決算特別委員会 梅木紀秀議員 知事総括質疑
農業と農村問題について
【梅木】日本共産党の梅木紀秀です。 まず、農業と農村問題について伺います。 国の農政の転換と、米価の暴落で、今、農家は大変な事態になっています。10月に、NHKがコメ問題を特集しました。 番組では、政府は、大規模農家を支援して、競争力を高めるとしてきましたが、その大規模農家が、何千万円という大変な借金を背負っているという事実、中規模農家も「先が見えない」と言い、集落営農も大変で、中山間地の零細農家は「もう続けられない」と耕作放棄が増えているという実態が、放送されました。 私ども日本共産党府会議員団も、緊急に、府内各地の農業関係者との懇談会を開いて、調査をおこないました。その中では「今年の米価では、もうやっていけない」これが共通の声でした。
今年の京都の米価は、コシヒカリで1俵、11,000千円、昨年より2,000円も安くなっています。近畿農政局によると、昨年の米の生産費は1俵あたり16,600円ですから、すでに大幅な赤字のうえに、さらに赤字が拡大しています。懇談会では、「息子に、『赤字なのになぜ米を作るのか、田んぼが荒れても仕方がないじゃないか』と言われた」という高齢者、「米を作るより買ったほうが安い」と耕作を放棄する人達が増えているという話が相次ぎました。本当に深刻な事態です。 農林水産省の発表では、農家の収入は時間給にすれば、256円です。これは調べると全国平均で、近畿では208円です。しかも、昨年の統計です。完全に「ワーキングプア」といわれる状態になっています。 「1年間、手間隙かけて作った米が1キロ183円、ペットボトルの水より安い」このような米価下落の実態を、知事はどのように受け止めておられますか。お伺いします。 また、京都府全体でどれだけの収入減になるか、書面審査では、コメの平均収量と耕作面積から計算すると、およそ26億円、とのことでした。地域経済にも大きな影響を及ぼすことになります。来年も米づくりができるように、緊急対策として、米価の下支えや、所得保障をおこなうべきだと考えますが、いかがですか。
【知事】まさに農業農村、国土保全は農家が大変担っているところであり、その中で水田が府内では8割をしめており、大変大きな役割を果している。その中で現在、米価が下落している。これは私も大変な問題だと思っているし、昨日の知事会においても、知事会のなかできちっと農林大臣にも改革を講じるように要望してきたところです。しかも農家の場合はそれだけでなく、限界集落問題に象徴されるように高齢化も進んでおり、ここにもってきて全国的な生産過剰による米価下落で、農業農村自身が大きく疲弊しているというのが現状だと思っています。こうした点を受け、私どもは国へ要望をしておりましたので、今日の新聞でも出ていたように、政府自民党の方では農業政策の見直しということで、京都の場合は大変、小規模農家が多いわけで、そこが外れてくることに対しても、もっと小規模農家までいこうではないか、さらに柔軟に対応していこうではないか、そして新しい転作の奨励の制度もつくろうではないかというのが昨日発表されたようです。私どもはそうした事態をふまえてしっかりと、農家のみなさんがこれからも暮らしていけるように、国に対して強く要望していきたい。京都府としても京都のお米が確実にしかも有利に販売できるような状況をつくっていくために、京料理店や量販店の販路開拓や、立地条件を生かしたなかで、品質の高いお米づくりをしていく。そして9月議会でも補正予算をお願いしたが、京の稲作担い手緊急支援事業により、米生産を中心にした農作業受託組織等の規模拡大や経営改善にむけた取組みを強化し、あわせて米と同時に収益性の高い京野菜、黒大豆、小豆等の産地づくり、それから、中山間地域の直接支払い制度も6億ぐらいは出していますので、総合的農家所得の確保を図って農業農村の活性化に努めていきたい。
【梅木】直接支払いの話がでましたが、この支援をしてもなおかつ、もう耕作できないという事態になってきている。そういう米価になってきているわけです。野菜については支援をしていると書面審査でも答弁があったが、高齢者のみなさんは、野菜をつくろうと思っても大変だということになるわけです。農地・水田を守るためには、コメ作りをどう支援するのかが問題になる。そこで受託して米をつくる人たちが、ちゃんとつくっていけるように支援制度をつくる必要があると思う。かつて京都府で中山間地など耕作不利地が荒廃しないように、不利地を耕作する農家を支援する「中山間地規模拡大支援事業」がありました。6年以上の利用権を設定して耕作する場合、耕作者に10アール当たり2万 4,000円出す、農作業受委託の場合は 8,000円を3年間支給するという制度でした。これを「復活できないか」という声が懇談会で大変強かったわけです。農地を守るために大変有効な施策だと思います。国へ働きかけているとのことだが、京都府として何をやるのかという点で考えれば、これをやるべきだと思うがいかがですか。改めて知事の考え、決意をお聞かせ下さい。
