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本会議質問

2008年2月定例議会 前窪義由紀議員 代表質問

2008/02/20 更新
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【前窪】日本共産党の前窪義由紀です。議員団を代表して知事並びに関係理事者に質問します。 さて、2月17日投票の京都市長選挙で、中村和雄候補は、「相乗り・オール与党」候補に951票差と迫り、大善戦・大健闘しました。あと一歩のところで、勝利することができず、きわめて残念ですが、ここまで大きく押し上げていただいた、京都市民の皆さん、全国の皆さんのご支援に心から感謝申し上げます。 これまでの京都市政の「継続か刷新か」が、焦点になったもとで、「相乗り・オール与党」候補の得票が、37,2%、有権者比13,8%にとどまり、市民多数の声は「市政刷新」にあることが、はっきり示された選挙でした。また、自民・公明と民主の連立、いわゆる「相乗り・オール与党」への厳しい審判となり、3党の参院比例票の合計、約45万票の3分の1しか得票できず、「オール与党政治」に未来がないことも示しました。 職員の不祥事や同和特別扱い、そして、市内高速道路など税金のムダ使いをただし、「高すぎる国保料の引き下げ」、「教育の格差是正」、「青年の雇用を守る」など中村候補の訴えは、市民の大きな共感を広げました。 日本共産党は、市民の皆さんの市政刷新への願いを大切にし、力を合わせて「住民が主人公の地方政治」、「国民が主人公の国の政治」の実現に、引き続き全力で奮闘するものです。

輸入食品検査体制の抜本的強化について 【前窪】それでは質問に入ります。まず、輸入食品検査体制の抜本的強化についてお聞きします。 中国から輸入された冷凍ギョーザ農薬中毒事件は、全国の消費者に衝撃を与え、各地で異常を感じたとの訴えが相次ぎました。この間、被害の全体を把握し、原因を突き止めるための調査や捜査が、日中両国で行われていますが、いまだ全容の解明にはいたっていません。被害者や消費者からは、いま、なぜあのような危険な加工食品が、やすやすと輸入されたのか、水際のチェックが出来ないのかとの声が出されています。 日本には、食品衛生法があり、本来、この法律に適合している食品だけが、輸入されるはずです。現在、この食品検疫に従事している食品衛生監視員は、334人ですが、輸入食品の急増の中で、検査率はわずか10%です。9割の輸入食品は、無検査で輸入されています。また、すべての食品は、一律0,01ppmの残留農薬基準が、定められているにもかかわらず、その基準の適合検査を、厚労省は一切していませんでした。 食料自給率39%で、食糧の6割以上を輸入に依存している国として、このような貧弱な検査体制で良い訳はありません。 今回の事件で、国民は一体何を信じて食べたらいいのかと、途方にくれています。食の安心・安全に対する信頼を回復するには、輸入食品検査体制の抜本的強化が必要です。 食品偽装事件も多発していることから、自治体においても情報の共有、保健所等関係機関の連携、食品衛生指導体制の充実・強化が必要です。 そこで伺います。輸入食品の検査体制を抜本的に強化するために、少なくとも検査率を現在の10%から50%以上に引き上げること。そのため、国の食品衛生監視員を、現行の334人から飛躍的に増員すること。輸入加工食品についても、残留農薬検査を実施することなど、国に緊急に求め、実行を迫ることが必要だと考えます。いかがですか。 また、現在28の都道府県が、専任の食品衛生監視員を配置していますが、本府の場合、すべて兼任体制となっています。食品衛生監視員の専任化など、体制強化は待ったなしです。どうされますか。お答え下さい。 さらに、市町村や教育委員会と連携し、学校、保育所、老人ホームなど、給食の安全確保対策を緊急に講じるとともに、食料自給率向上のためにも、地産地消の一層推進が必要と考えますが、いかがですか。

【知事】中国製冷凍餃子の問題は、京都府としては直ちに、スーパー等販売店に対する販売自粛と自主回収の必要性を徹底を主張するとともに、府民向け相談窓口を設置し、被害の拡大防止と府民の不安解消をはかってきた。 国の輸入食品に対する検査体制だが、府としてはこれまでから、国に対し検疫検査体制の強化や違反食品に関する迅速で正確な情報の提供などをくり返し求めてきた。 食品衛生監視員については、府内7保健所を中心に100人を配置し、その約半数については食品衛星監視を主たる業務としていますが、夏季、年末等集中的な監視指導が必要な時には、その他の兼務職員も協力し実効ある監視指導に努めている。 また、広域振興局単位に食品衛生監視指導班を編制し、大規模食品製造施設等の重点的、集中的な監視・指導を行い、更に、食品衛生推進員、京の食安全見張り番による店舗の巡回指導等、業者の皆様の活動とも連携し重層的に監視・指導を実施している。 学校・福祉施設への対応だが、従来から食育という観点も含めまして、衛生管理の状況について確認指導をしている。 更に、今回の事案発生におきましても、給食食材の状況を確認するとともに、注意を喚起するよう学校・福祉関係者に対し徹底した。 地産地消については、これまでから、京都食の安全安心プラン等を通じ、学校や病院・福祉施設の給食に新鮮で安心・安全な地元農産物の利用促進をはかっていく。ほんまもん京野菜取扱店や朝市直売所での地産地消の取り組みを推進しており、引き続き積極的に対応していく。

