2007年9月定例会 西脇郁子議員 意見書討論
日本共産党の西脇郁子です。議員団を代表して、ただいま議題になっています16件の意見書及び決議案のうち、自民党提案の「教科書検定に関する意見書案」に反対し、他の15件に賛成する立場で討論を行います。
まずはじめに、わが党提案の「生活保護制度の運用の適正化及び老齢加算・母子加算の復活を求める意見書案」についてです。 自民党・公明党の構造改革によって、失業や倒産、低賃金などの貧困と格差が進むなか、憲法25条の生存権を保障する最後の命綱である生活保護制度の役割はますます重要になっています。ところが、政府の進める生活保護基準切り下げや昨年3月に出された「生活保護適正化の手引き」による保護抑制推進策によって、北九州市だけでなく、京都市内での痛ましい餓死事件にみられるように、生活保護申請が窓口で規制され、保護が決定されても自立指導に名を借りた「事態届け」の強要によって廃止するなどの違法運用が大きな問題となっています。その上に、政府は生活保護費の削減や、基準の引き下げ、70歳以上に支給されていた老齢加算も06年に全廃し、さらに母子加算を07年度から16~18歳の子どもについては廃止し、16歳未満も3年間で全廃するとしています。 生活保護世帯の人たちの命と暮らしをいっそう脅かす事態が進むことが懸念されます。 本府議会において我が党議員団の上原議員の一般質問に対して知事も「最近の国の動きは、財政的な背景が多い」と答弁されましたが、生活保護行政が財政的観点だけでなく、受給者の実情を踏まえたきめ細やかな制度として運用され、弱い立場に立たされた国民の生活を真に保障するものになるためにも賛同をお願いするものです。 次に、わが党提案の「後期高齢者医療制度及び高齢者負担増の中止・撤回を求める意見書案」ならびに「療養型病床の削減・廃止計画の撤回を求める意見書(案)」についてです。 「構造改革」路線は、いま高齢者の命と暮らしを直撃しています。介護も、年金も切り捨てられ、雪だるま式の負担増が押しつけられ、公的医療制度を土台から解体する医療大改悪が進められようとしています。 その一つが、昨年、自民・公明両党が強行した75歳以上を対象とする「後期高齢者医療制度」と70~74歳の窓口負担の2割への引き上げです。これは、もっぱら国の医療費負担の削減することを目的としたもので、高齢者へは過酷な負担増、そして医療抑制を求めるものです。後期高齢者医療制度では、現在、扶養家族となっていて保険料を負担していない方も含め、75歳以上のすべての高齢者から保険料を取り立てることになります。その方法は年金からの天引きであり、滞納すれば保険証まで取り上げられる過酷な制度となっています。そして受けられる医療内容は「別立て診療報酬」で制限されることになります。「これではまさにうば捨て山ではないか」との激しい怒りの声が全国からあがり、全国の広域連合から緊急の見直し要求が出されるのも当然のことです。わが党提案の意見書案は、後期高齢者医療制度及び高齢者負担増の中止・撤回を求めるものであり、是非とも賛同を求めるものです。 また、療養病床の大幅削減の問題です。政府は、2012年度までに「療養病床再編」の名のもと、介護型13万床の全廃、医療型10万床の削減を強行しようとしています。厚労省自身の調査でも、受け皿がないなど、退院後の見通しが立たない方が7割にも上り、京都府では、病床数が6,780床が1,907床へと激減し、約4800人がいわゆる「医療難民・介護難民」となる危険があります。高齢者に対するこんな冷たい仕打ちは、絶対に許されません。日本医師会も「現状への配慮を欠いている」と厳しく指摘されておりますが、わが党の意見書案は、こうした医療関係者の声に応え、療養病床削減・廃止方針について、これを速やかに撤回するよう求めるものであり、みなさんの賛同をお願いするものです。 次に、わが党提案の「障害者自立支援法の応益負担撤回など抜本的見直しを求める意見書(案)」についてです。