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2007年6月定例会 加味根史朗議員 意見書討論

2007/07/03 更新
[ 討論 ]
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 日本共産党のかみね史朗です。議員団を代表して、ただいま議題になっています14件の意見書案のうち、自民・公明提案の年金問題に関する国民の不安の早期解消を求める意見書案、自民・民主・公明提案の地方の道路整備の安定的財源確保に関する意見書案の2件に反対し、その他12件の意見書案に賛成する討論を行います。

 まず最初に「消えた年金」に関する意見書案についてです。この問題は、国のずさんな管理によって国民がうけとる年金の減額や年金受給権が消滅しかねないものであり、公的年金に対する国民の信頼を根底から揺るがす深刻な問題であります。今日まで放置してきた歴代の社会保険庁長官、厚生労働大臣、政府の責任は、きわめて重大であり、自らの過失と責任を認めて謝罪するとともに、国民すべての年金受給権を守るためにあらゆる手段をつくすべきであります。 この問題の解決のためには、わが党の意見書案で提案しているとおり、すべての受給者、加入者に加入履歴をただちに送付し、国民の不安に応えること。年金記録について、すべての手書き記録やマイクロフィルムの記録と突き合わせ、1年以内に誤りを修正すること。本人による合理性のある申し立てや同僚による証言等を尊重して年金を支給することなどを、ただちに実施すべきであります。 同時に許せないのは、自民党と公明党が社会保険庁の廃止・解体法を強行したことです。この法律は、社会保険庁を3年後に廃止・解体し、日本年金機構など民間に年金や社会保険業務をゆだね、国の責任を完全に投げ捨てるものであります。この暴挙を撤回し、国の責任で年金問題の解決にあたるよう強く求めるものであります。 社会保険庁の改革で国民が求めてきたのは、莫大な年金保険料の流用と無駄遣いをやめることや、天下りの禁止などの抜本改革であります。とりわけ、年金福祉施設265カ所に1兆5697億円、グリーンピア13カ所に3798億円など、年金給付以外に使われてきた5兆6千億円のむだづかいをたださなければなりません。今回の社会保険庁の廃止・解体は、年金保険料の流用を野放しにするものであり、この点でも許すことはできません。わが党提案の意見書案は、この点を明確にしており、議員のみなさんの賛同をお願いいたします。 民主提案の意見書案は、社会保険庁の廃止・解体の問題について触れていないのは不十分だと考えますが、宙に浮いた年金問題の解決策については、わが党とほぼ同趣旨であり、賛成するものです。 自民・公明提案の意見書案は、政府の進める措置を事実上追認し、国民の受給権を守るための具体策がまったく示されないものであり、とうてい府民の納得を得られるものではありません。よって、賛成することが出来ません。 次に、年金問題とともに、住民税の大増税に関する意見書案についてであります。今回の定率減税廃止による住民税増税は、1.7兆円にものぼる大規模なものであり、ほとんどの人が2倍になり、高齢者は年金課税の強化が加わって3倍から4倍になる人もでています。こういうなかで、「収入は増えていないのに間違いではないか」「年金生活者に死ねと言うことか」など怒りと抗議の声が殺到しています。 京都市では6月11日から15日までの5日間だけで、約6100件の問い合わせが区役所に殺到しました。昨年も、4万人の市民が詰めかけましたが、今回は昨年の5日間の問い合わせ件数とほぼ同数となっており、最終的に昨年並みの相談数となるのは必至です。京都市に次いで多い舞鶴市では、7日から26日までに住民税で1000件、11日からの国保料で600件の問い合わせがあり、住民税については昨年よりも100件の増加となっています。 国民にはこのように大増税を押し付ける一方で、大企業や大資産家に対しては、減価償却の見直しと証券優遇税制の延長で新たに1.7兆円の減税がおこなわれるのであります。不公平きわまりないではありませんか。さすがにテレビのニュース番組や週刊誌などでも、「利益を増やしている大企業の減税が見直されないのはおかしい」と批判の声が広がっているのであります。 空前の利益をあげている大企業や大資産家に応分の負担を求めれば、増税をおこなう必要はありません。住民税の増税を中止し、すでに実施された増税分については、「戻し税」方式で国民に返すべきであります。わが党提案の意見書案に賛同を求めるものであります。