原油価格高騰問題 【前窪】次に、暮らし、雇用に関わって数点おき聞きします。 まず、緊急問題となっている原油価格高騰問題についてです。 原油価格の高騰は、国民生活のあらゆる分野に深刻な影響を与えています。党府議団は、昨年来、中小業者、福祉・教育関係施設などを訪問し、原油高騰の影響と要望をお聞きしてきました。そして、本府に、対策本部の設置など、緊急対策を3回申し入れました。また、経産省や厚労省などに、2回の申し入れを行ってきました。 今、必要なのは、原油高騰問題について「緊急対策本部」を設置し、全庁的な総合対策として具体化することです。知事は、府民の暮らしと営業の重大な事態をどのようにとらえているのか、まず認識を伺います。 暮らしに欠かせない暖房費の問題も深刻です。 昼間はスト-ブをつけずに、寒さに耐えている1人暮らしのお年寄りが増えています。月4~5回だった灯油の購入を、2回に減らし、「昼間は布団の中、スト-ブをつけるのは、朝食と夕食の時間のみ」、「スト-ブの上に鍋を置いて、煮たき物をする。こんなひもじい思いは初めて」と、76歳の高齢者の声です。  障害者自立支援法で運営が苦しくなっている障害者施設も、ダブルパンチです。重度障害者を毎日ワゴン車で送迎している通所授産施設では、ガソリン代の高騰に、「このまま値上がりが続くと、どうなるのかと不安がいっぱいです」と訴えられました。 与謝野町の定員30人の、障害者入所施設では、床暖房と入浴用に、重油を年間2万1,000㍑使用しているが、年間約17万円もの増額になり、「利用者も職員も限界まで切り詰めているが限界」と話されました。 政府は、原油高騰への対策として、低所得者への灯油の購入代金補助を決め、自治体が決めれば対応するとしています。すでに伊根町と与謝野町で、「福祉灯油」が実施されました。本府として、全ての自治体が、1月にさかのぼって実施できるように、協議と援助を強めることが必要です。いかがですか。 また、社会福祉施設や共同作業所に対し、暖房代の補助を実施するとともに、車による送迎を行っている施設に対し、燃料代の補助を行い支援すべきです。いかがですか。 公衆浴場も大変です。 府内の公衆浴場数は、1992年に382だったものが、06年には245と3分の2に減少、この原油高で経費が急増し、まさに存亡の危機に立たされています。公衆衛生の観点からも緊急対策が必要です。 富山市では、低所得者に入浴券を発行して喜ばれています。京都市はじめ関係市町村と協議し、利用者拡大・経営安定につながり、生活支援にもなる高齢者や低所得者への「入浴補助券」の発行など必要だと考えますが、いかがですか。また、燃料代補助を行うとともに、京都市以外には浴場への、ボイラ-など基幹設備の更新補助がないことから、補助制度を新設し、頑張っている浴場を応援すべきです。いかがですか。お答え下さい。

【知事】ガソリンは連続8週、灯油は連続7週、価格は低減傾向にあるが、依然として価格は高止まり傾向にあることには変わりない。この2月8日には、国、京都市とも連携し原油価格高騰等の情報を交換する会議を開催するなど情報共有をしており、そうしたなかで今回一定の予算をお願いしているところだが、引き続き府民のくらしへの影響と中小企業等の状況を注視していく必要がある。 北海道や東北地方など灯油を多量に消費する地域におきましては市町村が主体となって灯油購入費等の費用の一部を助成する取り組みが行われており、府内でも2町が実施しているが、これらの取り組みにつきましては、特別交付税により財政支援を行うことになっている。京都府においては、生活保護制度や生活福祉資金制度など各種セーフティーネットの活用等により、低所得者の生活を引き続き支えていきたい。 社会福祉施設については、施設団体を含め、個別の施設からも機会を捉えて状況を把握している。暖房や送迎代等に一定の増加があるようにお聞きしていますが、今後、施設経営の影響を見極めていきたい。 公衆浴場については、これまでから国民生活金融公庫が有利な貸付を行っていますが、今般原油価格高騰により新たに特別窓口を拡充し企業貸付の返済条件緩和がなされたところ。 入浴補助券等の発行が必要とのことだが、この度の原油高騰に際し、入浴料金の改定は行っていない。事業者においては、原料費削減のために、重油から廃油・廃材への転換等努力されているところなので、私どもとしては、しっかりと経営相談を受ける中で、色々な融資等をご紹介する、また、公衆浴場の浴場開放事業等集客イベント等についても支援していきたい。

【前窪】原油高騰で本当に厳しい経営状況になっている中小企業の資金繰り対策として、来年度予算に原油価格等特別支援制度が予算化されています。これについては、本当にすべての中小企企業が対象となるように、また、1年の限定付きと言うことでなくて、継続して実施できるようにさらに一層努力していただくよう要望しておく。そして、実態把握のもとで、それぞれの業界・業種に対する支援をお願いしておきたい。

派遣労働の問題について 【前窪】次に、派遣労働の問題です。 この間、派遣最大手のグッドウィルに事業停止処分が下されました。港湾、建設など禁止されている業務への違法派遣、二重派遣、偽装派遣など、派遣労働が「無法の巣窟」とされている実態が明るみにだされました。労働者派遣法の相次ぐ規制緩和によって、派遣労働者は321万人に急増し、そのうち234万人が「登録型派遣」という、極めて不安定な状態のもとに置かれています。京都でも派遣労働者は、06年度66,070人で、04年度の2,2倍、登録型は55,212人で、2・1倍と急増し、派遣事業所数は、04年度244から本年2月には、1,030事業所と5倍近くになっています。 派遣労働者の苦しみは、その多くが懸命に働いても、年収200万円以下という異常な低賃金に置かれていることだけでなく、社会保障に入れない、残業代が出ない、交通費も出ない、社員食堂も使えない、名前ではなく「ハケンくん」などと呼ばれるなど、人間としての尊厳を踏みにじられ、物のように使い捨てにされていることです。 先日、業界2位の大手派遣会社に、働いていた青年から話を聞きました。勤務した京都市内の支店では、アルバイトであるにもかかわらず、4ヶ月ほど一人で支店を切り回していた。仕事は、電話の応対、仕事の説明、派遣の手配、給料の支給などで、食事をする間もなく深夜12時、1時、2時まで働くことが常態だった。夜の10時に運送会社から、翌朝10人の派遣依頼を受けて、深夜0時を過ぎて6人の派遣の約束をとったこともあった。 引っ越し会社への派遣が多く、京都で引越しの積み込みをしてトラックに乗り、引っ越し先の岡山、兵庫などで置き去りにされる例はざらにあった。遠くは茨城県で置き去りにされ、「帰りはどうしたらいいのか」と電話してきた青年もいた。まさに使い捨てだった。などと体験を語りました。 この青年も、昨年夏、会社が違法派遣で東京労働局から、全事業所の1ヶ月事業停止命令を受けた時、仕事が減ったことを理由に、結局、辞めさせられました。 「一度派遣に入ったら抜け出せません。私たちは、苦しんで涙して働いても、希望も何もありません。若者が生きられない。こんな世の中であっていいのでしょうか」。これは、私たちに寄せられた痛切な声です。 このような青年の過酷な雇用の実態、痛切な声を、どのように受け止めているのか、知事の認識を伺います。 政府は、派遣労働の規制緩和をすすめるさい、「臨時的、一時的なものに限定し、常用雇用の代替にしてはならない」ことが原則だと、繰り返し言明してきました。しかし、現実をみれば、正規雇用が減り、非正規雇用が急増していることは明らかです。本府の調査でも、大きな企業ほど派遣に置き換え、500人以上の企業の9割以上が派遣労働者を使っています。本府として、派遣労働者の就業実態を調査し、「常用雇用の代替にしてはならない」という原則を、徹底させるべきと考えますが、知事の見解を求めます。 さらに、派遣は臨時的・一時的業務に制限し、人間を物あつかいする日雇い派遣を禁止すること、登録型派遣を厳しく制限することなど、労働者派遣法の抜本的な改正が待ったなしです。このことを国に強く求めるべきと考えます。お答え下さい。

