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政策と見解

2009年度2月定例議会予算特別委員会の開始にあたって

2009/02/23 更新
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2009年度2月定例議会予算特別委員会の開始にあたって

2009年2月23日

日本共産党京都府会議員団
団長 新井 進

1、府民生活擁護へ、いまこそ京都府が自治体本来の役割をはたすとき

 二月定例府議会が2月10日に開会した。本府議会に提案された2009年度当初予算案および議案が本日から予算特別委員会で審議が始められる。
 すでに破綻が明白となった構造改革路線により、府民の暮らしや営業が痛めつけられてきたことに加え、昨年のアメリカ発の金融危機に端を発した急激に悪化する経済状況の中、今、京都府には、いっそう深刻さを増す府民の暮らしと営業を、いかに守るのかが問われている。
 わが党議員団は、昨年来、府内の中小業者、関係機関・団体から聞き取り調査をおこない、府に中小業者の経営と府民の雇用と暮らしを守る緊急対策を数次にわたって申し入れ、来年度予算案の編成にあたっても、「緊急時にふさわしい思い切った対策」を求めてきた。
 山田知事は議案説明の際に「経済・雇用の基礎的な力が落ち込んでいる時に、厳しい取り組みを続けることは、病気の時にダイエットをおこなうようなもの」と述べた。これは、構造改革路線がもたらした京都経済と府民生活に危機が押し寄せる中、要求にもとづく府民の運動、議会でのわが党議員団の論戦により、従来の構造改革路線の手直しを余儀なくされていることを示すものである。
 一方、「530億円もの府税減収という厳しい情勢」の中で「思い切った政府の地方財政計画を上回る積極予算を編成した」と繰り返しのべ、ことさら財政が極めて厳しいと強調しているが、減収分のほとんどは、国からの財政措置によりカバーされるものである。まして、府民生活が急激に悪化しているだけに、相応しい規模とスピードで、府民生活を守る立場から施策の具体化と財政運営が求められている。
 年度末に向かい二度にわたる府市民総行動や各団体の府申し入れ、「春よこい!なんでも連帯ひろば」など、派遣村に続く取り組みが急速にひろがっている。こうした府民的運動と結び、本会議代表質問等で、府民の命と暮らし、営業をまもる緊急対策の基本点について具体的に提案し、実施を求めてきた。
 わが党議員団は、本日から始まる審議を通し、府民のいのち、暮らしを守り、中小企業や地場産業を応援する予算と施策となるよういっそう奮闘するとともに、京都府が自治体本来の役割を果たすよう強く求めるものである。
 以上の立場から、予算特別委員会における基本的な課題と論戦の方向について述べる。

2、運動と議会論戦により切り開いてきた到達を踏まえ、さらなる前進と府民の共同の力できりひらこう

①「派遣切り」など雇用問題の解決と生活支援・雇用剔出対策を

 「派遣切り」等により住む場所をも奪われた労働者が府内でも急増していることが日々明らかとなっている。生活保護については、国会論戦を通じ、住居がなくても、働く能力があっても生活保護を受給できると答弁された。しかし住居の確保については、京都市内にある中央保護所だけでは対応できず、しかも「派遣切り」にあった方への府営住宅の開放も、家賃が必要なことなど、実態にそぐわない事態もおこっている。代表質問では、失業者への食事と宿泊を提供する無料の「緊急一時避難所」の設置を京都市内はもちろん、府北部や南部に求めた。知事は「しっかりと現状を踏まえて対応していきたい」と答えた。緊急措置として住居を奪われた人たちが直ちに入れるよう府営住宅や職員住宅の開放、宿泊所を借り上げることや、生活・医療・就業宇目談などに対応できる体制整備等の具体化が必要である。
 派遣切りなど雇用問題について、代表質問で「偽装請負」も「違法クーリング」も派遣期間に通算する政府答弁を示し、労働局と連携して断固とした対応を求めた。知事は「偽装、雇い止めについては、違法があれば労働局とも連携して対応していくのが筋なので、労働局にも十分働きかけていきたい」と答弁した。現行法でも派遣切りを止めさせる措置をとるべきである。
 雇用創出については、国の補正予算にともなう緊急雇用対策基金75億円により、「5万人雇用・ひとづくり事業」が提案されているが、緊急の雇用確保と安定的な雇用に結びつく効果ある事業となるよう、奮闘するものである。
 代表質問で、これだけ雇用が厳しい時に、府が「給与費プログラム」にもとづき1500人の職員削減を続けることをやめ、職員の増員等を求めた。山田知事は「ワークシェアによる、職員の雇用を進める」と答えたが、職員の削減方針そのものの見直し、正規職員の前倒し採用、食品衛生監視員や消費生活安全センター相談員等体制強化が求められている。

