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2007年12月定例議会 山内佳子議員 意見書・決議案討論

2007/12/18 更新
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 日本共産党の山内よし子です。 ただいま議題になっています、意見書案18件と決議案1件について、自民党・民主党・公明党の三会派提案の「『米国の北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除』の動きに関する意見書案に反対し、他の17件の意見書案と1件の決議案に賛成の立場で討論します。

 最初にわが党提案の10件の意見書案と1件の決議案についてです。  まず後期高齢者医療制度の中止・撤回を求める意見書(案)」および、「後期高齢者医療制度についての決議(案)」についてです。  そもそも、後期高齢者医療制度は、国の医療費を抑制することを目的に、75歳以上の高齢者を「後期高齢者」と呼び、他の世代と切り離して別立て保険制度をつくり、高齢者人口が増えるにしたがって際限なく医療費負担を押し付け、医療に差別を持ち込むもので、これまで社会を支えてこられた高齢者に対し、あまりにもひどい仕打ちです。  府内市町村を含む全国の295自治体で、負担軽減や制度の見直しを求める意見が相次いであがり、また本府の後期高齢者医療広域連合でも、中止・撤回を求める意見が多く出されるとともに、抜本的改善を求める意見書も可決されました。また、本府に対する財政支援等を求める要望書も提出されたところです。  こうした声に、本府議会としてもぜひ応えるべきです。

次に「療養病床削減・廃止方針の中止・撤回を求める意見書(案)」についてです。  本府は厚生労働省の療養型病床の削減方針に基づき、地域ケア検討協議会を開催し、現在すでに約6500床まで減った療養病床数を今回の計画でさらに半数程度まで削減する計画を示しました。しかし一方で、在宅や施設の受け皿も、現在ある療養病床の転換のめどもまったく整っていないのが現実で、さらに療養病床が削減されれば行き場を失った高齢者や患者さんが「医療難民」「介護難民」になってしまいます。よって療養病床の削減廃止方針は撤回するべきです。   次に「レセプトのオンライン請求義務化に関する意見書(案)」についてです。  厚生労働省が昨年行った省令の改正により、2011年から全国の医療機関に対し、レセプトによる医療費請求のオンライン化を一律に義務化し、オンライン請求以外は認めないとする画一的な方針を打ち出しました。そもそも、一律オンライン義務化という、大きな負担となるものを、法的根拠のないまま省令で義務化することは重大な問題です。しかも、新たな設備投資などの財政負担がかかり、必要な検査や治療を機械的に切り捨てる審査が行われる危険性があることから、医療関係者から、「一律に義務化することは反対」とする声が上がっているのです。  本来、IT化等は必要ですが、オンライン請求をするかどうかを決めるのは、医療機関であり、一律の義務化はすべきではないと考えます。   次に、「医師・看護師等の確保に関する意見書(案)」についてです。  全国各地で医師不足・看護師不足が、地域医療の崩壊を招く重大な事態を引き起こしています。その原因は、政府がこれまで「医師は足りている」などと宣伝し、医療費を抑制してきたことです。その上、「医学部定員の削減」を閣議決定までして、医師の養成を抑制した結果、日本の臨床医数は人口十万人あたりで200人でアメリカ240人、ドイツ340人、イタリア420人と、OECD加盟30カ国中27位と立ち遅れ、深刻な医師不足が引き起こされたのです。また、看護師は、100病床あたり54人で、アメリカ233人、イギリス224人、ドイツ109人に比べて大きく立ち遅れており、絶対数そのものが不足している上に、看護師配置基準の変更により、看護師争奪戦が行われ、看護師不足の連鎖が引き起こされました。  その結果、本府においても、救急医療体制の中止、病棟閉鎖など、負の連鎖が続いており、その対策は待ったなしであります。

次に扶助費見直し等生活保護に関する意見書案についてです。  生活保護基準は、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準であり、国民の生存権保障の水準を決める重要な基準です。 11月28日に成立した改正最低賃金法は、「生活保護との整合性に配慮する」ことを明記し、生活保護基準が下がれば、最低賃金額も下がることになります。また、保護基準は、地方税の非課税基準、介護保険の保険料・利用料などの減額基準、公立高校の授業料免除や就学援助の給付基準など、医療・福祉・教育・税制などの多様な施策の適用基準にも連動しています。保護基準の引下げは、現に生活保護を利用している人の生活レベルを低下させるだけでなく、所得の少ない市民の生活全体にも大きな影響を与えるものです。  宇治市議会や京田辺市議会では高齢者加算や母子加算の削減に反対する意見書案が相次いで採択され、京都府保険医協会も「生活保護を引き下げてはならない」という声明を発表するなど、削減反対の世論も高まっており、本府議会においても生活保護基準の引き下げの検討を中止するよう求めるべきと考えます。