【知事】我国の経済産業構造の変化等を背景とする雇用形態の多様化に対応しまして、対象業務の拡大や派遣期間の延長等が行われる中、非正規雇用の増加による格差の増大など様々な課題が生じて生きていると考えている。 派遣労働については、国や府の派遣労働についての調査や京都労働局との密接な情報交換等によりその状況を把握するとともに、京都中小企業労働相談所における個々の派遣契約上のトラブルに対する適切な法令関係の助言や京都ジョブパークで、できる限り正規雇用にしていくために京都府としても一生懸命取り組んでいる。 こうした雇用の安定化に取り組むとともに、昨今急増している偽装請負や二重派遣等派遣労働にかかる法令違反事業者に対しては、厳正な対応をするよう国に対し強く要請してきた。現在国においては、ワーキングプアの温床とも言われている日雇い派遣等の労働者派遣制度の規制のあり方について議論が行われているが、私も今回委員となった政府の社会保障国民会議の場などを通じまして、正規雇用の大切さがしっかりと認識されるよう訴えたい。

【前窪】私たちのところに沢山の相談が寄せられている。粉塵アスベストが舞い散る職場で、正職員には防塵用マスクが配布されているが派遣労働者にはコンビニでマスクを買うように勧められただけだった。あるいは、倉庫作業と言われて行ったら冷凍倉庫だった。軍手しか持たず、半日働いたら両手とも凍傷になった等、色々日雇い労働、派遣労働者の実態をお聞きしているわけです。 京都府内における派遣労働者も増えていますし事業所も増えています。ですから、その実態は京都労働局と十分連携し本府としても十分把握して適切な指導をして頂きたいと思う。再答弁願う。 労働者派遣法、名実ともに労働者を保護する方向で改正することが必要。今、国会論議もあるわけだが、地方からの声として、知事として労働者派遣法の改正を国にはっきり求めて頂きたい。

【知事】京都労働局とはジョブパークの問題では密接に意見を交換し、協調と言うよりは共同して作業にあたっているところでありますので、今後とも、担当の任にあたっております京都地方労働局との密接な情報交換により、また先程申し上げましたように中小企業労働相談所における個々の関係なども把握しながら適切に状況把握に努めていきたい。 派遣法の問題は、私は正規雇用の大切さがしっかりと見直される時期に来ているのでないか、その中で関係法令も整備されていくべきと考えているので、社会保障国民会議の場等でそういう意見を述べていきたい。

公契約条例について 【前窪】次に、公契約条例についてです 自治体として行える雇用対策、中小企業支援の有効な手段として、公共工事等の下請けまで含めた地元への発注、現場で働く労働者の労務単価・雇用形態の適正な確保を図るべきだと、これまでも指摘してきました。2,000年に施行された「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」では、「地域の雇用と経済を支える中・小建設業者の受注機会が確保されるよう配慮するとともに、賃金・労働条件の確保が適切に行われるように務める」と付帯決議が付けられています。 本来、公共事業の予定価格の算定に当たっては、設計労務単価が決まっており、例えば大工さんの場合、国交省基準で1日17,400円です。しかし、実際現場で働く労働者には1万円も払われないケースが多いのです。これは、2次、3次、4次請けと下請けに回される過程で下請け代金、賃金等のピンはねが行われているからです。住民の税金を使ってワーキングプァをつくってはなりません。そこで、「公契約条例」の制定を提案するものです。 公契約とは、公共工事や公共サービスについて発注する公的機関と、受託する事業者の間で結ばれる契約です。この契約のなかに、地元業者を下請けに使う努力義務を明記すること、生活できる賃金、労働条件を確保することなどを定めているのが、「公契約条例」です。 本府が、業務対価を支払う請負、業務委託、指定管理等の契約に際して、「公契約条例」の制定により、安心して働ける状態を作ってこそ、本府の関わる公共事業・公共サービスの質の確保が、図れるのではないでしょうか。知事の見解を求めます。

【知事】公契約条例に関してだが、労働条件の賃金や労働条件について、地域ごとに定めが異なることについては私は慎重であるべきと考えている。また、この問題については、公契約のみならず、広く私契約も含めた均衡も考慮しなければならない問題だけに労働関係法令等によりできる限り一律に対応すべき問題と考える。 その上で、府におきましては、関係法令の遵守義務を契約書に明記すること、公共工事において最低制限価格を設けること、安定雇用も評価する総合評価方式による入札を試行すること等、原稿の契約制度の中で適切な対応指導を行い、公正な労働基準や品質の確保に努めている。

【前窪】府も職員を非正規への置き換えを進めてきた。身近なところでは、会計課の検査業務の派遣、府民相談センター業務委託、ハートピア等の指定管理者となっているのですが、府職員と比べてどのような水準になっているのか、そこに従事する労働者の賃金は一体どの程度になっているのか知事はご存知ですか。契約に労務単価等がきちっと位置づけられているのか。この辺の実状についてもお答え頂きたい。

【知事】個々の雇用の問題は、個々の契約の問題であり、いちいち、何百件、何千件とあるひとつひとつを私が知る立場にはございませんけれども、少なくとも私ども契約書の中にしっかりと関係法令の遵守を明記しそれに違反した場合に適切な対応をしていくという形を取る中で、下請のみなさんに対し影響が出ないようこれからも努めて参りたいと考えている。

【前窪】知事ね、京都府が派遣労働に置き換えたり、指定管理者にしているわけですから、ここのところはしっかりと実態把握をして頂きたい。めいっぱい働いても月十数万円だというのです。これでは、ワーキングプアを府が作り出しているということにならざるを得ない。安ければ良いという問題ではないと言うことを指摘しておく。