②「下請け切り」をやめさせ、小売店、中小・零細企業や建設業者への支援策を

 今回、提案された「府民公募型公共事業」は、交通安全対策や災害防止対策など、身近な事業に限定しており、地元業者の仕事確保につながるものである。また、新たな総合評価入札制度として、下請けをする場合に府内事業者利用や主要資材の府内調達などを評価点に入れることを含んでいる。さらに、学校や公共施設の耐震工事予算の二倍化、私立学校への耐震助成制度の創設も盛り込まれた。これらは、建設業者の深刻な実態をふまえ、1月28日から30日まで京都建築労働組合が京都府庁正門前でおこなった総勢500名近い「仕事よこせ」の座り込みをはじめ、府内各地の取り組みやわが党の論戦により実施されることとなったものである。今後、信号設置、小修繕など、具体的な要望や箇所を広域振興局等に提案し、地元業者に仕事がいく取り組みを実践的にすずめることが必要である。また、地元中小規模事業者を守り育成するための公契約条例制定や入札制度の抜本的改善が求められている。
 住宅改修助成制度は、経済波及効果が大きいことは、すでに実施した自治体の実績からも明らかであり、今回、代表質問でも「2億円の予算を組めば80億円の仕事につながり、さらに建築業者のみならず、電気店など関連業者にも効果がある」と指摘し実施を強く迫った。今後、バリアフリー化や屋内水洗化などにも利用できる制度創設が求められる。
 府北部から始まった生活危機突破の運動の中で強く要望のあった「雇用調整助成金」の要件見直しが実施されることとなり、さらに京丹後市では、5分の1の事業主負担分を市が補填する制度も実施された。「下請け切り」や受注急減に直面する中小企業を支援するためにも、本府としての制度創設が必要である。また、個人事業主等への支援策として、緊急直貸制度創設も急がれる。すでに制度融資を利用している人には、返済据え置き期間を希望に応じて3年まで延長できる制度融資の拡充も必要である。

③医療や社会保障の充実で、府民の安心確保を

 今回、お年寄りのための病床緊急確保対策として、介護療養病床から医療療養病床への転換や医療療養病床を維持する医療機関に助成をすることも盛り込まれた。これは、国による毎年2200億円もの社会保障費削減方針により、平成23年度までに介護療養病床を全廃、医療療養病床の削減がされる中、わが党の追及に、知事も「医療難民、介護難民はうまない」と答弁せざるを得なくなり、今回実施されることとなったものである。今後、療養病床の確保や厳しい在宅基盤の整備など、医師・看護師等確保策とあわせ、総合的な対策が必要である。
 わが党が強く求め実施されてきた医師確保対策について、今年度も奨学金人数枠が3名増やされたものの、これまでから実施されてきた北部対策のみとなっている。府北部の医師不足に加え、南部をはじめ、府域全体の対策が求められており、いっそうの拡充が急がれる。
 福祉人材確保策として4000人が盛り込まれているが、低賃金など労働条件の改善がなければ解決は図れないため、介諧報酬の5%引き上げを求めるとともに、賃金を別枠3万円上乗せ措置等の特別対策を求めるものである。また、介護保険制度の見直しにあたっては、認定基準を実態にあったものにすること、基盤整備の推進、負担軽減策の実施等を求めるものである。
 国の緊急措置として二年間、妊婦健診を最大14回にするための経費助成が提案されているが、すべての市町村で継続的に、新たな負担なく実施されるよう府が援助することが求められている。
 国保証の取り上げが急増していることが明らかとなったが、今後、後期高齢者医療保険証の取り上げの時期も迫っており、同じ事態にならないよう特別の対策が必要である。
 2007年の道路交通規則改正により、駐車禁止除外指定車標章の交付対象から外れた「3級の2」及び「4級」の下肢障害者について、繰り返し議会で改善を求めてきたが、4月1日から対象となったことは重要である。

