなどを求める意見書が可決するなど、高齢者の実態に対応した制度となるよう求める声が広がっています。  そこで伺います。生活実態に見合った保険料となるよう、国に財政支援を含め求めるべきです。また、保険証の取り上げや資格証明書の発行が絶対に起こらないようにすること、さらに本人同意がないまま保険料の「年金天引き」はやめるよう、求めるべきではありませんか。 さて京都府は、今後「医療費適正化計画」や「医療計画」「健康増進計画」「介護保険事業支援計画」など、都道府県を単位とした計画をあいついで作らなければなりません。それぞれ密接な関連を持つものですが、例えば「医療費適正化計画」は毎年、都道府県の医療給付費実績が公表され、自ら数値目標を達成するために、低医療費政策の深刻な具体化を都道府県ごとに競わされることになっています。こうした狙いのモデルケースとして後期高齢者医療制度が作られ、これを運営する京都府後期高齢者広域連合に担わせようというのです。それだけに、広域連合が、少なくとも高齢者や医療関係者などの願いや実態が反映されることが最低限必要です。この広域連合は、地方自治法にもとづく特別地方公共団体となっており、独自の制度運営ができます。 そこで伺います。保険料の設定など広域連合議会で重要な条例案の審議を行う場合、公聴会など高齢者や医療関係者等から直接意見聴取する機会の設置が必要と考えますがいかがですか。また、被保険者の声を直接聴取する恒常的な機関として「協議会」の設置を行うこと、また住民に対する積極的な情報公開を行うよう、知事として広域連合に対し助言すべきですがいかがですか。

【知事】後期高齢者医療制度について、高齢者医療については心身の特性や生活実態をふまえて、必要な医療サービスを安心して受けれるよう安定的な医療保険制度を構築することが重要であると考えています。国においては、この度、医療制度改革の一貫として高齢者社会を展望し、今後の医療ニーズに対応するために新しい医療制度を構築しました。その運営については安定的な運営を図る観点から、より広域的な都道府県単位の全市町村が加入する広域連合により行なわれることになります。この新しい制度では、高齢者の方々からも所得の状況に応じて保険料として応分のご負担を願ったところですが、京都府としては、その負担が過度なものとならないよう、国に対し提案を要望してきたところです。その結果、所得に応じた保険料の軽減措置、被用者保険の被扶養者に対する経過措置、年金天引き額が過大とならないような措置、地域の医療の実情に応じた保険料の設定等、所得の状態、状況や生活実態に応じた対応が図られる仕組みが新たに構築されているところです。しかし、一方で保険料の算定方法、診療報酬体系、短期保険証、資格証明証の発行等の詳細については、今後示されることとなっておりますため、京都府としては、市町村や関係団体の意見もふまえ、まず必要な医療水準が確保され、かつ後期高齢者の生活実態にみあったような制度になるよう、先日、予算提案等を通じて国に対し提言をしているところです。

【保健福祉部長】後期高齢者医療制度の運用について、広域連合の組織や運用については地方自治法および、高齢者の医療の確保に関する法律などにより定められており、保険料の設定など重要事項の決定にあたっては、連合を構成する府内全市町村議会の議員から選出をされた代表議員によって構成される議会において、住民等の意見を反映し、審議決定されるものと考えている。また、高齢者の声を直接に聴取する聴取会の設置や公聴会の開催を含め、後期高齢者医療制度の運営に直接関わる重要な事項については、広域連合において、後期高齢者を始めとする住民の方々のご意見を十分に反映して、適切に対処されるものと考えています。