民間福祉施設の賃金・労働条件について 【前窪】次に、民間福祉施設の賃金・労働条件についてです。 高齢者や障害者の介護・福祉サービスが、いま深刻な人材不足に直面し、大きな社会問題になっています。民間福祉施設の全国調査では、非正規職員が50%を超えるのが実態で、正規職員でも月収20万円以下が42%、に上っています。 介護労働者は1年間で5人に1人が離職し、募集しても予定通り人が集まらない事業所が7割近くに上っています。希望に燃え就職した青年たちが、「働きがいがあるが、きつい仕事、安い給料」、「月収10数万円では結婚もできない」と、無念の思いで職場を去っています。 1昨年11月、京都労働局長から福祉施設の施設長等に対し、労働災害の発生が急増し憂慮すべきだと防止対策の要請文が出されました。労働局に聞きますと、01年から07年までに約5倍となっています。京都市の特殊検診の結果でも、治療を要する人が2倍以上に増えています。これらの調査結果は、労働条件の悪化が進んでいることを示すものです。職員の劣悪な待遇の改善は、一刻も猶予できません。 昨年8月、厚生労働省は、「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」を14年ぶりに改定し、給与など労働条件の改善策を打ち出しました。これは、改定を求めて闘ってきた関係者の粘り強い運動と世論の反映です。同時に、市場原理優先で福祉の営利化をすすめてきた構造改革路線の破綻を示すものです。 私は、昨年11月、決算総括質疑で、「新指針を実効あるものにすべき」と求めました。知事は、「財源の裏付けがない絵に描いた餅」、「前窪議員はこれを評価するのか」と答え、関係者の願い、努力に冷や水を浴びせました。 知事は、この発言を撤回し、財源措置をふくめ、「新指針」の実行を、国に迫ることこそ必要ではありませんか。お答え下さい。 同時に、この「新指針」を、すべての福祉施設に周知し、処遇改善を実現するため、本府の支援の強化も必要です。いかがですか。

【知事】国は福祉人材確保を見直しましたが、財源的な裏打ちがされていないままであります。私はこれは不十分であり、国が責任を持って財源措置や条件整備を行うようこれまでから強く要請してきた。 京都府としても、育休、看護休暇時の補充職員確保や健康診断などの労働環境の整備、メンタルヘルス対策や資格取得の促進等の離職防止対策等、人材確保の取り扱いを支援するために福祉施設人材確保サービス向上補助金5億円をはじめ、民間社会福祉施設に対する支援として約25億円の予算を今回の議会にお願いしている。 さらに、現場のニーズを反映した人材養成、介護・福祉職場の魅力をアピールするための方策等、福祉施設関係者共同して人材確保対策の取り組みを検討、進めてまいりたい。

薬害肝炎被害者支援・府の肝炎対策について 【前窪】次に、肝炎対策についてお聞きします。 薬害肝炎被害者の皆さんの「人間の尊厳と命をかけた闘い」が、政治を動かしました。 薬害肝炎被害者救済法が成立し、1月15日、原告と国との間で被害救済のための基本合意が調印され、今、各地の裁判所で和解が進みつつあります。 今後は、フィブリノゲン製剤等の投与証明への支援と、証明が取れない被害者や、輸血や予防接種等の医療行為による、肝炎感染者全員の救済が課題となります。 肝炎対策の責任は、もちろん国が負うものですが、府内のB・C型ウイルス肝炎患者救済に、府が最大限の支援を行うことは当然のことです。知事は、薬害肝炎の今回の事態をどう受け止め、府として、これらの課題にどう取り組まれるのか、まずお聞かせ下さい。 これまで、汚染薬剤の投与の証明が大変むつかしく、被害補償は、最大で千人程度と言われてきました。厚労省も、カルテが保存されている病院は全国で477しかないと言ってきました。ところが、厚労省は2月15日、全体の4分の1に当たる1,622ヵ所に記録が残っているという再調査の結果を発表しました。さらに、フィブリノゲン製剤の投与を受けた元患者を、8,896人特定できることも明らかにし、これらの医療機関も含め、投与をした医療機関が、徹底して手術記録や分娩記録などを一つ一つ精査することが求められています。 先ずは、府が率先して、府立医大等、府立の医療機関の全医療記録の詳細な調査を行うとともに、医師会や私立病院協会にも協力も求め、今回の厚労省アンケートに回答していない医療機関を含め、府内の全医療機関に関係資料の精査を要請していただくこと、そのための財政的支援も必要だと考えます。いかがですが。 患者の治療への支援も重要です。府内医療機関にかかわるフィブリノゲン製剤の投与を受けた元患者の追跡調査を、国待ちにならず一刻も早く開始し、早期治療・救済につなげる必要があります。また、「肝疾患診療連携拠点病院」の整備、府内各地で高水準の治療を提供できる医療体制の整備、患者の生活補償等も含めた支援体制の整備が必要です。そのため、国に対し肝炎対策の恒久法の早期制定を求めるとともに、恒久法待ちにせず府として必要な支援を行い、患者団体の代表も入れた「肝炎対策協議会」をただちに設置すべきです。お答え下さい。

【知事】肝炎対策についてでありますが、京都府においてはこれまでから、フィブリノゲン製剤を投与された方の立場に立って、国に対して、徹底した実態調査や救済制度の創設など、くり返し要望してきました。 そうした中、この度、薬害肝炎救済法の成立により薬害患者の救済への道が開かれたことについては、一歩前進したものと受け止めております。 今後も国に対して、フィブリノゲン製剤等の投与を受けられたすべての薬害被害者に対する必要な対策を求めていくとともに、京都府としても肝炎対策を充実してまいりたいと考えております。 府立の病院におきましては、前回医療機関名が公表された平成16年度に、現存するカルテのみならず手術記録等も含めて調査を実施し、フィブリノゲン製剤の投与が判明した患者や家族の方にていねいに説明を行うなど、個別対応を実施し、今回の患者からの問い合わせに対してもしっかりと対応してきました。 また、府内すべてのフィブリノゲン製剤等納入医療機関に対しても、問い合わせや相談等に対し、カルテの開示をはじめとする情報提供や相談に応じるよう既に要請するとともに、特に、個別に相談のあった事案に対しては、それぞれの医療機関に対し、カルテ等関係書類の再点検や当時の職員への状況確認など、相談者の立場に立って積極的対応をするよう徹底しております。 一方、現在、国会において、総合的な肝炎対策に係る法案が議論されているところであり、京都府としても肝炎対策の更なる進展について引き続き要望することとしております。 更に、身近な場所でも検査を受けられるよう、2月25日から医療機関でも無料検査を開始する等の検査体制を充実し、年度内を目途に肝疾患拠点病院を指定し、更に4月からはインターフェロン治療に対する医療費助成制度の導入する等取り組み準備を進めております。今後、京都府感染症対策委員会において関係者の意見をうかがいながら、引き続き肝炎対策を一層推進してまいりたいと考えており、関係する予算について本議会にお願いしているところであります。

