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議会を終えて(談話)

2008年2月定例議会を終えて

2008/03/26 更新
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       日本共産党京都府会議員団  団長 新井 進  2月14日から3月21日まで開会された2月定例議会が閉会した。 わが党議員団は、予算特別委員会審議前の2月25日に、今議会での基本的立場を明らかにした「開始にあたって」を発表し、「構造改革」路線による負担増や地方切捨てに加え、原油価格高騰等でいっそう深刻となる府民の営業と暮らしを守るため、京都府政が自治体本来の役割を果たすよう、本会議や予算特別委員会の中で論戦し奮闘した。

 今議会には、山田府政2期目の折り返し点となる平成20年度一般会計予算をはじめとする予算など59議案、及び人事案件1議案が提案された。 わが党議員団は、一般会計予算、和田埠頭建設をすすめる港湾事業特別会計予算や巨大貯留管「呑龍トンネル」建設を含む流域下水道事業特別会計予算、使わない府営水を住民に押し付ける水道事業会計予算、追加提案の58号議案の学研都市「株式会社けいはんな」にかかわる負担付き寄附受け入れ及び財産の無償貸付など8件に反対し、人事案件を含む他の52議案には賛成した。

1、今議会は、参議院選挙で示された「構造改革」路線を進めてきた自公政治に対する厳しい審判と新しい政治を求める国民的な模索、また、あいのりへの批判の中、日本共産党と市民との共同で大善戦となった京都市長選挙の結果のもとで行われ、これらが知事や与党会派にも大きく影響を与えるものとなった。 そうした中、長年にわたる住民の願いと運動、そして日本共産党との共同した取り組みと議会における論戦が、新年度予算案に施策として反映した。 当初予算には、小学校3年生から6年生まで2年間かけてすべての小学校を対象に計画的に30人程度学級に改善することが盛り込まれた。予算審議では、これまで「かつては50 人クラスだった」などと述べ30人学級に背を向けてきた与党会派からも「今後、中学校も含め計画的に拡充してほしい」など要望が出されたように、少人数学級拡充の流れは大きく広がっている。また、木造耐震改修助成制度の要件緩和、原油価格高騰対策等特別融資の創設などが盛り込まれ、わが党議員の追及に「幅広く見ていく」と答弁し、対象を限定しない立場も示された。 また、わが党議員団が一貫して求めてきた雇用問題についても本会議でわが党議員の追及に、知事が「正規雇用の大切さが見直される時期にきている。関係法令も整備されるよう、意見を述べていきたい」と、国に求める姿勢を初めて示した。予算委員会審議では、「構造改革」推進の立場に立つ民主党議員からも「正規と非正規の差別待遇がないか。健康で安心して長期で働ける環境があるのか」との質問や、府庁の人員削減の影響をただすなど、深刻となる雇用の実態とわが党の論戦が大きく影響していることを実感させるものとなった。

