2008年2月議会 西脇郁子議員 議案討論
日本共産党の西脇郁子です。議員団を代表し、議題となっています31議案について、第1号議案一般会計予算、第9号議案流域下水道事業特別会計予算、第10号議案港湾事業特別会計予算、第13号議案・水道事業会計予算、第17号議案・後期高齢者医療財政安定化基金条例制定の件、第21号議案・心身障害者扶養共済条例一部改正の件、第24号拡声器による暴走音の規制に関する条例一部改正の件に反対、他の議案には賛成の立場から討論を行います。
国による構造改革路線と三位一体改革により、深刻な負担増や格差があらゆる分野、地域、各層に広がっています。ところが政府与党は来年度予算案で、大企業にはさらなる減税を盛り込み、また、大問題となっている道路特定財源についても、暮らしを応援する一般財源化を拒否し、高速道路建設を中心とした59兆円もの道路中期計画を優先し、軍事は聖域化するなどおよそ生活者重視とはいえないものになっています。それだけに、京都府が自治体本来の役割を果たすことが今ほど必要なときはありません。 以下、本会議、予算委員会等の審議で明らかになった問題点について具体的に指摘いたします。
まず第1号議案(平成20年度一般会計予算案)についてです。 昨年の参議院選挙以来、国民の声に応える政治を求める声が強まっているなかで、来年度予算案に、府民の暮らしの実態や大きな運動の広がりと議会での論戦を反映し、30人程度学級の実現、木造耐震改修助成制度の要件緩和、原油価格高騰対策特別融資の創設など盛りこまれています。しかし、全体としては、総括質疑からも明かになったように、府民の暮らしを支える施策を来年度も削減し、さらに京都府の自治体としての役割を後退させる「受益と負担」「自立・自助」を基本とした「経営改革プラン」推進の立場には変わりないことがより明らかになった予算案となっています。 まず、一つ目に、府民の暮らしと営業を守る問題です。 はじめに「難病患者療養見舞金」と「小児慢性特定疾患患者見舞金」の廃止についてです。 これらの事業は、これまで長期療養のなか医療費や診断料、受診交通費、日用品費など特別な出費が必要で経済的、精神的負担が大きいため、激励と支援をこめて実施されてきたものです。難病団体の方々との懇談の中でも「特定疾患医療需給者証の更新に毎年1万円近くかかる、そのためにと思って受け取ってきたのになくなるとは」と絶句された方や、「府南部から府立医科大学付属病院まで通院していて毎月治療費だけで1万円近くかかる、負担が増える中またかと思う、その精神的ダメージが大きい」との切実な声が相次いで出されていました。にもかかわらず京都府は難病患者さんたちの声も全く聞かず予算を打ち切ることは認められません。さらに知事総括質疑で山田知事は、「見舞金事業というあいまいな形でやっていくことが本当によいのかどうかと思っている」と昭和54年から続けられてきた見舞金事業そのものの意義を全く理解していない答弁をされたことは問題です。 二つ目に、府外の私立高校に通学する生徒の私学助成の廃止についてです。 本府は1600人への年間48000円もの直接助成を、来年度より新入生から打ち切り、3年で廃止するとしています。この事業はこれまで39年間、教育の機会均等、保護者の経済的負担の軽減などを目標として実施されてきたにもかかわらず、保護者など当事者の声も全く聞かず一方的に打ち切るものであり絶対に認められません。 しかも、削減の手法として、これらの事業は、1昨年から導入された、外部委員会による事業仕分けによって1回20分から30分の議論のなかで、他府県が実施していない、などとして乱暴に切り捨てる方法で削減したものです。府民目線と言いながら実際に一番困っている府民の声を聞かず、頭ごなしに廃止するやり方は、住民の暮らしを応援する自治体の役割を否定するものであることも厳しく指摘しておきます。