後期高齢者医療について 【前窪】次に、4月から実施予定の「後期高齢者医療制度」です。 知事はこれまで、国に対し、暫定的なものだけでなく、「制度の見直しを提案する」等答弁されてきました。しかし、年金が月額15,000年の人からでも、保険料を天引きする仕組みはそのままです。お年寄りはどうして、暮らせばよいのですか。 本府は来年度予算に、健診経費部分の保険料軽減事業を計上されましたが、実際に軽減されるのは、わずかでしかありません。東京では、低所得者の保険料所得割分を減免する制度を実施し9万人が制度の恩恵を受けますが、京都の広域連合が、低所得者の保険料の免除を含む、抜本的な軽減措置を実施できるよう、府の支援を強化すべきです。また、後期高齢者医療の導入により、国民健康保険より保険料が上がる人については、府として、直接差額を給付する等の支援を行うことが必要ではありませんか。いかがですか。 保険料を天引きされない、年金収入が月に1万5千円に達しない人についても、保険料を払えなくて滞納すれば、保険証を取り上げ、資格証に切り替える仕組みは、何ら改善されていません。府として広域連合に発行をしないよう強く求めるべきです。いかがですか。お答え下さい。 後期高齢者医療制度は、新たな負担を押しつけるとともに、75才以上の高齢者の医療の中身に差をつける、とんでもない制度でもあります。 「中央社会保険医療協議会」は、後期高齢者の診療報酬について、その骨子をまとめましたが、「外来の再診料を引き下げる」、「担当医を決めさせ、受診をひとつの診療所に限定する」、「慢性疾患の診療報酬に上限を設ける包括払い制度を設ける」、「入院日数を短縮するために、退院を促進する医療機関を優遇する」、「高齢者にふさわしい終末期医療を導入する」というもとなっています。 すでに、厚労省は、75才以上を対象とした健康診査について、高血圧などの慢性疾患に伴う投薬を受けているお年寄りを、健診の対象から除くと都道府県に指示をしています。75才になったから、安上がりの医療にと、差別する理由がどこにあるのでしょうか。 今、制度の中止・凍結も含め、後期高齢者医療の見直しを求める地方議会の決議は、500をこえ、国会にも、後期高齢者医療の廃止法案が提出されようとしています。制度の問題点、差別医療の実態が明らかになるにつれ、「年寄りはこれ以上生きるなと言うのか」、「4月実施凍結、中止を」の国民の声は高まる一方です。 知事はこれまで、安定的な医療制度を構築することが重要として、制度の凍結・中止を求めることはありませんでした。次々と問題点が明らかになり、府民の不安が広がっている今、国に対し後期高齢者医療制度そのものの凍結・中止を求める時ではありませんか。いかがですか。

【知事】新たな保険料については、国民健康保険よりも高くなる場合もある一方で、京都市をはじめてとする市部を中心に以前より低くなる場合も数多く発生する見込みとなっております。こうしたなかで保険料軽減にかかる支援策については、制度の運営主体である京都府後期高齢者医療広域連合からの強い要望を受けまして、法で定められました、保険料設定の枠組みの中で制度設計にかかる技術的な問題や地域バランスの問題もあり、すべての市町村が対象となり、かつ、高齢者の方々の今後の健康の維持にもつながるものとして、今回健診事業の保険料負担分に対し支援を行なうものであります。京都府といたしましては、厳しい財政状況の中で低所得者等の負担軽減をはかるための保険基盤安定制度をはじめ、地域の医療の実情において設定された、約220億円を計上しており、全力をあげてこの制度を支えてまいるつもりです。 資格証明書の発行につきましては、その運用にあたって、納付相談に応じない、或いは、保険料を払う能力があるにもかかわらず、資力に見合った納付計画が示されていない等、真にやむを得ない場合の手だてとして実施すべきものと考えております。京都府と致しましては、こうした考えに基づいて広域連合に対し助言を行っているところであり、今後とも被保険者の個別事情を踏まえ、実態に見合った適切な運用がなされるよう、引き続き助言要請をしてまいります。 制度のあり方については、従来から地域や府民の実状を踏まえ、府民の健康を守るという観点から国に提案要請を行っており、今後ともこうした立場で引き続き市町村等と連携して国に対して積極的に提案要請をしてまいりたいと考えています。

【前窪】資格証明書の問題だが、知事は「悪徳はやむを得ない」と言う訳ですが、年金15000円以下の人がどうして保険料を払うのか。どうしても厳しい状況の中で滞納になったりします。 全国保険医団体連合会の調査がある。資格証明書に切り替えられたために、お医者さんにかかる率はどうなっているかという調査があります。実に、一般の保険証を持っておられる方に比べて、51分の1ということになります。 私は75歳以上の方に医療差別をするという後期高齢者医療はやはりやるべきでないと思います。少なくとも、このような資格証明書を絶対に発行しないよう、知事は広域連合に指導を、指導はできないというのであれば、意向を伝えて頂きたいと思います。 後期高齢者医療の本音はどこにあるのか。結局、お年寄りになれば、色々の病気、色々な種類の病気を一杯持っている。しかし、それはいずれも死に至るものなんだからと、あまり大きな医療費をかけるなと、厚労省の社会保障審議会の特別委員会で報告が出されていますね。私は、このように、どうせ死ぬのだから医療費安くしたら良いのだという発想のもとで、本音の部分としてつくられている。そこに非常に大きな問題があると思います。この制度は、廃止以外にない。知事、改めてこのことをぜひ国に求めて頂きたいと思いますが、いかがですか。

【知事】制度のあり方につきましては、従来から地域や府民の実状を踏まえて府民の健康を守るべき制度にして下さいということで、国に提案、要請をしているところでありまして、今後とも引き続きこういう立場で国に提案要請をしてまいりたい。