【知事】米の問題は非常に底の深い問題になっており、昔は食管制度があり全体の器が決まっていた。今はそれがほとんど国の規制が取り払われて自主的なものになっていく中で、実際問題として東北地方を中心に、減反が守られているのは少ない。3分の1くらいはオーバーしてしまって、米を作りすぎている状態にある。そういう全体の制度を抜きにしてやっていったら、これはまた混乱に拍車をかけることになる。私は国がきちっと米政策全体を通じてコントロールしていかないと、今の問題は解決しないと思っている。こうした点についてはしっかりと国へ要望していきたいと考えている。その中で京都米が確実に生き残る方策を考えていく。そうしないと、長い目で見て京都の米作の現状は厳しいままで変わらないのではないかと思っている。
【梅木】実際にはエサの高騰とか問題があり、エサ米にという話があるが、中山間地では実際に米をつくる、田を荒らさないためにどう支援するのかということで、先程言った「中山間地規模拡大支援事業」は、かつて京都府がやったときにはだいたい3000万円ほどの支出だった。こういうところで担い手のみなさん方に支援する制度を考えて頂きたいと思います。
限界集落はじめ、過疎地域への支援について 【梅木】2月議会で、私は地元、左京区広河原のお年寄りの声を紹介して、農村への支援を求めました。「未来づくり交付金」の地域再生枠3億円を京都市内にも適用するということでしたが、その後、多くの議員から「限界集落」や農村地域への支援が、6月議会、9月議会でも取り上げられました。大変重要な問題になっていると思います。 市町村合併、農協合併に次いで、郵政民営化。村から役場がなくなる、農協がなくなる、郵便局までなくなる、という事態になっています。 10月18・19日に綾部市で、「水源の里シンポジウム」が開催され、全国から850人が参加されました。大会アピールでは、年内にも全国協議会をつくることが決められたそうです。先程言った未来づくり交付金3億円枠を設けたが、これを、こういうシンポジウムの取組みや過疎地域を支援するということで、さらに集中的に予算も増額し、支援をしていく必要があると考えますがいかがですか。 また、過疎化・高齢化が進む農山村地域では、医療・保険・福祉・介護の問題、病院への通院の足の確保、携帯電話や地デジなどの情報基盤整備など問題は多岐にわたっています。私は、庁内に、部局横断的なプロジェクトチームをつくって、農村・過疎地域をどう支援するのか考えて頂きたいということを提案してきたが、改めて知事の考えをお聞かせ下さい。 【知事】正に限界集落の問題は、公共が入ってやっても、地元の人たちで盛り上がってどういうふうにしていくのかというのがなければ、この問題は解決しない。ですから、私どもも地域力再生のプロジェクトをつくり、限界集落と言われている厳しい状況に置かれている集落の人と共に考えて、それを支えていくような事業をしていきたいと考えている。第一次決定分、もうすぐ決定する第二次募集分を含めかなり出てきている。中をみると、市町村の考え方もあると思うが、出てきているところは沢山出ている、全然ないところもあり、ばらつきがある。京都市からもいくつか出ているので、宣伝は行き届いている。市長会から要望があったときにも、「ぜひとも市長さん方も、こういう取組みがあるので、この中で一緒にやっていくから応募して下さい」と申し上げた。この取組みは、農林部の農山村地域の振興と一貫してやっているが、そこだけでやっていてはいけないだろうと、この地域力再生については、私が本部長になり、横断的な組織を設ける。この問題は、子育ては子育てであり、環境問題は環境問題、農村の活性化の問題もある。各本部の人たちが、しっかりしたプラットホームをつくり、NPOや地域の人たちが一体となった形の連絡をするネットワークをつくる、そこで盛り上げていこうという試みをこれから進展させていこうと思っている。
