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議会を終えて(談話)

2007年12月定例議会を終えて

2007/12/18 更新
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            日本共産党京都府会議員団 団長 新井 進

 11月14日まで行われていた決算特別委員会に続き、12月3日から開かれていた12月定例議会が18日に閉会した。今議会は、自民党と民主党による大連立の動き、新テロ特措法や防衛利権、年金問題などをめぐり国会の再延長が行われるなど、情勢の新しい大きな変化の中で行われた。また、「構造改革」路線による負担増や貧困の深刻化、地方の切り捨てのもと、わが党議員団は、府民の暮らしの実態を厳しく告発するとともに、要求実現のために奮闘した。

 今議会には、府立2大学の法人化に伴うものや、06年度決算認定議案など34議案、および収用委員会委員の任命など人事案件が提案され、わが党議員団は06年度「一般会計および特別会計決算」と「府営水道事業会計決算」の認定、および公立大学法人化に伴う議案6件、桂川右岸流域下水道幹線管渠工事請負契約変更の9件に反対し、他の議案には人事案件も含め賛成した。

1、決算特別委員会では、06年度「一般会計および特別会計決算」の審議が行われたが、この年は小泉「構造改革」が府民生活と京都経済を直撃し、府内での自殺者の急増、京都の中小事業所減少率が全国ワースト5位になるなど、影響が深刻化した年である。また「地方の自由度が拡大する」と知事が求めてきた三位一体改革により、地方交付税が全体で約5兆円も削減されるなど、地方財政も大きな困難に直面した。山田知事にとっては、06年度は二期目スタートの時期であり、知事として「構造改革」に反対し、地方交付税の復活・充実を求めるとともに、府民の福祉や暮らし、中小企業・教育を守り、無駄な事業と不公正な財政支出を抜本的に見直すことこそ求められた。しかし、山田知事は「集中と選択による事業の見直し」として250事業、55億円の削減で、障害者生活支援センター運営助成、日常生活用具給付助成など、きめ細かな施策を廃止し、また指定管理者制度の導入で17億円削減した結果、公的施設で働く職員の労働条件の悪化や不安定雇用を拡大した。さらに、土木費を88億円減額し、生活道路や河川改修の遅れや、地元建設業者への重大な影響を招いた。一方で、京都市内高速道路の整備促進に8億円増など、不要不急の大型公共事業や同和奨学金償還対策事業を継続していることから、わが党議員団は一般会計および特別会計決算認定に反対した。 また、「水道事業会計決算」も乙訓府営水道事業で、過大な水需要予測にもとづく関係市町への重い負担と、高い水道料金の住民への押し付けであり、関係市町の意思を尊重し、早急な改善を強く求め反対した。 さらに、府立2大学の法人化に関わる議案については、自民党議員ですら「公立大学法人化によって基礎研究がそこなわれることがないように」と述べたが、これまでわが党議員団が指摘してきたとおり教育研究や大学の自治が保障できないため、反対した。

2、今議会では、政府が強行しようとしている数々の医療・社会保障制度の「改悪」に対し、府民生活を守る立場からわが党議員団は厳しく追及した。  「京都府老人医療費助成制度」(マル老 65歳から69歳までの医療費窓口負担を1割に軽減する制度)を、京都府が縮小する案を明らかにしたことに対し、府民的に大きな不安と怒りが湧き起こる中、決算特別委員会知事総括質疑で、わが党前窪議員が「助成制度の見直しは中止すべき」と求める中、当面、縮小案を凍結することが表明された。これは参議院選挙の審判とその後の国の高齢者医療制度に関わる負担増の凍結の動き、府民的な運動と議会論戦があいまって、今回の縮小案凍結を勝ち取ったものである。わが党議員団は引続き凍結にとどめず、見直しの中止を求めて奮闘するものである。 来年度実施予定の後期高齢者医療制度について、山田知事は制度の中止・撤回を国に求めることについては背を向けたものの、「今回の暫定的、経過的措置ばかりでなく、従来から高齢者の生活実態をふまえ、負担が過度とならないよう、制度の見直しを行なう」よう求めていること、また広域連合からの府に対する要望について「既に府の支援について要望を頂いており、今後充分にお話しを聞く」と答弁するなど、市町村や広域連合、関係者による制度の中止・撤回や抜本的改善を求める運動により、その願いに応えざるを得なくなっていることが明らかとなった。 医師・看護師確保問題では、舞鶴市や山城地域で救急医療体制が危機にあることを指摘し緊急対策を求めるとともに、舞鶴医療センターの周産期母子医療サブセンターの再開を求めたことに対し「12月4日に周産期医療対策協議会を開催し、産科医師等を確保する」と述べるなど、医師・看護師不足の深刻さに加え、この間の運動と論戦により、京都府が対策の強化をはかることを表明せざるを得なくなっている。 生活保護問題では、厚生労働大臣が生活保護の扶助基準の見直し表明を行ったことに対し、12月17日、京都府知事が厚生労働大臣に対し、「生活扶助基準の見直しに関する要望書」を提出した。その内容は①見直しは財政的観点だけでなく健康で文化的な最低限度の生活を保障するものとなるように慎重に行なう、②原油高騰や物価の上昇傾向による生活不安に十分配慮、③見直しは地方協議の場を持ち十分に意見を聞く、よう求めている。わが党議員団は、12月13日の府議会厚生常任委員会で、上原議員が見直しの問題点を指摘し、国への反対意見を上げるよう求め、保健福祉部長も「慎重に対応されるよう要望して参りたい」と答弁していたものである。こうした中で、政府が生活保護基準の引き下げを見送ったことは、国民の世論と運動が政治を動かしたものである。  また、今年度当初予算で明らかにされていた、在宅酸素療法等の医療費負担軽減について、ようやく、制度のなかった京都市等との調整ができ、08年1月から実施されることとなった。長年にわたる、患者さんや団体、わが党議員団が求めてきたことが実ったものである。