④子どもへの貧困のしわ寄せを許さず、誰もが豊かに学べる環境を

 高等学校生徒通学費補助の拡充は、これまで片道15キロ、1ヵ月定期券購入費が2万2100円を超えた分の半額を補助する制度であり、わが党議員団はその拡充を繰り返し求めてきたが、今回、距離要件を撤廃し、対象金額を生活保護基準の1.5倍未満収入の世帯は対象額を17000円に引き下げる提案がされ、これまで対象とされていなかった回数券について、「改善に向けて検討する」方向も示された。また、高等学校緊急就学支援事業として、保護者のリストラや企業倒産等により家計急変で就学困難になった高校生が、すでに授業料を払っている場合に臨時・緊急の奨学金を給付することとされている。しかしこの制度も、授業料減免制度も「同居家族の収入を合算する」もので、保護者収入とすべきである。さらに、京丹後市の府立高校定数問題では、わが党議員の代表質問に教育長が「定数を緊急に増やせ」との願いには背を向けたものの、京丹後市の深刻な経済状況をふまえ、「志願状況に応じて定員以上に合格させることを含め、柔軟な対応をする」と答弁したことは、重要な前進である。これらは昨年以来、保護者や教職員のみなさんらが「京丹後市通学圏を考える会」を結成し、京都府教育委員会や丹後広域振興局。京丹後市および教育委員会などに何度も足をはこび、申し入れをされる中で、実現の道を開いてきたものであるが、二次募集や定数見直しなどが求められている。
 この間「学費ゼロネット」のみなさんの京都府議会各会派への要請行動や、デモ行進など取り組みがひろがっている。新年度を前に、親の経済状況が急激に悪化し、大学に合格したのに入学できない、学費が払えない等決しておこらないように、いくつかの県で実施されている都道府県単位の独自奨学金について実現が急がれる。
 当初予算案には、昨年「まなび教育推進プラン」で、2009年度内に小学校六年生まで少人数学級を実施するため、来年度は40名を新たに配置する予定であったにもかかわらず、今回20名にとどまり、その結果、小学校六年生までの少人数学級実現が一年先送りにされたことは重大である。必要な教員配置を強く求めるものである。

⑤農林水産業への支援、府の農業政策の見直しを

 これまで京都府農政は、多様な担い手の連携による地域農場作り、集落営農などを対策の基本としてきたが、本来の支援策である担い手育成や農業法人の育成、価格補償などを削減している。一方、「農業ビジネス支援事業」が「農商工連携応援ファンド」創設と一体に提案されており、農業ビジネスを立ち上げるものとしている。これは、京都府農政の軸を、企業の農業への算入や農業ビジネスにしようとしているもので、価格・所得保障、担い手育成などこそ必要で、見直しを求めるものである。
 また、府営栽培漁業センター運営費の削減がこの間進められていること等も、漁業振興に逆行するものであり、改善が必要である。