三つ目に、中小小売業者や地元商店街を守る問題についてです。 これまで、京都経済を担い、地域経済を支えてこられたのが府内の中小小売業者、商店街ですが、大型店の出店に加え、石油などの原材料高騰などにより、営業は一層深刻となっています。そのような中で、京都府としていっそうの支援を行うことが求められていますが、商店街関連予算については全体で平成17年比で9300万円もの削減、中小企業団体関連予算も2億4100万円の削減となっています。深刻な中小小売業者や商店街の実態に逆行したものです。 あわせて、書面審査で引き続き求めました府として京都府全体の地元商店街への大型店出店に対する影響調査について、府は「3年に1回の統計調査で全数は網羅し、実態についてもヒアリングで把握している」という答弁がありました。しかしながら提出された資料につきましては、大型店の影響について全く触れていない、影響調査とは言いがたい内容であり、このことは、大型店の出店により営業が脅かされ、廃業に追い込まれるなど大変な痛みを押し付けられている地元商店などの思いに心を寄せない冷たい京都府の姿勢を浮き彫りにしたものに他なりません。そのことを厳しく指摘するとともに、大型店の出店影響調査を求めるとともに、京都府独自の大型店の出店を規制する条例やガイドラインの制定を求めるものです。 第2に、府民の安心・安全を守る問題についてです。 安全な道路交通にとって信号機の設置は欠かせませんが、今でも京都府内全体で300から400件もの信号設置の要望があるにもかかわらず、来年度も府内全体でわずか20機しか予算化されていません。 昨年、京丹後市峰山バイパス開通直後、2年間で2名もの痛ましい死亡事故が発生しました。安心安全と知事が言うのなら、事故が起こってから信号機をつけるのではなく、信号機予算の大幅増額を行うべきです。 あわせて、城陽の山砂利採取地に産業廃棄物を含む建設汚泥処理土が持ち込まれた問題についてです。城陽市をはじめ地元あげて産廃を撤去すべきだと一貫して要望しておられます。にもかかわらず、京都府は、「再生土問題に関する検証委員会」での覆土方針を「錦の御旗」に地元の撤去の願いに背を向けています。 さらに、南丹市のカンポリサイクルセンターで基準値を超えたダイオキシンが発生した問題についてです。過去4回の専門家会議において、法定基準値を超えたダイオキシンの発生を検証する中で、カンポ社のずさんな運転管理等が指摘され、その反省のもとでカンポ社自らが自主基準値を設定した経過がありました。にもかかわらず、京都府は、書面審査のなかでこれまでの専門家会議での検証経過を無視し、「法基準を守っていれば基本的に再稼動できないとは言い切ることはできない」と国基準で稼動を認めるような発言をしていますが、このことは府民の安全に責任を持つ京都府の役割を放棄するもので絶対に認められません。 第3に、ムダ使いを改める問題についてです。 府民には暮らしと健康を守るための助成などを削る一方で、本来メスを入れるべき事業にメスが入れられていません。 先の京都市長選挙でも大きな争点になった京都市内高速道路には斜久世橋線に4年間にわたり合計12億円だすなど124億円も支出しています。 さらには「同和奨学金の返済肩代わり」である「高等学校奨学金償還対策事業費」など旧同和対策事業に6億8000万円計上しています。先に行われた京都市長選挙では、京都市が行っている同和奨学金の返済肩代わりが市民の大きな批判をあび、選挙の大きな争点にもなりました。世論の広がりのなかで京都市は今年度の返済肩代わりの執行の停止と来年度予算の計上ができなくなりました。ところが京都府ではいまだに同和奨学金の返済を肩代わりして、来年度だけで3億8000万円、今後17年間で10数億円も支出しようとしています。昨年の最高裁判決では「同和奨学金等の借受者であることを持って一律にその返還が困難であるものと認めることの合理性を基礎づけるに足りる事実は失われてきた」とされているように全く道理がありません。同和特別扱いは中止すべきです。 畑川ダム建設につきましても、本年2月に実施された町の造成宅地所有者へのアンケートでも、家を建てたいという方は69件のみ、あとはセカンドハウス、条件が整えばということで明確な人口増の根拠となるものではありません。進出企業の水需要増もいずれも根拠がないことがはっきりしています。当面の水需要増は既設水源で十分カバーできるものであり、和知中央水道の活用も可能であります。わが党のこれらの指摘にまったく答えようとしない態度を改め、過大な水需要予測に基づく畑川ダム建設はきっぱり中止すべきです。 あわせまして、京都府の給与費プログラムについても指摘しておきます。 京都府は、06年度より4年間で職員を1500人削減するという計画のもと、08年度は240人の削減を押し付けようとしています。