【梅木】私どもの懇談会でも、実際に宮津の方でも元気村づくりで頑張っている。京都府から補助がでてくるので本当に助かっている、自分たちでどう元気な村づくりをするかに取り組んでいる。大変好評です。こういう枠を是非とも増やして頂きたい。ところで、今言った例で農村振興課に「把握していますか」とお聞きしたら、把握できていないのです。内部的な問題だと思うが、横断的にどうやって地域力を高めていくのか、とりわけその中で農村をどう支援していくかを京都府として考えていく時に、部局横断的なプロジェクトチームが必要なんだということを改めて指摘し、要望しておきます。
公共関連事業 地元業者を守るために、地域貢献度などを考慮した入札制度の検討を 【梅木】不況と貧困の拡大のもとで、自殺者が府内で増えています。今年10月末で府全体で485人、昨年より58人も増えています。なかでも、経済的な理由による自殺者が増えています。どの職種・業種も大変です。 特に、土木・建設関係業者から、「仕事がない。このままでは倒産する」という訴えがあります。とりわけ府北部では災害復旧事業がなくなったことも影響しているが、飲食店も、「お客さんがさっぱり来ない」とのことで、地域経済にも大きな影響を与えている実態です。この分野でも、緊急対策が求められています。 昨年度決算の支出項目で、一番削減されているのは土木費で88億円、農林水産費も20億円減っています。台風23号関連の災害復旧費158億円も減っていますので、合わせると266億円減っています。この数字をみたら、とりわけ府北部で土木関係業者が「仕事がない」とおっしゃっている実態がわかります。 地元業者が倒産すれば、除雪活動や万一の災害の時に誰が出動するのかということになってくる。そこで、地元中小土木・建設業者に仕事が回るように、防災や生活関連公共事業の予算を増額すべきです。いかがですか。 また、総体として土木予算が減少する中で、単純に一般競争入札をやれば、競争力のある企業が仕事をとっていきます。現に、今年4月からの入札制度が変わり、「よその業者が入ってきて、仕事が取れない」、「取れても儲けがない」という事態になっています。地元業者を守るために、地域貢献度などを考慮した入札制度を検討すべきと考えますが、いかがですか。
【知事】公共関連事業について、かつて政府は補正予算を中心とした景気対策をうってきた。特に平成10年が一番多かったと思うが、それ以降は財政再建ということで、毎年補助事業が減らされていく。それだけではなくて、地方単独事業の交付税が5.1兆円減らされたということがあるが、その大きな部分はこの地方単独事業の投資分を減らされた。それで私どもは財源を全く失ってしまった。だから昨日の知事会でもこうした地域の疲弊を訴えて、「地方交付税を増やしてくれなければ、どんな事があっても地域の活性化に貢献できませんよ」と申し上げてきた。我々は苦しい財政状況の中で何とかきめ細やかな事業を生活関連事業を増やしていきたいと、今年度も地域防災対策事業や臨時生活関連施設整備費など、引き続き計上するなど出来る限りの努力をしている。ただ、これで道路特定財源の暫定税率が切れてしまえば、とどめを刺されるような状況になる。地元の建設業者支援のための入札制度ですが、植田議員、大橋議員にもお答えしたとおり、競争性、透明性の高い入札制度をしっかりつくりながら、その中で、府民のみなさんの理解が得られる形で、安心安全こそが長期的にみて府民のみなさまにとっても、一番いい税金の効率的な形になるんだという形での、新しい総合評価制度を、すぐにこれだという形はなかなか出ないと思うので、試行的に行ない、議会のご意見も賜りながら柔軟に対応し、長い目で見て、地域の安心安全の確保ができる建設業者が育つように努めたい。
【梅木】財源問題は別で、例えば韓国のソウルで高速道路を全部とって、その後に清流をとり戻すことをやっているが、そういう形で今様にあるだろうと思う。何も道路特定財源がなかったらこれができないということにはならない。
住宅改修助成制度の創設を 【梅木】質問予定だったが、時間がないので以下は要望にする。地元業者への仕事おこしについてです。住宅改修助成制度は5%の補助で20倍の仕事がでるわけです。府が5億円、市町村が同額の予算を組んで、10億円の補助で200億円の事業ができる。今、京都府が生活関連の事業200億円となれば大変なわけです。5億円積むことによって、200億円の中小の仕事ができるような事業を景気対策として是非やるべきだと思います。要望しておきます。 耐震改修助成制度について また、今年度から始まった耐震改修助成は11件しかない。問題だ。指摘しておきます。 また、下請に入ったが労賃が確保できないという問題が出ています。公共事業ではそこに働く人たちの労賃をしっかり確保するために、「公契約条例」を制定すべきだということを指摘して質問を終わります。