⑥京都議定書締結の地・京都に相応しい対策を

 今回「緑のKYOティール」推進事業として、電気自動車やエコポイントの普及などが提案されているが、そもそも、本府の温室効果ガス10%削減目標を2010年末で達成し、さらに削減を進めるためには、施策の柱を、府民の「ECO」の取り組みの推進だけでなく、最も排出量の多い、大規模事業所や交通・運輸対策への規制などに国や市町村と連携して取り組むことが必要である。まして、関西電力舞鶴火力発電所の2号機建設・稼動により、1号機とあわせ年間860万トンものCO2を排出することなり、温暖化対策に逆行するもので、これらの抜本的転換が必要である。
 さらに、「丹後エコエネルギープロジェクト」として、実証実験が終了したバイオガス発電等の施設を、採算が見込めないにもかかわらず京丹後市に新たな負担を押し付け、府が来年度だけで1000万円もの財政支援をすることは、道理がないものである。実証実験施設であり、実験終了後のあり方については、設置者である「独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」の責任で処理すべきである。


3、府民・自治体へのしわ寄せをゆるさない闘いを

①山田知事の「地方分権」論者としての本質が浮き彫りに

 すでに三位一体改革と市町村合併により疲弊している市町村や地域に対し、「地方分権」を理由に、市町村自治や住民自治を踏みにじる施策を強引に推し進め、いっそう厳しい事態に追いやることが浮き彫りとなっている。
 関西広域連合推進費は、「究極の構造改革」として政府や財界が狙う、道州制に向かうものである。国保一元化検討費は、本会議質問でも明らかしたとおり。社会保障給付費削減をすすめる厚生労働省から大歓迎されており、国による都道府県単位の医療費削減計画を、より実効ある形ですすめるための具体化を、事実上京都府から国に提案するものである。税の共同化推進費は、来年度六月にも税務共同化推進委員会を設置することを規定路線とし推進しており、深刻となる府民生活のもとで、自治体行政の「総合制」が維持できるのか、など税業務のあり方の根本が問われるものである。

②府民生活への新たな負担や削減を許さない

 今回、「行政改革の取り組み」の強化として、「145億円の改革」として、給与・職員数の削減88億円や施策の見直し51億円等が提案されているが、府民生活をささえる府職員と施策を削減することに求めることは問題である。
 施策の見直しによる51億円削減の中には、中小企業団体中央会や商工会、商工会議所などが行う中小企業や小規模事業所への支援策の削減など、京都経済の中心を担う中小企業等への施策が後退している。
 京都府立高等技術専門校条例の全部改正が提案されている。これは。現在四校を再編・整備するものであるが、その中には授業料有料化を含んでいる。しかし、二年間に限っては有料化凍結をせざるをえないなど、今日、職業訓練等の充実が求められていることは明らかである。
 昨年、京都府農林水産試験研究機関のあり方検討会報告で示された、丹後農業研究所の水稲部門を廃止する計画は、多くの反対により中止されたが、「効率化」と「人員削減」を目的とした試験研究機関の統廃合ではなく、農林漁業の振興支援のための充実こそ求められている。

③不要不急の事業等の抜本的見直しを

 本来削減すべき不要不急、見直しが必要な事業として、これまでから厳しく指摘してきた畑川ダム25億円、京都市内高速道路建設促進事業費3億円、関西国際空港出資金1400万円、同和奨学金償還対策事業4億円、いろは呑龍トンネル8億7800万円、等が継続していることは重大である。これらは早急に見直すべきである。また、京都舞鶴港和田埠頭整備事業として25億円が計上されている。和田埠頭は二期工事の実施が凍結されるなど、活用見込みに大きな疑問の声があがっている。これまで多額の税金を投入し続けてきたもので、その責任が問われている。
 以上、予算特別委員会にあたり、わが党議員団の基本的立場と論戦の基本方向を述べたが、府民の暮らしと営業を守る上で欠かすことができない対策がよりいっそう求められている。その実現にむけ、府民のみなさんの共同した運動と論戦に全力をつくすものである。

以上