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議会を終えて(談話)

6月定例議会を終えて

2007/07/05 更新
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              日本共産党京都府会議員団 団長 新井 進

 6月19日から7月3日までの会期で行われた六月定例議会が閉会した。今議会には一般会計補正予算他十三件及び、追加議案として人事案件二件が提案された。わが党議員団は「職員の退職手当に関する条例改正案」、「財産条例改正案」、「警察本部組織条例改正案」の三件に反対し、人事委員会、収用委員会委員の再任を含め他の議案には賛成した。

今議会は、いっせい地方選挙後初めての議会であり、府民生活がいっそう厳しくなる中、わが党議員団は府民のいのちと暮らしを守る立場から、かかげた公約実現に全力をあげ、格差是正や負担増、憲法と教育問題など積極的に論戦をおこなった。

1、定率減税の全廃による住民税増税など1兆7千億円もの新たな負担増に対し、区役所に連日多くの住民が押し寄せている。わが党議員団は、この負担増の中止を求めるとともに、川崎市の例をあげ、一定以下の収入の方に、市町村と協議し府民税・市町村民税の減免制度の実施を求めた。また、国民健康保険について、保険証取り上げを行わないよう、市町村に「通知」を出すことなど、府民生活を守る立場から提案した。 知事は、保険証取り上げの実態について「今年度は、市町村における運用状況について、個別に点検確認を行なう」と延べ、さらに厚生常任委員会で、保健福祉部長から、「一律の取り上げ等の事態が起こらないように実態把握と助言をする」との表明があった。今後、生活困窮者や子育て世帯からの保険証の取り上げを許さない取り組みにとって、重要な前進である。   また、ようやく実施された派遣労働の実態調査にとどまらず、ネットカフェ難民など雇用をめぐる新たな深刻な事態を示し、いっそうの実態把握を求めたところ、ネットカフェを利用する青年の実態を調査の実施を表明した。今後、いっそうの雇用対策の充実を求めるものである。 一方、介護ベッドなど福祉用具の取り上げについて、昨年三月には府内で6763人の介護ベッドの貸与者がおられたにもかかわらず、制度改悪により同十月には165人と激減していること、関係者の要望で四月から一定の見直しがされたがきわめて不十分なこと等を指摘し、国への改善と府独自の支援策を求めた。しかし、理事者は「今回の制度改正により、福祉用具の必要な方に対しては、対応できるしくみとなった」と実態とかけはなれた答弁に終始した。  また、療養病床廃止・削減や後期高齢者医療制度問題などについて、知事も「必要な医療・介護サービスを利用できない状況が生じることがあっては、これは私もおかしいと思う」「多くの医療機関が今後の見通しを立てられない状況にいまある。」と答弁した。ところが、府独自の改善策等については言及せず、あくまで「安定的で持続可能な医療制度の構築」を求めていくという制度論にもとづく答弁であり、府民目線でないことが明らかとなった。

2、乙訓・府営水道について、基本水量の押し付けで、市民が使ってもいない4万6000㎥分の基本料金約15億円を支払わなければならず、関係市町の住民と自治体財政に大きな負担を強いていることが大問題となっている。わが党議員団は、知事に対し、府営水道条例に基づき、当該市町と協議し「基本水量」を決定し通知することとなっているにもかかわらず、「協定」を絶対として、大山崎町の条例にもとづく水量申請の受け取りを拒否している問題を追及した。そうした中、知事は、「協議を行うことが必要」と認めざるをえなくなった。 しかし一方、知事は「大山崎町が…一方的で郵送で送付」「話し合いに参加を拒否」していると答弁するなど、大山崎町が直接、水量申請書類を提出するため京都府に足を運んだ事実を覆い隠し、さらに話し合いに参加する意思を表明しているにもかかわらず、その事実を捻じ曲げて答弁を行ったことは許されるものではない。  この府営水道問題の解決は、代表質問でも強調したとおり、「住民の暮らしを守る立場から考える」ことが第一であり、安定的な給水とともに、その料金が住民に過大な負担とならないようにすることである。すでに全国的にも過大な水需要予測や、住民の節水意識の向上、企業の経費節減など状況の変化にともなって、基本水量の見直しが行われていることに、本府も見習うべきである。

3、これまでの論戦と府民の運動により、府民要求が今議会でも前進した。  今議会で成立した「京都府鴨川条例」は、わが党が長年、条例の制定や保全ゾーンの設定など繰り返し求めてきたもので、今後、実効ある条例とするため、府民意見の聴取の積極的な取り組みを求めるとともに、京都市への積極的な働きかけを求めた。 また、京都府道路交通規則の見直しにより、駐車禁止除外規定について、身体に障害のある方の対象が広がるとともに、身体障害者等の移動専用車も除外されることとなった。これは、昨年6月1日から施行された「改正・道路交通法」のもと、障害のある方や事業者などからの要望にもとづき、わが党が求めてきたものである。今後、さらなる改善を求めるものである。   さらに、これまでわが党が再三にわたり求めてきた宇治市など山城地域の東南海・南海地震防災対策推進地域の追加指定を、国に求めることを表明した。これまで、知事は「国が震度6弱以上が予想される地点等を基準に推進地域の指定をしたもの」で「他の市町村からは地域指定の要望もなかった」と述べていたが、その態度を変えざるを得なくなった。今後、本格的な防災対策のいっそうの推進を求めるものである。  また、向日が丘養護学校の保護者から強い要望のあった通学タクシーの増車について、ようやく7月から一台増車されたことも、関係者に喜ばれている。