【光永】再答弁を求めますが、今度の後期高齢者医療制度は、確かに今後具体化されていくものではありますが、既に、現段階でも患者さんにとっては医療にかかる権利を制限するような内容を含んでいるわけですから、重大な事態を起こさないためにも、知事として積極的に国に対しても改善提案を求めて頂きたいと思います。同時に後期高齢医療制度は、広域連合を中心に運営していく制度になるわけで、この点では、私は2点再度伺いますが、1つは、保険証の取り上げや資格証明証の発行は絶対にあってはならないわけで、この点で、京都府として、或は知事として広域連合にそういうことは行なうべきではないと、せめて助言し求めることは出来るわけです。これをやるべきではないかと聞いたが再度お答えください。もう1点、必要名意見は、例えば長野県の岡谷市議会等でも、保険料等についても意見を上げているし、協議会の設置についても意見を上げているわけですね。ですから、議会が意見を上げているのですから、理事者の方からも、京都府としても広域連合について意見も上げて頂いて助言もするということは、制度発足前にやることは当然だと思いますがその点を再度お答えください。

【知事】短期保険証、資格証明証の発行等、詳細については、まだ今後示されることとなっていますので、私どもとしては、先程言ったように、こうしたものが高齢者の生活実態に見合うように国に対し予算提案を通じ提言・要請をしている。

【保健福祉部長】後期高齢者広域連合に係る組織の運営について、先程もお答えしたとおり、連合を構成する府内全市町村議会の議員から選出された代表議員によって構成される議会において適切に審議、決定されるものと考えています。

【光永】聞いたことにちゃんと答えて頂きたい。京都府として制度が始まる前に、これ以上の負担が増えないように求めること、或は協議会を設定して意見を聞くこと、これは当然の事なんです。議会だってやっていのですから、それをきちんと答えて頂きたいと求めて答えられないということは、これは問題なんですね。ですから、今後についてはそういう態度を改めて頂いて改善を求めていきたいというふうに思いますので指摘しておきます。

「特別支援教育」の充実へ、すべての子ども一人ひとりを大切にする条件整備と教員配置を 【光永】次に今年四月からすべての学校で実施された「特別支援教育」制度にかかわって数点伺います。  特別支援教育は、2002年に文科省が行った「全国実態調査」により、通常学級に在籍している生徒のうち、学習面や行動面で著しい困難をもっている児童生徒の割合が6.3%と公表され、2003年に「今後の特別支援教育のあり方について(最終報告)」により実施されてきました。 今後、特別支援教育を充実する上で、高機能自閉症やLD、AD/HDなどの発達障害等を把握し、その状態に応じて支援していくことはもちろん大切です。同時に教育全体においてすべての子どもたち一人ひとりを大切にするため、行政が条件整備を行うことと一体に、発達障害のある子どもたちとともに育ちあうという、子どもたちの側にたった支援が大前提であると考えます。すなわち、教育全体を支援していくことを基本として、その上でより必要な子どもたちへの対応をすすめることが必要ですが、まず教育長の御所見を伺います。  さて、本年4月1日に文科省の通達「特別支援教育の推進について」では、「体制の整備及び必要な取り組み」について述べています。しかし、国でLD等の子どもたちのために新たに配置される教員は全国で258人、特別支援学校には、新たな教員配置はわずか53人で、実に20校に1校にすぎません。しかもこれらは、他の領域における「教員配置の見直し」によって同数の教員を削減した上で行われました。これでは、教育全体の条件整備と一体に行われているとは言いがたいのではないでしょうか。本府では、府独自に昨年度から発達障害児童生徒の支援体制の整備ため教員等を京都市内33人、京都市以外で65人配置されてこられましたが、今年度も昨年と同様にとどまりました。その結果、ある小学校では何度も何度も教員配置を要望し、ようやく数時間だけ今年度から配置されたなど、現実には、いっそうの体制整備の必要性が浮き彫りとなっています。  そこで伺います。特別支援教育の充実をすすめる上で、学校現場や保護者からの要望が強く、なおかつ運用の工夫では足りないことが明らかである以上、教員配置を今後計画的にいっそうすすめることが必要と考えますが、いかがですか。

