決算特別委員会 前窪義由紀議員 知事総括質疑
後期高齢者医療制度、高齢者への負担増は中止・撤回せよ 【前窪】日本共産党の前窪義由紀です。数点について知事に質問します。 まず、高齢者の医療制度の問題です。参議院選挙で自民・公明政治へのきびしい審判が下りました。高齢者の医療改悪について一定の手直しをせざるを得ない状況です。与党合意では、70歳から74歳の窓口負担の引き上げは1年延期、後期高齢者医療制度は、保険料を半年間徴収しないことなど、一部を先送りしました。 そもそも後期高齢者医療制度は、給付が増えれば保険料に跳ね返り、際限のない値上げに道を開くものです。さらに市町村で一人当たりの老人医療費、保険料に大きな差がある中、今後保険料の均一化で大きな負担増が生まれること、月平均15,000円以上の年金生活者から、介護保険料と同じように保険料を天引きすることで、生存権を守れるのか。資格証明書の発行を市町村に強要することはないのかなど、実施を先送りしても、この制度の問題点は解消されていません。
11月9日、京都府後期高齢者医療協議会が開催され、京都の保険料の試算などが発表されました。保険料は82,500円(月額6,875円)で、国が示した試算74,400円(月額6,200円)を大きく上回る結果となっています。高齢者に未曾有の負担増を強いる後期高齢者医療制度は、中止・撤回以外にありません。 知事として、国に対し中止・撤回を求めるべきと考えますが、いかがですか。 同時に、府の老人医療助成制度についてです。 先に答弁がありました。今年9月に決めた1割負担から2割負担への引き上げを、当面凍結し、現行制度を継続する旨の答弁がありました。 これも、参議院選挙の審判、あるいは、住民、府民の大きな批判の中で、与党合意を受けて、府の助成制度については、決算書面審査で、副知事らが「9月に確認した部分の見直しを含め検討したい」と、こう表明せざるを得ない状況でした。まさに世論と運動が、いま行政を動かしているものです。 私の地元宇治市でも、署名運動が広がったり、市議会でも要望書が採択されるなど、制度維持を求める、そうした声がいま府内各地に広がっています。 府の助成制度の見直しは、国と同じように凍結・先送りするだけなのか。高齢者の暮しの実態を理解するなら、中止すべきと考えますが、いかがですか。
【知事】高齢者医療制度については、自己負担分について、今般、国における与党プロジェクトチームの見直しなど、給付と負担のあり方を含めて議論がなされている。その中で、京都府としては、従来から国に対して高齢者の心身の特性や生活実態を踏まえ、また、高齢者の負担が過度とならないよう提言・要請を行ってきた。こうしたことが、全てではないが、今回の凍結にもつながっていると考えている。今後とも、市町村や関係団体とも連携し、住民に身近な地方公共団体の立場で、高齢者のみなさんが安心で必要な医療サービスを受けていただける制度となるように、引き続き提案・要望していきたい。 府独自の老人医療制度については、先に答えたとおり、まさに多くの府県がやめる中で、何とか府民の安心安全を守りたいということで、(凍結を市町村と確認した)。これはもともと国の制度の補完なので、国の制度が動いた時は補完として動いていかなければならないものもある。18年度決算を見れば分かるように、一般財源が大幅に減る中で、私ども経営改革に必死に取り組みながら、障害者自立支援法に対する独自の負担措置も講じてきたわけで、そうした中でのことですから、やはり国の動向をしっかりと見極めながらいきたい。その中で、自分たちのできる限りの府民福祉の向上のために全力をつくしたい。
制度の中止を求める医療関係者、高齢者の声をどう受け止めるのか 【前窪】後期高齢者医療協議会では、府医師会の役員さんが、「医師会として、そもそも高齢者独自の医療制度をつくる必要があるのかという結論を持っている」と、こういう発言。府歯科医師会の役員さんも、「医療の現状は深刻だ。日本は、国の医療費が極端に少ない。高齢者になれば病気が増えるのは当たり前」と指摘したり、老人クラブ連合会の役員さんは、「長生きしたらあかんというのか、医療費払える人だけが長生きできる制度は疑問」などと、たくさんの疑問や意見が出たとうかがいました。 私も、お年寄りのみなさんからうかがうと、「ほんとうにひどい制度だ」という意見ばかりです。そして、これは今の高齢者のみなさんのことだけではない。だれ一人として、年をとることは、避けることはできない。これは、結局、国民全体の問題です。私は、医療協議会ででた意見、あるいは府民の意見、これ知事はどう応えるのか。国に対してどういう姿勢で向かっていくのか。