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議会を終えて(談話)

9月定例議会を終えて

2007/10/10 更新
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               日本共産党京都府会議員団 団長 新井 進

 9月19日から10月5日までの会期で行われた九月定例議会が閉会した。  今議会は、参議院選挙での自公政権への厳しい審判、安倍首相の政権投げ出しと福田内閣の発足など、「構造改革」路線の破綻と、それに対する国民的怒りが示される中で行われた。わが党議員団は、山田府政による国いいなりの「構造改革」路線の京都への持ち込みによる弱者切り捨てを具体的に示し、来年四月実施予定の高齢者医療費負担増問題をはじめ、「ストップ貧困」をかかげ、府民の暮らしと営業を守る立場から、積極的に論戦した。

1、今議会には、一般会計補正予算をはじめ18議案および人事案件2件が提案された。わが党議員団は、京都府立大学と京都府立医科大学及び同附属病院を法人化するための「公立大学法人定款条例案」「公立大学法人評価委員会条例案」および「府立学校授業料等徴収条例一部改正案」の3件に反対し、人事案件も含め他の議案に賛成した。  補正予算では、医師確保対策として奨学金の増額が提案されたが、府北部の医師確保対策の充実はもちろんのこと、府南部への対策の強化も必要となっていることを指摘した。また、「稲作担い手緊急支援事業」について、京都の農業全体を切り捨てようとしている品目横断的経営安定対策への加入促進を目的としている点は問題と指摘し、米価の下支えなど、真に役立つ農業振興策が必要であり、品目横断的経営安定対策の見直しを求めた。  「自転車の安全な利用の促進に関する条例案」は、マナーの向上と合わせ、自転車の走行環境整備が必要で、自転車専用道路や駐輪場の整備促進等、関係機関と協議し具体的な対応を求めた。また「絶滅のおそれのある野生生物の保全に関する条例案」は、保全地区の保全を厳正に行うため、公共・民間を問わず、開発行為の事前調査とそのための体制確立を求めた。

2、参議院選挙の結果と、その根底にある貧困と格差の広がりにより、今議会は新たな変化の様相を呈した。  その特徴は第1に、構造改革路線の破綻が浮き彫りになったことである。 わが党議員団が代表質問で、深刻となる府民の暮らしを示し「『構造改革』路線を根本から見直し、貧困をただす府政運営への転換が必要だ」と求めたことに対し、山田知事は「地域間格差が生じた」と言い、乳幼児医療費助成の拡充、障害者自立支援法による負担軽減措置、企業誘致条例の改正や中小企業・伝統産業支援、医師確保対策などに「全力をあげて取り組んできた」と述べた。  これらの施策は、まさにわが党が痛みと負担を押し付ける「構造改革路線」に反対し、府民のみなさんと力を合わせて求め実現してきたものばかりである。山田知事がこうしたいいわけをせざるを得なくなったことは、これまで国の先取りともいえる「受益と負担」「自己責任」「自立自助」を基本にした、新自由主義にもとづく「構造改革」路線による府政運営のあり方の破綻を示したものである。  また、「構造改革」路線が京都の経済と地域に与える影響は深刻であり、わが党議員団は、綾部市の地域経済対策本部による「事業所実態調査」の例などをあげ、新しく発足した「北部産業技術支援センター」の体制強化による北部中小企業振興などを求めた。土木関係者からも「生活関連の公共事業が現期限し、仕事が減った」「このままでは倒産する」などの声が出されており、経済対策として、地元業者・中小企業支援強化の必要性も浮き彫りとなった。  さらに、自民党や保守系議員からも、本会議質問で「商店街はシャッター通り」「京都府内の小規模事業者は、とても好景気が実感できないばかりか厳しい状況」、さらに山間部の限界集落の例をあげ「行政効率ではなく、行政のトップとして、人がそこに住む限り人々の生活を支援する義務がある」と府政運営のあり方についても意見が出されるなど、「構造改革」路線による府民との矛盾を指摘せざるを得ない事態となっている。

 特徴の第2は、府民の運動とわが党議員団の論戦が、政治を大きく動かしていることである。  京都府老人医療費助成制度(65歳から69歳までの窓口三割負担を1割に抑えている府の独自制度)の窓口負担を2割とし、所得制限を厳しくする案が議会に報告された。わが党議員団は、議会中に緊急懇談会を開催するとともに議会でも追及する中、山田知事も国の高齢者医療費負担増の凍結の動きをうけ、「国の今後の推移を見守る」といわざるを得なくなった。また、生活保護について、山田知事は「最近国の動きは、財政的な背景が多い」とのべ、府として辞退届けの強要をしない旨の「文書」を実施機関に送付する、さらに、すべての小・中学校を1学級30人程度にできるよう検討する方向を示した。 原子力発電所の安全対策についても、議員団として高浜原発の現地調査を行い、耐震、火災などの対策を具体的に求め、山田知事も「積極的に対応したい」と答弁した。  京都府道路交通規則の一部改正が行われたことにより、これまで駐車規制除外の対象であった下肢不自由3級の2以下や脳病変による運動機能障害の移動機能4級の障がいのある方が、対象から外れることとなり、障がい者団体などから、対象となるよう強く求められる中、警察本部も「今後の推移を見ながら対応したい」と応えざるを得なくなった。  これらは府民の要求にもとづく運動と、議会での論戦により、政治が動くことを証明しているものである。