山田知事は、本会議でのわが党の前窪議員の質問に対し「正規雇用の大切さがしっかりと認識されるよう訴えたい」と答弁されていますが、その足元で正規職員の非正規化への置き換えが急速に進んでいます。知事部局では5年間で526名も減らされ、反対に週30時間の非常勤嘱託が392名と86名も増え、臨時職員も353名にも上っています。しかも非正規嘱託の勤務条件はきわめて劣悪です。 府内でのDV被害者支援の要として大きな役割を果たしている配偶者暴力支援センターでも相談員は、非常勤嘱託で、収入は月に13万円から14万円で一時金はゼロ、しかも契約更新を10年間にわたり毎年続けているという実態や、本来業務の伝票の審査業務に4名の派遣労働者が雇用されているなど、不安定雇用・ワーキングプアが京都府の職員の中に増えていることが書面審査を通じて明らかになりました。本来、常用雇用の代替に派遣は使えない」という派遣法にも抵触するものです。京都府自らが不安定・低賃金の非正規労働を増やし続けているのは大きな問題です。今こそ知事自身が言ってこられたように正規雇用の大切さを認識し、給与費プログラムについては見直しすべきです。 最後に予算案に含まれている税務共同化についてです。 今年の秋には「税務共同化のための広域連合」を立ち上げるとして、「税務共同化推進費」が計上されています。長岡京市が「広域連合へは、市町村による判断や選択に基づいて参加できるようにし、時期も柔軟に対応を」と求めているように、この税務の共同化のための広域連合については、「税務共同化推進委員会」が昨年12月に報告書を取りまとめたところであり、各市町村でも、市町村議会でも、ましてや住民の中でも、議論はこれからです。これを7人の推進委員で検討したからと言って、税の課税も徴収も共同化することを既定の路線として、結果を押し付け、拙速にすすめることは許されません。まさに市町村の自治、住民自治を踏みにじるものです。この共同化については、各自治体の持つ賦課・徴収の自主的権限を侵すのではないか。課税や徴税という重要な問題が、府議会や市町村議会での議論から切り離されたり、制約されていいのか。市町村行政が担う住民福祉の向上と税を切り離して、総合性が維持できるのか、住民の個人情報は守られるのかなど、関係者から多くの疑問や意見が出されています。こうした状況を無視して、先に「共同化ありき」でことを進めようとするやり方には反対です。 以上、問題点を明らかにいたしました通り、第1号議案一般会計予算案には反対です
続いて、第9号議案流域下水道事業特別会計予算案についてです。 従来から指摘してきました通り、巨大な貯留管方式は無駄遣いにほかならず、治水対策は河川改修や小規模貯留管の敷設などで行うべきであり、反対です。 次に第10号港湾事業特別会計予算案についてです。 昨年度の外貿量は約300万トン、うち関電の石炭が250万トンです。和田埠頭は大型コンテナ埠頭とされているのですが、荷揚げコンテナは90隻から約5000個、1隻平均50~60個に過ぎず、5万トン級大型コンテナ船は必要ありません。過大な貨物取扱量予測に基づく和田埠頭建設には反対であり、10号議案には反対いたします。 次に、第13号議案 京都府水道事業会計予算案についても反対です。 今回、高すぎる乙訓地域にかかる水道料金については、住民の運動や地元関係者の努力によって5円の値下げが実施されますが、今日、最大の問題となっている基本水量問題は依然として解決が図られていません。乙訓府営水道の供給を受けている長岡京市、向日市、大山崎町の多くの住民の声は、「なぜ、使っていない水量の分まで、料金を払わなければならないのか」「企業の分までなぜ払わなければならないのか」ということにあります。この住民の当たり前の声に応えた水量問題の解決こそ、今日求められています。上水道と工業用水を一体化し、企業の分まで住民に押し付けた本府の責任において、この声に応えた解決を図られるよう強く求めるものです。 次に17号議案後期高齢者医療財政安定化基金条例制定の件についてです。 後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者に新たな負担を押し付けるだけでなく、75歳以上の高齢者は診療や検査の上限を決め、受診できる医療機関も制限するなど医療の内容に差別を持ち込む制度となっています。