【教育長】特別支援教育について、障害の有無に関わらず一人ひとりの教育的ニーズを的確に把握し、学校全体で適切な指導と必要な支援を行なうことは、学校教育の様々な課題を解決する上で非常に有効であると考えています。このため全国に先駆けて平成18年度から小中学校の通常学級に在籍するLD、ADHD、高機能自閉症等の子どもに対し、教育的対応を行なうため、京都市を含めて約100名の非常勤講師を配置しており、学校からはこの配置を契機にして特別支援教育の体制整備が進んだとの声が寄せられています。この特別支援教育充実事業の目的は、発達障害の子どもの数に応じて専任の教員をつけるということではなくて、学校全体で発達障害の子どもへの教育的支援を行なうための体制づくりを促進するところにあり、今後、配置校での先導的な実践を府内一円に広げていきたいと考えています。  また、今年度から小中学校等への支援も含めた、地域における特別支援教育のセンター的機能を充実するため、全ての府立特別支援学校に専任のコーディネーターを配置して地域支援センターを開設したところであり、今後とも医療等関係機関との連携を図りながら、発達障害の子どもへの総合的な支援体制を図っていきたいと考えています。

【光永】特別支援教育については、体制づくりの制度で対応してきたと府教委が答弁されましたが、これは体制づくりだけでは駄目なんですね。具体的に必要な子どもたちに必要な、しっかりとした支援を直接できる先生の数を増やしていくということが無ければ、かたちだけつくっても中味が伴わないということになりかねません。ですから、今の数では不十分だから、今後計画的な配置を国にも求めて頂きたいし、同時に京都府としても努力をして頂きたい。これは求めておきます。

保護者に寄り添った身近で温かい支援として、 ピアカウンセラーの育成と配置を 【光永】さて特別支援教育に関わって「ピアカウンセリング」について伺います。 「ピアカウンセリング」は、1970年代にアメリカで、アルコール依存症のセルフヘルプ活動としてスタートしました。「ピア」とは、対等・仲間を意味しており、資格も定義もまだまだ定着しているとはいえません。しかし、一人ひとりの目線に立った支援をするという考え方から、児童虐待や不登校、高齢者などさまざまな分野で広がっています。 私の知人に、来年小学校に入学予定の高機能自閉症の子どもをもつ保護者の方がおられます。お母さんは常勤の仕事を退職しパートをしながら、子どもは保育園に、児童デイサービスに週一回、発達外来にも通院されています。 診察を受けたのち、児童精神科医や療育スタッフ、保育士、両親などがカンファレンスをすることが、子どもの成長にとってはもちろん、保護者にとっても有効です。ところが、このカンファレンスの日程を調整するにも、すべて保護者が関係機関と連絡をとって調整しなければなりません。また初めての人や場所が苦手なため、小学校に入学するにあたり、学校に連絡し、日程を調整して、小学校にいるウサギなどを見にいくことなどで、じっくり学校にかかわる努力もお母さん自身がされています。このように、発達障害のある子への支援は医療や福祉、教育がそれぞれ連携することが必要であるにもかかわらず、一つひとつの対応に相当なご苦労をされています。そのことを思うとき、保護者に寄り添った身近で温かい支援がいま必要ではないでしょうか。  本府では、府立盲学校、聾学校、養護学校の10校を特別支援学校として、地域へのサポート体制を強めるとしています。そうした中、就学前の相談も含め、昨年度は770件の発達相談を中心とした相談が寄せられました。今後、いっそう関係機関が連携して相談に応じる体制強化が必要であることは言うまでもありません。同時に、国において「発達障害早期総合支援モデル事業」が全国17地域で指定され早期支援体制の整備などが検討され始めていますが、本府として保護者同士が身近に相談できる場としてのピアカウンセリングや、関係機関の情報や連携をより保護者の願いによりそって支援するピアカウンセラーの育成と配置が必要と考えますが、いかがですかお答えください。