淀川水系のダム問題について 【前窪】次に、淀川水系のダム問題について伺います。 昨年8月発表された国交省近畿整備局の「淀川水系河川整備計画原案」は、大戸川ダムの建設を「当面実施しない」とした2年前の方針をくつがえしてダム建設を打ち出し、「脱ダム」からダム推進へ大きく転換しました。 これには、「淀川水系流域委員会の存在軽視」、「ダムの必要性を示すデータが示されていない」など、大きな批判があがりました。 旧淀川水系流域委員会は、6年間で実に500回もの審議を重ね、住民の意見を反映させてきました。同委員会の03年1月「提言」は、自然環境への影響が大きいことなどから、「ダムは原則として建設しない」とし、建設する場合には、「考えられるすべての有効な方法がない場合、かつ住民団体・地域組織など、住民の社会的合意が得られた場合に限る」と、厳しい条件を付けました。  近畿整備局も、05年7月の「淀川水系5ダムについての方針」で、大戸川ダム事業は、「当面実施せず」としてきました。しかし、今回、治水目的として復活させました。これまでの検討結果とかけ離れた方針転換は、到底理解できません。 そこで伺います。「ダム建設ありき」ともいえる国土交通省の方針転換について、知事は、どのような見解をお持ちですか、近畿整備局に、どんな意見を出してきたのですか。お答えください。 大戸川ダムの必要性ですが、現在の流域委員会で、近畿整備局が明らかにしたデータの検証が行われています。その結果、「整備局が想定する33パターンの大雨の大半は、大戸川ダムがなくても安全に流すことがでる」、「ダムが必要となるのは2パターンのみ」と指摘し、ダムが効果を発揮できる範囲は、非常に狭いことが示されました。流域委員会の宮本委員長は、「大戸川ダムと天ケ瀬ダム再開発による治水効果は極めて限定的」だと、否定的な見解を明らかにしました。 本府は、すでに利水による同ダム計画から撤退しました。治水効果も極めて小さい大戸川ダムは、中止を求めるべきと考えますが。いかがですか。 天ヶ瀬ダム再開発は、琵琶湖の水位を早く下げるために、洪水のピークの後、宇治川に1,500トンを流す計画です。宇治塔の島地区では、1500㌧を流すため河床の掘削を行えば、河川環境と歴史景観に壊滅的な打撃を与えること、槇島地区では、脆弱な宇治川堤防の決壊の危険性が高まることなど、この計画に市民の批判と不安が高まっています。 琵琶湖総合開発事業の完了で、琵琶湖沿岸の浸水被害は激減しており、1,500㌧も一気に流す合理的な理由はありません。また、戦後最大の洪水に対応する宇治地点の計画流量は、1,100㌧であることから、河川改修は1,200㌧を目標とすれば十分なものです。ダムの左岸に延長600㍍もの巨大なトンネルを掘り、現在の900㌧から1,500㌧に放流量を増やす、大規模な天ケ瀬ダム再開発の必要性、緊急性はありません。 天ケ瀬ダム再開発は、見直すべきと考えますが、知事の見解を伺います。 これらダム計画の、本府の財政負担ですが、従来の負担割合で単純試算すると、大戸川ダムは、現行事業費740億円から1,000億円に増大するため、本府の治水負担は、74億円から100億円に膨れ上がります。 天ケ瀬ダム再開発も、現行事業費330億円から、430億円と増加し、本府の治水・利水負担は、55億円から71億円に膨らみます。 知事は、昨年12月28日の記者会見で、天ケ瀬ダム再開発の事業費膨張にについて、「費用対効果をきちんと見ていかなければならない」、「事業費が増えたから、ああそうですかと言う訳にはいかないのではないか」と、記者の質問に答えています。 知事は、これら事業費の負担増について、国に対し何か言われたのですか、きっぱりと、事業の中止・見直しを求め、負担の軽減を図るべきと考えますが、いかがですか。

【知事】次に、淀川水系のダム問題についてでありますが、最近は、これまでに経験のない猛烈な豪雨によりまして、全国各地で毎年のように甚大な被害が発生している状況にありますだけに、淀川水系の治水対策は、京都府にとりましても大変重要な問題であると考えております。 昨年8月28日に近畿地方整備局から公表された淀川水系河川整備計画原案では、堤防の補強を最優先に実施、上下流バランスに基づく治水対策の推進、危機管理体制の構築を基本的な考え方とし、整備が遅れている中流域の治水対策が打ち出されております。 その中で、宇治川の治水対策につきましては、塔の島地区などの河川整備と、天ケ瀬ダム及び大戸川ダムによる洪水調節により、所要の治水安全度を確保する計画が示され、ダムの概算事業費につきましては、昨年の12月20日に公表されました。 現在、原案の全体的な内容、ダム事業費の増額内容とその理由、府の負担額などについて、まだ、十分な説明を受けておらず、詳細な説明を国に求めているところであります。 また、淀川水系流域委員会では、現在、各委員から様々な意見が出ておりますけれども、京都府としては、今後、流域委員会としての意見も伺うことができたらと考えております。 京都府といたしましては、府民の安心安全を最優先に、効率的で効果的な宇治川の治水対策について、しっかりと検討し、大阪府、滋賀県及び関係市町と連携して、総合的に妥当性を判断してまいりたいと考えております。

【前窪】このダム復活の基本は、国土交通省の河川整備審議会で決められている。その審議会の委員に、知事が出席するメンバーなんですよね。色々言うが、地元の知事として、地元の意見を上げてもらうことがなければダメだと指摘をする。今後のこの問題でのスタンスをしっかり地元要望を入れて取って頂きたい。

乙訓の府営水道について 【前窪】次に、京都南部の諸問題について伺います。まず、乙訓の府営水道についてです。 一昨年、大山崎町に真鍋町政が誕生し、府条例に基づいて、府営水道の過大な基本水量の見直しを「申請」したことから、高すぎる乙訓の水道料金問題が大きくクローズアップされてきました。このことを契機に、本府も料金の再検討に乗り出し、水道事業経営懇談会の審議を経て、今議会に府営水道料金を、1㌧あたり5円程度値下げる提案を行いました。 もともと、乙訓府営水道は、企業も使用することを前提に、上水道と工業用水道の2系列で検討されていましたが、コスト面から都市用水として一本化し、府が整備したものです。しかし、施設が完成しても、地下水より高い府営水を企業が使わないことから、その分、住民に負担が転嫁されてきたのです。 実際、大山崎町では、1日に使う水量は2,600㌧なのに、府営水を7,300トンも押し付けられています。その結果、それまで黒字だった水道事業は、6億円を越える赤字に転落しました。2,000年から府に支払った、使わない水量分の料金は、6億6,600万円に上っています。 一方、町内の有力企業、日立マクセル、サントリー、ダイハツは、どれぐらいの地下水を使っているのでしょうか、この3社で日量4,225㌧くみ上げていると、町議会に報告されています。大山崎町で、使っていない府営水4,700㌧に匹敵する水量です。 町長が、府条例に基づいて、使わない企業分を差し引き、必要な水量分を申請するのは、町財政に責任を持つ立場として、当然ではないでしょうか。しかし、府は、町の申請を突っぱね、全量分の請求を行いました。条例に基づく協議を拒否し、6,000人を超え住民の半数に上る「要望署名」を、無視するやり方は許されません。 府の見通しの甘さを棚上げにし、企業が高い府営水を買わないことの責任まで、すべて地元自治体と住民に肩代わりさせるやり方は、あまりにも一方的にすぎるものです。 企業が使わない水量分の見直しは、府の責任で行うべきと考えますが、知事の決断を求めます。