障害者自立支援法は"自立支援"どころか"自立阻害"の法律であることがますます明らかになっています。私どもがこの6月に実施した全国調査では、定率1割負担の導入で多くの障害者が過酷な負担増を強いられ、サービスの利用抑制をはじめ深刻な影響がでています。月額1万円以上の負担増が6割以上に及び、わずかばかりの障害年金と工賃収入の多くが支払いで消えてしまうという厳しい実態が浮き彫りになりました。また、負担増によって、利用者の生活にどのような変化が起きているのかを自由回答で答えてもらったところ、「施設利用を中止・減らした」「外出を控えるようになった」「趣味に使うお金を減らした」「給食を断り、弁当を持参して別室で一人で食べている」など自立を阻害されている生活実態が数多く寄せられ、負担増を理由に、施設等のサービス利用を中止した人が大幅に増加するなど、応益負担による影響が日々深刻化しています。事業所収入も大半の事業所で「減収」となっており、多くの事業所が職員の必死の努力で運営されているのが実態です。 そのため、多くの関係者が望んでいるのは、応益負担の廃止であり、「廃止すべき」が88%、「一時凍結すべき」との声が9・3%と、「応益負担の廃止」は福祉の現場の圧倒的な世論となっています。わが党提案の意見書案は、こうした声と世論に真正面から応えるものであり、賛同をお願いするものです。 なお、民主党提案の「障害者福祉制度の充実に関する意見書案」について賛成するものですが、応益負担についての関係者の願いは「凍結」ではなく「廃止」を求めるものである点を指摘しておきます。 次に、「私学教育の振興に関する意見書案」及び、わが党提案の「私学助成の充実を求める決議案についてです。 私学教育をめぐる状況は深刻です。京都府内の私立高校の平均授業料は、年額でおよそ77万円にもなっています。貧困と格差が拡大する中で、親の経済的な理由で子どもが高校に行くことをあきらめざるを得ない、あるいは中途退学せざるを得ないという事態は今も後を絶ちません。親の経済的理由で進学をあきらめなくてもいいように、また、父母負担の軽減をはかるために、私学助成の充実が求められています。 私学経営者のみなさんからも本議会に、毎年強い要望が寄せられていますが、生徒減の中で、府内の私立高校のうち、8割の学校が「定員割れ」の状態となっており、経営的にも大きな困難を抱えています。本府の教育において、私学の果たしている役割は重要です。生徒減のなかで、父母の教育費の負担増によらずに私学の教育水準を保つためにも、私学助成の充実は、喫緊の課題であります。よって、国に私学助成の充実を求める4会派提案の意見書に賛成します。 同時に、京都府の独自助成の強化が求められています。毎年12月、知事宛に「私学助成の充実を求める」府民、父母数十万名の署名が提出されていますが、今年度当初予算では、私学助成が7700万円も削減されているのであります。今まさに署名活動が行われているところですが、本議会として、府にいっそうの努力を求めることこそ、父母及び府民の願いに答える道であります。わが党提案の「私学助成の充実を求める決議案」への賛同を訴えるものであります。 次に、わが党提案の「BSE全頭検査と国庫補助制度の継続を求める意見書案」についてです。 政府は本年八月末、都道府県・政令指定都市に対し、生後二十カ月齢以下のBSE検査国庫補助の打ち切りと、地方自治体の独自検査を継続しないことを求める通達を出しました。 全頭検査は、国内でBSE感染牛が始めて見つかった直後の二〇〇一年十月から行われてきました。その後、現在まで、国内では三十三頭目のBSE感染牛が発見されたにもかかわらず、これまで誰でも安心して国産牛肉を食べることができたのは、全頭検査が継続されてきたからであり、国産牛の消費が維持されてきたのです。 今後、二十カ月齢以下の全頭検査の国庫補助が打ち切られ、検査が行われなければ、国産牛への不安と混乱が生じることは必至です。 知事も政府に対し、全頭検査の国庫補助制度の継続を要望されており、府議会としても府と共同して制度継続を求めていくことが求められているのではないでしょうか。