3、府立2大学の法人化に関わる2条例案については、第一に、法人化によって「地域貢献度や外部評価によって交付金の重点配分が行われる」「経営合理化や人件費削減が進められる」とのわが党議員団の指摘に対し、理事者は否定できなかった。このことは、法人化そのものが、経営効率を目的とし、先行する他府県の例からも教育や研究に支障を来たす危険があることを示すものである。また、第二に、「経営審議会の委員を2分の1 以上外部委員とする」点について、「外部意見を反映するため、国立大学と同様にした」と答弁したが、教授会など学内の意見よりも外部の意見が大学運営に大きく影響し、大学の自治と学問の自由が侵害される懸念があるものである。第三に、「教授会の了解を得た」といくら強弁しても、その事実はまったくなく、しかも府職労府立医科大学支部による教職員へのアンケートで、法人化賛成はわずか19人で、反対143 人、「どちらでもない」「わからない」が243人で、府民的合意どころか学内合意もないまま、法人化ありきで進められていることが明らかとなった。こうしたことから反対した。  府立2大学の法人化問題は、今議会で定款等が議決されたことにより、新たな段階に入った。議会論戦と関係者による運動を反映し、山田知事も「大学運営を支えるために、運営交付金により支援を行う」、「府民サービスを向上するためにがんばっている」、「悪しき先行事例のようにはしない」、「学内の意見を尊重して進めていく」と述べたことは、今後の闘いをすすめる上で重要である。今後、「中期目標」が議会に提案され、中期目標にもとづく「中期計画」の策定などが行われる予定である。引き続き、大学の自治と教育・研究の自由を守り、経営効率最優先とならないよう全力をあげるものである。

4、府立高校、府立看護学校等の授業料値上げについては、国の地方財政計画いいなりに値上げする姿勢を批判し、鳥取県が授業料据え置きをしている事実も示し、府民生活の現状を踏まえ、反対した。一方、民主党は「生活者第一」といいながら、府立学校等授業料値上げ議案に賛成したことは重大である。  教育をめぐっては、山城通学圏で起こっている競争と序列化の事態を具体的に指摘し、京都・乙訓通学圏の再編問題を追及した。ところが、府教育長は山城通学圏について「中学生の選択肢を広げた」と広域化・序列化を評価した。また、全国いっせい学力テストについて、八幡市教育委員会が中学校入学式の間に予備テストを行っていた事実などを指摘し、改めて中止を求めた。府教育長は八幡市の事例について「いささか説明不足の感も否めない」と述べつつも、今後も全国いっせい学力テストを「有効な手段」と答弁した。今後、競争と序列化をすすめる教育のあり方が具体的に進められようとする中、教育関係者や保護者と連帯した取り組みの強化がいっそう必要である。

5、わが議員団提案の「テロ特措法の延長及び同趣旨の新法制定に反対する意見書(案)」、「障害者自立支援法の応益負担撤回など抜本的見直しを求める意見書(案)」など9意見書案をはじめ、計16意見書案について、自民党提案の「教科書検定に関する意見書案」に反対し、その他は賛成した。  沖縄戦の「集団自決」に対し、軍の命令・強制・誘導等の表現が検定により削除された問題について、2件の意見書が公明党が両案に賛成したことから可決されることとなった。民主党提案の「沖縄戦に関する教科書検定の撤回を求める意見書」は、検定意見の撤回と軍の強制記述の回復を求めるものであり、わが党議員団も賛成し成立した。ところが、対案として提出された自民党案は、「集団自決」について「日本軍の命令があったか明らかではない」とする意見と「軍の関与なしに起こりえなかったとする意見」があり、「今後の調査」が必要とするものである。わが議員団は意見書討論で自民党案について、11万人集まった沖縄県民大会の決議を示し、「歴史の真実と沖縄の心にそむくものだ」と厳しく批判し反対した。

6、「府民に分かりやすい議会のあり方検討分科会」で、これまで議員団が求めてきたすべての政務調査費の領収書添付と政務調査報告の説明責任の担保が合意され、実現へ大きく前進した。また「新たな議会運営のあり方検討分科会」でも議会の議決権の拡大について、「府の基本計画」「府の外郭団体」などを対象とする方向で中間案が提案された。引き続き、政治とカネの問題をはじめ、府民に開かれた議会となるよう力をつくすものである。

7、今議会で決算特別委員会(定数30人)が設置され、今回もわが党を排除して、正副委員長が選出された。本来、議会のルールに基づき、議席数に応じた比例配分をすれば、わが党が副委員長に就くべきである。ところが、今回は、民主党が委員長、副委員長の2つのポストを占めたことは、議会制民主主義を踏みにじるものである。しかも、正副委員長選挙に際し、自民党、公明党、民主党らによる党利党略の票配分まで行われたことは明白で、オール与党によるなれあい運営を示すもので、府民に開かれた議会とは言いがたい道理ないことである。

 「構造改革路線」の破綻が明確になったもとで、日本共産党府会議員団はこの秋、国民健康保険や高齢者負担増をはじめとした医療・社会保障を守る運動と論戦で大攻勢をかけるとともに、解散・総選挙を勝ち取り、三ヶ月後に迫った京都市長選挙で中村和雄さんの勝利のために全力をあげるものである。また、府政をめぐっては、新たな組織再編の提案や道州制をめぐる新たな動きなども活発化しており、自治体らしい自治体づくりにむけた論戦と運動に引続き全力をあげるものである。