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討論

2008年2月定例議会 新井進議員 追加議案討論

2008/03/10 更新
[ 討論 ]
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日本共産党の新井進です。私は、日本共産党議員団を代表して、ただいま議題となっています議案28件のうち、第58号議案 負担付寄付受け入れ及び財産の無償貸付の件に反対し、他の議案27件に賛成する立場から討論を行います。

まず、32号議案、一般会計補正予算案には、賛成するものですが、この中に含まれています「教員免許管理システム開発費8500万円」の予算案には反対であり、この予算の執行は行わないように求めるものです。  教員免許管理システムの開発は、「教員の免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律」にもとづき、教員の免許状に10年の有効期間を定め、講習終了を免許更新の条件とした管理システムを整備しようとするものです。10年で教員の免許が切れるというやり方は、教員の身分の安定と保障を求めた教員の地位に関するILO・ユネスコの勧告にも反するもので、教員を不安定な身分におくとともに、国家の統制のもとに置こうとするものです。 この免許の更新制について、京都大学の研究員によるアンケート調査では、現場の教員の59%が反対、大学生も68%が不安に思い26%が反対しています。これから団塊世代の教員が大量に退職し、優秀な人材を教員として採用しなければならないときに、教職につくことを希望する学生に、不安を覚えさせるような制度を作ることはまったく逆行するものです。 しかも、本府の教育長も参加されている全国都道府県教育長協議会が、制度設計等について意見を出されており、教育長も文教委員会の審議の中で、「慎重に検討してほしいという意見を出していたが、結果として制度化された。正直もろ手を挙げて賛成ということではなかった」とも述べられています。 以上のことからみても、国のこうした現場の実情と意思を無視したやり方に抗議するとともに、この予算案には反対し、その執行は留保するよう求めるものです。 次に、第58号議案、学研都市の「株式会社けいはんな」にかかわる問題です。今回、議案としては、民事再生を申請した「株式会社けいはんな」の経営再生計画の一環として、「けいはんな」からラボ棟などの負担付寄付を受け、これを10年間無償で「けいはんな」に貸し付けるというものです。 まず、第一にこの「株式会社けいはんな」が、今日、なぜ100億円もの負債を抱える事態になったのか、また、この株式会社に15億円の府民の税金を出資し、副知事を取締役に送ってきた本府の責任はどうなのか。理事者として議会と府民に対し、この最も求められている問題について、責任逃れの答弁が繰り返されるだけで、まともな責任ある説明は、なんらされませんでした。 それどころか、すでに指摘してきたとおり、99年には「経営内容は年々改善されている」と答弁、昨年の予算委員会でも猿渡副知事が「少しずつ借金は返していける事業体になってきている」と事実を覆い隠す答弁を繰り返し、行ってきたのです。その結果が100億円の負債をかかえ、民事再生の申請という事態になっているのです。この責任はどうなるのか。これについても、なんの反省もありませんでした。 いま知事をはじめ理事者には、府民の税金を15億円も消滅させたことへの責任が問われているのです。このことを厳しく指摘するものです。 第二に、今回の議案は、「株式会社けいはんな」の「再生計画」の一環をなすものであり、他の計画が行き詰まれば、この議案についても執行ができないものとなっています。このことから当然、全体の「再生計画」についても詳しく報告し、議会で議論をすべきものです。ところが、「株式会社けいはんな」の取締役でもある猿渡副知事は、「見込みどおり収益を上げられない場合には、第一義的には社債を購入される方が、そのリスクを負われることとなる。そういう厳しい目でチェックが入っていると聞いている。」「顧問の弁護士が厳しくチェックをされていると伺っている。」とあいまいな答弁を繰り返し、議会への詳細な説明を逃れようとする態度に終始しました。猿渡副知事のこうした態度は、議会を軽視するものであり、許されるものではありません。こうしたまともに説明責任を果たそうとしない理事者の姿勢のため、今回の「再生計画」によって「株式会社けいはんな」が、10年間で社債20億円を返済し、ラボ棟等の大規模改修なども含め、長期にわたって安定した経営ができる事業体になっていくのかどうかについては、きわめて不透明であり、その保障があるとはとうてい認められません。 第三に、今回の措置によって今後の本府の負担、府民負担がどうなるのかという問題です。今回の無償貸付の期限が終わる10年後には、ラボ棟やホールが築25年となり、大規模改修が必要な時期に入ります。こうした改修や維持のための費用負担について、副知事は、「一般的な原則に基づいて話し合われていく」と答弁しました。これは、将来の新たな負担を「株式会社けいはんな」が責任を持つのではなく、府民の負担で行う方向であることを示すものです。このように、これらの施設を本府が引き受けることは、今後に大きな負担が必要になるというものです。財政が厳しいと府民に犠牲を押し付けているもとであらたな負担をかかえるものであり、絶対、認められるものではありません。  第四に、学研都市の文化学術研究交流事業等の公共的公益的機能については、学研建設推進法に定めがあり、法第2条では、文化学術研究交流事業等に「必要な施設の設置及び運営を行う」ことを目的とした株式会社を認めるとしています。法は明確に施設の設置を求めているのです。ところが「けいはんな」が、この事業の中核的施設となるラボ棟やホールなどを放棄し、これをもたない会社となっても、この法2条に定める会社と言えるのかという問題です。これについて副知事は「法律上の問題はないと伺っている」と答弁されましたが、「建設計画」ではラボ棟や研究支援センターなどを必要な設備としているわけで、この設備を持たない「会社」を、法に規定する「会社」とするには相当な無理があり、その場しのぎの法解釈であるといわなければなりません。 学研都市建設を国家的プロジェクトといい、交流事業が公共的公益的に重要というのなら、この際、地元自治体に責任と負担を負わせる「三セク方式」の株式会社ではなく、国の責任で再生させる道へと転換すべきです。そのために、知事も府民負担を増やす方向でなく、国にその責任を果たすよう求めるべきです。  以上、第58号議案に反対する理由を述べましたが、もともと、この「株式会社けいはんな」が設立されたのが1988年で、「けいはんなプラザ」が完成したのが1993年です。この間にバブルがはじけ、学研都市開発を見直すべきであったにかかわらず、用地を造れば学術研究施設が進出してきてくれると造成を続け、それを前提にした「株式会社けいはんな」の事業計画を推し進めてきたことに最大の問題があります。こうした学研都市開発事業全般の見直しを求めるとともに、第58号議案については反対であることを申し上げ、討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。