ぜひご賛同いただきたいと思います。 次に、わが党提案の「テロ特措法」の延長および同趣旨の新法制定に反対する意見書案についてです。 政府は、11月1日に期限の切れるインド洋での自衛隊の給油支援を継続するため、「新しい法案を今国会に提出する」「給油活動に中断が生じても、できるだけ短くしたい」と、すでに新派兵法の骨子案の調整に入ったと報じられています。しかし、自衛隊の給油支援は、国連憲章の精神をふみにじったアメリカの「報復戦争」に対する戦争支援活動であり、これが憲法違反であることは明白です。事実、海上自衛隊がインド洋で給油した燃料のうち、約8割はアメリカの艦船に提供されていることが明らかになっており、これは給油が「国際貢献」などではなくアメリカの軍事活動への支援であることを物語っています。さらに、給油を受けたアメリカ軍は、この期間、アフガニスタンだけでなくイラク戦争にも参加しており、政府がこれを支援し続けてきたことは、「テロ特措法」にさえ背く脱法行為を行ってきたことになります。 また、海上自衛隊の補給艦「ましゅう」が補給した米軍の強襲揚陸艦から飛び立った攻撃機ハリアーは136回ものアフガニスタンへの無差別空爆をおこなっており、その空爆のもとで亡くなったのは、無辜の子どもであり、女性やお年寄りなど一般市民です。こうしたなか、国連自身がアフガニスタン・ミッション報告書で「軍事的アプローチが住民の怒りやテロ攻撃を支持する声を高めている」と軍事的対応でなく、政治的取組みに転換することを求めました。報復戦争が新たな憎しみを生み出し、テロを拡大させる悪循環を引き起こしていること、報復戦争では決してテロはなくならないということが証明されたのです。今、求められているのは報復戦争への支援でなく、全世界が一致してテロリストを警察力により法の裁きの下に置くとともに、テロの根源にある貧困、かんばつ、飢餓、教育の欠如などを解決し、そして中東問題など地域紛争を平和的・外交的に解決する努力を尽くすことです。 わが党の意見書案は、11月1日に期限が切れる「テロ特措法」の延長および同趣旨の新法制定を行わず、ただちに自衛隊を撤退させるよう求めるものであり、ぜひご賛同いただきたいと思います。 なお、民主党提案の「テロ特措法の期限を延長せず、真の国際協力の実現を求める意見書案」については、テロ特措法の延長を許さない1点で協同する立場から賛成するものです。 最後に、沖縄戦に係る教科書検定に関わってですが、民主党案に賛成、自民党案に反対いたします。 沖縄戦における日本軍の強制による「集団自決」の記述を削除した教科書検定は、集団自決の真実ばかりだけでなく、残された人々の心の痛みや苦しみまでもふみにじってしまうものでした。これに対し、沖縄県内のすべての自治体で抗議の意見書があがるなか、先月、29日に開かれた沖縄県民大会では、「集団自決を否定し、沖縄戦の歴史をゆがめることは許さない」との大きな怒りの声が噴出し、「子どもたちに沖縄戦における集団自決が日本軍による関与なしには起こりえなかったことが紛れもない事実であったことを正しく伝え、沖縄戦の実相を教訓とすることの重要性や、平和を希求することの必要性、悲惨な戦争を再び起こさないようにするためにはどのようにすればいいのかなどを教えていくことは、われわれに化せられた重大な責務である」との大会決議が確認されました。 「たとえ戦争が醜くても真実を知りたい、学びたい、そして伝えたい」という沖縄の高校生からのメッセージは沖縄県民の願いであるとともに全国の平和を願う国民共通の願いでもあります。 ところが、自民党案は、日本軍による集団自決の関与があったかどうかわからないというもので、歴史の真実に、背を向け、これまでの沖縄の人々の怒りと悲しみの心を踏みにじるものであり絶対に認めるわけにはいきません。 以上で討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。