さらに退院が難しい患者に限り退院計画をつくり退院させたら報酬が出るという仕組みや回復が見込めないと判断された患者について終末期の治療計画を立てた場合に診療報酬が出るという仕組みまでもが示されています。これまで長い間、地域社会を支えてこられた方々が高齢になって安心して医療を受けられるようにするのは政治や社会の責任であるにもかかわらず、75歳になったとたん積極的に治療を行わない別立ての保険に追い立てるような国は世界中にどこにもありません。 本条例案は、今廃案が求められている後期高齢者医療制度の導入を前提としているものであり反対です。 次に第21号議案心身障害者扶養共済条例一部改正の件についてです。 心身障害者扶養共済制度の掛け金を既加入者で現行の3500円を2.6倍の9300円に、最高金額では13300円を1.7倍の23300円にまで引き上げようとするものです。しかも、5年に1回の値上げとなります。 この共済制度は、親亡き後、残された障害者の生活を支えるために重要なものであり、現在、全国で6万5898人が加入しています。制度創設以来、見直しが行われるたびに、掛け金が引き上げられてきましたが、給付額は、月額2万円と変わらないにもかかわらず、掛け金が大幅に上がることにより、加入者の負担はいっそう重くなるとともに、 新規加入者も減らし、財政基盤をますます弱くすることにもつながります。国の責任で公費負担を増やし、この制度を維持強化していくことこそ必要であり、加入者の負担増となる掛け金の引き上げには反対です。 次に第24号議案拡声器による暴走音の規制に関する条例一部改正の件についてです。 この改正案は、音量の測定について換算測定方法を導入し、拡声機の使用停止命令や移動命令を新設し、これに伴う罰則も整備しようとするものです。 この条例は、右翼等の暴騒音だけでなく、憲法に保障された権利に基づく府民の通常の活動をも規制しうるものとなっており、今回の改正案で、一層その危険性が高まります。具体的には、適法に拡声機を使用していたものに対し、右翼など妨害勢力が後からやってきて大音量で妨害した場合、警察官が現場に来て、初めから適法に拡声機を使用していた側の方にも移動命令を出す、それも刑罰をもって強制されるという可能性があります。 この拡声機条例改正案については、パブリックコメントでも、寄せられた8件の意見のうち、反対が6件であったように、多くの反対や危惧の声が寄せられています。今回の拡声機条例一部改正案は、府民の表現の自由や政治活動の自由を不当に制限する恐れが強まるものであり、反対です。 なお、第16号議案「京都府公益認定等審議会条例制定の件」については、賛成するものですが、これまで社団法人や財団法人などの公益法人は、主務官庁の認可を得て設立されてきましたが、今回の法改正によって、一定の要件を満たしておれば、一般の社団、財団法人として、主務官庁の認可なしに、登記のみで設立することができるようになります。 これは簡単になっていいようですが、これが暴力団などの社会的犯罪組織が公益法人のような看板を掲げ、出資者を募る、経済活動を行う、こういうことに道を開くことになります。審議で明らかになりましたが、これについては、法律上の規制もなく、事件が起こるまでは何の規制も受けません。こうした一般社団、財団法人への監督責任もしっかり果たすようにもとめておくものです。そして、今回、設置される審議会の審査を受けて設立される公益法人には、税制等の優遇措置を受けることができることとなりますが、公益法人として認可をする基準については、府民から見て客観性、公平性が保障されるようその厳正な運用を求めるとともに、公益的役割を果たしている法人の活動がしっかりと保証されるよう求めておくものです。 最後に第30号議案、丹後あじわいの郷の無償貸付についてです。 98年開園から10年になりましたが入園者は10万を割り、経営は事実上破綻しています。あじわいの郷は60億円も投入されてきた府民の貴重な財産です。今後どうするのか、委員会を設けて検討中とのことでありますが、丹後地域の振興に真に役立つものとなるよう、株式会社ファームへの委託を続けるのかを含め、抜本的な見直しを強く求めて討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。