【保健福祉部長】発達障害のある子どもへのピアカウンセリングについて、保護者がその悩みを相談できる体制の整備は重要な課題であると考えています。このため京都府では、これまでから保護者ご自身が相談に応じ、相互に支え合う活動として、府内各保健所の乳幼児健康管理事業や地域の児童デイサービス、療育教室の中で同じ悩みをもつ保護者同士が語り合う場を確保してきた。一方で、発達障害に関する専門家や、発達障害者の保護者にご参画頂いている発達障害者支援体制整備検討委員会においては、特に専門的な相談態勢の整備や関係機関による支援体制の構築は必要であるとのご意見を頂いているところです。このため、京都府では今年度、当初予算でお認め頂いた発達障害者支援事業費により、近く発達障害者支援センターを開設し、臨床心理士等を配置するとともに、府内6箇所の福祉施設にコーディネーターを配置することとしています。あわせて、発達障害者の保護者等の民間団体や保護者のニーズに基づいて実施する研修や啓発活動などに対しても助成をすることとしています。このような取り組みを通じ、保護者の更なる交流や、専門的相談態勢の構築をすすめることとしているが、保護者によるピアカウンセリングを行なうことについては、発達障害者支援体制整備検討委員会において、その必要性も含め十分意見をお聞きする必要があると考えています。

【光永】ピアカウンセリングについては、質問でも述べましたが、保護者だけによるピアカウンセリングというのが一般的な認識かもしれませんが、私が述べているのは、例えば発達障害の子どもの保護者の方については、その子どもをもつ保護者同士の交流も勿論必要ですが、同時に保健士さんや施設職員さんがしっかり位置づいて、そして具体的な関係機関との連携調整ができる仕組みが身近にあった方がいいのではないかという前向きな質問ですので、これはまだ制度としては確立していないものですが、これはどうしても必要なんです。ですから、積極的に研究も頂いて具体化を求めておきます。ぜひ具体化をお願いします。