 次に「社会福祉施設等の人材確保対策の具体化と充実を求める意見書(案)」についてです。  長年にわたる関係者の粘り強い運動により、本年7月「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」が決定されました。  福祉は人が支えています。ところが、介護報酬改定や障害者自立支援法による財源の削減による影響のため、福祉施設で働く人たちにしわ寄せが行き、低賃金と重労働を余儀なくされています。仕事にやりがいを感じながらも、若い職員が2年、3年でやめていかざるをえない事態になっているのです。  本意見書案は福祉労働に情熱を持つ人材が、社会福祉施設で働き続けることができるよう国に財政の確保を求めるものです。

次に「大学の高学費を解消し、奨学金制度の拡充を求める意見書案」についてです。  わが国の高学費は世界でも異常であり、国立大学でも初年度納入金は82万円、私立では平均131万円にもなります。授業料を1970年と比べると国立は45倍、私立は9倍で、食料品物価の3倍をはるかに上回る高騰です。 国連は日本政府に対して、「高等教育の漸進的な無償化」について検討することを勧告しましたが、政府はいまだに何の対策もとっていないのです。 また奨学金制度は国際的に給付奨学金が大きな流れになっており、フランスでは大学の授業料は無料で、奨学金は生活費として給付されています。  わが国においては、奨学金制度を学生支援機構に委託しましたが、無利子枠の少ないことや、あまりにも高すぎる保証料の問題など、教育の機会均等を保障するための奨学金制度の役割を果たしているとはいえません。

次に「義務教育費の国庫負担の堅持と負担率の復活を求める意見書案についてです。 昨年3月、義務教育費の国庫負担が2分の1から3分の1に削減される法律が、自民党と公明党の賛成で成立しました。憲法に保障された国民の教育権を保障するために、義務教育は国に財政的な責任を課しており、国庫負担の削減は公教育の根幹を揺るがすものです。 負担率の削減により、本府も含む39の道府県で予算不足が生じることが明らかになっており、教育の地方間格差が懸念されています。義務教育費国庫負担制度の維持とともに負担率を復活することを国に求めるものであります。

 次に「原油価格高騰に関わる緊急対策を求める意見書案」についてです。 原油価格は、国際的な投機資金の投入によって史上最高値を記録しました。 師走の寒さがいちだんと厳しくなる中、小泉「構造改革」の不況に加え、国内の石油製品価格も軒並み上昇し、燃料油を使う農漁業、中小零細企業、伝統産業関連事業者などから「これでは経営が成り立たない」と悲鳴が上がっています。また高齢者、福祉施設などでは、灯油代の値上がりは死活問題となっています 政府も11日に緊急対策を発表しましたが、今求められているのは緊急かつ有効な対策であり、現実の負担に対する軽減策を講じることです。米軍に無償で石油を供給するより、国民にこそ供給すべきと考え意見書を提案します。

 次に「米国産牛肉の輸入月例制限の緩和に反対し、BSE全頭検査の継続を求める意見書案」についてです。  政府は都道府県と政令指定都市に対し、生後20ヶ月零以下のBSE検査国庫補助を来年7月末に打ち切り、地方自治体の独自検査を継続しないことを求めています。  全頭検査は国内でBSE感染牛が始めて見つかった直後の2001年10月から行われており、その後現在まで、国内では33頭目のBSE感染牛が発見されたにもかかわらず、これまで誰でも安心して国産牛肉を食べることができたのは、全頭検査が継続されてきたからであり、国産牛の消費が維持されてきたのです。  20ヶ月零以下の全頭検査の国庫補助が打ち切られ、検査が行われなければ、国産牛への不安と混乱が生じることは必至です。  また政府は米国からの輸入牛肉を20か月齢以下から30か月齢以下に緩和したい考えを明らかにしていますが、わが国では過去に21か月齢と23か月齢の若い牛での感染が確認されており、だからこそ消費者の安全を第1に、規制を行っているのです。しかも米国からの輸入牛肉は特定危険部位の混入や証明書に記載されている部位以外の混入など、違反事例が相次いでおり、アメリカに対してわが国と同一基準の安全措置を求めることは当然です。   以上、わが会派提案の10意見書、1決議案については、府民の願いに答えるものであり、同僚議員の皆さんの賛同をお願いするものです。