3、米価暴落の深刻な影響と、「限界集落」の名のとおり、山間部の集落崩壊に拍車をかける事態がすすんでいる。わが党議員団は、府内各地で懇談会を開き、農業関係者から直接実状を聞くとともに、農家などへも訪問し対話を重ねた。その中で出された「60㎏で昨年と比べ2000円も下がり、生産費も出ない。全くやっていけない。」、「つくればつくるほど赤字。しかも原油価格が上がり、乾燥や運賃まで負担が増えている。」などの切実な実態を具体的に指摘し、決算特別委員会知事総括質疑、代表質問、一般質問、常任委員会で緊急の米価対策等を求め奮闘した。山田知事も「米価下落は、稲作農家の経営や受託組織の運営に大きな影響を及ぼしており、こうした状況がそのまま続きますと京都府の農業・農村にとりましても大きな問題である」と、影響の深刻さについて答弁した。引き続き、緊急米価下落対策への府独自支援策等の実現のため、奮闘するものである。  耐震改修助成制度について、府の補助対象である「住宅密集市街地」「床面積240平米以下の木造住宅」「耐震診断が1.0以上になる改修工事」の規準について、すべての建物を対象とし、部分改修も認めるなど、制度の抜本的改善を求める中、土木建築部長が「府民や市町村の要望をよく聞き、トータルとして、使い勝手のいい制度にさらに工夫していきたい。」と答弁し、長年の関係者の運動により、さらに前進することとなった。  地方の切り捨てや公共事業費の削減により中小建設業者が倒産するなど、深刻な事態が起こっている。さらに今年四月から実施された入札制度の改正で、仕事が激減するなど、さらに拍車をかけている。このため、入札制度を、除雪やまちづくりなど地元への貢献を実態に応じてきちんと評価する制度へと緊急に改善することを求めた。山田知事は「入札制度の改革を進めると共に、府民生活に密着した公共事業を推進したい」と答弁した。

4、原油価格の高騰が、府民生活に深刻な影響を与えており、わが党議員団と成宮まり子京都国政委員長は、12月3日に緊急に知事への申し入れ(①「緊急対策本部」設置と総合対策の実施、②福祉現場、教育分野等、緊急実態調査の実施、③相談窓口の設置、④生活福祉資金拡充、公的融資返済猶予など緊急対策、⑤政府に、緊急対策と国際的投機マネー抑制ルールの確立を求める)を行なうとともに、12月12日に、「緊急懇談会」を府委員会、市議団と共催し、「価格転嫁ができない中小運送業は危機的」「融資より返済猶予や利子補給を」など深刻な実態と要望が出された。また本会議で、わが党原田議員の質問に、山田知事が「今後とも地域産業や府民生活に支障が生じないよう、的確に対応してまいりたい」と答弁せざるを得なかった。そうした中、クリーニング業や染色業等、原油価格高騰の影響を受けている業種が、セーフティネット保証第5号に追加指定されることとなり、これにより「あんしん借換融資」制度を利用できることとなった。引き続き、原油価格高騰に対する緊急対策等を求めて奮闘するものである。