全国一斉学力テストについて、根本的な検証を行ない、学校間競争を求めるな 【光永】質問の最後に、全国一斉学力テストについて伺います。  本年4月24日に、多くの関係者の反対の中、全国いっせい学力テストが実施されました。  私どもは、すべての子どもたちの基礎的な学力の向上とそのための条件整備を求めてきました。そうした立場から、全国いっせい学力テストは、学校のランクづけをいっそう助長し、競争激化を子どもに強いる道を本格的に開くものになると厳しく指摘してきました。また児童や生徒の「質問紙」調査では「1週間に何日塾に通っているか」「学習塾では学校より難しい勉強をやっているか」など受験産業がほしくてたまらない情報にかかわる質問がされるなど、大きな問題を残しただけに、国の責任と教育委員会の立場が問われているとともに、今回の学力テストについての根本的な検証が必要です。 広島県北広島町教育委員会が、昨年おこなわれた予備調査の問題などを参考に、問題集をつくり、町内の全小中学校に配布し、事前対策の練習を指示していたことが報道されましたが、本府でも八幡市では、「学力向上」を名目に、全国一斉学力テストの得点アップに向けた取り組み計画の提出を全小中学校に求めたようです。その取り組み計画書では、記入例として「一年間のまとめの時間(教科の時間)を活用し、全国調査模擬プリント等を繰り返し実施する(主に「活用に関する問題」を中心に)」などとして例示されています。このような事前対策により、得点アップ競争が行われることは、学力の実態を把握するという調査目的からも大きく逸脱し、先生と子どもたちを競争主義・得点至上主義で追い込んでいくものです。 そこで伺います。昨年12議会の文教常任委員会で、教育長は「過度な競争主義というのは好ましくない」と答弁されましたが、今のべたような事態をどう把握され、また総括されていますか。まずお答えください。 さて、全員を対象にしたいっせいのテストを行ったことが、どんな事態を引き起こしたでしょうか。 すぐに「キレる」と自他共に認めている小学六年生の男の子は、主として活用に関する問題を解く二時間目、三時間目となると、お手上げとなり「白紙」の回答用紙となりました。担任の先生はテストの途中で「キレ」たり、エスケープしなかったことを「えらかったね」と褒めてあげたかったと述べておられました。しかし、このテスト結果は九月に子どもに返却されます。「誰よりも傷つきやすい子に、国から『あなたは0点!』とダメ押しするようなことをして、いったい何の意味があるのでしょうか。『やる気』を奪うだけではないでしょうか」と担任の先生は述べておられました。また、テストに集中しなくなるので「成績に関係のないテスト」とは言わないでおこうと申し合わせた学校もありました。さらに、テストの採点に、わかっているだけでも約2700人が、派遣会社11社からの派遣労働者で、しかも正誤の基準が途中で変わるなど混乱が生じています。これらは、いっせいに全員を対象に行うことでおこった矛盾や弊害を象徴しているのではないでしょうか。 文部科学省は、今後「検証・改善委員会」を設け、今回の学力テストの今後の対応について協議するとしています。しかし大切なことは、テストの内容や方法の検証ではなく、毎年全国いっせいに行う必要があるかどうかこそ問われるべきです。中教審義務教育特別部会で東京大学の刈谷教授は、「抽出調査の方が平素の学力を捕らえる上で正確というのが、アメリカなどの専門家の結論である」と述べておられます。そこで伺います。毎年毎年全員を対象に行うのではなく、課題を明らかにするためなら、抽出にすべきだと考えますが、いかがですか。 また、実施したテストの結果について、文部科学省は「配慮事項」で市町村名や学校名を明らかにした公表は行わないとし、都道府県単位および政令市の平均点については、秋に公表するとしています。 しかし、学校選択制をとっている品川区は「保護者が学校を選ぶときの資料になれば」と公開を決めています。また、枚方市が独自に行ってきていた学力診断テストの学校別結果の公表を学習塾経営者が求め、それが公開されたことで波紋を投げかけています。 本来、子どもの学力や成長とは、多様で深いもので、一回きりの学力テストの点数で単純にはかれるものではありません。それだけに、子どもを直接指導されているそれぞれの教員や学校がいちばん具体的かつ継続的に把握しておられます。だから現場でこそ的確に対応できるのです。そこで伺います。今回の学力テストの結果を受け府教育委員会として、それぞれの学校がもつ自校の課題の解決のためと称し、学校間競争を事実上学校現場に求めるようなことをすべきではありませんが、いかがですか、お答えください。

【教育長】全国学力学習状況調査について、去る4月24日に府内の全市町村の参加のもと、混乱もなく実施されたところであり、ご指摘のような過度な競争となっているというような報告は受けておりませんが、子どもたちに確かな学力を身につけさせることは教育の最重要課題であり、そのために各学校が様々な教育活動によって学力向上につとめることは大切であると考えています。また、この調査は、義務教育の機会均等や教育水準が確保されているかなどを把握するためのものであり、個々の学校においても、一人ひとりの学習状況などをきめ細かく把握し、授業改善や学力向上の取り組みにつなげることが重要であると考えており、全児童生徒を対象に実施されることには意義があると考えています。  いずれにしても、府教育委員会としては、先程、渡辺議員の質問にお答えしたとおり、今後とも、学力を向上させる取り組みを一層推進させていきたいと考えています。

【光永】全国一斉学力テストについてですが、先程、過度な競争となっている事態はないと言われましたが、私の質問の中でも述べたとうり、これは一例ではないのです。過度な競争に現実なっている事態が数々起こっているわけです。ここに目をつぶるという事は、教育委員会の良識を発揮していないということになりますから、やはり、現場の実態をしっかりつかんで頂いて、私は既に述べた訳ですから、そういう事態をつかんで、こういう事があってはならないという立場で対応して頂きたい。  同時に、この全国学力テストは、こういうかたちで一斉に学力テストをやるということ自身が問題なわけですから、こういう形態そのものは止めていくということが必要だということを改めて求めて私の質問を終わります。