資料ライブラリー

討論

2007年6月定例会 光永敦彦議員 議案討論

2007/07/03 更新
[ 討論 ]
この記事は 7 分で読めます。

 日本共産党の光永敦彦です。議員団を代表し、ただいま議題となっております議案13件について、第5号議案・職員の退職手当に関する条例の一部改正、第9号議案・京都府財産条例の一部改正、第10号議案・警察本部組織条例の一部改正の議案3件について反対し、他の10件に賛成する立場から討論をいたします。

 まず2号議案「京都府子育て支援条例」については、賛成するものですが、一言申し上げます。少子化は、日本の社会の未来にかかわる重大問題であり、その対策のため子育て支援を社会全体でおこなうことが必要です。本条例案は、京都府が子どもの権利を保障し、少子化対策や子育て支援策を今後いっそう推進することを大きな目的とした条例となっています。ただし、結婚や出産は個人の選択にゆだねられるべきことが前提であることは当然です。  また、子育て支援策の実施にあたっては、第一に、長時間労働や不安定雇用など雇用破壊を改善し、働くことと子育てが両立できる施策を行うこと、第二に、高い学費など保護者の経済的負担の軽減支援を行うこと、第三に、人間をおとしめ、粗末にする風潮に見られる日本社会の道義的危機への対策を行うことを求めるものであり、我が党はそのために全力をあげるものです。 なお、三点指摘しておきます。  第一は、子育ての主体についてです。  子育ては、本来自発的なものです。ところが本条例(案)では、保護者等に対し、「子育てについての第一義的責任を有する」と、ことさら強調しています。責任を果たしたくても果たせない客観的な条件にある保護者や、また子育て最中の保護者が孤立感を持つ現実などがあるにもかかわらず、地方自治体が、保護者等に対し子育ての第一義的責任を求めることになると、結果として保護者を追い込んでいく可能性があります。子育て支援は社会全体で行うべきものです。  第二に、「家族の絆」や「たくましく生きる力」など、多様な考え方の存在するものをあえて盛り込んでいることです。  子育てのあり方や家族のありようは多様であり、その考え方も多様であるだけに、解釈と運用にあたっては、京都府として特定の考えの押し付けとならないよう慎重にあつかうべきであると考えます。 第三に、子育て支援策における教育についてです。  子育て支援策を行う上で、地方自治体の役割は、社会教育法第三条で「環境を醸成するように努めなければならない」とあるとおり、条件・環境整備です。ところが条例案18条で「府は...必要な教育および啓発を行う」とされています。これは家庭や子育てのあり方等内心におよぶ可能性があるため、実施にあたっては内心の自由を保障した厳格な取り組みがされるよう求めるものです。

 次に第3号議案「京都府鴨川条例」ついてです。これまでからわが党議員団は、鴨川保全条例の制定や保全ゾーンの設定など繰り返し求めてきましたが、長年にわたる鴨川の保全を求める多くの府民のみなさんの運動などにより、今回条例が制定されることを歓迎するものであり賛成です。今後、この条例が、鴨川を愛する人々の期待と関心にこたえた実効あるものとなるよう、数点について、意見を述べておきます。  まず第一に、第24条で「知事は鴨川府民会議を開催する」としていますが、「府民協働の推進」のためにも、この府民会議には、鴨川を愛し、関心を持つ多くの府民が参加し、意見を述べることができるよう、公募制とすることや、またワーキンググループによる議論など、府民意見の聴取への積極的な取り組みを求めるものです。  第二は、鴨川の水質保全や治水対策、景観保全など、その多くが京都市の責任と権限に属するものであるだけに、これまでから議論してきたとおり、本来なら京都市との「府市協調条例」とすることが求められています。今後、保全区域での開発行為や上流域での開発問題、さらには下水道整備など水質悪化への対策など、美しい鴨川を未来の世代に引き継ぐために、京都市がふさわしい役割を発揮されるよう京都市への働きかけを求めておきます。