次に、国民皆保険など医療制度にかかわる意見書案についてであります。保険証があれば「誰でも、いつでも、どこでも」安心して適切な医療がうけられることは、府民にとって必要・不可欠な条件であります。そもそも憲法に明記されているように国民の生存権を保障し、社会保障を増進する責任は国にあるのであります。  ところが、政府は、医療費抑制を目的とした医療制度改悪をすすめ、高齢者医療の保険料と窓口負担増、長期入院の食費、居住費の全額自己負担化、高額療養費の負担引上げなど、国民に大きな負担増を強いてきました。さらに、国民健康保険証のとりあげ、23万病床もの療養病床の削減、深刻な医師不足の放置、高い保険料と医療水準の引き下げを押し付ける「後期高齢者医療保険制度」の創設等、国民の医療を受ける権利を奪い、国民皆保険制度の根本を次々と破壊してきたのであります。いま、こうした相次ぐ社会保障の切り捨てに国民や高齢者の怒りと不安は頂点に達しています。 こうしたなかで、わが党提案の国民皆保険制度の堅持を求める意見書案は、府民の期待にこたえ、国民の医療を受ける権利を保障するとともに、医師不足の解消、患者負担の軽減など公平・平等な国民皆保険制度を堅持することを求めるものです。後期高齢者医療制度の改善を求める意見書案は、公費負担比率を大幅に引き上げ、高齢者の負担の大幅な軽減と地方公共団体の負担軽減をはかり、保険証の取り上げと短期保険証・資格証明書の発行の強制を行わないことを求めるものです。療養型病床群の削減・廃止計画の中止を求める意見書案は、「医療難民・介護難民」を新たに生み出す、診療報酬の引き下げや療養病床削減・廃止方針の速やかな撤回を求めるものです。みなさんの賛同を求めるものであります。 自民・民主・公明提案の国民皆保険制度に関する意見書案は、国の医療制度改革を当然視し、国民の不安を広げている医療費の負担増や療養病床の削減・廃止などの是正にまったく触れていませんが、「すべての国民が安全で安心のできる医療サービスを受けることができるよう」に求める趣旨であり、賛成いたします。 なお、今議会に提出された京都府医師会の国民皆保険制度の堅持に関する請願は、府民の医療に対する不安を反映し、安心できる医療サービスを求める当然の内容であり、全会一致で採択されました。全会派一致で採択された請願に基づく意見書案は、委員会提出とすべきであります。そうしてこそ、京都府医師会のみなさんの期待にもこたえ、より力を持った意見書案としてアピールできるのではないでしょうか。この点を指摘しておくものであります。

次に、日・豪経済連携協定いわゆるEPA交渉に関する意見書案についてであります。安倍内閣は本年4月、日・豪EPA 交渉を開始しました。オーストラリア政府は、農産物も含む関税撤廃を強く主張するとみられており、もし関税がゼロになれば、小麦、砂糖、乳製品、牛肉の4品目だけでも7900億円、全国生産額の10%の減産となり、日本農業に大打撃を与えることは必至であります。また、このEPA交渉はアメリカ、カナダなど農産物輸出国からの同様な関税撤廃要求につながり、WTO交渉にも大きな困難をもたらすものであります。日本農業に責任をもたない政府の対応は到底許せません。  国内農業を維持・発展させることは食料の安定供給はもとより、地域経済や国土・環境にとっても重要な役割を持っており、国民の生存基盤に関わる大問題です。安心して再生産できる農政を確立し、自給率の向上、食の安全・安心を確保するためにも、日・豪EPA交渉は中止すべきであります。わが党提案の意見書案は、この点を明確にしたものであり、みなさんの賛同を求めるものです。 自民党・民主・公明提案のWTO新ラウンドにおける農業交渉及びEPA・FTA交渉に関する意見書案は、重要品目の除外を求めておらず、国内農業に影響をもたらす恐れがありますが、上限関税の設定は行わないことや、国全体のみならず、地域農業実態に十分配慮することを求めており、賛成いたします。 あわせて、わが党提案のBSE対策の一層の充実を求める意見書案についてです。政府は、都道府県への生後20ヶ月齢以下の全頭検査国庫補助を08年夏までに打ち切る方針を固めました。さらに、日米政府は、米国産牛肉の輸入再開後も、違反事例があとを絶たず、安全性の確保について消費者の理解が得られていないにもかかわらず、水際での全箱確認をやめることで合意しました。 日本国内のBSE対策は、リスクを限りなくゼロにする安全・安心の世界に誇れるシステムをつくってきたのであります。輸入牛肉にも日本国内と同等の措置が必要であり、アメリカの圧力で国内のBSE対策が後退することがあっては決してなりません。 府民の安心安全をまもるために、全頭検査体制を維持するための検査費用について補助制度を継続すること。特定危険部位や衛生証明書記載外部位の混入がないよう、輸入時の全箱確認を継続すること。米国がBSE対策について、わが国と同一基準による安全措置が確立されるよう要求することを国に強く求めるべきであります。わが党提案の意見書案に賛同をお願いいたします。