これが問われていると思います。厳しい意見を出していただくよう、これは指摘しておきます。 それで、府の(老人医療助成)制度を維持するには、約13億円あればできるということです。これを捻出するのは大変だということは分かるんですが、しかし、お金がないからできないということではなく、やはり「福祉の心」というのがいると思うんです。企業誘致の補助金は、9月府議会で補正13億円をつけました。これはやはり、知事が企業を誘致して雇用を増やそうという決意のもとに成り立っていくわけで、私どもも賛同した。ぜひそういうやる気を示していただき、府の制度は維持する方向で検討いただきたい。もう一度答弁下さい。
【知事】企業誘致の場合は、何十億円と入ってくるうち、そこまで入らなくてもいいから、少しまけてあげて減らしてあげるから来て下さいと、いま競争している。これは13億円の話とまったく性格が違う。これを比較するのは、おかしいと思う。その上で、私どもは府民のみなさんに安心、安定した福祉サービスを提供しなければならないわけで、限られた財源の中でできる限りのことをしていきたい。
【前窪】府の制度の見直し案を、当面そうせずに、現行制度を維持するということだが、この見直し案を実行すれば、世帯全員が住民税非課税となるとすれば、宇治市では、現在3361人の方が制度を利用しているが、そのうち3分の2の方、2265人が府の制度から閉め出される。こういうことをしかりと、府内の自治体、地域はほとんど同じことなので、十分にお年寄りの生活実態を斟酌して、府の制度の維持を是非していただくよう強く求めておく。
介護・福祉施設の労働条件を抜本的に改善し、安定的な人材確保を 【前窪】次に、民間福祉施設の人材確保等についてです。 介護等民間福祉施設の人材確保は、ますます深刻です。全国調査でも、アルバイトなど非正規職員が50%を超える施設が多いのです。採用後1年から2年に離職者をするという施設も多いのが現状です。 先に京都府福祉人材・研修センターが、今年7月に福祉職場就職フェアーをみやこメッセで開きました。1,060人の求人のうち高齢者介護が80%を占め、これに対し求職は917人と少なく、介護職員の人手不足を裏付けるものでした。 なぜこのように福祉職場の人材確保が問題になってきたのか。これは、90年代の「社会福祉基礎構造改革」、小泉構造改革による規制緩和が大きな要因で、これまでの措置制度から経営状況に対応する方式、介護報酬や支援費制度に置き換えたられたことにあります。 知事は、福祉施設の雇用や労働の実態をどのように認識しているのか。改善は喫緊の課題と考えますが、いかがですか。 さらに、今年8月厚生労働省は、「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」を告示しました。基本的な考え方では、「若年層を中心とした国民各層から選択される職業となるよう、他の分野とも比較して適切な給与水準が確保されるなど、労働環境を整備する必要がある」とされている。人件費財源の裏づけがないなど問題がありますが、国家公務員の福祉職俸給表等を参考とすることなども示されており、重要な内容となっています。 都道府県の役割として、雇用・就業状況の把握、従業員に対する研修体制の整備、広域的視点に立った人材確保の取り組みなどが、位置付けられています。 そこで伺いますが、新指針の具体化について、とりわけ財源措置について国に強く働きかけること、同時に、府としても就労実態をしっかり把握し、正職員化の促進、賃金・労働条件の改善、研修体制の整備等、支援が必要と考えますが、いかがですか。
【知事】福祉施設の人材確保については、全国的な状況を見ても、求人に対して求職が少ない。離職率も高い。これは、給与水準が他産業に比べて低いという状況がある。これはもうハッキリとしている。だから私どもは、この前の近畿のブロック知事会でも、この問題での共同提言を行っている。そうしたものが根本的に直されないと、それはいくらやってもダメだと思う。いま、前窪委員は、厚生省の人材確保新指針を評価されたが、財源的な裏付けのない指針なんて絵に描いたモチじゃないですか。私は評価できないと思う。まさにこの問題というのは財源の問題だ。そこをしっかりと国が措置するよう、求めてまいりたい。そしてそれは、この前も近畿の共同宣言の中で、近畿の知事がそろってお願いしていること。