2、平成20年度一般会計予算は、全体としては、わが党の論戦を通じ、府民の暮らしを支える施策を削減し、さらに京都府の自治体としての役割を後退させる「受益と負担」「自立・自助」を基本とした「経営改革プラン」推進の立場には変わりないことがより明らかとなり、わが党議員団は反対した。 その理由は第1に、府民の暮らしと営業を守る上でかかせない事業を削減したことである。その一つが昭和54年から実施し、予算審議でも理事者が「経済的、精神的負担が大きいため、激励と支援をこめて実施してきた」と、その意義を述べた「難病患者療養見舞金」及び「小児慢性特定疾患患者見舞金」の廃止である。また、39年間にわたり教育の機会均等、保護者の経済的負担の軽減などを目標に実施してきた、府外の私立高校に通学する1600 人の生徒を対象にした授業料補助を、今後削減・廃止をすることである。 しかも、これら事業の削減手法として、一昨年から導入された外部委員会による「事業仕分け」によって1回20分から30分の議論のなかで、「他府県が実施していない」などとして乱暴に切り捨てる方法を用い、当事者から意見も聞かず削減したことは、新自由主義の立場に立つ山田知事の本質を端的に示したものである。 しかし、一方で、これら事業の廃止提案がされた直後から、難病団体の皆さん方が二度にわたり知事や全会派に申し入れをされ、自治体要求連絡会も緊急に抗議デモを起こすとともに、知事総括質疑でも追及し廃止の撤回を求める中、山田知事は撤回には背を向けたものの「(難病施策について)今後、実状をお聞きして、新しい事業で対応していきたい」と答えざるを得なくなったことは重要である。 また、商店街関連予算を平成17 年比9300 万円削減、中小企業団体関連予算2 億4100 万円削減となるなど、支援すべき深刻な中小小売業者や商店街の実態に背を向けたものとなっている。 第2に、府民の安心・安全を守る上で、京都府の役割を果たしていないことである。 京丹後市峰山町内記でバイパス開通直後、1 年間で2 名もの死亡事故が発生するなど、交通安全対策は急務であるにもかかわらず、京都府内全体で300から400件もの信号機設置要望に対し、府内全体でわずか20基の予算化のみである。また、防災対策としての河川改修予算の連続削減など、「安心・安全」を口にしながら住民に身近な安全確保はおざなりとなっている。 第3に、本来メスを入れるべきムダ遣いが継続されている点である。 京都市長選挙でも大きな争点となった京都市内高速道路計画について、斜久世橋線に4年間で12億円、合計124億円を支出し、また審議でも水需要増の根拠がないことが明らかであるにもかかわらず畑川ダム建設を進めようとしていることは重大である。 また「高等学校奨学金償還対策事業費」3億8000万円など依然として同和特別扱いが残されている。これは京都市長選挙の争点となり、世論の批判の中、京都市が今年度の返済肩代わりの執行の停止と来年度予算の計上をやめた制度と同じ主旨の制度であり、見直すことが求められたものである。 第4に、税務共同化推進のための予算が含まれていることである。「税務共同化推進費」は、今秋にも「税務共同化のための広域連合」立ち上げるための予算であるが、長岡京市が「広域連合へは、市町村による判断や選択に基づいて参加できるようにし、時期も柔軟に対応を」と求め、長岡京市議会も同趣旨の意見書を全会一致で可決したように、各市町村でも、市町村議会や住民の中でも議論はこれからである。しかも、自治体の賦課・徴収の自主的権限を侵すのではないか、総合性が維持できるか、個人情報は守られるかなど、関係者から疑問や意見が出されている。ところが、課税も徴収も共同化することを既定の路線として、結果を押し付け、拙速にすすめることは市町村自治、住民自治を踏みにじるものである。

3、今議会には、後期高齢者医療財政安定化基金条例が提案された。これは後期高齢者医療制度が実施された場合、京都府が設置する基金設置のための条例であるが、わが党は、4月実施の中止と国会で廃止法案を提案しており、府民の廃止の願いにこたえるため反対した。また、心身障害者扶養共済条例一部改正は、障害者の保護者が死亡した後の生活を支えるための重要な施策であるが、今回の改正により大幅に掛け金を値上げするもので、反対した。 「拡声器による暴騒音の規制に関する条例一部改正」については、音量の測定について換算測定方法を導入し、拡声機の使用停止命令や移動命令を新設し、これに伴う罰則も整備しようとするものであるが、右翼等の暴騒音だけでなく、憲法に保障された権利に基づく府民の通常の活動をも規制しうるものとなっており、今回の改正案では、府民の表現の自由や政治活動の自由を不当に制限する恐れが強まるものであり反対した。 また民事再生を申請した学研都市の「株式会社けいはんな」について、本議会に経営再生計画の一環として、「けいはんな」からラボ棟などの負担付き寄附を受け、これを10 年間無償で「けいはんな」に貸し付ける議案が提案されたが、わが党は反対した。その理由は第1に、なぜ100 億円もの負債を抱える事態となったのか、また15 億円出資し、副知事を取締役に送ってきた本府の責任について、議会と府民にまともな責任ある説明がなされないばかりか、昨年の予算委員会でも猿渡副知事は「少しずつ借金は返していける事業体になってきている」と事実を覆い隠す答弁を繰り返してきたこと、第2に、「株式会社けいはんな」が、10 年間で社債20 億円を返済し、ラボ棟等の大規模改修等、長期にわたり安定した経営ができる事業体になる保障等について全体の「再生計画」の説明がなされていないこと、第3に、今後一層の府負担、府民負担が明らかであること、第4に、国家的プロジェクトである学研都市建設であるにもかかわらず、地元自治体に責任と負担を負わせる「第三セクター方式」の株式会社とするものであり、国の責任で再生させる道へと転換すべきと厳しく求めた。