【知事】昭和57年、乙訓二市一町の要望を受けました日量68800立方㍍の水量につきまして、企業集積の状況等から、工業用水を独立して整備すると過大投資となる恐れがある、このため、都市用水として一本化することになったもの。 これを受けて、昭和61年に公共団体として、同じ水量の府営水量の受水申し込みが公式に行われていることは、私はこれを厳格に受け止めなければならないと思っています。その上で、乙訓浄水場を整備するにあたり、府としては状況を勘案し、地元市町と十分協議の上、平成10年には3分2の日量46000立方㍍に縮小する、京都府水道乙訓浄水場に係る施設整備等に関する協定書を地元市町と締結し供給を指定おります。そして、整備を見送った3分の1相当分のコスト約52億円につきましては、市町の負担軽減のために料金かをしていないのであります。また、給水開始後におきましては、地元市町の負担軽減に向けて、これまでから府営水道料金の引き下げを行うなど、必要な支援をしてきましたけれども、今回長岡京市や向日市とのお話し合いの中で、さらに供給コストの圧縮をはかることとし1立方㍍あたり5円引き下げの府営水道料金の条例改正を本議会にお諮りしているところです。この際には、向日市及び長岡京市におきましては両市の浄水場を集約するという健全化のために大変努力をされているところでありまして、向日市及び長岡京市の努力に対し心から敬意を表するものであります。 さらに、現在すすめている府営水道の3浄水場接続事業による広域的な水運用開始にあたり、昨年9月に開催しました、府営水道事業経営懇談会において府営水道の適正な運営のありかたについて議論をいただくよう諮問したところであり、今後、府としても安心・安全な水の安定供給に努めてまいりたい。

【前窪】知事は、基本水量はあくまで変更しないと答えているが、そうならば、何故、知事は市町と協力し企業にその責任を求めないのですか。なぜ、住民ばかりにツケを回すのですか。ここに、ものすごく大きな問題があると思っている。使っていない企業の負担分をいつまでも住民に回して、今の府営水の経営がきちっと行くはずがないという住民の声が一杯出てきているのです。こういう声を聞いて、ぜひ、基本水量の見直しについても市町と十分協議して頂きたい。そういうテーブルに載せて頂きたいと強く要望しておきます。

城陽の山砂利問題について 【前窪】次に、城陽の山砂利問題についてです 城陽の山砂利採取地に、いわゆる「再生土」と称する、約3万㎥の産業廃棄物を含む約16万㎥の建設汚泥処理土が持ち込まれた問題で、「再生土問題に関する検証委員会」は、2月6日、知事、城陽市長に対し、京都府の覆土方針を全面的に支持する報告書を提出しました。 報告書を受け取った猿渡副知事は、「報告書を尊重して覆土」、一方、橋本城陽市長は、「市として撤去方針」と、基本姿勢の違いを見せ付けました。 報告書は、城陽市民や議会が求める産廃撤去について、産廃の証拠がなく、撤去指導は違法性があるとしり退けましたが、驚くのは、府と環境省が産廃と認定した3万㎥について、産廃ではないと全面否定したことです。その理由に、府の告発が起訴猶予になったこと、京田辺の事件で、京都地裁が、産廃と認定した実刑の判決に、業者が無罪を主張し控訴したことなどを上げています。 さらに、10トンダンプ16,300台分の全量撤去には、約30億円がかかり、費用が莫大になること。府が産廃と認定した3,000台分を撤去する場合、6,000台のダンプが往復し、地球環境への影響も無視できないなどと列挙し、覆土措置を妥当とする理由にしました。 業者が無罪を主張しているからとか、撤去すればダンプの通行で、地球環境が悪化するとまで言及するに至っては、環境を中心とした専門家による検証委員会の見解にしては、理解に苦しむものです。 そこでお聞きします。 知事は、このような検証委員会の報告書を、全面的に尊重するのですか、環境省と府が産廃だと認定して告発したのは、間違いだったと認めるのですか。お答え下さい。 報告書は、「街づくりや水源保全の観点等から、必要な範囲に限定して撤去を含む行政指導を行い、事業者の同意が得られれば,これを行うことが可能である」と付言しています。 この報告書を受けて、城陽市長は、「撤去に向けて努力する」と言明しています。城陽市民の圧倒的多数は、撤去求めています。いま最大限尊重すべきは、城陽市長、市議会、市民の声ではありませんか。撤去に向けて、知事の姿勢が問われています。いかがですか。 報告書は、産業廃棄物等の搬入再発防止のために、「砂利採取事業者、近畿砂利協同組合、山砂利整備公社、城陽市、京都府による対策検討会議」の設置、「土砂等による埋め立て規則の条例化の検討」などを求めています。 山砂利採取地は、約420㌶と城陽市の面積の8分の1を占める広大なものです。埋め戻し事業の完了に必要な土量は、926万立方㍍で、現在の進捗率が35%、残りの土量は、603万立方㍍です。これまでの実績、年間30万立方㍍搬入されるとして、この事業の終了まで、およそ20年を要することになります。 長期の事業であるだけに、再発防止対策の抜本的な見直し・強化は、決定的に重要です。「対策検討会議」の立ち上げ、「埋め立て条例」の制定は急がれます。いつと考えていますか。また、「条例」は、府内全域で、全ての搬入土に対応できるものにすることが必要です。いかがですか。 住民の不安は、このままでは地下水の汚染、環境破壊を、止めることが出来ないのではないかと言うことです。少なくとも、今回の再生土問題の解決・再発防止対策について、市民の理解が得られるまで、残土等の搬入を凍結すべきと考えます。知事の決断を求めます。