 次に、第5号議案「職員の退職手当に関する条例一部改正」の件についてです。これは雇用保険法改正にともなうものですが、ワーキングプアや不安定な身分で働く労働者の労働条件が問題となっており、この改善こそ必要であるにもかかわらず、今回の改正により、退職手当の適用に必要な在職期間をこれまで六ヶ月以上であったものを、十二ヵ月以上に延ばすなど、明らかに労働者に不利益をもたらすもので、反対です。  次に、第9号議案「京都府財産条例一部改正」の件についてです。住民共有の財産である庁舎や学校、公園、病院、保育所などの行政財産の貸付等を拡大し、土地や建物を民間事業者が営利活動に利用できることを可能にするものです。これにより、自治体本来の業務や住民サービスを後退させるもので、反対です。  次に第10号議案、「警察本部組織条例一部改正」についてです。 これは、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」の施行による条例改定ですが、重大な問題をはらんでいます。  第一に、これまで金融機関には、預金の中に犯罪や麻薬取引などで得たと疑われるものがあった場合、金融庁に届出が義務づけられていましたが、今後、この条例改正により、金融機関だけでなく、クレジット業者、宅建業者など数十万軒に及ぶといわれる企業や事業者にも、罰則付きで届出が義務付けられます。第二に、届出先は、金融庁から国家公安委員会、警察庁に変わることとなります。 これにより、府民生活に密着した取引の記録の届け出が義務化され、プライバシーの侵害、業者と顧客の信頼関係を損ねさせるとともに、事業者に密告を強制することとなる恐れがあります。  警察は一切の情報を監視下に置き、義務に反した業者に対し、監督官庁の是正命令に意見を述べる権限や、立ち入り調査を行えることとなります。  こ れは、警察の調査名目による施設への立ち入り、検査・質問などが令状なしに実行できるもので、しかも拒否や忌避を犯罪とするなど警察権限を拡大し、深刻な権利侵害を起こす恐れがあります。 よってマネーロンダリング対策に名を借りた、国民の権利と自由を過度に制限する今回の条例改正には反対です。

 最後に一言申し上げます。 今議会中、衆議院議員中川泰宏氏の違法・脱法まがいの行為が明らかとなり、調査がすすめられています。現在、明らかとなっているのは、南丹市八木町の自宅敷地の複数の建物をめぐり、永年にわたり、登記がされず不動産取得税や固定資産税の未払いが起こり、また建築確認申請をせずに建築が始められていたこと、さらに普通河川中野谷川を無許可で占用し建物を建てていたことなどです。中川氏は、これまで八木町会議員、八木町長を歴任し、また現在、衆議院議員やJA京都中央会会長などをつとめており、これらの事態は、およそ公人として看過することのできない重大な問題です。同時に、議会審議の中で、本府の対応の不十分さも指摘されたとおりであり、今後、全容の解明と法の厳格な適用にもとづく厳しい対応を求めるとともに、こうした事態が二度と起こらないよう再発防止を厳しく求めるものです。なお、中川氏は現在、自由民主党衆院選挙区第4支部長であり、自由民主党の責任も問われています。  さて、5日に閉会を迎える国会では、冒頭から政治と金の問題が大きな問題となり、国民の政治不信をかつてなく増大させるとともに、大きな批判の声が上がりました。さらに消えた年金問題が拍車をかけ、その上、自民党・公明党が、数の力で衆参合わせて二十回近い強行採決を行ったことは、まさに国民無視の暴走政治に他なりません。また、久間防衛大臣の原爆投下は「しょうがない」とする発言は、数十万人の尊い命が奪われた唯一の被爆国の大臣として、全く資格がありません。   参議院選挙公示を目前にして、安倍内閣の支持率が急落しているのは当然です。我が党は、政治不信の払拭、貧困打開、格差是正、民主主義と憲法9条を守るため、全力をあげることを表明し、私の討論を終わります。  ご静聴ありがとうございました。