5、わが党議員団が府民と共同して取り組んできた環境等の問題について、改善の方向がいくつか示されることとなった。 城陽市市辺金山地区の開発問題で、現地調査にもとづき前窪議員が、青谷川源流域で水質汚染の可能性があること、土石流など土砂災害の恐れ、自然破壊につながることなどを指摘し、開発許可をおろすべきでないと求めたことに対し、環境政策監が「副知事が現地を直接調査し、(許可しないと市長が述べている)城陽市とも連携をとって対応したい」と答弁した。  また、一貫して追及してきた舞鶴市の引き上げ記念館周辺の鉛汚染問題について、ようやく精錬会社が土壌の入れ替えや海底浚渫など、対策を行なうこととなった。さらに、伏見区の鴨川・西高瀬合流点上流の背割堤の土壌調査により、鉛等の汚染が確認され、その対策を求めてきたところ、汚染土壌の入れ替えや護岸整備を行ない、今後、公園として整備することが明らかにされた。 今議会中は、国連気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)および「京都議定書」第3回締約国会議(COP/MOP3)が並行して開かれており、京都議定書採択の地として京都府の温暖化対策への姿勢が問われた。本会議質問で、わが党松尾議員が、政府が温室効果ガス削減目標を持つなど積極的に働きかけることを求めるとともに、自然エネルギーの利用促進のため、太陽光発電の積極的推進を求める中、「個人住宅への太陽光発電の導入支援策を検討する」と表明された。

6、文教常任委員会で、「まなび教育推進プラン」最終案が示され、30人程度学級について30人~35人とされた。さらに、わが党山内議員が、少人数学級実現のため、来年の教員配置や教室増対策を求めたことにたいし、府教育委員会から「学級編制や京都式少人数教育の選択は学校と市町村教育委員会の判断による」こと、「教室を増やす対策には府教委として相談に応じる」こと、「各学校や学級の困難さの状況に違いもあり、府教委が示した基準に市町村教育委員会が拘束されるものではない」こと、「できるだけ期待に応えるよう進めていく」など、積極的な答弁があった。長年にわたる30人学級を求める運動と論戦により大きく前進を始めており、引き続き来年度にむけ30人学級の推進のため全力をあげるものである。 一方、大学の高学費に対する本府独自奨学金の創設については、知事が「国でやるべきこと」と述べ、また高校生の制服代など諸費負担の増加への支援策について、教育長は「実費負担」とのべ、負担はやむをえないとの立場を示した。  また、京都市・乙訓通学圏の再編について、「当事者の中学生から直接意見を聞いて判断すべき」と求めたことに対し、教育長は「まず大人の側が、子どもにとって何が最善か、しっかりと議論をして、その上で、子どもたちに不安の内容にしっかりと説明をしきることが大人の側の責任」とのべ、国連「子どもの権利条約」第12条にも明記されている中学生の意見表明権を否定する答弁を行なったことは重大である。引き続き再編計画の中止・撤回を求めて奮闘するものである。

7、今議会には、「教育格差をなくし、子どもたちにゆきとどいた教育を求める請願」をはじめ7件の請願が提出された。 66753名にものぼる「教育格差をなくし、子どもたちにゆきとどいた教育を求める請願」について、「子どもたちがより選択肢を広げられるため、高校の統合計画は賛成」(自民党議員)などとして、わが党以外の会派がすべて反対し不採択とした。また、15770人の「安全・安心・快適な学校と豊かな放課後・生活の充実を求めることに関する請願」も、「寄宿舎は学校に通って生活訓練ができない子どものための施設」(自民党議員)などとして、不採択とするなど党利党略の道理のない態度をとった。 一方、府民的な運動の高まりの中、「原爆症認定問題の早期解決に関する意見書」、「後期高齢者医療制度等に関する意見書」、「福祉・介護の人材確保対策を求める意見書」、「原油価格の高騰に関する対策を求める意見書」、「(独)都市再生機構賃貸住宅(旧公団住宅)居住者の居住の安定を求める意見書」、「診療報酬請求事務のオンライン化に関する意見書」が全会派賛成して成立した。これらは、参議院選挙以後の政治的激動の中、運動と論戦により政治が動くことを端的に示したものである。

8、今議会で、支出項目のすべてに領収書を添付することや、政務調査活動報告書の添付等を含む「政務調査費の交付に関する条例」の改正が行なわれた。わが党議員団がこれまで求めてきたもので、一歩前進である。また、府議会会派や議員に対する公的負担の現状を点検し検討するため、外部委員を含んだ「京都府議会における公的負担のあり方検討委員会」の設置が確認された。議員のあり方が注目されている時だけに、わが党議員団は、よりいっそう透明性を高めるよう、力をつくすものである。

2007年も、4月のいっせい地方選挙からはや9ヶ月経過し、年の瀬を迎えることとなった。12月17日には国保料引き下げ署名17万190筆が京都市役所に提出されるなど、暮らしの叫びが噴出している。わが党議員団は、暮らしの願いが政治を動かす新しい年となるよう、みなさんと力を合わせて奮闘するとともに、目前に迫った京都市長選挙で中村和雄市長実現と、新テロ特措法廃案にむけ全力をあげるものである。