【知事】城陽市の山砂利採取跡地における再生土間題についてでありますが、再生土間題に係る検証委員会から去る2月6日に京都府と城陽市に対しまして提出された報告書では、産業廃棄物に当たるとしても、生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められないため、廃棄物処理法に基づく撤去を命ずる措置命令は発出できないとしているもので、搬入を委託した業者を廃棄物処理法に基づく委託基準違反で告発した京都府の措置自体を否定しているものではありません。 なお、検証委員会の報告書では、覆土の措置の妥当性のほか、産業廃棄物を搬入させないために関係機関がそれぞれ取るべき対策や地下水への影響に係る市民の不安に対する方策など、各般にわたり、具体的な提案をされているところでありまして、京都府といたしましては、この報告を最大限尊重し、城陽市を始め関係機関とも十分に連携しながら、再生土問題についても適切に対応してまいりたいと考えています。 また、今後、城陽市や城陽山砂利採取地整備公社などと対策検討会議を立ち上げ、再発防止策等の具体的な対策に取り組みますとともに、報告書で提言されている土砂等の埋立による環境汚染を防止する条例の制定についても積極的に検討することとしてまいりたいと考えております。 残土の搬入に関しては、城陽市が策定した「城陽市東部丘陵整備計画」に基づき、山砂利採取地の修復整備事業の一環として実施されているものでありますので、京都府としては、今後とも、城陽市の立場を踏まえ、連携して対応してまいりたいと考えております。

【前窪】報告書の中に気になる、許せないものがある。産廃撤去に30億円もかかる。ぎょうさん金がかかるから現実的に撤去は言えないだとか、撤去について6000台のダンプが必要でこれは地球環境に問題がある。こんなことが出ているのです。全面的に尊重すると言うことは、こんなことも尊重すると言うことになるのですよ。沢山捨てた方が捨て得になっちゃうじゃないですか。知事はこんなことを許すのですか。 私は、報告書は不十分ですが、その中でも再生土の撤去に言及しているところもありますね。事業者の協力を得てと。 やはり報告書の前向きのところこそ尊重すべきであって、そうするならば、知事、京都府も事業者に少なくとも産廃と思っているということですから、産廃と認定して事業者に協力を求めて撤去させるべきですよ。そういう決意はありませんか。再度答弁願う。

【知事】報告書は環境の専門家や法律の専門家が、指導に関するものについても、実行可能性の部分についても判断をされて報告書を書かれているんだと思います。その中で私はこれから具体的には山砂利採取事業者のとるべき再発防止策や城陽山砂利採取地整備公社の監視体制の強化から、いろんな問題がありますので、こうしたものを総合的に城陽市とも連携しながら適切に対応してまいりたいと考えております。

【前窪】城陽市と連携してやると言う訳ですが、城陽市は撤去してほしいと言っている。市民もそう言っている。知事、連携すると言うことは、知事、少なくとも京都府が産廃と認めた3000台分は、城陽市と連携して撤去を求めていくと言うことになるのですね。私は、このことを知事に強く求めたいし、城陽市と連携すると言うのであれば、そういう姿勢が求められていると指摘しておきたい。

宇治川の「太閤堤」の保存について 【前窪】次に、宇治川の「太閤堤」の保存についてです 昨年9月、宇治川右岸宇治橋の下流近くで、豊臣秀吉が伏見城築城の際に築いた「太閤堤」の一部とされる、大規模な護岸遺跡が見つかりました。その後、12月に、今度はその延長部分が発掘されました。今回見つかった護岸は、木杭を整然と打ち込み、岸面が垂直に造られているのが特徴で、宇治市教委は「当時最も進んでいたと見られる治水技術が結集されている」とコメントしています。 この発掘現場には、マンション建設が予定されていることから、「何とか保存できないか」の声も次々寄せられています。昨年10月には地元住民を中心に「太閤堤を守る会」も結成され、署名活動やシンポジュウムの開催など、積極的な活動を展開されています。また、今年に入り、日本考古学協会は、保存のための要望書を国・府・宇治市に提出しました。同協会の埋蔵文化財保護対策委員会橋口事務局長は、「日本の土木技術史に残る大変貴重なもの、埋めてしまうのではなく一般の人が目にする形で残してほしい」と語っています。 宇治市長は、「秀吉と宇治」をキーワードに、観光宇治の新たな拠点づくりと位置づけ、遺跡一体4,3ヘクタールを活用した街づくりに、並々ならぬ意欲を示し、市教委は、史跡指定をめざし文化庁・府との協議をすすめ、12月ごろには文化庁に申請をしたいと明らかにしました。 そこで質問します。知事は、発掘された太閤堤とされる遺跡についてどのように評価されていますか。お答え下さい。 また、本府として、府内の貴重な遺跡と位置づけ、地権者の同意の上で、宇治市とも連携し、史跡指定や保存について、国に積極的に働きかけるべきと考えますが。いかがですか。

【知事】昨年9月、宇治川東岸の乙方遺跡の発掘調査で発見された石積みの護岸遺構についてでありますが、これは、豊臣秀吉が伏見城の築城に際して行った、宇治川の付け替えに伴い築かれた「太閤堤」に関係する治水施設の一部である可能性が高いと考えられているものであります。この護岸遺構は、宇治川の流れを弱めるために護岸からいしだ突出した台形上の石出しなど、高度な土木技術が用いられておりまして、これは実際に「太閤堤」であるとしますと非常に貴重な資料になると考えております。また、これほど大規模な護岸が良好な状態で出土した例もあまりありませんだけに、貴重な歴史的構築物であると思います。宇治市長は、条件が整えば、この遺構を観光宇治の新たな拠点に位置付け、まちづくりに取り組む意向を表明されておりますので、私どもも、そうした点からも、宇治市と一層連携していけるものと考えています。

【教育長】前窪議員の御質問にお答えいたします。乙方遺跡の護岸遺構についてでありますが、先ほど知事から答弁がございましたように、これほど大規模な護岸が良好な状態で出土した例はなく、当時の高度な土木技術や治水水準を知ることのできる重要な資料であると考えております。 府教育委員会といたしましても、宇治市教育委員会と十分連携しながら、関係機関などとの調整を図って参りたいと考えております。

【前窪】珍しく前向きの答弁だ。これは歴史に残る大変な遺跡なんですね。京都府教育委員会には、文化庁の史跡指定を受けられるように積極的に文化庁との協議を進められることを強く求めておく。