処遇改善の事業費を削減してきた知事の姿勢を改めよ 【前窪】財源の裏付けがなければ、確かにそういうことだ。それは私も指摘している。だから、財源を求めよと言っている。認識しているのは、やはり運動と世論、実態の反映だ。これをどう裏付けるかということだ。 私も色々と施設をまわり、お話を聞いた。職員52人の職場で、50%がパート勤務。あるいは、若い人の応募がない。40~50才の採用者がほとんどだ。手取りの給与は、17万8千円。大卒30歳ですよ。こういう施設や、あるいは初任給が13万円、20年勤めても20万円程度。こういう職場がほとんどだ。職員30人の中で、男性がたった6人しかおられない。将来の見通しがないから、なかなか男性の応募がないということもある。 私は、こうした福祉職場の改善こそ必要だと思っている。 根本的には、国に対しての要求、国の制度を変えることが必要だが、私は本府の民間社会福祉施設職員の処遇改善事業の状況を見させてもらった。 ここにパネルがあるが、知事が就任したのが平成14年。これは平成13年度から見ている。 処遇改善事業のうち、研修対策費1億3千万円あったものが、平成15年度に減って、16年度には廃止。健康検診助成費事業は1千400万円あったが、これも平成16年度には廃止になった。給与対策費3千600万円、一時5000万円積んでいたが、これが16年度になくなった。共済済会事業費は2億円あったんです。これはがだんだん減って、平成18年度には5千万円になった。知事が平成14年に就任してからどんどんと減っている。私は、知事のトップダウンでこんなことやってもいいのか。このように思っているが、国に対して要求すると同時に、京都府もこういう姿勢を改めて下さい。どうですか。
【知事】廃止事業だけあげてもしょうがないでしょう。新設事業も一緒にあげてくれなきゃいけない。そうすれば、社会保障関係経費の伸びを見れば、すぐに分かるじゃないですか。そんな一方的な資料は、私は、おかしいと思う。レベルアップ事業をはじめとして、社会保障関係の事業、新規事業、積んでるじゃないですか。そのことを隠して、こういう形でおっしゃるのは、前窪委員らしくないと思う。
【前窪】知事、私の指摘している中身について答弁して下さい。私は、この事業がなくなって、いま、民間福祉職場が大変困っていると言っている。違いますか。私は聞いてきました。頸腕とか、腰痛とか、いわゆる職業病、これの検診だって、事業が廃止されてからなかなか実施できない状況になっているではないか。あるいは研修費がなくなって、宿泊を伴う研修だって実施できなくなっているじゃないか。知事、現場を見て下さい。現地・現場主義、だから私は指摘している。何も同じものを継続すればいいというわけではない。より拡充して、立派な制度に是非していただくようにお願いしたい。 先日、決算委員会の現地調査で、京都八幡高校の福祉コースの実習授業を見学した。若い人たちが、一生懸命に目を輝かせ、実習に励む姿を見て、私は頼もしく思ったが、しかし、卒業して就職する、その職場が給料が非常に低い、労働条件も悪い、これでいいのか。こういう生徒たちに未来を保障するのが政治の責任だと、私は強く感じたところだ。 知事は、色々と新しい事業をやられる。それもいいが、やはり現場で頑張っている、そういうところに目を光らせていただいて、こんなことはないようにして欲しい。よく点検して下さい。このことを強く求めておく。
城陽・山砂利採取跡地の産廃(再生土)処理について 【前窪】最後に、城陽の山砂利問題についてです。山砂利採取地に「再生土」と称する産廃等が持ち込まれている問題。これは私も再三指摘していただき、そして検証委員会がいま開かれている。この検証委員会の中でどういうことになっているか。「元産業廃棄物であっても、現在は固形化し産廃でない」というような議論を、委員長さんなどが行い、城陽のみなさんが心配をしている。地下水の汚染がないか、業者に撤去指導すべきでないか、再三指摘されている。私は、この検証委員会のあり方に、いま城陽市民のみなさんが疑念を持っておられる。そういうことだから、私は撤去を含めて、是非市民の心配・要望が反映されるようしていただきたい。最後に知事の決意をうかがっておきたい。
【知事】城陽の山砂利については、検証委員会で専門家の方が非常に熱心に議論しているので、私はその成果を踏まえ行動していきたいと思っているし、先ほどの点は、健康健診はレベルアップ事業でやっているし、共済は基金の積立金の方の備蓄があるので、そういった点も調べていただきたい。
【前窪】再度答弁があったが、私は現場を見ていただいて、現場でどういうことが起こっているか、これを政策に反映していただくことを強く求めたいし、城陽の山砂利の問題は、やはり京都府が覆土方針という方針をこの委員会に追認してもらうような姿勢はよくない、そういうことはあってはならないということを指摘しておく。