4、京都市・乙訓地域の、府立高校通学圏に関する「懇談会」が、わずか一ヶ月半の審議により「現行の四通学圏を二通学圏に統合し、総合選抜は残す」などとしたまとめを府教育長に提出した。わが党は、3年前に導入された山城通学圏での通学圏の広域化と単独選抜制実施により、他の通学圏と比べ、学校間格差が広がっている実態を示し、その認識を問うとともに、京都市・乙訓通学圏の再編については、広範な府民的議論を行うことを求めた。  また、全国いっせい学力テストについて、八幡市教育委員会が得点アップに向けた取り組み計画の提出を全小中学校に求めたことを指摘し、点数至上主義競争に追い込んでいると追及した。その後、NHKテレビで、八幡市のこの問題について、文部科学省ですら「適切でない」と述べざるを得なかったことを放映した。今後、実態をさらに調査し、子どもたちと学校に競争と差別をもたらす全国いっせい学力テストの中止を求め、関係者のみなさんと力を合わせ取り組むものである。  また、日本青年会議所が作成した「誇り」と題する日本の侵略戦争を肯定・美化する「靖国DVD」の学校現場への持込に対し、わが党議員団は府教育委員会に、その中止を求めた。ところがその際、理事者は「いろんな考え方がある」と述べたが、こうした侵略戦争を肯定する教材の教育現場への持ち込みを認めることは重大な誤りである。 全国から批判を受けた日本青年会議所は、文部科学省の研究委託事業の契約を辞退した。今後、“靖国”派の動きをあらゆる面で許さないたたかいをさらに強めていくものである。

5、憲法問題では、安倍首相が現憲法下で集団的自衛権の行使について、解釈改憲をさらに拡大しようとしているもとで、知事に対し、「自衛権発動の3原則」(①わが国に対する急迫不正の侵害があること②これを排除するために他の適当な手段がないこと③必要最小限度の実力行使にとどまるべき)に照らし許されるかどうかについて認識を問うた。しかし知事は、「国民の疑念が生じないように議論を尽くしていただきたい」とする従来の答弁を繰り返し、まともに応えようとしなかった。

6、成立した「京都府子育て支援条例」について、わが党議員団は、子育て支援策を本格的に取り組むことを目的としたもので、賛成した。この間、より良い条例となるよう子育て支援団体と懇談を行い、①保護者等に子育ての第一義責任を強調するあまり、保護者を追い込むことがないようにし、子育て支援策は社会全体で行うこと、②「家族の絆」など特定の考えを押し付けることのないようにすること、③府が行う「教育・啓発」とは、あくまで環境整備であり、内心の自由を侵すものとならないようにすること、の問題点を指摘した。 また、職員の退職手当に関する条例改正については、教員の短期講師などに明らかに不利となること、財産条例改正については、府民共有の財産を民間の営利活動に活用する道を開くものとなること、警察本部組織条例改正については、宅建業者など民間企業に密告を強要し、警察の捜査権限を大幅に拡大するもので反対した。

7、京都府医師会から提出された国民皆保険制度の堅持を求める請願にもとづく意見書が採択された。これは、国による低医療費政策に対する危機感を反映したものである。引き続き「いつでも、だれでも、どこでも」安心してかかれる医療制度を堅持するため力をつくすものである。   一方、36件の請願にもとづく「自衛隊による国民監視の中止を求める意見書」について、民主党を含む与党会派は反対した。東京で行われた「自衛隊の国民監視抗議集会」に民主党議員が出席し、「戦前のような状況になっていくのではないかと強く心配している」「抗議をしたい」と発言したにもかかわらず、こうした態度をとったことは重大である。また、わが党議員団が提案した「消えた年金」に関する意見書案、住民税の大増税に関する意見書案、後期高齢者医療制度の改善を求める意見書、療養型病床群の削減・廃止計画の中止を求める意見書案、日・豪経済連携協定交渉に関する意見書案など、府民の切実な要求にもとづくものに、反対理由も述べずわが党以外のすべての議員が反対したことは、府民的に見て全く道理がないものである。

8、衆議院議員中川泰宏氏の南丹市八木町の自宅敷地の複数の建物をめぐり、違法・脱法まがいの行為が明らかとなった。わが党は現地調査をもとに、長年にわたる不動産取得税、固定資産税未払い、建築確認未申請問題など、各所管委員会でそれぞれ追及した。また、河川の不法占有の実態も告発し、厳格な対応を求めた。さらに代表質問では、府労委が断罪した中川氏が会長のJA京都における不当労働行為についても追及した。 中川氏は、八木町会議員、八木町長を歴任し、現在衆議院議員、JA京都中央会会長等の公人として責任が問われるとともに、自由民主党衆院選挙区第4 支部長として自由民主党の責任も問われている。引き続き全容解明と厳しい対応を求めるものである。

9、これまでから取り組んできた議会改革について、今議会から議会運営委員会で二つの小委員会を設け、論議・具体化をすすめることとなった。わが党議員団は、政務調査費、費用弁償の問題、海外視察や特別委員会のあり方、委員会傍聴など、府民の目線にたった改革のため引き続き力を尽くすとともに、府民のくらしを守る議会・議員活動の一層の強化のため奮闘するものである。

 いよいよ参議院選挙本番である。久間防衛大臣が三日、原爆投下は「しようがない」とする発言により辞任したが、年金問題、政治とカネの問題、憲法と平和の問題で、安倍内閣のひどさは際立っており、国民の大きな批判が渦巻いている。わが党議員団は、政治不信の払拭、貧困打開、格差是正、民主主義と憲法9条を守るため、全力をあげるものである。