次に、道路整備に関する意見書案についてであります。道路は、住民の生活や経済・社会活動を支える重要な社会基盤であります。とりわけ生活関連道路は、過疎地や中山間地域を含めて緊急医療や福祉施策を支えており、暮らしを守り、地域の振興をはかるために、その整備は必要不可欠であります。 しかし、京都府が管理する道路の改良率は、平成17年4月1日現在で国道が84.1%、主要地方道59.3%、一般府道43.1%にとどまっています。府域の生活道路整備は十分といえません。 ところが、国の道路行政は、道路特定財源方式により、国・地方あわせて5兆円をこえる税金が高速道路優先で使われており、生活道路を後回しにする仕組みとなっています。また、この道路特定財源方式が、ムダな大型公共事業の温床となってきたのであり、道路特定財源の一般財源化をはかり、高速道路優先の道路行政をあらためることこそ、いま求められているのであります。 政府が昨年12月に閣議決定した道路特定財源の見直し、「一般財源化」では、不要な道路のムダづかいがなくなる保証はまったくありません。その中身は、「真に必要な道路整備は計画的に進める」としたうえで、一般財源化する範囲を、税収全体ではなく道路歳出を上回るものに限定するなど、道路建設推進の方針に変更はありません。 わが党提案の意見書案は、道路特定財源の一般財源化をはかり、高速道路優先の道路行政をあらためることを明確にし、一般国道や地方道、奥地道等の整備促進を強く要望するものであり、みなさんの賛同をお願いいたします。 自民、民主、公明提案の地方の道路整備の安定的財源確保に関する意見書案は、道路特定財源方式の存続を求めるものであり、賛成することは出来ません。

最後に、わが党提案の自衛隊による国民監視の中止を求める意見書(案)についてです。自衛隊の情報保全隊が全国各地で、団体や個人を対象とした違憲・違法の国民監視活動を行っていたことが、「内部文書」で明らかになりました。 これは、集会・結社や言論・表現の自由、思想・信条の自由、プライバシーを侵害する憲法違反の行為であり、自衛隊法にも根拠のない違法な活動であります。また、「政治的中立」「文民統制」という自衛隊の大原則にさえ違反するものであります。 いまこの問題に対して、政党関係者やマスコミ、知識人など広範な国民のみなさんからきびしい批判の声が上がっています。日本ペンクラブは、「取材行為の直接的及び将来にわたっての間接的検閲行為に他ならない」として、自衛隊の監視活動の中止を求めています。6月14日に東京で開かれた自衛隊の国民監視抗議集会には、民主党の横路孝弘衆院議員や平岡英夫衆院議員、社会民主党の保坂展人衆院議員も参加され、「憲法違反であり、すべての国民の問題である」と述べられています。  わが党の意見書案は、情報保全隊の活動の全容を明らかにするとともに、違憲・違法な国民監視活動を直ちに中止するよう強く求めるものであり、みなさんの賛同をお願いするものであります。以上で私の討論を終わります。ご静聴ありがとうございました。