 次に自民党・民主党・公明党の与党3会派提案の3件の意見書についてです。

まず「原爆症認定問題の早期解決に関する意見書案」について賛成いたします。 広島・長崎に原爆が投下されて62年の歳月が過ぎましたが、生存している被爆者25万人強のうち原爆症の認定を受けている方は2200人と1パーセントにも満ちていません。筆舌に尽くしがたい苦しみの中で「私の病気を原爆が原因だと認めてほしい」「核兵器の恐ろしさを後世に伝えたい」と全国で297人の被爆者が訴訟に立ち上がり、6つの地裁で勝利をし、その判決では国の機械的な原爆症認定基準が厳しく批判されました。こうしたもとで、認定基準の見直しを検討していた厚生労働省の検討会は昨日最終報告書を提出しました。しかしこの報告書は、司法判断を軽視し現行の審査基準を維持するものであり、「被爆者の切り捨てに利用されてきたやり方が正しかったと追認するための検討会としか思えない」などの批判と怒りが起こっています。 20歳で広島で被爆された京都の原告の小高美代子さんは12月12日大阪高等裁判所で、意見陳述を行いました。一部紹介します。 「毛髪が抜けたり貧血で苦しんだりの長い年月、62年過ぎてやっと去年地裁で9名の原告に勝訴をいただき、喜びの涙を流しました。それなのに10日ほどで控訴され今日に至っています。   世界で広島と長崎にしか原爆は落とされていないんです。それで苦しんでいても国は振り向いてもくれない。経験のない人たちはその怖さを知ることもできない。だから今でもあっちこっちで核を作ったりするのです。被爆者のつらさを思いやり、全世界に向けて核の恐ろしさを伝えてください」と 政府はこの声に応えるべきです。   現在、多くの被爆者が高齢化しており、認定基準を抜本的に見直してすべての被爆者を救済することに一刻の猶予もありません。わが党議員団は被爆者の願いを踏みにじる今回の報告書の撤回をもとめ、被爆の実相を反映しすべての被爆者が確実に救済される新たな基準を作り上げることに全力を上げて取り組むものです。

次に、(独)都市再生機構賃貸住宅(旧公団住宅)居住者の居住の安定を求める意見書(案)についてです。 都市再生機構の賃貸住宅事業の廃止、民営化をめぐって、全国公団住宅自治会協議会は、公団住宅売却・削減阻止運動本部を結成し、居住者の居住の安定を守るために全国の自治体に働きかける大運動を展開されております。本府議会にも陳情書が提出されました。都市再生機構の賃貸住宅事業の廃止・民営化には反対というのが居住者の強い願いであり、その意見が反映されるよう本議会が一致して国に求めることに賛成するものです。     最後に「『米国の北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除』の動きに関する意見書案」についてです。この意見書案は米国が北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除をしないように求める意見書案です。  わが党は北朝鮮に対する日本独自の制裁措置について、昨年10月にこれが実施された際にも、また今年4月にこれが延長された際にも賛成をしてきました。  それはこの制裁措置が日朝間、および6カ国協議の合意に基づいて北朝鮮の核問題の解決にとって有効であると判断したからです。  その後、今年の7月から8月にかけて、北朝鮮はニョンビョンにある核施設の活動を停止、さらに10月3日に採択された文書によれば、北朝鮮は、すべての核施設を無能力化し、今年の末までには、ニョンビョンの3つの核施設を無能力化することを約束しています。  これは国際社会の総意を背景にして6カ国が粘り強く協議を続けてきた結果であります。私たちは日朝平壌宣言と6カ国協議に基づいて、拉致問題の解決のためにも、核問題や過去の清算問題などを包括的に解決するべきであると考えています。  本意見書案は6カ国協議の努力に背を向け、拉致問題の解決をも困難にするものであり反対です。

 以上で討論を終わります。ご静聴ありがとうございました。