4、わが党議員団は、切実な府民要望の実現と、府民の安心・安全を守るため積極的に論戦した。 深刻となる雇用問題では、府の職場でも配偶者暴力相談支援センター相談員が非常勤嘱託で、収入は月13万円から14万円、一時金ゼロ、1 年毎の契約更新を10年間にわたり続けていること、本庁でも本来業務の伝票審査業務に派遣労働者が雇用されていることなど、不安定雇用が京都府職員の中に増えていることを具体的に指摘し、その背景にある、06年度より4年間で職員を1500人削減するという「給与費プログラム」の問題を明らかにし、改善を求めた。 本年4月から実施される京都府立大学、および京都府立医科大学の「法人化」について、中期目標が示された。わが党議員団はこれまでから、大学の自治と学問の自由を守る立場から「法人化」に反対してきたが、引き続き学内意見が尊重されるとともに、府が公的責任を果たすよう求めた。 身体障害者等駐車禁止除外指定車標章について、除外とされた下肢3級の2から4級を対象とするよう、今議会を含め求めてきたが、他会派からも同じ意見がだされ、見直しの方向が示されたことは重要である。 また、城陽市の山砂利採取地に産業廃棄物を含む建設汚泥処理土が持ち込まれた問題について撤去を求める城陽市や住民の願いに応え、京都府が覆土方針を押し付けないよう求め、また南丹市のカンポリサイクルセンターで基準値を超えたダイオキシンが発生した問題では、カンポ社自らが国基準より厳しい自主基準値を設定したにもかかわらず、京都府が国基準で稼動を認めることのないように厳しく求めるなど、府民の安心・安全を守る論戦を行った。

5、今議会には、「京都府行政に係る基本的な計画の議決等に関する条例」「京都府の出資法人への関わり方の基本的事項を定める条例」が議員提案され、成立した。 これらは、議会改革の一環として、これまで議会には報告のみとされてきた府政の基本に関わる重要な計画を議会の議決を要するものとし、また京都府が出資している法人についても、一定の要件を設け、議会への報告等を義務付けることとなった。さらに、与党会派がこれまで「部屋の広さがない」などと拒否してきた委員会の直接傍聴を認めることと、インターネットでも委員会速記録が公開される方向も確認された。今後、よりいっそう府民に開かれた、透明性のある議会となるよう積極的に働きかけるものである。 また、今議会で5月臨時議会を毎年開催することが決まった。これは、昨年の府会議員選挙直後の議長等を選出するための5月臨時議会で、与党会派がまとまらない中「連日の1分議会」としてマスコミなどから批判があったものである。わが党議員団は、議会審議を活発に行う立場から、常任・特別委員会の実質審議ができるようにすること、開会から閉会までの間は休会とすること、常任・特別委員会委員の選出を行うこと、などを求めた。

6、平成12年から議員歳費の5%カットの条例を全会一致で成立させ、実施してきたが、平成20年度については、条例提案が行われなかった。わが党議員団は、府民の暮らしが厳しいときこそ、引き続き5%カットは継続すべきであると与党会派に求め、条例提案をすべきと提案したが、与党会派は歳費の削減を継続することに背を向けた。

7、意見書については、開会直後にイージス艦「あたご」の事件をうけ「海上自衛隊艦艇と漁船との衝突事故に関する意見書」と最終本会議で沖縄少女暴行事件をうけ「在日米軍人等による犯罪防止に関する意見書」を全会派提案により可決した。 4月から実施予定の後期高齢者医療制度について、国会では共産党、民主党、社民党、国民新党の野党4党による「後期高齢者医療制度廃止法案」が提案され、全国的に廃止を求める声が大きく広がっている。今議会には、京都民主医療機関連合会から提出され、わが党議員のみが紹介議員となった「後期高齢者医療制度の廃止を求める請願」に、厚生常任委員会で民主党議員も賛成した。この請願を受け、わが党は、最終本会議に意見書を提案し、民主党も同趣旨の意見書を提案した。さらに、毎年「道路特定財源の堅持を求める意見書」をオール与党が提案してきたが、今議会は民主党が提案者にはならなかった。これらは、国民の運動と世論に押された結果である。 また、与党会派提案の「難病対策の充実に関する意見書」「肝炎対策の推進に関する意見書」「食の安心・安全の確保に関する意見書」は、これまでわが議員団が求めてきたもので、府民の切実な声に与党会派もこたえざるをえなくなったものである。一方、与党会派提案の「2016 年オリンピック・パラリンピック競技大会の日本招致に関する決議」は、オリンピックの東京誘致をてこに東京の再開発と一極集中をすすめるもので、わが党は反対した。また、わが党議員団提案の原油価格高騰で苦しむ中小企業を支援するための「中小企業を支援する緊急対策を求める意見書」「消費税増税に反対する意見書」および「労働者派遣法の抜本改正を求める意見書」に、与党会派が反対するという道理のない態度をとったことは重大である。

山田府政も2期目の折り返し点となった。引き続き府民のみなさんとの共同した闘いに全力をあげるとともに、来るべき総選挙での日本共産党の躍進で、自公政治に厳しい審判を下すため奮闘するものである。